ショア硬さは、ゴムやプラスチックなどの材料が押し込まれたときに、どの程度へこみにくいかを数値で示す硬さの指標です。
製品の触り心地や耐摩耗性、密封性、組み立て時の扱いやすさにも関わるため、材料選定や品質管理では欠かせません。
ただし、ショア硬さは金属の硬さ試験とは考え方が異なり、デュロメータの種類、測定条件、JIS規格を正しく理解する必要があります。
この記事では、ショア硬さの意味から単位の見方、ゴムとプラスチックでの活用方法、測定時の注意点までをわかりやすく紹介します。
ショア硬さの意味と数値の見方

それではまずショア硬さの意味と数値の見方について解説していきます。
押込みに対する抵抗を示す指標
ショア硬さとは、先端形状が決められた押針を材料表面へ押し当て、押込みの深さから硬さを評価する方法です。
測定器はデュロメータと呼ばれ、ばねの力で押針を材料へ押し込みます。
材料がやわらかいほど押針が深く入り、表示値は小さくなります。
反対に、材料が硬くて変形しにくい場合は押針があまり入らず、表示値は大きくなる仕組みです。
数値が大きいほど、同じ条件では表面がへこみにくい材料と考えると理解しやすいでしょう。
ただし、この値は材料の引張強さや耐久性を直接表すものではありません。
硬さが高くても割れやすい材料はありますし、硬さが低くても優れた復元性を持つゴムもあります。
ショア硬さの基本的な読み方
押針が深く入るほど低い値になります。
押針が入りにくいほど高い値になります。
数値だけで材料性能を決めず、伸び、圧縮永久ひずみ、耐熱性なども併せて確認することが大切です。
ショア硬さに使われる単位と表記
ショア硬さは、一般に単位を持たない硬さ目盛です。
そのため、単純に数値だけを書くのではなく、測定タイプを添えて表記します。
代表例はショアA硬さ、ショアD硬さ、ショアC硬さなどです。
現場では、Shore A 70、タイプA 70、デュロメータ硬さA 70といった表現が使われます。
ショアAの70とショアDの70は同じ意味ではないため、硬さの数値とタイプは必ず一組で確認してください。
測定器ごとに押針の先端形状や押し付け力が違うので、目盛だけを横並びで比較すると誤った判断につながります。
硬度と硬さの使い分け
製造現場では、ショア硬さをショア硬度と呼ぶこともあります。
会話上はほぼ同じ意味で使われますが、規格書や検査成績書では硬さ試験の種類まで明確に記載することが重要です。
たとえばゴム硬度という言葉だけでは、ショアAなのか、国際ゴム硬さIRHDなのか、別の試験法なのかがわかりません。
図面、購入仕様書、受入検査基準では、ショアA 60のように測定法を特定できる表現が適しています。
材料メーカーのカタログを見る際にも、規格番号、試験片の厚み、測定温度を確認すると比較の精度が上がります。
デュロメータの種類と選び方
続いてはデュロメータの種類と選び方を確認していきます。
ゴムに多いタイプAの特徴
タイプAは、一般的な加硫ゴム、エラストマー、比較的やわらかい樹脂の測定によく使われます。
パッキン、ガスケット、ホース、ローラー、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどで見かける代表的な目盛です。
たとえば消しゴムのようにやわらかい材料から、自動車部品に使われる中程度の硬さのゴムまで、幅広い評価に向いています。
ショアA硬さが低い材料は密着しやすく、衝撃を吸収しやすい傾向があります。
一方で、摩擦や荷重による変形が大きくなりやすいため、使用環境との釣り合いが必要です。
ゴム製品の指定で最初に確認されることが多いのはショアA硬さです。
硬質プラスチックに多いタイプDの特徴
タイプDは、硬質プラスチック、硬めのゴム、エポキシ樹脂、硬質ウレタンなどに適したデュロメータです。
タイプAでは高い数値に集中して差が読み取りにくくなる材料でも、タイプDなら比較しやすくなる場合があります。
ナイロン、ポリカーボネート、硬質塩化ビニルなどを評価する際には、材料の特性に応じてタイプDが候補になります。
ただし、すべてのプラスチックにタイプDが最適とは限りません。
板材の厚さ、表面の曲面、繊維強化材の異方性によって、測定結果が変わることもあります。
タイプCやOOなどの補助的な目盛
ショア硬さにはAとD以外にも、対象材料に合わせた複数のタイプがあります。
非常にやわらかいスポンジ、ゲル、フォーム材では、タイプOOなどが使われることがあります。
中間的な硬さの材料や特定用途では、タイプCを選ぶ場面もあるでしょう。
大切なのは、測りたい材料の硬さ範囲に対して、針先と荷重が合う測定器を選ぶことです。
適さないタイプを選ぶと、測定値が上限や下限に寄りすぎて、材料間の違いを判断しにくくなります。
| 主なタイプ | 対象になりやすい材料 | 利用場面 |
|---|---|---|
| タイプA | 一般ゴム、エラストマー、軟質樹脂 | パッキン、ホース、ゴムローラー |
| タイプD | 硬質プラスチック、硬質ゴム | 樹脂板、硬質ウレタン、成形品 |
| タイプC | 中程度の硬さの材料 | 用途別の補助評価 |
| タイプOO | スポンジ、ゲル、極軟質材料 | クッション材、フォーム材 |
ゴムとプラスチックにおける硬さの目安
続いてはゴムとプラスチックにおける硬さの目安を確認していきます。
ゴム製品での代表的な硬さ範囲
ゴム材料は、用途によって求められるショアA硬さが大きく変わります。
やわらかいシール材では30前後が選ばれることもあり、一般的なパッキンでは50から70程度、荷重を受けるローラーや脚部ではさらに高めの硬さが使われます。
低硬度のゴムは微細な凹凸に追従しやすく、密封性を確保しやすい特徴があります。
高硬度のゴムは形状を保ちやすく、押しつぶれにくい反面、接触面へのなじみは低くなりがちです。
材料選定では、硬いほど優れているわけではなく、必要な変形量を満たす硬さを選ぶことが基本になります。
ゴムの硬さ指定では、使用時の圧縮量と接触圧を必ず確認してください。
密封用途では硬さだけでなく、溝形状、締結力、温度、流体との相性が性能を左右します。
プラスチック製品での評価の考え方
プラスチックでは、表面の傷つきにくさ、押し傷への強さ、成形条件の安定性を確認する目的でショア硬さが用いられます。
ただし、硬質樹脂はショア硬さだけで性質を十分に表せないことがあります。
たとえば、同程度のショアD硬さでも、耐衝撃性、曲げ弾性率、耐薬品性、熱変形温度は大きく異なる場合があります。
透明カバー、筐体、治具、搬送部品のように使用条件が異なる製品では、必要性能を分けて評価することが重要です。
繊維入り樹脂では、測る方向によって結果がばらつく可能性もあるため、測定位置を取り決めておくと安心です。
硬さの数値から判断できることと限界
ショア硬さを確認すると、材料のロット差や経時変化を比較しやすくなります。
受入検査で規格値から外れていれば、配合、加硫、成形、保管状態の変化を早期に見つける手掛かりになります。
しかし、ショア硬さが規格内であっても、すべての性能が保証されるわけではありません。
ゴムであれば引張試験、圧縮永久ひずみ試験、老化試験を組み合わせる必要があります。
プラスチックであれば、曲げ試験、衝撃試験、耐熱試験なども製品要求に応じて必要になるでしょう。
硬さ評価の考え方
ショア硬さは材料の入口検査や工程管理に役立ちます。
製品寿命を判断したい場合は、実使用に近い耐久試験も組み合わせます。
単一の測定値だけで合否を決めない姿勢が品質の安定につながります。
JIS規格と測定条件の基礎
続いてはJIS規格と測定条件の基礎を確認していきます。
JIS規格が定める測定方法
ショア硬さ試験では、JIS規格に基づいて試験器、押針、荷重、測定手順などが定められています。
代表的な規格として、デュロメータ硬さ試験に関するJIS K 6253が知られています。
規格に沿った方法で測定することで、社内、仕入先、顧客の間で結果を比較しやすくなります。
検査表には、ショアA 60のような硬さだけでなく、適用規格と測定条件を残すとよいでしょう。
規格値は数値そのものだけでなく、どの条件で得られた数値かが重要です。
試験片の厚さと重ね合わせ
デュロメータは、薄すぎる試験片を測ると下にある台の影響を受けやすくなります。
そのため、規格や手順書で必要な厚さを確認し、必要に応じて試験片を重ねて測定します。
重ね合わせる場合は、材料間に隙間や異物がないよう注意してください。
試験片が曲がっていたり、表面に深い傷があったりすると、押針の入り方が不安定になります。
平らで清潔な試験片を準備することが、再現性の高い測定につながります。
温度と測定時間による影響
ゴムや樹脂は温度によって硬さが変化します。
低温では硬く感じやすく、高温ではやわらかくなりやすいため、測定室の環境条件をそろえることが欠かせません。
また、押針を当てた直後の値と、一定時間経過後の値では差が出る場合があります。
粘弾性を持つ材料は時間とともにゆっくり変形するためです。
検査ルールでは、押し当て後何秒で読み取るかを統一しておくと、担当者によるばらつきを抑えられます。
測定値が安定しない場合は、まず温度、試験片厚さ、測定時間、測定場所を見直してください。
デュロメータ本体の点検や校正状態も、同じくらい重要な確認項目です。
デュロメータによる正しい測定手順
続いてはデュロメータによる正しい測定手順を確認していきます。
測定前に確認する準備
測定前には、試験片の表面に油分、粉じん、水分、離型剤が残っていないかを確認します。
汚れがあると押針の接触状態が変わり、実際より高く、または低く表示される可能性があります。
デュロメータは水平に保ち、試験片は硬く平らな支持台の上に置きます。
材料が十分に室温へなじんでいない場合は、規定の環境で安定させてから測定することが望ましいでしょう。
測定箇所は端部を避け、過去に押し込んだ跡からも十分に離します。
押し当て方と読み取りのポイント
デュロメータを試験片へ垂直に当て、滑らかに押し付けます。
斜めから押すと押針へ横方向の力がかかり、正しい値を得にくくなります。
急激な衝撃を与えるように押し込むと、材料の反発や測定器の振れが影響することがあります。
定められた時間で指示値を読み取り、同じ手順を複数箇所で繰り返してください。
一回だけの測定値ではなく、複数点の平均値で判断すると、局所的なむらの影響を減らせます。
測定手順の例
試験片を規定環境で安定させます。
平らな場所を選び、デュロメータを垂直に押し当てます。
決められた時間で値を読み、複数箇所の結果を記録します。
平均値と個別値を確認し、規格範囲と比較します。
ばらつきが出る主な原因
ショア硬さのばらつきには、材料自体のむらと測定方法のむらがあります。
材料側では、配合不均一、加硫不足、肉厚差、発泡、吸湿、経年変化などが原因になります。
測定側では、押し当て角度、測定時間、試験片の支持状態、測定器の摩耗が代表的な要因です。
特に曲面の部品や小さな成形品では、平板試験片と同じ感覚で測ると誤差が大きくなりやすいでしょう。
製品形状のまま測定する場合は、専用治具の使用や、製品から切り出した試験片での比較も検討してください。
品質管理と材料選定での活用方法
続いては品質管理と材料選定での活用方法を確認していきます。
受入検査における判定基準
受入検査では、発注仕様に定めたショア硬さの範囲に入っているかを確認します。
たとえばショアA 60付近のゴム部品であっても、許容差は部品機能、加工方法、顧客要求によって異なります。
許容範囲を狭くしすぎると不要な不合格が増え、広すぎると性能低下を見逃すおそれがあります。
設計部門、品質部門、材料メーカーで実績を共有し、機能に合った規格値を決めることが大切です。
硬さ規格は検査のためだけでなく、製品機能を守るための条件として設定します。
工程管理での変化検知
成形や加硫の工程では、ショア硬さを定期測定することで状態変化を早く捉えられます。
値が徐々に低下している場合は、加熱条件、原材料の保管、可塑剤の配合などを確認する必要があるかもしれません。
急な変動が起きた場合は、材料ロットの切り替え、設備設定の変更、混練条件の異常などを調査します。
硬さの推移をグラフで管理すると、規格外になる前の小さな兆候にも気づきやすくなります。
ロット番号、測定者、温度、測定位置も一緒に記録すると、原因分析の精度が高まります。
設計段階での材料比較
設計段階では、候補材料を同じ試験条件で測り、硬さの違いを比較できます。
握り部なら触感と滑りにくさ、シール部なら圧縮量と密着性、車輪なら耐摩耗性と走行抵抗のように、使用目的から必要な硬さを考えます。
試作品では、ショア硬さを段階的に変えた複数の材料を用意し、実機評価で最適値を絞り込む方法も有効です。
その際は、ショア硬さだけを変えたつもりでも、材料配合の変更により摩擦係数や耐油性まで変化することがあります。
評価結果は数値と官能評価の両面から確認すると、実用性の高い選定につながるでしょう。
材料選定では、硬さ、耐熱性、耐薬品性、強度、コスト、加工性を総合的に見ます。
ショア硬さは重要な比較軸ですが、単独で最終判断する項目ではありません。
まとめ
ショア硬さは、デュロメータで材料の押込みにくさを数値化する硬さ指標です。
ゴムではタイプA、硬質プラスチックではタイプDが代表的であり、数値を読む際にはタイプを必ず確認します。
同じ数字でも測定タイプが違えば、単純な比較はできません。
JIS規格に沿って、試験片の厚さ、温度、測定時間、押し当て方をそろえることで、信頼できる結果を得やすくなります。
また、ショア硬さは受入検査、工程管理、材料選定に役立つ一方で、強度や耐久性のすべてを表す値ではありません。
用途に応じて引張試験、圧縮永久ひずみ、耐熱性、耐薬品性なども組み合わせ、製品に適した材料を選定してください。