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自己保持回路のラダー図とは?動作原理と設計方法も!(シール回路:保持接点:リセット条件:モーター制御:安全回路など)

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工場の製造ラインや各種機械設備において、ボタンを一瞬だけ押してもその後もずっと機器が動き続けるという動作は、誰もが日常的に目にする現象です。

この「一度ONになったら、その条件がなくなってもON状態を保持し続ける」という機能を実現するのが「自己保持回路」であり、PLCのラダー図においても最も重要な基本回路のひとつとして位置づけられています。

自己保持回路はシーケンス制御の根幹をなす概念であり、モーターの起動停止制御・安全回路の設計・ランプ制御・警報保持など実に多くの場面で活用されています。

この記事では自己保持回路のラダー図について動作原理・構成要素・設計方法・シール回路との関係・安全回路での応用・セット・リセット型との比較まで、体系的にわかりやすく解説していきます。

自己保持回路を基礎からしっかり理解したい方はぜひ最後までお読みください。

自己保持回路のラダー図とは「出力コイルのA接点で起動条件を並列補助する回路」のことである!

それではまず、自己保持回路の定義と動作原理について解説していきます。

自己保持回路の定義と基本概念

自己保持回路(Self-Holding Circuit)とは、一度ONになった出力コイルに対応するA接点(自己接点)を起動条件と並列に接続することで、起動条件がなくなっても出力のON状態を維持し続ける回路のことです。

「自己保持」という名前は、出力が「自分自身のA接点を使って自分をON状態に保持する」という構造から来ています。

リレーシーケンス回路の時代から使われてきた基本回路であり、PLCのラダー図においてもまったく同じ概念で実装されます。

「シール回路」とも呼ばれることがありますが、これも自己保持回路と同義です。

「シール(Seal)」とは封印・封鎖という意味であり、一度動作したら起動条件がなくなっても回路を封鎖(保持)し続けるというニュアンスを持っています。

自己保持回路が必要とされる理由は、多くの場合「起動ボタン(モーメンタリスイッチ)は押している間だけ接点が閉じる」という物理的な特性にあります。

起動ボタンから手を離した瞬間に接点が開いてモーターが止まってしまうのでは実用にならないため、自己保持回路によって「ボタンを離した後もモーターを動かし続ける」仕組みが必要となります。

自己保持回路の基本的なラダー図の構成

自己保持回路の基本的なラダー図構成を説明します。

自己保持回路は最低限「起動条件(A接点)」「自己保持接点(出力コイルのA接点)」「停止条件(B接点)」「出力コイル」の4つの要素で構成されます。

自己保持回路の基本ラダー図(テキスト表現)

─┤/X001├─┬─┤X000├─┬─(Y000)─

      └─┤Y000├─┘

各要素の説明

X001(B接点):停止条件(停止ボタン・非常停止など)

X000(A接点):起動条件(起動ボタン・起動信号など)

Y000(A接点):自己保持接点(出力コイルY000のA接点)

Y000(出力コイル):制御対象の出力(モーターコイル・ランプなど)

動作の流れ

① 初期状態:X000=OFF、X001=OFF → Y000=OFF

② X000をON(起動ボタン押下)→ Y000=ON → Y000のA接点が閉じる

③ X000をOFF(ボタンを離す)→ Y000のA接点で保持継続 → Y000=ON維持

④ X001をON(停止ボタン押下)→ B接点が開く → Y000=OFF → Y000のA接点も開く

この基本構成から、自己保持回路の核心は「Y000が一度ONになると、Y000のA接点が閉じてX000の代わりに回路を保持する」という点にあることがわかります。

X000から手を離してX000がOFFになっても、Y000のA接点がすでに閉じているため、Y000はON状態を維持し続けます。

自己保持の動作をスキャンサイクルで追う

PLCのスキャンサイクルを使って自己保持回路の動作をより詳しく追ってみましょう。

スキャンサイクルは「入力更新→プログラム実行→出力更新」の3フェーズを繰り返します。

スキャン番号 X000の状態 X001の状態 Y000接点の状態 Y000コイルの動作
スキャン1(起動前) OFF OFF OFF(開いている) OFF(両ルートブロック)
スキャン2(起動ボタン押下) ON OFF OFF(まだ) ON(X000ルートで通過)
スキャン3(ボタンを離した後) OFF OFF ON(スキャン2でONになった) ON(Y000接点ルートで保持)
スキャン4〜N(保持中) OFF OFF ON(継続) ON(自己保持継続)
スキャンN+1(停止ボタン押下) OFF ON ON OFF(X001のB接点が開く)
スキャンN+2(停止後) OFF OFF OFF(スキャンN+1でOFFになった) OFF(自己保持も消える)

この表から、自己保持回路は「スキャン2でY000がONになった結果が、スキャン3以降のY000接点の状態に引き継がれる」という連続したスキャンサイクルの積み重ねによって機能していることがわかります。

停止優先と起動優先の設計の違い

続いては、自己保持回路における停止優先設計と起動優先設計の違いについて確認していきます。

停止優先回路の設計と特徴

停止優先回路とは「起動条件と停止条件が同時に成立した場合、停止が優先される」設計の自己保持回路です。

停止優先回路を実現するには、停止条件のB接点を回路の最も左側(起動条件よりも先)に直列に配置します。

停止優先自己保持回路の構成

─┤/X001├─┬─┤X000├─┬─(Y000)─

      └─┤Y000├─┘

停止優先の動作確認

X000=ON かつ X001=ON(同時押し)の場合

X001のB接点が開く → 回路全体がブロックされる → Y000=OFF

→ 起動条件より先に停止条件が判定されるため、停止が優先される

停止優先回路は安全性の観点から最もよく使われる設計方式です。

非常停止ボタン・安全センサー・インターロック条件など、安全に関わる停止条件は必ず停止優先に設計することが製造現場での原則となっています。

IEC 61508などの機械安全規格でも「停止優先設計」が安全システムの基本として規定されており、安全回路の設計においては欠かせない考え方です。

起動優先回路の設計と適用場面

起動優先回路とは「起動条件と停止条件が同時に成立した場合、起動が優先される」設計の自己保持回路です。

起動優先回路では停止条件のB接点を並列のグループの「外側ではなく内側」に配置するか、起動条件側のみに停止条件を入れない構成にします。

起動優先自己保持回路の構成例

─┬─┤X000├─┤/X001├─┬─(Y000)─

 └─┤Y000├─────────┘

起動優先の動作確認

X000=ON かつ X001=ON(同時押し)の場合

Y000がOFFの状態では:X000=ON → X001 B接点が開く → Y000はOFFのまま

Y000がONの自己保持中では:Y000 A接点のルートを通るため → Y000はON継続

→ すでに保持中の場合は停止条件に関わらずONが維持される

起動優先回路は電力の瞬時停電回復後の自動復帰・ある条件が成立している間は停止を受け付けないインターロックなど、特定の用途で使われます。

ただし安全上の問題が生じる可能性があるため、安全に関わる制御への適用は慎重に検討が必要です。

停止条件の種類と選択基準

自己保持回路の停止条件にはさまざまな種類があり、制御目的に応じて適切な種類を選択することが重要です。

停止条件の種類 物理的な実装例 特徴・用途
手動停止ボタン(モーメンタリ) 停止押しボタン(B接点入力) 一般的な停止操作。ボタンを離すと停止条件が消えるが自己保持も解除済み
非常停止(EMG) 安全リレー回路のB接点 最優先の安全停止。回路の最左に配置。IEC 60947-5-5準拠の製品を使用
リミットスイッチ(位置検出) 機械的な位置センサー ある位置に到達したら自動停止。搬送装置・シリンダー制御に多用
過負荷リレー(サーマルリレー) モーター過電流検出 モーター過熱保護。異常時に自動停止してモーターを保護
タイマーによる停止 タイマーT0のA接点でリセット 一定時間後の自動停止。タイマー運転に使用

セット・リセット型の自己保持回路との比較

続いては、自己保持接点型とセット・リセットコイル型の2種類の自己保持回路の違いについて確認していきます。

セット・リセットコイルを使った自己保持回路

自己保持回路を実現するもうひとつの方法が「SET命令(セットコイル)とRST命令(リセットコイル)の組み合わせ」です。

SET命令は条件が成立した瞬間にデバイスをONにして、その後条件がなくなってもON状態を保持し続ける命令です。

RST命令は対象デバイスを強制的にOFFにする命令です。

セット・リセット型自己保持回路のラダー図

ラング1(セット):起動条件でY000をセット

─┤X000├─(SET Y000)─

ラング2(リセット):停止条件でY000をリセット

─┤X001├─(RST Y000)─

動作の特徴

X000が一瞬ONになるだけでY000がセット(以降OFFにならない)

X001が一瞬ONになるとY000がリセット(以降ONにならない)

セットとリセットが同時に成立した場合:どちらが後(下のラング)に記述されているかが優先される(後優先)

自己保持接点型とセット・リセット型の比較

自己保持接点型とセット・リセット型にはそれぞれ特有の長所と短所があります。

比較項目 自己保持接点型 セット・リセット型
回路構成 1ラングで起動・保持・停止を表現 起動(SET)と停止(RST)を別ラングで記述
停止優先の実現 B接点の位置で直接制御できる RSTをSETより後(下)のラングに配置
起動優先の実現 回路の構成で制御 SETをRSTより後(下)のラングに配置
デバッグのしやすさ 1ラングで論理全体を確認できる 起動・停止が別ラングなので追いにくい場合がある
停電復帰時の動作 停電前の状態が保持されない(メモリ型デバイスを使わない場合) 停電保持型デバイス(M・Dのラッチ領域)を使えば停電復帰後も状態保持可能
適した用途 一般的なモーター起動停止・ランプ制御 停電保持が必要なシーケンス・工程管理

実務では「シンプルな起動停止制御には自己保持接点型」「停電保持が必要なシーケンス管理にはセット・リセット型」という使い分けが一般的です。

両方の型を組み合わせた設計の考え方

実際の制御プログラムでは自己保持接点型とセット・リセット型を用途に応じて使い分けることが重要です。

たとえばモーターの日常的な起動停止には自己保持接点型を使い、工程の現在ステップ番号の管理(停電後に再起動したとき前の工程から再開させたい場合)にはセット・リセット型でラッチ領域のデバイスを使うという組み合わせが典型的な設計パターンです。

設計の際には「停電後の動作をどうするか(停電前の状態に戻すか、最初からやり直すか)」を事前に仕様として明確にしてから回路の型を選択することが大切です。

モーター制御での自己保持回路の実装

続いては、最も典型的な自己保持回路の応用例であるモーター制御について確認していきます。

モーター起動停止回路の完全な設計例

工場でよく使われる三相誘導モーターの起動停止制御を例に、完全な自己保持回路の設計を示します。

一般的なモーター制御盤では、押しボタンスイッチ(起動・停止)と電磁接触器(コンタクター)・サーマルリレー(過負荷保護)が組み合わされています。

モーター起動停止制御のラダー図(全ラング)

デバイス割り当て

X000:起動押しボタン(A接点入力、モーメンタリ型)

X001:停止押しボタン(B接点入力、モーメンタリ型)

X002:サーマルリレー(B接点入力、過負荷時にOFFになる)

X003:非常停止ボタン(B接点入力)

Y000:電磁接触器コイル(ONでモーター起動)

Y001:運転ランプ(ONで点灯)

Y002:過負荷警報ランプ(サーマルリレーが動作したとき点灯)

ラング1(モーター自己保持回路)

─┤/X003├─┤/X001├─┤/X002├─┬─┤X000├─┬─(Y000)─

               └─┤Y000├─┘

ラング2(運転ランプ)

─┤Y000├─(Y001)─

ラング3(過負荷警報)

─┤/X002├─(Y002)─

この設計では最も左に非常停止(X003のB接点)・次に停止ボタン(X001のB接点)・次に過負荷保護(X002のB接点)を直列に配置し、すべての停止条件が「停止優先」で機能するようにしています。

運転中(Y000=ON)は運転ランプ(Y001)が点灯し、過負荷が発生した場合(X002=OFF)は警報ランプ(Y002)が点灯するという合理的な設計になっています。

インターロックを組み合わせた安全回路の設計

実際の工場設備では単純な自己保持回路だけでなく、複数の安全条件を組み合わせたインターロック回路が必要です。

インターロック(Interlock)とは「ある条件が成立していないと別の動作ができない」相互拘束の安全機能であり、自己保持回路と組み合わせて使われます。

たとえばプレス機械では「安全柵が閉じている(安全スイッチON)かつ両手押しボタンが同時に押されている場合のみプレス動作を許可する」という複合インターロックが設けられます。

この条件をラダー図で表現すると、自己保持回路の起動条件側に安全スイッチのA接点と両手押しボタンの両方のA接点を直列に追加することで実現できます。

正転逆転インターロック付きモーター制御

コンベアやポンプなどで正転・逆転が必要な場合は、正転と逆転が同時にONにならないよう「インターロック付き自己保持回路」を設計します。

正転逆転インターロック回路の構成

デバイス

X000:正転起動ボタン、X001:逆転起動ボタン、X002:停止ボタン

Y000:正転コイル(電磁接触器A)、Y001:逆転コイル(電磁接触器B)

ラング1(正転自己保持+インターロック)

─┤/X002├─┤/Y001├─┬─┤X000├─┬─(Y000)─

          └─┤Y000├─┘

ラング2(逆転自己保持+インターロック)

─┤/X002├─┤/Y000├─┬─┤X001├─┬─(Y001)─

          └─┤Y001├─┘

インターロックの効果

Y000がONのとき→Y000のB接点が開き→ラング2でY001はONになれない

Y001がONのとき→Y001のB接点が開き→ラング1でY000はONになれない

→正転と逆転は絶対に同時にONにならない

このインターロック設計は電気回路的な誤接続による短絡事故を防ぐためであり、ソフトウェア的なインターロックに加えてハードウェア的なインターロック(電磁接触器の機械的インターロック)と組み合わせることが安全上の標準的な設計です。

自己保持回路の応用と発展的な設計

続いては、自己保持回路を応用した発展的な設計パターンについて確認していきます。

タイマーと組み合わせた時限自己保持回路

自己保持回路にタイマーを組み合わせると「一定時間後に自動停止する」タイマー自己保持回路を実現できます。

たとえば「起動ボタンを押すとモーターが動き始め、30秒後に自動的に停止する」という仕様は以下のように設計します。

タイマー付き自己保持回路

ラング1(自己保持回路):タイマーT0のB接点を停止条件に追加

─┤/X001├─┤/T0├─┬─┤X000├─┬─(Y000)─

         └─┤Y000├─┘

ラング2(タイマー駆動):Y000がONのときタイマーT0を起動

─┤Y000├─(T0 K300)─(設定値K300=30秒、0.1秒単位)

動作

X000押下→Y000=ON(自己保持開始)→T0がカウント開始

30秒後→T0タイムアップ→T0のB接点が開く→Y000=OFF(自動停止)

この設計パターンはポンプの一定時間運転・洗浄装置の自動停止・照明の消し忘れ防止タイマーなど多くの実用的な制御に応用されます。

カウンターと組み合わせた回数自己保持回路

自己保持回路にカウンターを組み合わせると「一定回数の動作後に停止する」回数制御回路が実現できます。

たとえば「製品が10個ラインを通過したら搬送コンベアを停止する」という仕様では、光電センサーのA接点でカウンターC0をカウントアップし、C0が10に達したらC0のA接点でコンベア自己保持回路をリセットします。

この組み合わせは生産個数管理・定量供給制御・バッチ処理など製造ラインの自動化において非常に多く使われる設計パターンです。

工程制御への自己保持回路の拡張

自己保持回路を複数組み合わせることで、複数の工程を順番に実行する「工程制御(シーケンシャル制御)」を実現できます。

各工程に対応した補助リレー(M001・M002・M003…)を自己保持し、次の工程への移行条件が成立したときに現在の工程をリセットして次の工程をセットするという「バトンリレー式」の工程制御が製造現場でよく使われます。

自己保持回路の設計における重要な原則をまとめます。

・安全に関わる停止条件(非常停止・過負荷保護・安全センサー)は必ず停止優先で、回路の最も左側(最初に評価される位置)に配置する

・正転逆転など同時ONが危険な出力には必ずインターロック(相手方のB接点)を追加する

・停電復帰後の動作を設計段階で明確にし、必要に応じてセット・リセット型とラッチ領域デバイスを使う

・タイマーやカウンターとの組み合わせで時間制御・回数制御・工程制御へ応用できる

これらの原則を守ることで安全で信頼性の高いラダー回路が実現します

まとめ

自己保持回路のラダー図とは出力コイルのA接点(自己保持接点)を起動条件と並列に配置することで、起動条件が消えてもON状態を維持し続ける回路のことです。

基本構成は「停止条件(B接点)を最左に配置し、その右に起動条件(A接点)と自己保持接点(出力コイルのA接点)を並列に接続し、末端に出力コイルを配置する」という形です。

停止優先設計が安全回路の原則であり、非常停止・過負荷保護などの安全条件は最左に配置することで最優先の停止動作が保証されます。

セット・リセット型の自己保持回路は停電保持が必要な用途に適しており、自己保持接点型と使い分けることで幅広い制御要件に対応できます。

タイマー・カウンター・インターロックとの組み合わせによって時限停止・回数制御・正転逆転制御など多様な応用が実現でき、自己保持回路はシーケンス制御の最も重要な基本回路として製造現場のあらゆる場面で活躍しています。