電磁気学や材料工学において、比透磁率(μr)は物質の磁気的性質を表す非常に重要な量です。
しかし「比透磁率の単位は何?」「無次元って何を意味するの?」「真空の比透磁率はどうなっているの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。
本記事では、比透磁率の単位は?換算・変換も(無次元・μr・真空比等)読み方や一覧は?というテーマのもと、比透磁率の基本的な概念から単位・読み方・換算方法・一覧まで、幅広くわかりやすく解説していきます。
電気・電子系の学習をしている方はもちろん、材料科学や物理を学ぶ方にもぜひ参考にしていただければ幸いです。
比透磁率の単位は「無次元数(単位なし)」が結論
それではまず、比透磁率の単位について結論からお伝えしていきます。
比透磁率(μr)とは何か
比透磁率(μr)とは、ある物質の透磁率μが真空の透磁率μ₀に対して何倍にあたるかを示す比の値です。
「比透磁率」の読み方は「ひとうじりつ」と読みます。
英語では「relative permeability(リレイティブ・パーミアビリティ)」と呼ばれており、記号は一般的にμr(ミュー・アール)が用いられます。
透磁率そのものは「物質が磁場をどれだけ通しやすいか」を表す物理量で、単位はH/m(ヘンリー毎メートル)です。
一方、比透磁率はその透磁率を真空の透磁率で割った「比(割り算の結果)」なので、単位が消えて数値だけが残ります。
なぜ無次元になるのか
比透磁率が無次元になる理由は、定義式にあります。
μr = μ ÷ μ₀
μ:物質の透磁率(H/m)
μ₀:真空の透磁率(H/m)
同じ単位(H/m)どうしを割り算するため、単位が打ち消し合い、結果は数値のみとなります。
この式からわかるように、分子と分母が同じ次元を持つ量であるため、比透磁率は次元を持たない「無次元数(dimensionless number)」となります。
無次元数であるため、SI単位系においても「単位なし」または「1(無次元)」と表記されることが一般的です。
比透磁率と透磁率・真空透磁率の関係
比透磁率・透磁率・真空透磁率の三者の関係を整理すると、以下のようになります。
透磁率 μ = μr × μ₀
比透磁率 μr = μ ÷ μ₀
真空の透磁率 μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m ≒ 1.2566 × 10⁻⁶ H/m
この関係式を覚えておくと、透磁率の換算・変換を行う際に非常に役立ちます。
たとえば、ある鉄の比透磁率μrが5000だとわかっている場合、その鉄の透磁率μは μ = 5000 × 4π × 10⁻⁷ H/m と計算できます。
比透磁率の換算・変換の方法と計算例
続いては、比透磁率の換算・変換の具体的な方法と計算例を確認していきます。
透磁率から比透磁率への換算
透磁率μ(H/m)がわかっているとき、比透磁率μrへの換算は次の式で行います。
μr = μ ÷ μ₀
μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m ≒ 1.2566 × 10⁻⁶ H/m
【例】μ = 6.283 × 10⁻³ H/m の場合
μr = 6.283 × 10⁻³ ÷ 1.2566 × 10⁻⁶ = 5000(無次元)
このように、透磁率の値をμ₀で割るだけで比透磁率が求まります。
計算上は非常にシンプルですが、μ₀の値(1.2566 × 10⁻⁶ H/m)を正確に使うことが重要です。
比透磁率から透磁率への換算
逆に、比透磁率μrが既知のとき、実際の透磁率μへの換算は以下の通りです。
μ = μr × μ₀
【例】比透磁率μr = 200(アルミニウム系材料の場合を想定)
μ = 200 × 1.2566 × 10⁻⁶ H/m = 2.513 × 10⁻⁴ H/m
材料の設計や電磁コイルの計算などで、この換算が頻繁に登場します。
比透磁率は無次元ですが、透磁率にはH/mという単位が付くことを忘れずに確認しましょう。
比透磁率に関する単位換算のポイント
比透磁率の換算において押さえておきたいポイントをまとめます。
ポイント① 比透磁率μrは常に無次元(単位なし)
ポイント② 透磁率μの単位はH/m(ヘンリー毎メートル)
ポイント③ 真空の比透磁率は定義上「1(無次元)」
ポイント④ 常磁性体はμr>1、反磁性体はμr<1、強磁性体はμr≫1
特に「真空の比透磁率は1」という点は、定義から直接導かれる当然の結果です。
μ₀ ÷ μ₀ = 1 となるため、真空中では比透磁率が正確に1となります。
比透磁率の読み方と主な材料別一覧
続いては、比透磁率の読み方と代表的な材料ごとの比透磁率の一覧を確認していきます。
比透磁率の正しい読み方
「比透磁率」の読み方は「ひとうじりつ」です。
英語表記は「relative magnetic permeability」または省略して「relative permeability」とも呼ばれます。
記号の「μr」は「ミュー・アール(mu sub r)」と読むのが一般的で、下付き文字の「r」はrelative(相対的な)の頭文字に由来しています。
なお、類似用語として「透磁率(permeability)」「絶対透磁率(absolute permeability)」「比誘電率(relative permittivity)」などがあり、混同しないよう注意が必要です。
材料別の比透磁率一覧
代表的な材料の比透磁率(μr)をまとめた一覧は以下の通りです。
| 材料名 | 比透磁率 μr(概算) | 磁性の種類 |
|---|---|---|
| 真空 | 1(定義値) | 基準 |
| 空気 | ≒ 1.0000004 | 常磁性体 |
| 水 | ≒ 0.999992 | 反磁性体 |
| アルミニウム | ≒ 1.000022 | 常磁性体 |
| ニッケル | 約 100~600 | 強磁性体 |
| 鉄(純鉄) | 約 1,000~10,000 | 強磁性体 |
| 珪素鋼板 | 約 1,500~8,000 | 強磁性体 |
| パーマロイ | 約 10,000~100,000 | 強磁性体 |
| フェライト | 約 10~15,000 | フェリ磁性体 |
| コバルト | 約 70~250 | 強磁性体 |
この一覧からわかるように、強磁性体(鉄・パーマロイなど)の比透磁率は非常に大きく、反磁性体(水など)は1よりわずかに小さい値をとります。
真空を基準(μr = 1)として、各材料の磁気的特性を相対的に比較できるところが比透磁率の大きな利点と言えます。
比透磁率が1に近い材料の特徴
空気やアルミニウムのように比透磁率が1に非常に近い材料は、実用上は「非磁性体」として扱われることが多くあります。
電磁設計においては、これらの材料は磁束をほとんど集中・増幅しないため、磁気回路のギャップや非磁性部材として活用されます。
一方、パーマロイのようにμrが10万にも達する材料は、非常に微弱な磁場でも強い磁化を示すため、精密センサや変圧器コアに利用されています。
比透磁率に関連する重要な概念と注意点
続いては、比透磁率をより深く理解するために関連する重要な概念と注意点を確認していきます。
複素比透磁率と周波数依存性
高周波領域では、比透磁率は複素数として扱われることがあります。
これを「複素比透磁率(complex relative permeability)」と呼び、実部と虚部に分けて表記します。
μr = μ’r − jμ”r
μ’r:実部(磁気エネルギーの蓄積に対応)
μ”r:虚部(磁気損失に対応)
j:虚数単位
虚部μ”rが大きいほど、材料内部での磁気損失(磁気ヒステリシス損失・渦電流損失など)が大きいことを意味します。
フェライトコアやインダクタの設計では、この複素比透磁率の周波数特性を把握することが不可欠です。
比透磁率の非線形性とヒステリシス
強磁性体の比透磁率は、印加磁場の強さによって大きく変化する非線形性を持ちます。
特に鉄などの強磁性体では、磁場を変化させると磁化がヒステリシス(履歴)特性を示し、比透磁率の値が一定ではなくなります。
このため、強磁性体の比透磁率には次のような複数の定義が存在します。
| 種類 | 説明 |
|---|---|
| 初期透磁率 | 磁場が非常に小さい領域での比透磁率 |
| 最大透磁率 | B-Hカーブにおいてμrが最大となる点の値 |
| 実効透磁率 | 交流磁場下で定義される実用的な透磁率 |
| 差分透磁率 | B-Hカーブの微小変化に基づく透磁率 |
このように、一口に「比透磁率」と言っても、測定条件や定義によって値が大きく異なるため、材料データシートを参照する際にはどの定義での値なのかを確認することが重要です。
比透磁率と磁気感受率の関係
比透磁率μrと関連の深い量に「磁気感受率(magnetic susceptibility)」があり、記号χm(カイ・エム)で表されます。
μr = 1 + χm
χm:磁気感受率(無次元)
常磁性体:χm > 0(μr > 1)
反磁性体:χm < 0(μr < 1)
強磁性体:χm ≫ 1(μr ≫ 1)
磁気感受率もまた無次元数であり、物質の磁化のしやすさを表す指標として幅広く使われます。
特に、常磁性体や反磁性体のようにμrが1に非常に近い材料の場合、χmの方が微小な差異を表現しやすく便利です。
まとめ
本記事では、比透磁率の単位は?換算・変換も(無次元・μr・真空比等)読み方や一覧は?というテーマで詳しく解説しました。
最後に重要なポイントを振り返っておきましょう。
比透磁率(μr)の単位は「無次元(単位なし)」であり、物質の透磁率μを真空の透磁率μ₀で割った比として定義されます。
真空の比透磁率は定義上「1」であり、これを基準として各材料の磁気的特性を相対的に比較することができます。
換算・変換においては、μ = μr × μ₀ および μr = μ ÷ μ₀ という関係式を活用することが基本です。
また、材料によって比透磁率の値は大きく異なり、空気や水は1に非常に近い値を示す一方、強磁性体の鉄やパーマロイは数千から数万にも及びます。
高周波領域では複素比透磁率として扱う必要があり、磁気損失の評価にも活用されています。
比透磁率は電気・電子・材料工学の多くの場面で登場する基礎的かつ重要な概念です。
本記事が比透磁率の理解を深めるための一助となれば幸いです。