材料の「硬さ」や「変形のしにくさ」を数値で表す指標として、ヤング率(ヤング係数)は機械設計・構造計算・材料力学など幅広い分野で欠かせない物理量です。
しかし、ヤング率を扱う際に「単位が複数あってどれを使えばいいかわからない」「PaとGPaの違いは?」「kgf/mm²との換算はどうするの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ヤング率の単位の読み方・意味・換算・変換方法をわかりやすく解説します。
Pa・GPa・MPa・kgf/mm²などの単位一覧や換算表も掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
ヤング率の単位はPa(パスカル)系が基本:結論まとめ
それではまずヤング率の単位に関する結論について解説していきます。
ヤング率(Young’s modulus)の単位は、国際単位系(SI単位系)ではPa(パスカル)が基本となります。
Paは圧力・応力の単位と同じであり、1Pa=1N/m²(ニュートン毎平方メートル)に相当します。
ただし、実際の工学・材料分野ではヤング率の値が非常に大きくなるため、GPa(ギガパスカル)やMPa(メガパスカル)といったSI接頭辞を付けた単位が広く使われています。
また、旧来の工学単位系ではkgf/mm²(キログラム重毎平方ミリメートル)が用いられており、現在でも古い資料や一部の現場ではこの単位が登場することがあります。
ヤング率の単位まとめ(結論)
SI単位系の基本単位はPa(パスカル)=N/m²です。
実用上はGPa・MPaが多く使われます。
旧工学単位系ではkgf/mm²が使われる場面も残っています。
単位の換算・変換を正しく理解することが、設計ミスや計算ミスの防止につながります。
ヤング率とは何か?読み方・定義・ヤング係数との違い
続いては、ヤング率そのものの基礎知識を確認していきます。
ヤング率の読み方と別名
ヤング率は英語で「Young’s modulus」と表記し、「ヤングりつ」と読みます。
「ヤング係数(Young’s coefficient)」と呼ばれることもあり、どちらも同じ物理量を指します。
記号はE(英語のElasticityの頭文字)が一般的に使用されます。
名称の由来はイギリスの物理学者トーマス・ヤング(Thomas Young)で、19世紀初頭に弾性体の変形に関する研究を行ったことからこの名が付けられました。
ヤング率の定義と物理的意味
ヤング率は、材料に引張応力(または圧縮応力)をかけたときの「応力」と「ひずみ」の比として定義されます。
ヤング率の定義式
E(ヤング率)= σ(応力) ÷ ε(ひずみ)
σ(応力)の単位:Pa(N/m²)
ε(ひずみ):無次元(単位なし)
よって E の単位は Pa(N/m²)となります。
ひずみは「変形量÷元の長さ」で求められる無次元の量であるため、ヤング率の単位は応力の単位と同じPa(N/m²)になります。
値が大きいほど材料は変形しにくく、剛性(こうせい)が高いことを意味します。
例えば鋼(スチール)のヤング率は約200GPaと非常に大きく、ゴムのヤング率は数MPa程度と非常に小さい値です。
ヤング率・縦弾性係数・弾性率の関係
ヤング率は「縦弾性係数」とも呼ばれ、引張・圧縮方向の弾性変形を表します。
弾性率には他にもせん断弾性率(横弾性係数、G)や体積弾性率(K)がありますが、一般的に「弾性率」「ヤング率」と言えばこの縦弾性係数Eを指すことがほとんどです。
ヤング率・ポアソン比・せん断弾性率はそれぞれ関連しており、等方性材料では次のような関係式が成立します。
弾性定数の関係式
G(せん断弾性率)= E ÷ {2 × (1 + ν)}
ここで ν(ニュー)はポアソン比(無次元)です。
ヤング率の単位一覧:Pa・GPa・MPa・kgf/mm²の読み方と意味
続いては、ヤング率で使われる主な単位の読み方・意味・スケール感を確認していきます。
SI単位系:Pa・MPa・GPaの読み方と大きさ
SI単位系(国際単位系)では、ヤング率の単位はPa(パスカル)を基本とし、材料の種類によってMPaやGPaが使い分けられます。
| 単位記号 | 読み方 | 意味・大きさ | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Pa | パスカル | 1 N/m² | 基本単位(実用上は小さすぎて使いにくい) |
| kPa | キロパスカル | 10³ Pa | 軟らかい材料(ゲル・土壌など) |
| MPa | メガパスカル | 10⁶ Pa | プラスチック・ゴム・木材など |
| GPa | ギガパスカル | 10⁹ Pa | 金属・セラミック・炭素繊維など |
| TPa | テラパスカル | 10¹² Pa | カーボンナノチューブなど特殊材料 |
GPa(ギガパスカル)は金属材料の分野で最もよく目にする単位です。
鋼のヤング率は約200GPa、アルミニウムは約70GPa、チタンは約110GPaと覚えておくと、材料選定の際に役立ちます。
旧工学単位:kgf/mm²・kgf/cm²の読み方と意味
かつて日本の工学分野では、kgf/mm²(キログラム重毎平方ミリメートル)が広く使われていました。
「kgf」は「キログラム重(キログラムフォース)」と読み、重力加速度を掛けた力の単位です。
現在はSI単位系への移行が進んでいますが、古い規格書・教科書・現場の図面などでは今もkgf/mm²が登場することがあります。
| 単位記号 | 読み方 | 意味 | 主な使用場面 |
|---|---|---|---|
| kgf/mm² | キログラム重毎平方ミリメートル | 1kgfの力が1mm²にかかる応力 | 旧JIS規格・古い設計資料 |
| kgf/cm² | キログラム重毎平方センチメートル | 1kgfの力が1cm²にかかる応力 | 土木・建築の旧来資料 |
| tf/mm² | トン重毎平方ミリメートル | kgf/mm²の1000倍 | 重構造物の旧来設計 |
その他の単位:psi・ksi・N/mm²など
海外の規格や文献では、psi(ポンド毎平方インチ)やksi(キロポンド毎平方インチ)が使われることもあります。
また、N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)はMPaと数値上まったく同じであり、実務では両者が混在して使われる場面も見られます。
N/mm²とMPaの関係
1 N/mm² = 1 MPa
これは面積の換算(1m² = 10⁶ mm²)から導けます。
ヤング率の単位換算・変換方法:GPa・MPa・kgf/mm²・psi
続いては、ヤング率の具体的な単位換算・変換方法を確認していきます。
Pa・MPa・GPa間の換算
SI単位同士の換算は、10の累乗の関係で整理できます。
SI単位間の換算式
1 GPa = 1,000 MPa = 1,000,000,000 Pa(10⁹ Pa)
1 MPa = 1,000 kPa = 1,000,000 Pa(10⁶ Pa)
1 kPa = 1,000 Pa(10³ Pa)
例えば、鋼のヤング率「200 GPa」をPaで表すと「200 × 10⁹ Pa = 2.0 × 10¹¹ Pa」となります。
MPaで表せば「200,000 MPa」と非常に大きな数字になるため、金属のヤング率にはGPaが最も扱いやすい単位と言えます。
GPa・MPaとkgf/mm²の換算
SI単位と旧工学単位の換算には、重力加速度 g ≈ 9.80665 m/s² を使います。
kgf/mm²とMPaの換算
1 kgf/mm² = 9.80665 N/mm² ≈ 9.807 MPa
1 MPa ≈ 0.10197 kgf/mm²
1 kgf/mm² ≈ 0.009807 GPa
| 単位 | GPa | MPa | kgf/mm² | Pa |
|---|---|---|---|---|
| 1 GPa | 1 | 1,000 | 約101.97 | 10⁹ |
| 1 MPa | 0.001 | 1 | 約0.10197 | 10⁶ |
| 1 kgf/mm² | 約0.009807 | 約9.807 | 1 | 約9.807×10⁶ |
| 1 Pa | 10⁻⁹ | 10⁻⁶ | 約1.02×10⁻⁷ | 1 |
鋼のヤング率を旧工学単位で表すと、約20,000 kgf/mm²(2万kgf/mm²)となります。
GPaとkgf/mm²の間には約102倍の関係がある点を押さえておくと、換算がスムーズです。
psi・ksiとの換算
海外(特に米国)の文献ではpsi(ポンド毎平方インチ)が使われることがあります。
psi・ksiとMPa・GPaの換算
1 psi ≈ 6.895 × 10⁻³ MPa ≈ 6.895 × 10⁻⁹ GPa
1 ksi(=1000 psi) ≈ 6.895 MPa ≈ 0.006895 GPa
1 MPa ≈ 145.04 psi
1 GPa ≈ 145,038 psi ≈ 145.0 ksi
例えば鋼のヤング率200 GPaをpsiで換算すると約29,000,000 psi(29 × 10⁶ psi)となります。
米国の規格やデータシートを参照する際は、ksiやMsiといった単位にも注意が必要です(Msi=メガpsi)。
代表的な材料のヤング率一覧と単位の使い分け
続いては、代表的な材料のヤング率の値と、単位の使い分けを確認していきます。
金属材料のヤング率(GPa・kgf/mm²)
金属材料のヤング率は一般にGPaオーダーであり、設計や強度計算の基礎データとして重要です。
| 材料 | ヤング率(GPa) | ヤング率(kgf/mm²) | ヤング率(MPa) |
|---|---|---|---|
| 炭素鋼・合金鋼 | 約200〜210 | 約20,400〜21,400 | 約200,000〜210,000 |
| ステンレス鋼 | 約193〜200 | 約19,700〜20,400 | 約193,000〜200,000 |
| アルミニウム合金 | 約68〜73 | 約6,900〜7,400 | 約68,000〜73,000 |
| 銅・銅合金 | 約110〜130 | 約11,200〜13,300 | 約110,000〜130,000 |
| チタン合金 | 約105〜120 | 約10,700〜12,200 | 約105,000〜120,000 |
| 鋳鉄 | 約100〜170 | 約10,200〜17,300 | 約100,000〜170,000 |
非金属・高分子材料のヤング率(MPa・GPa)
プラスチックや複合材料は金属より大幅にヤング率が低く、MPaやGPaの使い分けが重要になります。
| 材料 | ヤング率の目安 | 主に使う単位 |
|---|---|---|
| CFRP(炭素繊維強化プラスチック) | 約70〜300 GPa(繊維方向) | GPa |
| ガラス繊維強化プラスチック(GFRP) | 約20〜50 GPa | GPa |
| ナイロン(PA) | 約2〜4 GPa | GPa または MPa |
| ポリプロピレン(PP) | 約1〜2 GPa | MPa または GPa |
| 天然ゴム | 約0.01〜0.1 MPa | MPa または kPa |
| 木材(繊維方向) | 約8〜20 GPa | GPa |
| コンクリート | 約20〜40 GPa | GPa |
単位の使い分けの目安
材料の種類によってヤング率の桁が大きく異なるため、適切な単位を選ぶことで数値の読み間違いを防ぐことができます。
ヤング率の単位使い分けの目安
金属・セラミック・炭素繊維 → GPaを使用するのが一般的です。
エンジニアリングプラスチック → GPaまたはMPaを使用します。
ゴム・軟質材料 → MPaまたはkPaを使用します。
旧規格・旧資料の確認時 → kgf/mm²が登場する場合があるため換算が必要です。
まとめ
本記事では、ヤング率(ヤング係数)の単位・読み方・換算・変換について解説しました。
ヤング率の基本単位はSI単位系のPa(パスカル)=N/m²であり、実用上は材料の種類に応じてGPa・MPa・kPaが使い分けられます。
旧工学単位のkgf/mm²は古い資料や現場で今も使われることがあるため、1 kgf/mm² ≈ 9.807 MPaという換算関係は覚えておくと便利です。
海外文献ではpsiやksiが登場することもあり、1 GPa ≈ 145 ksiという関係も知っておくと役立ちます。
材料設計・強度計算・品質管理など様々な場面で、単位の違いによる計算ミスは重大なトラブルにつながる可能性があります。
本記事の換算表や使い分けの目安を活用し、ヤング率の単位を正確に理解・運用していただければ幸いです。