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鉛フリーはんだの融点は?従来はんだとの違いや種類別の数値一覧も【公的機関のリンク付き】

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電子機器の製造現場では、はんだ付けは欠かせない工程のひとつです。

近年、環境規制の強化により鉛フリーはんだの普及が急速に進んでいますが、「融点はどのくらいなの?」「従来の鉛入りはんだとどう違うの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

鉛フリーはんだの融点は、種類によって異なるうえ、従来の共晶はんだと比べると高温になる傾向があります。

この違いを正しく理解しておかないと、接合不良や基板へのダメージにつながる可能性もあるため、注意が必要です。

本記事では、鉛フリーはんだの融点を種類別に一覧でまとめながら、従来はんだとの違いやRoHS指令との関係についてもわかりやすく解説していきます。

公的機関のリンクも掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。

鉛フリーはんだの融点は主に217〜227℃前後が目安

それではまず、鉛フリーはんだの融点について結論から解説していきます。

鉛フリーはんだとは、鉛(Pb)を含まないはんだ材料の総称で、主にスズ(Sn)を基材として、銀(Ag)や銅(Cu)、ビスマス(Bi)などの金属を組み合わせた合金です。

代表的なSn-Ag-Cu系(SAC合金)の融点は、約217〜221℃とされています。

最も広く使われているSAC305(Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5)の融点は約217〜220℃で、業界標準として多くの電子機器製造に採用されています。

一方、従来の共晶はんだ(Sn63/Pb37)の融点は約183℃であるため、鉛フリーはんだは30〜40℃ほど高温になる点が大きな特徴です。

この融点の違いは、製造プロセスの温度管理に直接影響するため、リフロー炉の設定やフラックスの選定なども変わってきます。

融点が高いということは、それだけ基板や部品への熱ストレスも増すということでもあり、温度プロファイルの最適化が非常に重要です。

なお、融点には「固相線温度(ソリダス)」と「液相線温度(リキダス)」があり、この2点の間では固体と液体が共存する状態(パステ領域)になります。

固相線温度(ソリダス)=はんだが完全に固体の状態から溶け始める温度

液相線温度(リキダス)=はんだが完全に液体になる温度

この2点が一致するもの(共晶合金)は融点が1点に定まります。

SAC系の合金は共晶点を持たないため、融点は「範囲」として表されることが多くなっています。

種類別!鉛フリーはんだの融点一覧

続いては、鉛フリーはんだの種類ごとの融点数値を確認していきます。

鉛フリーはんだにはさまざまな合金系があり、用途や要求特性に応じて使い分けられています。

以下の表に、代表的な鉛フリーはんだの種類と融点をまとめました。

合金名称 組成 固相線温度(℃) 液相線温度(℃) 主な用途
SAC305 Sn96.5/Ag3.0/Cu0.5 217 220 リフロー・波はんだ全般
SAC405 Sn95.5/Ag4.0/Cu0.5 217 225 高信頼性用途
Sn-Cu共晶 Sn99.3/Cu0.7 227 227 波はんだ・コスト重視
Sn-Bi系 Sn42/Bi58 138 138 低温はんだ・耐熱部品
Sn-Zn系 Sn91/Zn9 198 198 アルミはんだ付け
Sn-In系 Sn48/In52 117 117 極低温・特殊用途

SAC系(スズ・銀・銅)の融点と特徴

SAC系はんだは、現在の鉛フリーはんだの中で最もスタンダードな合金系です。

融点は約217〜227℃の範囲に収まるものが多く、信頼性と作業性のバランスが取れています。

銀(Ag)の含有量を増やすほど接合強度が高まりますが、コストも上昇するため、用途に合わせた選定が求められます。

SAC305は業界での採用実績が豊富で、IPC(米国プリント回路協会)のガイドラインでも標準合金として位置づけられています。

Sn-Bi系(スズ・ビスマス)の融点と特徴

Sn-Bi系はんだは、ビスマスの添加によって融点を大幅に下げた低温はんだとして知られています。

Sn42/Bi58の共晶組成では融点が138℃まで下がり、耐熱性の低い部品や基板へのダメージを最小限に抑えられます。

近年は省エネ製造やフレキシブル基板向けにも注目されていますが、ビスマスが多いと接合部が脆くなる傾向があるため、使用環境の確認が必要です。

Sn-Cu系・Sn-Zn系・Sn-In系の融点と用途

Sn-Cu系はんだは、銀を含まないためコストが低く、波はんだ工程での使用に適しています。

Sn99.3/Cu0.7は共晶組成であり、融点が227℃の1点に定まる特性があります。

Sn-Zn系はアルミニウムとの親和性が高く、特殊用途向けの位置づけです。

Sn-In系は融点が100℃台と非常に低いため、極低温環境や精密部品のはんだ付けに用いられる場合があります。

従来はんだ(鉛入りはんだ)との違いを比較

続いては、鉛フリーはんだと従来の鉛入りはんだの違いを詳しく確認していきます。

「なぜ融点が高い鉛フリーに切り替える必要があるのか」という点について、背景も含めて整理していきましょう。

融点・ぬれ性・信頼性の比較

従来の共晶はんだ(Sn63/Pb37)の融点は約183℃で、共晶点を持つため温度管理がシンプルです。

これに対し、鉛フリーはんだは前述のとおり融点が高く、作業温度も250〜260℃前後と高温になります。

鉛入り共晶はんだ(Sn63/Pb37)と鉛フリーSAC305の主な違い

融点:183℃(共晶)対 217〜220℃(範囲あり)

ぬれ性:鉛入りの方が優れる

接合強度:鉛フリーの方が高い傾向

環境負荷:鉛フリーが大幅に低い

ぬれ性の観点では、鉛入りはんだの方が基板や部品への広がりが良く、接合しやすいとされています。

一方で、長期信頼性や機械的強度については、SAC系の鉛フリーはんだが優れているケースも報告されています。

製造プロセスへの影響

融点が高い鉛フリーはんだを使用する場合、リフロー炉のピーク温度を240〜250℃以上に設定する必要があります。

これにより、基板の反りや部品へのサーマルストレスが増加するリスクがあります。

また、フラックスの活性化温度やボイド(気泡)の発生傾向も異なるため、温度プロファイルの再設計が不可欠です。

特に多層基板や高密度実装では、熱履歴の管理が品質に直結するため、慎重な対応が求められます。

RoHS指令・環境規制との関係

鉛フリーへの移行が加速した最大の要因は、EU(欧州連合)のRoHS指令(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令)の施行です。

2006年7月に施行されたRoHS指令では、電子機器に含まれる鉛(Pb)の含有量を0.1重量%以下に制限することが義務づけられました。

日本でもJ-MOSSなどの対応規格が整備され、国内メーカー各社も鉛フリー化を推進してきた経緯があります。

RoHS指令の詳細については、欧州委員会の公式サイトでも確認できます(参考リンク:European Commission – RoHS Directive)。

また、経済産業省のホームページでもRoHS指令に関する国内対応の情報が公開されています(参考リンク:経済産業省 RoHS指令関連情報)。

鉛フリーはんだを選ぶ際のポイントと注意点

続いては、実際に鉛フリーはんだを選定する際に押さえておきたいポイントを確認していきます。

融点だけを基準に選んでしまうと、実際の工程や信頼性に問題が生じることもあるため、複数の観点から検討することが大切です。

使用環境・温度条件に合った合金系の選定

車載用途や産業機器など、高温環境にさらされる製品では、融点が高く耐熱性のある合金を選ぶ必要があります。

逆に、熱に弱いフレキシブル基板や有機ELパネルなどでは、低融点のSn-Bi系が適している場合もあるでしょう。

使用環境の最高温度と、はんだの固相線温度の差を十分に確保することが、接合信頼性の基本です。

使用環境の最高温度が85℃の製品に、固相線温度138℃のSn-Bi系はんだを使用した場合、安全マージンは53℃となります。

一般的には使用最高温度とはんだ固相線温度の差を50℃以上確保することが推奨されています。

コスト・入手性・フラックスとの適合性

SAC405のように銀含有量が多い合金は信頼性が高い一方、材料コストが高くなる傾向があります。

コスト重視の量産品では、銀を含まないSn-Cu系やSAC105(Sn98.5/Ag1.0/Cu0.5)などの低銀系を採用するケースもあります。

また、フラックスとの適合性も重要で、はんだの合金系に合ったフラックスを選定しないと、ぬれ不良やブリッジの原因になります。

JIS規格・IPC規格などの参照と品質管理

鉛フリーはんだの品質基準については、JIS Z 3282(鉛フリーはんだ)が日本の国家規格として定められています。

合金の組成や融点範囲、不純物の許容量などが規定されており、品質管理の基準として活用されています。

JIS規格の情報は、日本産業標準調査会(JISC)のウェブサイトで確認できます(参考リンク:日本産業標準調査会(JISC))。

また、国際的な実装品質基準としてはIPC-A-610なども広く参照されており、グローバルな製造現場では必須の知識といえるでしょう。

まとめ

本記事では、鉛フリーはんだの融点は主に217〜227℃前後が目安であること、種類別の融点数値、そして従来の鉛入りはんだとの違いについて詳しく解説してきました。

鉛フリーはんだの融点は従来はんだよりも高く、製造プロセスへの影響も無視できません。

しかしながら、RoHS指令をはじめとする環境規制への対応や、長期信頼性の観点から、鉛フリーへの移行は現代の電子機器製造において欠かせない取り組みとなっています。

合金系の種類によって融点は大きく異なるため、使用環境・コスト・規格への適合性を総合的に判断したうえで最適なはんだを選定することが重要です。

本記事が、はんだ選定の際の参考になれば幸いです。