建物の断熱性能を評価するうえで欠かせない指標のひとつが、熱貫流率です。
住宅や建築物の省エネ計算、断熱材の選定、サッシ・窓の性能比較など、さまざまな場面でこの値が登場します。
しかし「単位が複数あってどれを使えばいいのかわからない」「U値やK値との違いが曖昧」「kcal系とW系の換算方法を知りたい」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、熱貫流率の単位は?換算・変換も(W/m2・KやU値やkcal/h・m2・℃等)読み方や一覧は?というテーマのもと、単位の読み方から換算方法、一覧表まで丁寧に解説していきます。
熱貫流率の単位はW/(m²・K)が国際標準——U値とも呼ばれる断熱性能の基本指標
それではまず、熱貫流率の単位と基本的な意味について解説していきます。
熱貫流率とは、壁・屋根・床・窓などの建築部位において、両側の温度差が1Kあるとき、1㎡あたり1秒間に通過する熱量を示す値です。
値が小さいほど熱が伝わりにくく、断熱性能が高いことを意味します。
現在、国際的に広く使われている単位は W/(m²・K)(ワット毎平方メートルケルビン)です。
SI単位系(国際単位系)に基づいており、日本国内でも省エネ基準や建築基準法に関連する計算ではこの単位が標準となっています。
熱貫流率は英語で「Thermal Transmittance」と表記され、記号はU(U値)が使われます。
日本ではかつてK値と呼ばれていた経緯がありますが、現在はU値に統一されています。
単位はW/(m²・K)が国際標準です。
読み方としては「ダブリュー パー へいほうメートル ケルビン」と読むのが一般的です。
「・」は「パー(÷)」の意味を持ち、分母にm²とKが並んでいる構造と理解すると把握しやすいでしょう。
以下に、熱貫流率に関連する主な単位の読み方と概要を一覧でまとめました。
| 単位表記 | 読み方 | 系統 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| W/(m²・K) | ワット毎平方メートルケルビン | SI単位系 | 現行の省エネ基準・国際標準 |
| kcal/(h・m²・℃) | キロカロリー毎時平方メートル度 | 工学単位系 | 旧来の建築・設備設計 |
| BTU/(h・ft²・℉) | ビーティーユー毎時平方フィート華氏度 | ヤード・ポンド系 | 米国・英国の建築基準 |
| U値(U-value) | ユーち | 記号(SI準拠) | 窓・サッシの性能表示 |
このように単位の種類は複数ありますが、日本国内での実務ではW/(m²・K)を基準として理解しておくことが重要です。
熱貫流率の読み方と関連用語——熱伝導率・熱抵抗との違いも押さえよう
続いては、熱貫流率に関連する用語や似た概念との違いを確認していきます。
熱に関する指標は複数あり、混同しやすいため整理が必要です。
特に「熱伝導率」「熱抵抗」「熱貫流率」の3つは、断熱性能を議論するうえで頻繁に登場する用語です。
熱伝導率(λ・W/(m・K))とは
熱伝導率は、材料そのものの熱の伝わりやすさを示す値で、単位はW/(m・K)(ワット毎メートルケルビン)です。
λ(ラムダ)という記号で表されることが多く、値が小さいほど断熱性に優れた材料といえます。
たとえばグラスウールやウレタンフォームは熱伝導率が低く、断熱材として広く使用されています。
熱伝導率はあくまで「材料単体」の特性を示すものであり、厚みは考慮されていない点がポイントです。
熱抵抗(R値・m²・K/W)とは
熱抵抗とは、ある厚みを持つ材料層が熱の流れに対して示す抵抗値で、単位はm²・K/W(平方メートルケルビン毎ワット)です。
R=d/λ(d:厚み〔m〕、λ:熱伝導率)という式で求められます。
値が大きいほど断熱性が高く、複数の層が重なる場合はそれぞれのR値を合計することで全体の熱抵抗を算出できます。
熱貫流率(U値)と熱抵抗の関係
熱貫流率U値は、熱抵抗Rの逆数として定義されます。
U = 1 / R
U(W/(m²・K))= 1 ÷ R(m²・K/W)
例)R = 2.0 m²・K/W の場合 → U = 1 ÷ 2.0 = 0.5 W/(m²・K)
熱抵抗が大きい(断熱性が高い)ほど、U値は小さくなる関係にあります。
「U値が低い=断熱性能が優れている」と覚えておくと、製品比較や性能評価の場面で役立つでしょう。
| 指標名 | 記号 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 熱伝導率 | λ(ラムダ) | W/(m・K) | 材料単体の熱の伝わりやすさ |
| 熱抵抗 | R | m²・K/W | 厚みを含めた熱の通りにくさ |
| 熱貫流率 | U | W/(m²・K) | 建築部位全体の断熱性能 |
熱貫流率の単位換算・変換方法——W/m²・KとKcal/h・m²・℃・BTUの相互変換
続いては、熱貫流率の単位換算・変換の方法を確認していきます。
実務では、旧来の資料や海外の製品仕様書に異なる単位が記載されていることがあります。
単位を正確に換算できることは、設計ミスや性能評価の誤りを防ぐうえで非常に重要です。
W/(m²・K)とkcal/(h・m²・℃)の換算
kcal/(h・m²・℃)は、かつて日本の建築・設備分野で広く使われていた工学単位系の熱貫流率の単位です。
温度の単位に℃(摂氏)を使っていますが、温度差1℃と温度差1Kは数値として等しいため、換算において℃とKは同一として扱うことができます。
1 kcal/(h・m²・℃) = 1.163 W/(m²・K)
逆に、1 W/(m²・K) ≒ 0.860 kcal/(h・m²・℃)
例)熱貫流率が 2.0 kcal/(h・m²・℃)の場合
→ 2.0 × 1.163 = 約 2.33 W/(m²・K)
「1.163」という係数は、1kcal = 1.163Wh(ワット時)という熱量換算から導かれています。
旧資料と現行基準を照合する際には、この係数を押さえておくと便利です。
W/(m²・K)とBTU/(h・ft²・℉)の換算
米国や一部の海外製品では、BTU/(h・ft²・℉)(ビーティーユー毎時平方フィート華氏度)が使われることがあります。
この単位はヤード・ポンド法に基づいており、国内規格とは大きく異なるため注意が必要です。
1 BTU/(h・ft²・℉) ≒ 5.678 W/(m²・K)
逆に、1 W/(m²・K) ≒ 0.176 BTU/(h・ft²・℉)
例)U値が 0.3 W/(m²・K)の窓
→ 0.3 × 0.176 ≒ 約 0.053 BTU/(h・ft²・℉)
BTU系の単位は日本国内では一般的ではありませんが、輸入品や国際的な仕様書を扱う場合に備えて知っておくとよいでしょう。
換算係数の一覧まとめ
以下に、熱貫流率に関する主な単位換算係数を一覧でまとめました。
| 変換前の単位 | 変換後の単位 | 換算係数(×) |
|---|---|---|
| kcal/(h・m²・℃) | W/(m²・K) | × 1.163 |
| W/(m²・K) | kcal/(h・m²・℃) | × 0.860 |
| BTU/(h・ft²・℉) | W/(m²・K) | × 5.678 |
| W/(m²・K) | BTU/(h・ft²・℉) | × 0.176 |
| W/(m²・K) | m²・K/W(熱抵抗) | 逆数(1/U) |
換算時の重要ポイントとして、℃とKの温度差は数値が等しいため、熱貫流率の換算では℃とKを同一視してよい点を覚えておきましょう。
また、W系への変換には「× 1.163」(kcalから)、逆変換には「× 0.860」という係数が基本です。
実際の建材・窓の熱貫流率U値の目安と省エネ基準での活用
続いては、実際の建材や窓のU値の目安と、省エネ基準における熱貫流率の活用方法を確認していきます。
熱貫流率の数値を理解するうえでは、実際の建材や製品の値を知っておくことが大切です。
以下に、代表的な建築部位・材料ごとのU値(熱貫流率)の目安をまとめました。
代表的な建材・部位のU値目安
| 建材・部位 | U値の目安(W/(m²・K)) | 備考 |
|---|---|---|
| 単板ガラス窓(アルミサッシ) | 約 6.0 | 断熱性は非常に低い |
| 複層ガラス窓(アルミサッシ) | 約 3.5~4.0 | 一般的な普及品 |
| Low-Eトリプルガラス(樹脂サッシ) | 約 0.7~1.0 | 高断熱仕様 |
| 断熱材なし外壁(木造) | 約 2.0~3.0 | 無断熱状態 |
| グラスウール100mm充填外壁 | 約 0.4~0.6 | 標準的な断熱工法 |
| 屋根(断熱材なし) | 約 2.5~4.0 | 夏の日射の影響大 |
U値が小さいほど熱を通しにくく、断熱性能が高い建材・部位といえます。
日本の省エネ基準(ZEH・UA値)との関係
日本の省エネ基準では、建物全体の断熱性能を示す指標として外皮平均熱貫流率(UA値)が使われています。
UA値は、建物の外皮(外壁・屋根・床・窓など)を通じて逃げる熱量を、外皮面積全体で平均したものです。
単位はやはりW/(m²・K)が使われており、地域区分ごとに基準値が定められています。
UA値の計算式(概略)
UA = Σ(各部位のU値 × 面積) ÷ 外皮総面積
例)ZEH基準では UA ≦ 0.6 W/(m²・K)(地域区分6地域の場合)
窓・サッシのU値と選定の目安
窓やサッシは建物の熱損失に大きく影響する部位です。
Low-E複層ガラスやトリプルガラスの普及により、近年は高性能窓のU値が大幅に改善されています。
省エネ住宅・ZEH住宅を目指す場合は、窓のU値を2.33 W/(m²・K)以下(旧省エネ基準の目安)、さらに高性能を求めるなら1.0 W/(m²・K)以下を目標とするとよいでしょう。
サッシの素材(アルミ・樹脂・木製)によっても熱貫流率は大きく変わるため、ガラス性能と合わせて総合的に選定することが重要です。
まとめ
本記事では、熱貫流率の単位は?換算・変換も(W/m2・KやU値やkcal/h・m2・℃等)読み方や一覧は?というテーマで解説してきました。
熱貫流率の国際標準単位はW/(m²・K)であり、U値とも呼ばれます。
読み方は「ワット毎平方メートルケルビン」で、値が小さいほど断熱性能が優れていることを意味します。
旧来の工学単位であるkcal/(h・m²・℃)との換算には「× 1.163」という係数を使い、米国系のBTU単位への換算には「× 0.176」を使うことを押さえておきましょう。
また、熱貫流率・熱抵抗・熱伝導率はそれぞれ異なる概念であり、U = 1/R という関係を理解することが計算の基本となります。
省エネ基準やZEH基準においてもW/(m²・K)が基準単位として用いられており、UA値の算出にも直結する重要な指標です。
建材選定や断熱設計、性能評価の場面で、本記事の一覧・換算表をぜひ活用してみてください。