建物や橋りょうなどの構造物は、必ず地盤の上に建てられます。
その地盤がどれだけの荷重に耐えられるかを数値で示す考え方が、土質力学でいう支持力です。
支持力という言葉は聞いたことがあっても、極限支持力と許容支持力の違いや、テルツァギーの支持力公式の中身まで理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
この記事では、土質力学の支持力とは何かという基本的な部分から、テルツァギーの支持力公式の考え方、極限支持力と許容支持力の計算方法までをまとめて解説していきます。
地盤調査や基礎設計に関わる方はもちろん、土木や建築の勉強を始めたばかりの方にも分かりやすいように、具体例や表を交えながら整理しました。
それでは早速、支持力の結論部分から見ていきましょう。
土質力学における支持力とは何かの結論
それではまず土質力学の支持力とは何かについて、結論から解説していきます。
土質力学における支持力とは、地盤が構造物の荷重を安全に支えられる力のことです。
そしてこの支持力を求める際に最も広く使われている理論式が、テルツァギーの支持力公式になります。
テルツァギーの支持力公式で計算されるのは、地盤が破壊する直前の最大の力である極限支持力です。
実際の基礎設計では、この極限支持力をそのまま使うわけではありません。
極限支持力を安全率で割った値である許容支持力を基準にして、基礎の大きさや形状を決めていきます。
結論として、土質力学の支持力とは、テルツァギーの支持力公式などを用いて求めた極限支持力を、安全率で除して算出した許容支持力によって管理される地盤の耐力のことです。
つまり支持力を理解するためには、極限支持力と許容支持力という二つの概念をセットで押さえておく必要があります。
支持力の基本的な定義
支持力とは、簡単にいえば地盤が構造物を支える能力の大きさです。
地盤の上に建物を建てると、建物の自重や積載荷重が基礎を通じて地盤に伝わります。
この荷重が地盤の限界を超えてしまうと、地盤が沈下したり、最悪の場合は崩壊してしまうこともあるでしょう。
そうした事態を防ぐために、あらかじめ地盤がどこまでの荷重に耐えられるかを計算しておく必要があります。
その計算結果として得られるのが支持力という数値です。
極限支持力と許容支持力の違い
極限支持力と許容支持力は、しばしば混同されやすい用語です。
極限支持力は、地盤がせん断破壊を起こす直前の理論上の最大荷重を指します。
一方で許容支持力は、極限支持力に安全率を考慮して、実務で安全に使用できる荷重の上限として設定した値です。
両者の関係は、許容支持力イコール極限支持力割る安全率という式で表されます。
安全率を設けるのはなぜでしょうか。
それは地盤調査の誤差や施工時のばらつき、想定外の荷重増加などのリスクに備えるためです。
テルツァギー式が使われる理由
支持力を求める理論式にはいくつか種類がありますが、その中でもテルツァギーの支持力公式は最も基本的かつ実務での使用頻度が高い式です。
カール・テルツァギーは土質力学の基礎を築いた研究者として知られており、その支持力理論は現在の基礎設計の土台になっています。
比較的シンプルな式でありながら、粘着力や内部摩擦角、基礎の根入れ深さなど地盤の主要な特性を反映できる点が評価されています。
そのため、より高度な支持力理論を学ぶ場合でも、まずはテルツァギー式を理解しておくことが第一歩となるでしょう。
支持力の基礎知識を確認
続いては支持力に関する基礎知識を確認していきます。
支持力の計算方法に入る前に、なぜ支持力の検討が必要なのか、どのような要因が支持力に影響するのかを整理しておきましょう。
支持力の検討が必要となる理由
構造物を建てる際には、必ず自重や積載荷重、地震時の荷重などが基礎を通じて地盤に伝わります。
地盤の支持力が不足していると、不同沈下やすべり破壊といった深刻な問題が発生する恐れがあるでしょう。
不同沈下とは、建物の一部分だけが沈み込み、建物全体が傾いてしまう現象です。
こうしたトラブルは、建物の使用性を損なうだけでなく、場合によっては構造的な安全性そのものを脅かします。
だからこそ設計段階で支持力を正確に把握し、余裕をもった基礎計画を立てることが欠かせません。
支持力に影響する地盤条件
支持力の大きさは、地盤を構成する土の性質によって大きく変わります。
代表的な要因としては、土の粘着力、内部摩擦角、単位体積重量、地下水位の位置などが挙げられるでしょう。
| 地盤条件 | 支持力への影響 |
|---|---|
| 粘着力が大きい | 粘性土特有の結合力により支持力が高まりやすい |
| 内部摩擦角が大きい | 砂質土でせん断抵抗が大きくなり支持力が向上する |
| 地下水位が高い | 有効応力が低下し支持力が減少しやすい |
| 基礎の根入れが深い | 周囲の土による拘束効果で支持力が増加する |
| 基礎幅が広い | 支持力自体は増えるが接地圧の分布に注意が必要 |
このように、同じ場所であっても地下水位の変化や土質の違いによって支持力は変動します。
だからこそ、設計に用いる地盤定数は現地の地盤調査に基づいた正確な値を使う必要があるのです。
支持力破壊のメカニズム
地盤の支持力破壊には、大きく分けて全般せん断破壊、局部せん断破壊、パンチングせん断破壊という三つのパターンがあります。
全般せん断破壊は、密な砂や硬い粘土のように地盤が比較的固い場合に生じやすい破壊形式です。
この場合、基礎の下から地表にかけて明瞭なすべり面が形成され、突然の破壊に至ることがあります。
局部せん断破壊は、中程度の締まり具合の地盤で見られ、すべり面が地表まで明確には達しません。
パンチングせん断破壊は、緩い砂や軟弱な粘土地盤で発生しやすく、基礎が地盤にめり込むように沈下していく現象です。
どの破壊形式になるかによって、支持力の評価方法や必要な補正も変わってくるため、地盤の状態を見極めることが重要でしょう。
テルツァギーの支持力公式を解説
続いてはテルツァギーの支持力公式の中身を確認していきます。
やや専門的な内容になりますが、一つずつ整理すれば決して難しいものではありません。
テルツァギー式の基本形
テルツァギーの支持力公式は、連続基礎を対象とした場合、次のような形で表されます。
極限支持力 qu イコール c かける Nc たす q かける Nq たす 0.5 かける γ かける B かける Nγ
ここで、cは地盤の粘着力、qは基礎底面より上にある土による有効上載圧、γは基礎底面より下の土の単位体積重量、Bは基礎の幅を表します。
そしてNc、Nq、Nγは、それぞれ支持力係数と呼ばれる値です。
これらの支持力係数は、地盤の内部摩擦角に応じて理論的に導かれています。
式の右辺は大きく三つの項からなっており、それぞれ粘着力による支持力、上載荷重による支持力、そして基礎幅と単位体積重量による支持力を表しているのが特徴です。
支持力係数Nc・Nq・Nγの意味
支持力係数は、地盤の内部摩擦角φの値に応じて決まる無次元の係数です。
Ncは粘着力の効果を反映する係数、Nqは上載荷重の効果を反映する係数、Nγは基礎幅と地盤の自重による効果を反映する係数と考えるとイメージしやすいでしょう。
内部摩擦角が大きいほど、これらの係数も大きくなり、結果として支持力も高くなる傾向があります。
| 内部摩擦角φ(度) | Nc | Nq | Nγ |
|---|---|---|---|
| 0 | 5.7 | 1.0 | 0.0 |
| 10 | 9.6 | 2.7 | 0.5 |
| 20 | 17.7 | 7.4 | 3.4 |
| 30 | 37.2 | 22.5 | 19.7 |
| 40 | 95.7 | 81.3 | 100.4 |
この表からも分かるように、内部摩擦角が40度に近づくと支持力係数は急激に大きくなります。
砂質土のように内部摩擦角が大きい地盤ほど、支持力の面では有利になりやすいといえるでしょう。
基礎形状による補正係数
テルツァギーの支持力公式は、もともと帯状の連続基礎を想定した式ですが、正方形基礎や円形基礎などにも応用できるように補正係数が用意されています。
| 基礎形状 | α(Nc項の係数) | β(Nγ項の係数) |
|---|---|---|
| 連続基礎(帯基礎) | 1.0 | 0.5 |
| 正方形基礎 | 1.3 | 0.4 |
| 円形基礎 | 1.3 | 0.3 |
この補正係数を使うと、極限支持力の式は次のように書き換えられます。
極限支持力 qu イコール α かける c かける Nc たす q かける Nq たす β かける γ かける B かける Nγ
基礎の形状によって地盤の破壊パターンが変わるため、このように係数を調整することでより実態に近い支持力を評価できるようになっています。
極限支持力の計算方法
続いては極限支持力の具体的な計算方法を確認していきます。
実際に数値を当てはめながら計算の流れを追うことで、理解がぐっと深まるはずです。
計算の手順
極限支持力を求める際の大まかな手順は、次のとおりです。
まず地盤調査によって、土の粘着力c、内部摩擦角φ、単位体積重量γといった地盤定数を求めます。
次に、内部摩擦角φの値から支持力係数Nc、Nq、Nγを求めます。
そして基礎の根入れ深さから有効上載圧qを計算します。
最後に、基礎の形状に応じた補正係数を掛け合わせながら、テルツァギーの支持力公式に数値を代入していきます。
この流れを踏むことで、極限支持力quを算出することができるでしょう。
具体的な計算例
ここで、簡単な計算例を見てみましょう。
条件は、連続基礎、基礎幅B2メートル、根入れ深さ1メートル、地盤の単位体積重量γ18キロニュートン毎立方メートル、粘着力c10キロニュートン毎平方メートル、内部摩擦角φ20度とします。
このときNcは17.7、Nqは7.4、Nγは3.4とします。
有効上載圧qは、γかける根入れ深さなので、18かける1で18キロニュートン毎平方メートルです。
極限支持力quは、cかけるNcたすqかけるNqたす0.5かけるγかけるBかけるNγで計算します。
それぞれ計算すると、10かける17.7で177、18かける7.4で133.2、0.5かける18かける2かける3.4で61.2となります。
これらを合計すると、極限支持力quはおよそ371.4キロニュートン毎平方メートルという結果になります。
このように、条件を一つずつ当てはめていけば、テルツァギーの支持力公式による計算はそれほど複雑ではありません。
計算時の注意点
極限支持力の計算では、単位の取り扱いに注意が必要です。
粘着力や単位体積重量の単位を統一しておかないと、計算結果が大きくずれてしまうことがあります。
また、地下水位が基礎底面より浅い位置にある場合は、水中の単位体積重量を用いるなど、有効応力の考え方に基づいた補正が欠かせません。
地盤の内部摩擦角や粘着力は、試験方法や土のばらつきによって変動しやすい値でもあります。
そのため、一つの試験結果だけに頼るのではなく、複数の地盤調査結果を比較しながら妥当な値を設定することが大切でしょう。
許容支持力の求め方と安全率
続いては許容支持力の求め方と安全率の考え方を確認していきます。
実際の基礎設計で使われるのは、極限支持力ではなく許容支持力である点を改めて押さえておきましょう。
安全率の考え方
安全率とは、極限支持力に対してどれだけ余裕を持たせるかを表す係数です。
一般的な基礎設計では、安全率としておおむね3程度が用いられることが多いといわれています。
なぜそれほど大きな安全率が必要なのでしょうか。
その理由は、地盤の不均質性、調査データの誤差、長期的な荷重変動、地震などの想定外の外力など、さまざまな不確実性を考慮する必要があるためです。
安全率を大きく取るほど設計上の余裕は増えますが、その分基礎が大きくなりコストも上がるという側面もあります。
そのためバランスの取れた安全率の設定が、実務では重要なポイントになるでしょう。
許容支持力の計算式
許容支持力は、極限支持力を安全率で割ることで求められます。
許容支持力 qa イコール 極限支持力 qu 割る 安全率 Fs
先ほどの計算例で求めた極限支持力371.4キロニュートン毎平方メートルを、安全率3で割ってみます。
許容支持力 qa イコール 371.4 割る 3 でおよそ123.8キロニュートン毎平方メートルとなります。
この許容支持力をもとに、基礎に作用させてよい接地圧の上限を判断していきます。
実際の設計では、この許容支持力と、基礎に作用する接地圧を比較し、接地圧が許容支持力を超えないように基礎の大きさを調整していきます。
現場での許容支持力の確認方法
現場において許容支持力を確認する方法としては、標準貫入試験や平板載荷試験、スウェーデン式サウンディング試験などが代表的です。
| 調査方法 | 特徴 |
|---|---|
| 標準貫入試験 | N値から地盤の硬軟や支持力の目安を把握できる |
| 平板載荷試験 | 実際に荷重をかけて地盤の変形挙動を確認できる |
| スウェーデン式サウンディング試験 | 戸建住宅など比較的小規模な建物の調査で使われやすい |
こうした試験結果と、テルツァギーの支持力公式による理論計算を組み合わせることで、より信頼性の高い許容支持力を導き出すことができます。
理論値だけに頼るのではなく、現地試験と照らし合わせる姿勢が、安全な基礎設計につながるでしょう。
支持力を検討する際の注意点・実務ポイント
続いては支持力を検討する際の実務上の注意点を確認していきます。
計算式を理解しているだけでは不十分で、実務ではさらにいくつかの視点が求められます。
地盤調査データの重要性
支持力の計算精度は、もとになる地盤調査データの質に大きく左右されます。
地盤調査を省略したり、簡易な調査だけで済ませたりすると、支持力の評価に大きな誤差が生じるリスクがあります。
特に軟弱地盤や地層構成が複雑な敷地では、複数地点でのボーリング調査を実施し、地層ごとの特性を丁寧に把握することが望ましいでしょう。
調査データが乏しいまま設計を進めてしまうと、後になって想定外の沈下や不同沈下といった問題を招きかねません。
基礎設計における支持力の活用
求めた許容支持力は、基礎の種類や大きさを決定する際の重要な判断材料になります。
許容支持力が十分に大きい場合は、直接基礎による設計が可能になることが多いでしょう。
一方で、許容支持力が小さく直接基礎では対応が難しいと判断された場合は、杭基礎など別の基礎形式を検討する必要が出てきます。
このように支持力の検討結果は、構造物全体のコストや工期にも影響する重要な要素なのです。
よくある誤解と失敗例
支持力に関してよくある誤解の一つが、極限支持力と許容支持力を混同してしまうケースです。
極限支持力の数値をそのまま設計に使ってしまうと、安全率を考慮していないため非常に危険な設計になってしまいます。
また、隣接する地盤の条件を安易に流用してしまう失敗例も見受けられます。
数メートル離れただけでも地層構成が大きく異なることは珍しくありません。
支持力の検討は、必ずその敷地固有の地盤調査データに基づいて行うことが基本といえるでしょう。
まとめ
今回は、土質力学の支持力とは何かというテーマを中心に、テルツァギーの支持力公式や極限支持力、許容支持力の計算方法について解説してきました。
支持力とは、地盤が構造物の荷重を安全に支える力のことであり、テルツァギーの支持力公式を用いることで理論的に極限支持力を求めることができます。
そして実務においては、極限支持力をそのまま使うのではなく、安全率で割った許容支持力を基準に基礎設計を進めていくことが基本です。
支持力係数や基礎形状による補正、地下水位の影響なども踏まえたうえで、地盤調査データに基づいた丁寧な計算を行うことが、安全な構造物づくりの第一歩になるでしょう。
今回の内容が、支持力の考え方を整理するうえで少しでも参考になれば幸いです。