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エチレンの化学式や分子式は?構造式や分子量・沸点・用途も解説【C2H4】

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化学の世界で非常に重要な存在として知られるエチレン。

その化学式や分子式、構造式はどのようなものなのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

エチレンは最もシンプルなアルケン(オレフィン)であり、炭素と水素だけで構成された有機化合物です。

工業的には世界で最も多く生産される有機化合物の一つとしても知られており、プラスチックや樹脂の原料として私たちの生活に深く関わっています。

この記事では、エチレンの化学式や分子式をはじめ、構造式・電子式・分子量・沸点・融点・密度など基本的な物性データから、その製法や工業的な用途まで幅広く解説していきます。

有機化学の学習中の方にも、実務でエチレンを扱う方にも役立つ情報をまとめましたので、ぜひ最後までお読みくださいませ。

エチレンの化学式・分子式はC2H4であり、炭素二重結合を持つアルケンの基本物質

それではまず、エチレンの化学式・分子式と基本的な性質について解説していきます。

エチレンの化学式や分子式は?構造式や分子量・沸点・用途も解説【C2H4】というテーマで本記事は進んでいきますが、まず結論としてエチレンの分子式はC2H4です。

炭素原子(C)が2つ、水素原子(H)が4つで構成されており、一般式CnH2nで表されるアルケン(オレフィン)に分類されます。

アルケンとは炭素同士の二重結合(C=C)を1つ持つ不飽和炭化水素のことであり、エチレンはそのうち最も炭素数が少ない最小のアルケンといえるでしょう。

エチレンの分子式 C2H4

一般式 CnH2n(アルケン共通)

IUPAC名 エテン(Ethene)

慣用名 エチレン(Ethylene)

IUPAC(国際純正・応用化学連合)による正式名称は「エテン(Ethene)」ですが、日本では「エチレン」という慣用名が広く使われています。

エチレンは常温・常圧では無色の気体であり、わずかに甘い香りを持つことも特徴の一つです。

可燃性があるため取り扱いには注意が必要であり、空気と混合した場合に爆発範囲(爆発限界)が存在します。

エチレンの構造式と電子式

エチレンの構造を理解するうえで欠かせないのが、構造式と電子式です。

エチレンの構造式は、2つの炭素原子が二重結合(C=C)でつながり、それぞれの炭素に2つの水素原子が結合した形になっています。

エチレンの構造式

H₂C=CH₂

(各炭素に2つの水素が結合し、炭素間に二重結合が存在する)

電子式(ルイス構造式)では、各結合を共有電子対として表し、炭素間の二重結合は2組の共有電子対として示されます。

エチレン分子は平面構造をとっており、すべての原子が同一平面上に存在するのが大きな特徴です。

これはsp2混成軌道によるもので、各炭素原子の結合角はおよそ120°となっています。

このような平面構造は、エチレンの反応性や物性に深く関わっており、有機化学の学習においても重要なポイントといえるでしょう。

エチレンの分子量

エチレンの分子量は、炭素と水素の原子量から計算することが可能です。

エチレンの分子量の計算

炭素(C)の原子量 12

水素(H)の原子量 1

C2H4の分子量 = 12×2 + 1×4 = 24 + 4 = 28

エチレンの分子量は28となります。

空気の平均分子量がおよそ29であることを考えると、エチレンは空気よりわずかに軽いガスであることがわかるでしょう。

この性質は、ガスの拡散や漏洩時の挙動を考える際にも参考になるデータです。

エチレンの沸点・融点・密度などの物性データ

エチレンの基本的な物性データをまとめると以下のようになります。

項目 データ
分子式 C2H4
分子量 28.05
沸点 -103.7℃
融点(凝固点) -169.2℃
密度(気体、0℃) 1.260 g/L
外観 無色気体
臭い わずかに甘い香り
水への溶解度 難溶
爆発限界(空気中) 2.7〜36%

エチレンの沸点は-103.7℃という非常に低い値であり、常温では気体として存在します。

融点も-169.2℃と極めて低く、液体状態で扱うには相当な冷却が必要です。

水にはほとんど溶けない(難溶)性質があり、有機溶媒には比較的溶けやすい傾向があります。

エチレンの製造方法と工業的な製法

続いては、エチレンがどのように製造されるのかを確認していきます。

エチレンは世界的に大量生産されている化学物質であり、その製造方法は工業的に非常に重要なプロセスです。

スチームクラッキング(熱分解法)

工業的なエチレン製造の主流はスチームクラッキング(水蒸気熱分解)と呼ばれる方法です。

ナフサ(粗製ガソリン)やエタン、プロパンなどの炭化水素原料を水蒸気と混合し、高温(700〜900℃程度)で熱分解することでエチレンが生成されます。

スチームクラッキングの概要

原料 ナフサ、エタン、プロパンなど

条件 高温(700〜900℃)、水蒸気共存下

生成物 エチレン、プロピレン、ブタジエンなど

日本ではナフサを原料とする場合が多く、エチレンプラント(エチレン製造設備)は石油化学コンビナートの中核をなしています。

スチームクラッキングによって得られるエチレンの純度は非常に高く、その後の精製工程を経て各種用途に供給されます。

エタノールの脱水反応(実験室的製法)

実験室レベルでは、エタノール(エチルアルコール)の脱水反応によってエチレンを製造する方法が知られています。

エタノールの脱水反応によるエチレン生成

C2H5OH → C2H4 + H2O

(触媒 濃硫酸、加熱温度 170℃程度)

エタノールに濃硫酸を加えて約170℃に加熱すると、分子内脱水が起こりエチレンが発生します。

この反応は高校化学や大学の有機化学実験でも頻繁に扱われる反応であり、アルケンの生成反応の基本例として重要です。

ただし工業的な規模での利用は少なく、あくまで実験室的・教育的な製法として位置づけられています。

その他の製法と近年の動向

近年では、バイオエチレンと呼ばれる製法も注目されています。

これはサトウキビやトウモロコシなどのバイオマスを原料としてバイオエタノールを製造し、それをさらに脱水してエチレンを得る方法です。

化石燃料への依存を減らし、CO2排出量を削減する観点から、サステナブルな化学原料として期待が高まっています。

また、CO2を直接利用してエチレンを合成する研究も進んでおり、カーボンニュートラルに向けた化学産業の変革の一翼を担う技術として世界中で研究が加速しています。

エチレンの化学的性質と主な反応

続いては、エチレンの化学的性質と代表的な反応について確認していきます。

エチレンはC=C二重結合を持つため、さまざまな付加反応を起こすことが特徴です。

不飽和炭化水素であるエチレンは、飽和炭化水素(アルカン)に比べて反応性が高く、有機合成における重要な中間体として幅広く利用されています。

付加反応(ハロゲン・水素・水との反応)

エチレンの最も代表的な反応は付加反応です。

二重結合の一方が切れて、そこに別の原子や原子団が付加する反応であり、以下のような例が挙げられます。

代表的な付加反応の例

水素付加 C2H4 + H2 → C2H6(エタン)

臭素付加 C2H4 + Br2 → C2H4Br2(1,2-ジブロモエタン)

水付加(水和) C2H4 + H2O → C2H5OH(エタノール)

塩化水素付加 C2H4 + HCl → C2H5Cl(クロロエタン)

臭素水(臭素のジクロロメタン溶液)との反応では、エチレンを通じると臭素の赤褐色が脱色されます。

この反応は二重結合の検出反応としても利用されており、アルケンの同定に使われる定性分析の手法です。

付加重合反応(ポリエチレンの生成)

エチレンを多数つなぎ合わせる付加重合(連鎖重合)反応は、工業的に非常に重要です。

エチレンの付加重合

nC2H4 → (-CH2-CH2-)n

(ポリエチレン、PE)

この反応によって得られるポリエチレン(PE)は、世界で最も生産量の多いプラスチックの一つです。

密度の違いによって高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)に分類され、それぞれ用途が異なります。

HDPEは硬くて強度が高いため容器や配管に、LDPEは柔軟性があるためフィルムや包装材に使われることが多いでしょう。

酸化反応とその他の反応

エチレンは酸化反応においても重要な反応を示します。

代表的なのはエチレンオキシド(酸化エチレン)の合成であり、銀触媒の存在下でエチレンを酸素と反応させることで得られます。

エチレンオキシドの合成

2C2H4 + O2 → 2C2H4O(エチレンオキシド)

(銀触媒使用)

エチレンオキシドはエチレングリコール(不凍液や繊維原料)、界面活性剤、溶媒などのさらなる合成原料となるため、石油化学産業において非常に重要な中間体です。

また、エチレンを酸化してアセトアルデヒドを得るワッカー酸化も工業的に用いられてきた重要な反応の一つです。

エチレンの主な用途と産業的な役割

続いては、エチレンが実際にどのような分野で活用されているのかを確認していきます。

エチレンは「石油化学の基礎原料」とも呼ばれ、非常に幅広い用途を持っています。

プラスチック・樹脂原料としての用途

エチレンの最大の用途はポリエチレンをはじめとするプラスチックの原料です。

ポリエチレン(PE)のほかにも、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)など多くのプラスチック・高分子材料の原料または中間原料としてエチレンが使われています。

製品・素材名 エチレンとの関係 主な用途
ポリエチレン(PE) エチレンの付加重合 容器・包装・配管
エチレングリコール エチレンオキシドの水和 PET繊維・不凍液
塩化ビニル(PVC) 塩化ビニルモノマーの原料 パイプ・電線被覆
酢酸ビニル エチレンと酢酸の反応 接着剤・塗料
スチレン エチルベンゼン経由 ポリスチレン・ABS樹脂

これらのプラスチック・樹脂は日常生活のあらゆる場面に使用されており、エチレンが現代社会を支える基盤的な化学物質であることがよくわかるでしょう。

農業・植物ホルモンとしての用途

エチレンが工業用途だけでなく、植物ホルモンとしても機能することはあまり知られていない側面です。

植物はエチレンを自ら生成し、果実の成熟・老化の促進、落葉・落果の誘導、発芽促進などさまざまな生理作用を調節しています。

エチレンは植物ホルモンの一種であり、果実の追熟に利用されています。

バナナやトマトなどの青果物を流通・保管する際、エチレンガスを用いた追熟処理(エチレン処理)が行われることがあります。

また、農業現場では「エテフォン」と呼ばれるエチレン放出剤が果樹や穀物の成熟促進に使われており、収穫時期の調整や品質管理に貢献しています。

その他の化学工業における用途

エチレンはその他にも多様な化学品の原料として活躍しています。

アセトアルデヒド・酢酸・エタノールといった基礎化学品のほか、界面活性剤・潤滑剤・溶剤の原料としても広く使われています。

また、α-オレフィンと呼ばれる炭素数の多い直鎖オレフィンの製造にもエチレンが使われており、合成潤滑油や洗剤の原料として重要な役割を果たしています。

さらに、エチレンとプロピレンを共重合したエチレン-プロピレンゴム(EPM/EPDM)は耐候性・耐熱性に優れた合成ゴムとして、自動車部品や土木・建築用途に幅広く使われています。

まとめ

この記事では、エチレンの化学式や分子式は?構造式や分子量・沸点・用途も解説【C2H4】というテーマで、エチレンの基本情報から製造方法・化学的性質・産業用途まで幅広く解説しました。

エチレンの分子式はC2H4であり、炭素間に二重結合(C=C)を持つ最もシンプルなアルケンです。

分子量は28、沸点は-103.7℃と非常に低く、常温では無色の気体として存在します。

工業的にはスチームクラッキングによって大量に製造され、ポリエチレンをはじめとする各種プラスチック・化学品の基礎原料として石油化学産業の中核を担っています。

付加反応・付加重合・酸化反応などさまざまな化学反応を示し、エチレンオキシドやエチレングリコール、酢酸ビニルなど多彩な誘導体が製造されています。

また、植物ホルモンとしての機能も持ち、農業分野でも活用されている点は非常に興味深いところではないでしょうか。

近年はバイオエチレンやCO2利用型の合成技術など、サステナブルな製造方法への転換も進んでおり、今後もエチレンは化学産業において欠かせない物質であり続けるでしょう。

有機化学の基礎として、またビジネスや研究の場でも、エチレンの知識はさまざまな場面で活きてくるはずです。