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ラダー図とは?意味や基本構造をわかりやすく解説!(シーケンス制御:PLC:プログラミング:記号の読み方など)

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工場の生産ライン・エレベーター・信号機・エアコンなど、私たちの身のまわりにある自動制御機器の多くは「シーケンス制御」によって動作しています。

そのシーケンス制御を実現するプログラムを記述するために使われているのが「ラダー図」です。

ラダー図という言葉を聞いたことはあっても、具体的にどのような図形なのか、どのように読み書きするのか、そしてなぜ「ラダー(はしご)」と呼ばれるのかについて、はっきりと説明できる方は少ないかもしれません。

この記事では、ラダー図の定義・名称の由来・基本構造・シーケンス制御とPLCの関係・記号の読み方・応用分野まで、基礎から体系的にわかりやすく解説していきます。

ラダー図を初めて学ぶ方から改めて基礎を固めたいエンジニアの方まで、ぜひ最後までお読みください。

ラダー図とは「はしご状の形をしたPLCプログラミング専用の回路図」のことである!

それではまず、ラダー図の定義と名称の由来、そしてその基本的な意味について解説していきます。

ラダー図の定義と名称の由来

ラダー図(Ladder Diagram)とは、PLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)に搭載するシーケンス制御プログラムを、電気回路図に似た「はしご(ladder)状」のグラフィカルな図形で表現したプログラミング言語のことです。

図の左端と右端に縦の線(「左母線」と「右母線」と呼ばれます)を引き、その間にスイッチやリレーを模した記号を横方向につなぐことで回路を表現します。

左母線と右母線の間に複数の横方向の回路が縦に並んだ様子がちょうどはしご(ladder)のように見えることが、名称の由来となっています。

ラダー図はIEC 61131-3という国際規格の中でPLCプログラミング言語のひとつとして標準化されており、世界中の製造現場で広く採用されています。

日本語では「ラダープログラム」「ラダー回路」「ラダーダイアグラム」などとも呼ばれますが、いずれも同じものを指しています。

ラダー図が誕生した背景と歴史

ラダー図の歴史は1960年代に遡ります。

当時の工場自動化はリレー(電磁継電器)を使ったシーケンス制御回路で実現されており、大量のリレー・タイマー・カウンターをパネル上に配線した「リレーシーケンス回路」が主流でした。

しかしリレー回路は配線変更が困難・故障時の診断が難しい・大型化・重量増という多くの問題を抱えていました。

1969年にモジュラー・ダイビジョン社(後のアレン・ブラッドリー社)がリレー回路をソフトウェアで置き換えられる最初のPLC「Modicon 084」を開発しました。

このとき、当時の電気技術者がすでに使い慣れていたリレー回路図の表現をそのままPLCのプログラミング言語として採用したものがラダー図の原型です。

電気技術者が新たな知識を最小限に習得するだけでプログラミングできるというアプローチが功を奏し、ラダー図は急速に世界中の製造現場に普及しました。

現代の製造現場でのラダー図の重要性

半世紀以上が経過した現代においても、ラダー図は製造業・インフラ・ビル設備・食品・製薬など多くの産業分野で最も広く使われているPLCプログラミング言語です。

国内外の主要PLCメーカー(三菱電機・オムロン・シーメンス・ロックウェルオートメーション・ファナックなど)すべてがラダー図に対応しており、事実上の産業標準言語として確固たる地位を築いています。

ラダー図の重要性を示すポイントは3つあります。

第一に、電気回路図に似た直感的な表現形式であるため、電気技術者が最も理解しやすいプログラミング言語として長年支持されています。

第二に、IEC 61131-3という国際規格で標準化されているため、メーカーを問わず基本的な概念が共通です。

第三に、リアルタイム性と高い信頼性が求められる製造現場の制御プログラムとして、数十年にわたる実績に裏付けられた安定性を持っています。

ラダー図の基本構造と主要な構成要素

続いては、ラダー図の基本的な構造と各構成要素の役割について確認していきます。

左右の母線(バスバー)の役割

ラダー図の最も基本的な構造は「左母線(Left Power Rail)」と「右母線(Right Power Rail)」という2本の縦線から成り立っています。

左母線は電力が供給される「電源側」を表しており、右母線は「接地側(アース側)」を表しています。

この概念はリレー回路の電源ラインと接地ラインに対応しており、電気技術者にとって直感的に理解しやすい構造となっています。

ラダー図の各「ラング(Rung)」と呼ばれる横方向の1行は、左母線から始まり右母線で終わる一本の回路を表しています。

複数のラングが縦に並ぶことでプログラム全体が構成され、PLCはこれらのラングを上から下へ順番に実行(スキャン)していきます。

実際のPLCプログラムでは右母線を省略して表記するソフトウェアも多く、左母線のみを描画することもあります。

接点(コンタクト)の種類と役割

ラダー図において「接点(Contact)」は入力条件を表す記号であり、スイッチ・センサー・前段のコイルの状態などを読み取ります。

接点には大きく分けて「A接点(ノーマルオープン接点)」と「B接点(ノーマルクローズ接点)」の2種類があります。

A接点は対応するデバイス(ビット)がON(1)のときに接点が閉じて電流が流れる(通過する)記号です。

記号上は「 ─┤ ├─ 」のような形で表現され、平常時(デバイスOFF時)は開いている(電流を通さない)ことを示します。

B接点は対応するデバイス(ビット)がOFF(0)のときに接点が閉じる記号です。

記号上は「 ─┤/├─ 」のような形(斜線入り)で表現され、平常時(デバイスOFF時)は閉じている(電流を通す)状態を意味します。

B接点は「否定(NOT)」の論理に対応しており、ある条件が成立していないときに動作させたい場合に使用します。

コイル(出力)の役割と配置

ラダー図において「コイル(Coil)」は出力を表す記号であり、各ラングの右端(右母線の直前)に配置されます。

コイルは「 ─( )─ 」のような丸括弧で表現されており、コイルが接続されているラングの論理条件が成立した場合(電流が流れた場合)に、対応するデバイス(出力ビット)がONになります。

コイルは実際のリレーのコイル(電磁石)に相当し、通電されることで接点を動かす役割を担います。

基本的な出力コイルの他に「セットコイル(S)」と「リセットコイル(R)」という特殊なコイルも存在します。

セットコイルは一度ONになると条件が消えてもON状態を保持(ラッチ)し続けるコイルです。

リセットコイルはセットコイルでONになったデバイスを強制的にOFFにするために使います。

この「セット・リセット」の組み合わせは自己保持回路の代表的な実装方法として広く使われています。

シーケンス制御とPLCの関係を理解しよう

続いては、ラダー図が動作する基盤であるシーケンス制御とPLCの概念について確認していきます。

シーケンス制御とは何か

シーケンス制御(Sequence Control)とは、あらかじめ決められた順序や条件に従って制御の各段階を順次進めていく制御方式のことです。

「シーケンス」とは「順序」「手順」を意味しており、条件が満たされたら次の動作へ、さらに次の条件が満たされたらその次の動作へ、という形で制御が進んでいきます。

身近な例としては洗濯機が挙げられます。

給水→洗い→排水→すすぎ→脱水という一連の動作が決められた順序で自動的に実行される仕組みがシーケンス制御の典型的な例です。

シーケンス制御はフィードバック制御(センサーの検出値を常時監視してアクチュエーターを制御する方式)と対比される概念ですが、現実の制御システムでは両者を組み合わせた複合的な制御が行われることが多いです。

PLCとは何か

PLC(Programmable Logic Controller、プログラマブルロジックコントローラ)とは、工場の製造ライン・各種機械設備・インフラ施設などのシーケンス制御に特化したコンピュータです。

PLCは過酷な工場環境(粉塵・振動・電磁ノイズ・温度変化など)に耐えられるように設計されており、一般的なパソコンよりもはるかに高い信頼性と耐環境性を持っています。

PLCの基本的な構成は以下のとおりです。

構成要素 役割 具体例
CPU(演算部) ラダープログラムの演算・実行 プログラムの読み込み・スキャン実行
電源ユニット PLC全体に電力供給 AC100/200V をDC24Vに変換
入力ユニット センサー・スイッチなどからの信号受信 押しボタン・光電センサー・近接センサー
出力ユニット アクチュエーターへの指令信号出力 電磁弁・モーター・ランプ・ブザー
メモリ プログラム・データの記憶 ラダープログラム・デバイスデータ保存
通信ユニット 上位システムとのデータ通信 Ethernet・CC-Link・PROFIBUS接続

PLCとラダー図の関係

PLCとラダー図の関係は「コンピュータとプログラム」の関係に相当します。

ラダー図はPLCに搭載するシーケンス制御プログラムそのものです。

技術者はパソコン上のプログラミングソフトウェア(三菱電機の「GX Works」・オムロンの「Sysmac Studio」・シーメンスの「TIA Portal」など)でラダー図を作成し、USBケーブルや産業用ネットワークを通じてPLCにダウンロードして実行させます。

PLCはダウンロードされたラダープログラムを「スキャンサイクル」と呼ばれる一定の周期で繰り返し実行します。

スキャンサイクルとは、入力デバイスの状態読み込み→ラダープログラムの上から順に実行→出力デバイスへの書き出しという3段階の処理を繰り返すサイクルのことです。

このスキャンサイクルの時間(スキャンタイム)は通常数ミリ秒程度であり、非常に高速にプログラムが実行されます。

ラダー図の基本的な記号と読み方の概要

続いては、ラダー図に登場する基本的な記号と読み方の概要について確認していきます。

信号の流れと基本的な論理

ラダー図を読む際の基本的なルールは「左から右へ信号(電流)の流れを追う」ことです。

左母線から出発した「エネルギーフロー(信号の流れ)」が各接点を通過できるかどうかによって、ラング末端のコイルがONになるかOFFになるかが決まります。

接点が閉じている(条件成立)場合は信号が通過でき、接点が開いている(条件不成立)場合は信号がブロックされます。

ラング上のすべての接点を信号が通過できた場合(すべての条件が成立した場合)、コイルがONになり対応する出力デバイスがONに切り替わります。

この「すべての条件が成立した場合にのみ出力がONになる」論理はAND(論理積)に相当します。

複数の接点が並列に(縦に)接続されている場合は「いずれかひとつの条件が成立すれば出力がONになる」OR(論理和)の論理を表します。

主な記号の種類と意味

ラダー図に登場する代表的な記号をまとめます。

記号の名称 表記形式(概略) 意味・動作
A接点(ノーマルオープン) ─┤ ├─ デバイスがONのとき閉じる(導通する)
B接点(ノーマルクローズ) ─┤/├─ デバイスがOFFのとき閉じる(導通する)
出力コイル ─( )─ 条件成立でデバイスをONにする
セットコイル ─(S)─ 条件成立でデバイスをONにし保持する
リセットコイル ─(R)─ 対象デバイスをOFFにする(セットを解除)
タイマーコイル ─(T)─ 設定時間後に出力をONにする
カウンターコイル ─(C)─ 入力カウントが設定値に達したらONにする

これらの基本記号を組み合わせることで、シーケンス制御に必要なほぼすべての論理を表現することができます。

ラダー図と電気回路図の違い

ラダー図は電気回路図に似た外観を持っていますが、いくつかの重要な違いがあります。

最も大きな違いは「ラダー図は実際の電流が流れるわけではない」という点です。

電気回路図では実際の電流の流れを表現していますが、ラダー図はあくまでもプログラムのロジック(論理)を表現するものであり、PLC内部ではソフトウェア的な演算として処理されます。

また電気回路図では部品の物理的な接続関係を厳密に表現しますが、ラダー図では制御ロジックの論理的な関係を表現することが主目的です。

さらにラダー図には実際の電気回路では存在しない「ソフトウェアタイマー」「ソフトウェアカウンター」「データ演算命令」など、PLCのソフトウェア機能を表現する記号が多数あります。

ラダー図の応用分野と将来展望

続いては、ラダー図が実際にどのような場面で使われているかと、その将来展望について確認していきます。

製造ライン・工場自動化での活用

ラダー図が最も広く活用されている分野は製造業の工場自動化(FA:Factory Automation)です。

自動車の組み立てライン・電子部品の実装ライン・食品の製造・包装ライン・化学プラントの反応炉制御・鉄鋼の圧延ラインなど、あらゆる製造現場でラダー図によるPLC制御が使われています。

たとえば自動車生産ラインでは溶接ロボットの動作シーケンス・搬送コンベアの起動停止・品質検査センサーの判定ロジックなど、無数のシーケンス制御がラダー図として記述されています。

国内の製造業だけで数百万台以上のPLCが稼働していると推定されており、そのほぼすべてにラダープログラムが搭載されています。

建設・設備管理・インフラ分野での活用

製造業以外でも、ビル設備管理・上下水道処理場・変電所・トンネル換気システム・エレベーター・エスカレーターなどのインフラ分野でもラダー図は幅広く使われています。

ビル管理システムでは空調・照明・防災・セキュリティの各設備がPLCで制御されており、火災発生時の排煙ダンパーの動作・エレベーターの管制運転なども複雑なラダープログラムによって実現されています。

上下水道処理場では水位センサー・ポンプ・バルブの自動制御にPLCが使われており、安全で安定した水道サービスを24時間365日維持するためにラダー図が活躍しています。

ラダー図の将来展望とDX・IoTとの関係

製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT(Internet of Things)の進展に伴い、PLCとラダー図の役割も変化しています。

近年のPLCはEthernet接続・クラウドとの連携・エッジコンピューティング機能を標準装備するものが増えており、ラダープログラムで取得したデータを上位のMES(製造実行システム)やSCADAシステムとリアルタイムに連携させる構成が一般化しています。

また従来のラダー図に加えて、構造化テキスト(ST)やファンクションブロック図(FBD)など他のIEC 61131-3言語をラダー図と組み合わせて使う「マルチ言語プログラミング」が普及しつつあります。

人工知能(AI)・機械学習との連携においては、AIが出力した結果をPLCに取り込んでラダー図で処理するというアーキテクチャも研究・実用化が進んでいます。

このようにラダー図は新技術との融合を図りながら、今後も製造・インフラ分野の制御技術の中核として重要な役割を担い続けるでしょう。

まとめ

ラダー図とはPLCのシーケンス制御プログラムを「はしご状の回路図」形式で表現したプログラミング言語であり、IEC 61131-3規格で標準化されています。

名称は左右の母線とその間に並ぶ複数の横方向回路(ラング)がはしご(ladder)に見えることに由来しています。

基本構造は左母線・右母線・接点(A接点・B接点)・コイル(出力コイル・セットコイル・リセットコイル)の組み合わせから成り立っています。

電気技術者が既存の知識でそのまま使えるよう電気回路図に近い表現形式を採用したことで、1960年代の誕生以来半世紀以上にわたって世界中の製造現場で使われ続けています。

製造ライン・インフラ・ビル設備など幅広い分野で活用されており、DXやIoTの進展とともにその役割はさらに発展・拡大していくでしょう。

ラダー図の基礎をしっかりと理解することが、PLC制御技術のすべての学習の出発点となります。