電気電子機器の輸出入や製造に携わっていると、REACH規則とRoHS規則という言葉を目にする機会が増えてきます。
どちらも化学物質に関するEUの規制ですが、その内容や対象範囲は大きく異なります。
REACH規則とRoHS規則の違いは?対象や規制内容も解説というテーマで、今回は両者の違いを整理していきます。
結論から言うと、REACH規則はあらゆる化学物質を対象とした包括的な規制であり、RoHS規則は電気電子機器に含まれる特定有害物質に絞った規制です。
この違いを正しく理解していないと、対応すべき義務を見落としてしまう可能性があるでしょう。
実際、両規則を混同したまま輸出手続きを進め、思わぬトラブルに直面する企業も少なくありません。
担当者が変わるたびに解釈がぶれてしまい、社内で認識がそろわないという声もよく聞かれます。
本記事では、REACH規則とRoHS規則それぞれの目的や対象範囲、規制内容の違いを詳しく解説していきます。
さらに、電気電子機器メーカーが実務で押さえておきたいポイントについても触れていきます。
化学物質管理の担当者はもちろん、輸出入業務に関わる方にもぜひ参考にしていただければと思います。
REACH規則とRoHS規則の違いを結論から解説
それではまずREACH規則とRoHS規則の違いについて、結論から解説していきます。
規制の目的の違い
REACH規則は、化学物質そのものが人の健康や環境に与えるリスクを管理することを目的としています。
一方でRoHS規則は、電気電子機器の中に有害物質が使われることで生じる廃棄時の環境汚染を防ぐことを目的としています。
つまりREACH規則は化学物質全般を対象とした川上規制であり、RoHS規則は製品に組み込まれた物質を対象とした川下規制と言えるでしょう。
この目的の違いこそが、対象範囲や規制内容の違いを生み出す根本的な要因です。
目的が異なるため、片方に対応していればもう片方も自動的にクリアできるという単純な関係ではありません。
対象物質と対象範囲の違い
REACH規則が対象とする化学物質は数万種類にのぼります。
これに対してRoHS規則が規制する物質は、現在のところ10物質のみです。
対象となる製品の範囲についても、REACH規則はほぼすべての産業分野に及びます。
RoHS規則は電気電子機器というカテゴリーに限定されている点が特徴でしょう。
数字だけを比べても、両規則がまったく異なるスケール感で運用されていることが伝わるはずです。
適用される製品の違い
REACH規則は化学物質そのもの、または化学物質を含む成形品全般に適用されます。
家具や繊維製品、玩具なども対象に含まれます。
RoHS規則はパソコンや家電製品、照明機器といった電気電子機器に限定して適用されます。
自動車部品や医療機器の一部は、RoHS規則の対象外とされているケースもあります。
製品の種類によっては、REACH規則のみが適用され、RoHS規則は関係しないという場合も珍しくありません。
REACH規則は化学物質全般を対象にした包括的な規制です。
RoHS規則は電気電子機器に含まれる特定有害物質を対象にした限定的な規制です。
この根本的な違いを押さえておくことが、両規則を正しく理解する第一歩になるでしょう。
REACH規則とは何か
続いてはREACH規則そのものについて詳しく確認していきます。
REACH規則の概要と目的
REACH規則は、Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicalsの略称です。
2007年にEUで施行された、化学物質の登録、評価、認可、制限に関する規則です。
年間1トン以上の化学物質をEU域内で製造または輸入する企業に対して、登録を義務付けています。
目的は、化学物質による人の健康や環境への悪影響を未然に防ぐことです。
従来は化学物質の安全性が十分に確認されないまま流通しているケースもあったため、その反省から生まれた仕組みとも言われています。
REACH規則が定めるSVHCとは
REACH規則の中でも特に重要なのが、高懸念物質と呼ばれるSVHCです。
SVHCとは発がん性や変異原性、生殖毒性などを持つ物質を指します。
例えば鉛化合物やフタル酸エステル類、一部の難燃剤などがSVHCに指定されています。
2026年時点でSVHC候補リストに掲載されている物質は240種類を超えています。
このリストは半年に一度のペースで見直され、新たな物質が追加され続けています。
成形品にSVHCが0.1パーセントを超えて含まれる場合、情報伝達義務が発生します。
該当する場合は、SCIPデータベースへの届出も必要になるでしょう。
候補リストへの掲載だけでも義務が生じるため、正式に規制対象へ移行する前から注意が必要です。
REACH規則の対象事業者
REACH規則の対象となるのは、製造業者や輸入業者だけではありません。
川下ユーザーと呼ばれる、化学物質を業務で使用する事業者も対象に含まれます。
EU域外の企業であっても、EU域内に製品を輸出する場合には対応が求められます。
取引先から成分情報の開示を求められるケースも増えているようです。
自社は直接EUと取引していないから関係ないと考えていると、サプライチェーンの途中で対応漏れが発覚することもあるでしょう。
RoHS規則とは何か
続いてはRoHS規則の内容について確認していきます。
RoHS規則の概要と目的
RoHS規則は、Restriction of Hazardous Substancesの略称です。
電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するEUの指令です。
2003年に制定され、2006年から施行されました。
廃棄された電気電子機器から有害物質が漏れ出し、環境を汚染することを防ぐ目的があります。
WEEE指令と呼ばれる廃電気電子機器のリサイクルに関する規則とセットで語られることも多いでしょう。
RoHS規則が規制する10物質
RoHS規則が規制対象としている物質は、当初6物質でしたが現在は10物質に拡大されています。
鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの4物質に加え、ポリ臭化ビフェニルとポリ臭化ジフェニルエーテルが対象です。
さらに2019年からは、4種類のフタル酸エステル類が新たに追加されました。
これらの物質は、均質材料単位で最大許容濃度が定められています。
鉛やカドミウム以外の物質は0.1パーセント、カドミウムのみ0.01パーセントが上限です。
基準値をわずかに超えただけでも規制違反となるため、製造工程での混入リスクにも目を配る必要があるでしょう。
RoHS規則の対象製品
RoHS規則の対象となるのは、家庭用電化製品や情報通信機器、照明器具などです。
医療機器や監視制御機器についても、段階的に対象範囲が拡大されてきました。
一方で軍事用途の製品や、宇宙関連機器は適用除外とされています。
製品を設計する段階から、対象物質を使用しない代替設計が求められるでしょう。
ケーブルや電源プラグといった付属品も、本体と一体で評価される点には注意が必要です。
REACH規則とRoHS規則の対象範囲を比較
続いては両規則の対象範囲について、具体的に比較していきます。
対象物質数の違い
REACH規則の登録対象物質はすでに2万種類を超えています。
これに対してRoHS規則の規制対象は、わずか10物質にとどまります。
この差だけを見ても、両規則の性質がまったく異なることが分かるでしょう。
物質数の少なさから、RoHS規則の対応は簡単だと誤解されがちですが、実際には濃度管理や証明書類の整備に手間がかかります。
対象製品カテゴリーの違い
REACH規則は業種を問わず、化学物質を扱うあらゆる製品が対象になり得ます。
RoHS規則は電気電子機器という11のカテゴリーに分類された製品のみが対象です。
自社の製品がどちらの規則に該当するか、まずカテゴリーを確認する必要があるでしょう。
両方のカテゴリーにまたがる製品を扱う企業では、二重の管理体制が求められることになります。
適用地域と対象事業者の違い
両規則ともEU域内での適用が基本ですが、対象事業者の範囲には違いがあります。
REACH規則は化学物質のサプライチェーン全体に責任を課しています。
RoHS規則は主に電気電子機器の製造業者と輸入業者に義務が集中しているでしょう。
下記の表に、両規則の主な違いをまとめましたので参考にしてください。
| 比較項目 | REACH規則 | RoHS規則 |
|---|---|---|
| 正式名称 | 化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則 | 電気電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令 |
| 施行年 | 2007年 | 2006年 |
| 対象物質数 | 2万種類以上 | 10物質 |
| 対象製品 | 化学物質を含むほぼすべての製品 | 電気電子機器 |
| 主な義務 | 登録、SVHC情報伝達、SCIP届出 | 含有量基準の遵守、自己宣言 |
| 罰則 | 加盟国ごとに異なる行政罰や販売停止 | 市場からの製品撤去や罰金 |
| 更新頻度 | SVHC候補リストが半年ごとに更新 | 対象物質の追加は不定期 |
REACH規則とRoHS規則の規制内容を比較
続いては規制内容そのものの違いについて確認していきます。
届出義務と自己宣言の違い
REACH規則では、一定量以上の化学物質を扱う場合に欧州化学機関への登録が必須です。
登録には物質の安全性データや使用用途に関する詳細な情報が求められます。
RoHS規則では登録制度はなく、製造業者による自己宣言が基本となっています。
ただし自己宣言の裏付けとして、技術文書の整備は欠かせないでしょう。
第三者機関による試験結果を保管しておくことで、当局から求められた際にすぐ提示できる体制が望ましいと言えます。
罰則やペナルティの違い
REACH規則もRoHS規則も、違反した場合の罰則は加盟国ごとに定められています。
REACH規則違反では、製品の販売停止に加えて高額な行政罰が科されることがあります。
RoHS規則違反では、市場からの製品撤去命令や是正措置命令が出されるケースが一般的です。
いずれの規則も、繰り返し違反した場合はより重い措置が取られるでしょう。
一度でも違反歴が公表されると、他の加盟国での取引審査にも影響が及ぶことがあります。
情報伝達義務の違い
REACH規則では、SVHCを含む成形品についてSCIPデータベースへの届出が義務付けられています。
サプライチェーン内での情報伝達も重要な要件のひとつです。
RoHS規則では、CEマーキングと技術文書の保管によって適合性を示す仕組みになっています。
SDS、いわゆる安全データシートの提供が求められるのは、主にREACH規則の枠組みでしょう。
取引先によっては、法律上の義務を超えて自主的な情報提供を求められることもあるようです。
電気電子機器メーカーが両規則に対応する際の実務ポイント
続いては実務担当者が押さえておきたいポイントを確認していきます。
サプライチェーン管理のポイント
部品や素材の調達先から、含有化学物質に関する情報を正確に収集することが欠かせません。
サプライヤーごとに提出書類のフォーマットが異なるため、一元管理の仕組みづくりが重要でしょう。
近年ではIMDSやchemSHERPAといった情報伝達ツールを活用する企業も増えています。
新規サプライヤーと取引を開始する際には、契約前に化学物質管理の方針をすり合わせておくと後々のトラブルを防げるでしょう。
最新の規制動向をキャッチアップする方法
REACH規則のSVHC候補リストは、半年に一度のペースで更新されています。
RoHS規則についても、対象物質の追加が今後も検討されているようです。
欧州化学機関や各国の公式サイトを定期的に確認する習慣をつけておきたいところでしょう。
業界団体が発信するニュースレターを購読しておくのも、改正情報を見逃さないための有効な手段です。
違反した場合のリスクと対策
規制違反が発覚すると、製品回収やブランドイメージの低下につながりかねません。
取引先からの信頼を失い、契約解除に発展する可能性もあるでしょう。
社内では設計、調達、品質保証の各部門が連携し、開発初期の段階からチェック体制を組み込むことが望ましいと言えます。
REACH規則とRoHS規則はどちらも罰則を伴う法規制です。
設計段階から対象物質を排除する仕組みを整えておくことが、最も確実なリスク対策と言えるでしょう。
REACH規則とRoHS規則以外に知っておきたい関連規制
続いてはREACH規則やRoHS規則とあわせて理解しておきたい関連規制を確認していきます。
WEEE指令との関係
WEEE指令は、廃電気電子機器の回収とリサイクルに関するEUの規則です。
RoHS規則が製品への物質使用を制限する一方、WEEE指令は廃棄後の処理責任を製造業者に課しています。
両者はセットで運用されることが多く、電気電子機器メーカーにとってはどちらも欠かせない知識でしょう。
製品にはWEEEマークの表示も求められるため、パッケージデザインの段階から考慮しておく必要があります。
各国の類似規制との違い
中国にはRoHS規則に似た管理弁法があり、対象物質や表示方法に独自のルールが定められています。
韓国や米国カリフォルニア州にも、それぞれ独自の化学物質規制が存在しています。
グローバルに製品を展開する企業では、地域ごとの規制差を一覧で管理しておくと効率的でしょう。
EUの基準を満たしていれば他地域も自動的にクリアできるとは限らない点に注意が必要です。
今後の規制強化の見通し
近年のEUでは、化学物質規制を段階的に強化する方針が示されています。
PFASと呼ばれる有機フッ素化合物の規制範囲拡大も、大きな話題となっているようです。
RoHS規則についても、対象物質の見直しが継続的に議論されているでしょう。
今のうちから情報収集の体制を整えておくことが、将来的な対応コストの削減につながります。
REACH規則とRoHS規則の違いまとめ
ここまでREACH規則とRoHS規則の違いは?対象や規制内容も解説というテーマで、両規則の内容を見てきました。
REACH規則は化学物質全般を対象とした包括的な規制であり、RoHS規則は電気電子機器に含まれる特定有害物質を対象とした限定的な規制です。
対象物質数、対象製品、義務の内容など、あらゆる面で両者には明確な違いがあります。
電気電子機器を扱う企業にとっては、両方の規則に同時に対応しなければならない場面も少なくないでしょう。
まずは自社製品がどちらの規則の対象になるのかを正確に把握することが第一歩です。
そのうえで、サプライチェーン全体で情報を共有できる体制を整えていくことが求められます。
規制は今後も改正が続いていく分野ですので、最新情報を定期的に確認する姿勢を忘れないようにしましょう。
本記事の内容が、REACH規則とRoHS規則への対応を進めるうえでの一助となれば幸いです。