ゴムやエラストマー、軟質プラスチックの硬さを確認する際に広く用いられるのが、ショア硬さ試験です。
材料選定、受入検査、成形条件の管理、不具合解析まで活用範囲が広く、製造業では基礎知識として押さえておきたい試験といえるでしょう。
ただし、ショア硬さは測定器のタイプ、試験片の厚み、押し当て時間、温度などで値が変わるため、数値だけを見て単純に比較することはできません。
本記事ではJIS K 6253を中心としたショア硬さ試験の考え方、実際の測定手順、測定原理、ロックウェル硬さとの違いを分かりやすく解説します。
ショア硬さ試験の意味と結論

それではまずショア硬さ試験の意味と、測定時に押さえるべき結論について解説していきます。
押込み深さで確認するゴムの硬さ
ショア硬さ試験とは、先端形状が決められた押針を試験片に押し当て、どの程度押し込まれるかによって材料の硬さを数値化する試験です。
一般に、押針が深く入るほど材料は軟らかく、押込み量が小さいほど硬いと判断されます。
試験で使う装置はデュロメータとも呼ばれ、ばねの力で押針を材料表面へ押し込みます。
押針の移動量が指示値へ変換され、通常は0から100までのショア硬さとして読み取る仕組みです。
数値が大きいほど必ず強い材料という意味ではありません。
ショア硬さは表面近傍の押込みに対する抵抗を示す指標であり、引張強さ、耐摩耗性、反発弾性、圧縮永久ひずみとは別の性能です。
たとえば、同じショア硬さでも配合や構造が異なれば、耐油性や耐候性、繰返し荷重への強さは大きく変わることがあります。
ショア硬さ試験で最も重要なのは、材料の硬さを単独の優劣として扱わず、同じ規格、同じタイプのデュロメータ、近い測定条件で比較することです。
JIS K 6253が対象とする材料
JIS K 6253は、加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に関する規格です。
ゴム製パッキン、シール材、ホース、ローラー、ベルト、防振ゴム、樹脂を含む弾性部品などで、品質確認の基準として採用されています。
対象材料は幅広いものの、すべての製品で同じ方法が最適になるわけではありません。
非常に薄い試験片、曲面を持つ製品、発泡体、表面が粗い材料、積層構造の部品では、測定値への影響を十分に検討する必要があります。
特に成形品を直接測る場合は、肉厚の違い、裏面の空間、リブや角部の存在が値を変えやすいため注意が必要です。
ショア硬さで把握できることと限界
ショア硬さは、材料ロット間のばらつきや配合変更の影響を素早く確認するのに向いています。
測定が比較的簡便で、試験片の準備負担も小さいため、工程内検査や出荷判定に取り入れやすい点がメリットです。
一方で、ショア硬さだけから部品寿命や密封性能を断定することはできません。
シール材であれば圧縮永久ひずみ、引張試験、耐液性試験などを組み合わせ、使用環境に対応した評価を行うことが重要です。
ショア硬さの見方の例です。
同じ配合のゴムでショアA硬さが60から70へ上がった場合、硬くなった可能性があります。
ただし、試験温度、厚み、測定時間、デュロメータの種類が異なる場合は、その差を配合変更の影響と断定できません。
デュロメータの種類と選定基準
続いてはデュロメータの種類と、材料に合ったタイプの選び方を確認していきます。
ショアAとショアDの使い分け
ショア硬さ試験で特によく使われるのは、ショアAとショアDです。
ショアAは一般的なゴム、軟質樹脂、弾性体の測定に適しており、シール材やホース、ゴム足、柔軟な樹脂部品などで使われます。
ショアDは硬質プラスチックや硬いゴム向けで、ショアAでは高い値に集中して差が見えにくい材料に向いています。
硬い材料をショアAで無理に測ると、比較に必要な分解能を得にくくなります。
反対に、軟らかい材料をショアDで測定すると、値が低い領域に偏り、測定誤差の影響を受けやすくなるでしょう。
| タイプ | 主な対象 | 押針の特徴 | 選定時の考え方 |
|---|---|---|---|
| ショアA | 一般ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質樹脂 | 円すい台形状の押針 | 中程度の硬さを持つ弾性材料に適しています |
| ショアD | 硬質ゴム、硬質プラスチック | 先端がより鋭い押針 | ショアAで高値に集中する材料に向いています |
| ショアE | 比較的軟らかい材料 | 球形に近い押針 | 材料仕様や取引条件に指定がある場合に用います |
| ショアOO | スポンジ、ゲル、極めて軟らかい材料 | 大きな球状の押針 | 低硬度域の評価に適しています |
測定範囲から考える試験機選び
タイプ選定では、予想される硬さが目盛の中央付近に入ることが一つの目安です。
極端に低い値や高い値では、わずかな条件差でも数値が動きやすく、材料差を適切に判定しにくくなります。
たとえばショアAで90を超える材料を日常管理するなら、ショアDによる評価を検討する価値があります。
逆にショアAで20前後の軟らかい材料では、用途に応じてショアEやショアOOの採用を検討するとよいでしょう。
ただし、顧客図面や社内規格に測定タイプが明記されている場合は、勝手に別タイプへ変更できません。
評価方法を切り替える際は、旧来の規格値との対応を確認し、必要に応じて相関データを取得します。
アナログ式とデジタル式の特徴
アナログ式デュロメータは、目盛の指針を読み取る構造で、現場で扱いやすく比較的導入しやすい特徴があります。
デジタル式は数値表示、保持時間の管理、データ出力などに対応した製品が多く、記録性を重視する品質管理に便利です。
デジタル式であっても、測定条件を守らなければ信頼できる値にはなりません。
装置の種類よりも、校正状態、測定者の操作、試験片の置き方、押し当て時間を標準化することが再現性につながります。
デュロメータは材料の硬さに合わせて選定します。
ショアAとショアDの値は同じ尺度ではないため、ショアA 70とショアD 70を同等の硬さとして比較してはいけません。
JIS K 6253と試験条件の基礎
続いてはJIS K 6253に関わる試験条件と、ばらつきを抑えるための基礎を確認していきます。
試験片の厚さと重ね合わせ
ショア硬さは押針の押込み深さを利用するため、試験片が薄すぎると測定台の影響を受けます。
下にある硬い台へ近づくほど押針が入りにくくなり、実際より高い硬さとして表示されるおそれがあります。
必要な厚さを確保できない薄物では、同じ材料を重ねて測定する方法が用いられることがあります。
ただし、重ね合わせた境界面のすべり、空気の入り込み、表面状態の違いは誤差要因です。
測定値を仕様として扱う場合は、単に重ねればよいのではなく、社内手順書で重ね方や枚数を統一することが大切です。
温度と状態調節の重要性
ゴムや熱可塑性エラストマーは温度の影響を受けやすい材料です。
温度が上がると軟らかくなり、低温では硬く感じられる傾向があります。
そのため、試験片は規定された環境で十分に状態調節してから測定する必要があります。
成形直後の温かい製品、冷却直後の製品、直射日光にさらされた製品をそのまま測ると、同一ロットでも大きく異なる値が出る可能性があります。
測定室の温湿度と試験片の保管状態を記録することは、原因追跡が必要になったときにも役立ちます。
測定位置と測定回数の考え方
測定位置は、試験片の端部や傷、気泡、ゲート跡、文字刻印、曲面部を避けて選びます。
測定箇所同士が近すぎると、前回の押込みによる局所的な変形が残り、後の測定へ影響する場合があります。
複数箇所を測り、平均値と個々の値を確認することで、材料の均一性や成形ばらつきも把握しやすくなります。
測定回数の管理例です。
一つの試験片につき異なる位置を5か所測定し、平均値をロット値として記録します。
同時に最大値と最小値も残しておけば、平均値だけでは見落としやすい局所的な異常の発見につながります。
ショア硬さ試験の方法と手順
続いてはショア硬さ試験の具体的な方法と、現場で再現しやすい手順を確認していきます。
試験前の準備と外観確認
まず、対象材料に適したデュロメータのタイプを確認します。
次に、試験片の厚さ、平坦性、表面状態、温度を確認し、必要に応じて規定環境で状態調節します。
測定面に油、水分、粉じん、離型剤が付着している場合は、材料へ影響を与えない方法で取り除きます。
傷、気泡、異物、繊維露出などがある部分は測定箇所から外します。
装置についても、押針の破損や汚れ、表示の異常、校正状態を事前に点検することが欠かせません。
押し当て操作と指示値の読み取り
試験片を安定した硬い支持面へ置き、デュロメータの加圧面を試験片に対して垂直に当てます。
傾いた状態で押し込むと、押針の動きや接触状態が変わり、値のばらつきにつながります。
加圧面が試験片に密着するまで、衝撃を与えず滑らかに押し当てます。
その後、規定された時間で指示値を読み取ります。
読み取り時間は測定値を左右する重要な条件です。
ゴムには粘弾性があり、押込み直後と数秒後では変形状態が異なるため、各測定で同じ時間に読む必要があります。
| 手順 | 実施内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 試験片確認 | 厚さ、表面、温度、外観を確認します | 傷や端部を測定箇所から外します |
| 装置点検 | 押針、加圧面、表示、校正状態を確認します | 異常があれば使用を中止します |
| 試験片設置 | 平らで硬い支持面に置きます | たわみや裏面の空間を防ぎます |
| 押込み | 試験面へ垂直に滑らかに当てます | 衝撃や斜め押しを避けます |
| 読み取り | 規定時間後の値を記録します | 毎回同じ保持時間にそろえます |
| 結果整理 | 複数値の平均と範囲を確認します | 異常値の原因も確認します |
記録と判定に必要な情報
測定値を記録する際は、硬さの数値だけでなく、使用したデュロメータのタイプも残します。
ショアAであれば、ショアA 65のように種類と数値を組み合わせて記載することが基本です。
さらに、試験日、試験者、試験温度、試験片の厚さ、測定箇所数、保持時間、ロット番号を残すと、後からの再確認が容易になります。
仕様値に近い製品ほど、周辺条件を含めた記録の価値が高まります。
不合格判定が出た場合も、すぐに材料不良と決めつけず、測定器、試験片、温度、操作を順番に確認しましょう。
記録表の記載例です。
試験結果は ショアA 68、測定箇所5か所、平均値68、最大値70、最小値66、試験温度23度 のように管理します。
社内規格の判定範囲と照合する際は、測定方法が規格と一致しているかも確認します。
測定原理と値が変動する要因
続いては測定原理を深掘りし、ショア硬さの値が変動する主な要因を確認していきます。
ばね荷重と押針形状の関係
デュロメータ内部では、ばねの力によって押針へ荷重が加わります。
測定対象が軟らかいほど押針は深く入り、硬いほど押込みが浅くなります。
この押込み量を機械的または電子的に変換し、0から100の硬さ値として表示するのが基本原理です。
ショアAとショアDで異なる値が出るのは、押針形状と荷重特性が異なるためです。
つまり、ショア硬さは単純な万能尺度ではなく、決められた押針と荷重条件における材料反応を表した数値と理解するとよいでしょう。
粘弾性による時間依存性
ゴムやエラストマーは、力を加えた瞬間だけでなく、時間の経過とともに変形が進む粘弾性材料です。
押針を当てた直後は比較的高く見えた値が、数秒後には低下することがあります。
このため、測定開始から読み取りまでの時間が人によって異なると、同じ試験片でも結果がそろいません。
自動スタンドや保持時間を管理できるデジタル式の装置は、測定者間の差を減らす手段として有効です。
ただし、自動化した場合でも試験片の状態や設置位置までは自動で正しくなるわけではありません。
表面状態と支持面が与える影響
粗い表面、曲面、梨地、布目、発泡セル、塗膜、異物などは、押針との接触状態を不安定にします。
表面だけが硬いコーティング品では、基材の硬さよりも表層の影響を強く受けることがあります。
また、試験片の下に柔らかいシートがある、裏面に穴がある、支持台が振動するといった状態も測定誤差の原因です。
測定値が急に高くなった場合は、材料変化だけでなく裏面支持を疑うことが実務上のポイントです。
ショア硬さのばらつきは、材料そのものの差と測定条件の差が混在して現れます。
異常値が出たときは、試験片の厚さ、温度、表面、支持面、保持時間、デュロメータの状態を同じ順序で確認すると原因を絞り込みやすくなります。
ロックウェル硬さとの違いと使い分け
続いてはショア硬さとロックウェル硬さの違い、用途別の使い分けを確認していきます。
対象材料と試験目的の違い
ロックウェル硬さ試験は、主に金属や硬質材料の評価で使用される代表的な硬さ試験です。
圧子を用いて基準荷重と試験荷重を加え、押込み深さの差から硬さを求めます。
一方のショア硬さ試験は、ゴム、エラストマー、軟質樹脂などの弾性材料を手軽に評価することに適しています。
両者は押込みに対する抵抗を利用する点では似ていますが、試験機の構造、圧子、荷重、対象硬さ域、規格上の扱いが異なります。
ショア硬さとロックウェル硬さは直接換算できる数値ではありません。
試験方法と測定環境の違い
ロックウェル硬さ試験では、試験片を硬さ試験機へセットし、所定の荷重条件で測定します。
金属材料では試験片の厚さや表面仕上げ、脱炭層、熱処理層なども結果へ影響します。
ショア硬さ試験は携帯型のデュロメータでも実施できますが、簡単に見える分だけ操作条件の統一が重要です。
ロックウェル硬さは剛性の高い材料の品質保証に、ショア硬さは柔軟性を持つ材料の工程管理に適する場面が多いでしょう。
| 比較項目 | ショア硬さ | ロックウェル硬さ |
|---|---|---|
| 主な対象 | ゴム、エラストマー、軟質樹脂 | 金属、硬質樹脂、硬い材料 |
| 代表的な装置 | デュロメータ | ロックウェル硬さ試験機 |
| 評価の中心 | 押針の押込みに対する表面近傍の抵抗 | 所定荷重における押込み深さの差 |
| 現場での利点 | 測定が速く持ち運びしやすい | 硬質材料を規格に沿って評価しやすい |
| 数値の扱い | タイプごとに条件をそろえて比較します | スケールと圧子条件を明記して比較します |
換算表を使う際の注意点
インターネット上にはショア硬さとロックウェル硬さ、ビッカース硬さ、ブリネル硬さを並べた換算表があります。
しかし、それらの多くは特定材料における目安であり、ゴムと金属のように材料特性が大きく異なるものを正確に換算する用途には向きません。
材料選定や仕様協議で別規格の数値が必要になった場合は、実際の対象材料で両方の試験を行い、必要なら相関を確認します。
顧客仕様に硬さ尺度が指定されているときは、推定換算値ではなく、指定された試験方法で測定するのが確実です。
ショア硬さ試験のまとめ
ショア硬さ試験は、ゴムやエラストマー、軟質プラスチックの硬さを押込み量から評価する、実用性の高い試験方法です。
JIS K 6253に沿った評価では、デュロメータの種類、試験片の厚さ、温度、表面状態、支持面、保持時間をそろえることが重要になります。
一般的なゴムにはショアA、より硬い材料にはショアDが使われますが、異なるタイプの数値をそのまま比較しないことが基本です。
測定の再現性を高めるには、試験前の状態調節、垂直な押込み、複数箇所での測定、測定条件を含めた記録を徹底しましょう。
また、ショア硬さは材料性能の一部を示す指標です。
用途に応じて引張強さ、圧縮永久ひずみ、耐熱性、耐薬品性なども確認し、製品に求められる性能を総合的に判断することが品質向上につながります。