化学反応

硝酸(HNO₃)の化学式・構造式・電子式を徹底解説|分子量と覚え方

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化学の授業で必ず学ぶ重要な化合物の一つが硝酸です。化学式HNO₃で表され、強い酸性と酸化力を持つ液体として知られています。

しかし、化学式、構造式、電子式、分子量など、覚えることがたくさんあって混乱していませんか。「硝酸の化学式は?」「構造式はどう書くの?」「分子量の計算方法は?」といった疑問を持っている方も多いでしょう。

本記事では、硝酸の化学式から電子式、分子量まで、基礎から丁寧に解説していきます。さらに、試験で役立つ覚え方のコツもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。この記事を読めば、硝酸に関する化学の基礎知識が完璧にマスターできます。

硝酸の化学式と元素記号

それではまず、硝酸の化学式と元素記号について解説していきます。化学式は物質を表す最も基本的な表記方法です。

硝酸の化学式HNO₃とは

硝酸の化学式はHNO₃と表記されます。

化学式が表す意味

この化学式は、硝酸分子が水素原子(H)1個、窒素原子(N)1個、酸素原子(O)3個で構成されていることを示しています。

化学式は、物質を構成する元素の種類と数を、元素記号と数字を使って簡潔に表現する方法です。HNO₃という表記を見れば、化学を学ぶ人なら誰でも「水素1個、窒素1個、酸素3個からなる化合物」だとすぐに理解できます。

HNO₃

H:水素原子 1個

N:窒素原子 1個

O:酸素原子 3個

硝酸は常温では無色の液体で、強い酸性を示します。工業的に大量生産され、肥料製造、火薬製造、金属の表面処理など、様々な用途で使用される重要な化学物質です。

硝酸の読み方と表記

化学式HNO₃の正しい読み方は「エイチエヌオースリー」または「エイチエヌオーサン」です。化学式は元素記号をそのままアルファベット読みし、数字を日本語または英語で読みます

表記する際の注意点は、添え字(下付き文字)を正しく書くことです。3という数字は通常の大きさではなく、Oの右下に小さく書きます。手書きの場合は、HNO₃のように書き、3を小さめに下に配置します。

ポイント:硝酸の化学式はHNO₃。水素1個、窒素1個、酸素3個で構成される強酸性の液体です。

構成元素と元素記号

硝酸を構成する元素は、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)の3種類です。

水素・窒素・酸素の原子量

それぞれの元素の基本情報と原子量を確認しましょう。

水素(H):原子番号1、原子量1。最も軽い元素で、宇宙で最も豊富に存在します。硝酸分子では、酸性を示す水素イオン(H⁺)の供与源となります。

窒素(N):原子番号7、原子量14。大気の約78%を占める気体です。硝酸分子では中心原子として、酸素原子と結合しています。

酸素(O):原子番号8、原子量16。大気の約21%を占める気体です。硝酸分子では3個の酸素原子が窒素と結合しています。

元素 元素記号 原子番号 原子量 硝酸中の個数
水素 H 1 1 1個
窒素 N 7 14 1個
酸素 O 8 16 3個

各元素の役割

硝酸分子内での各元素の役割を見ていきましょう。

水素原子は、ヒドロキシ基(-OH)の一部として存在し、酸性を示す水素イオンの供与源となります。硝酸が水に溶けると、この水素原子が水素イオン(H⁺)として放出され、強い酸性を示します。

窒素原子は分子の中心に位置し、3個の酸素原子と結合しています。窒素は+5の酸化数を持ち、これが硝酸の強い酸化力の源となっています。

酸素原子は3個あり、そのうち1個は水素と結合してヒドロキシ基を形成し、残りの2個は窒素と二重結合で結ばれています(共鳴構造を考慮)。

ポイント:硝酸は水素、窒素、酸素の3元素で構成され、各元素の原子量は1、14、16です。これらが分子量の計算に使われます。

化学式の読み方と意味

化学式HNO₃が持つ意味を詳しく見ていきましょう。

HNO₃の正しい読み方

化学式HNO₃の読み方は「エイチエヌオースリー」が一般的です。英語読みでは「エイチ・エヌ・オー・スリー」となります。

化学式を読む際の基本ルールは、元素記号をアルファベット読みし、数字をそのまま読むことです。数字が1の場合は省略されるため、HとNの後ろには数字がありません。

化学式から分かる情報

化学式HNO₃からは、様々な情報を読み取ることができます。

まず、分子を構成する原子の種類と数が分かります。H1個、N1個、O3個です。次に、分子量が計算できます(1 + 14 + 16×3 = 63)。

また、HNO₃という順序から、この化合物が酸であることも推測できます。酸の化学式は通常、水素(H)を最初に書くという慣例があります。例えば、塩酸(HCl)、硫酸(H₂SO₄)なども同様です。

ポイント:化学式HNO₃は「水素1個、窒素1個、酸素3個」を表し、Hが最初にあることから酸であることが分かります。

化学式は単なる記号ではなく、物質の本質を表現する重要な表記法なのです。

硝酸の構造式と電子式

続いては、硝酸の構造式と電子式を確認していきます。構造式と電子式は、化学式だけでは分からない分子の詳細な構造を表現します。

構造式(示性式)の書き方

硝酸の構造式は、原子間の結合を線で表したものです。

硝酸の構造式

硝酸の構造式は以下のように表されます。

構造式:

  O

  ||

HO-N=O

または、より詳しく書くと:

  O

  ‖

H-O-N

  ‖

  O

この構造式から、水素原子が酸素原子と結合し(ヒドロキシ基-OH)、その酸素が窒素と結合していることが分かります。窒素原子は残りの2個の酸素原子とも結合しています。

結合の種類と特徴

硝酸分子内には、異なる種類の結合が存在します。

H-O結合:単結合(共有結合)
O-N結合:実際には共鳴構造により、単結合と二重結合の中間的な性質を持ちます
N=O結合:二重結合(ただし共鳴により中間的)

硝酸の特徴は共鳴構造を持つことです。窒素と3個の酸素の結合は、実際には等価ではなく、電子の偏りがあります。この共鳴構造が、硝酸の安定性と反応性に影響を与えています。

ポイント:硝酸の構造式は、窒素を中心に3個の酸素が結合し、そのうち1個に水素が付いた形です。共鳴構造を持つのが特徴です。

電子式と電子配置

電子式は、原子の最外殻電子(価電子)を点や×で表し、共有結合や非共有電子対を明確に示す表記方法です。

硝酸の電子式

硝酸の電子式は複雑ですが、基本的な考え方は以下の通りです。

水素原子は最外殻に1個の電子を持ち、酸素と共有結合を形成します。酸素原子は最外殻に6個の電子を持ち、そのうち2個を結合に、残りを非共有電子対として持ちます。

窒素原子は最外殻に5個の電子を持ち、3個の酸素原子と結合を形成します。ただし、実際には窒素の+5酸化状態を考慮する必要があります。

電子配置の概要:

・水素:1個の価電子を共有結合に使用

・窒素:5個の価電子を結合に使用

・酸素:6個の価電子のうち一部を結合に、一部を非共有電子対に

共鳴構造

硝酸の最も重要な特徴は共鳴構造です。窒素と酸素の結合は、複数の構造式の間で電子が共鳴している状態にあります。

共鳴構造では、二重結合の位置が異なる複数の構造式を矢印(↔)で結んで表現します。実際の分子は、これらの構造の混合した状態(共鳴混成体)として存在します。

ポイント:硝酸は共鳴構造を持ち、窒素-酸素結合は単結合と二重結合の中間的な性質を示します。この共鳴が分子の安定性を高めています。

共鳴構造の理解は、硝酸の反応性や安定性を理解する上で重要です。

分子の形と結合角

硝酸分子の立体構造を見ていきましょう。

平面三角形の構造

硝酸分子の窒素原子を中心とした部分は、平面三角形の構造を持ちます。窒素原子を中心に、3個の酸素原子が平面上に配置されています。

この平面三角形構造は、窒素原子の周りに3つの結合と非共有電子対がないことから生じます。VSEPR理論(原子価殻電子対反発理論)によれば、3つの結合電子対は互いに最も離れた位置、つまり平面三角形の頂点に配置されます。

結合の長さと角度

硝酸分子内の結合角は以下のようになっています。

O-N-O角度:約120度
これは平面三角形構造における理想的な角度です。3つの酸素原子が窒素を中心に等間隔(120度ずつ)に配置されています。

ただし、ヒドロキシ基の酸素(H-O-N)と他の2個の酸素では、結合の性質がやや異なるため、厳密には完全に等しい角度ではありません。

ポイント:硝酸の窒素原子周辺は平面三角形構造で、O-N-O角度は約120度です。平面構造を持つことが特徴です。

項目 内容
分子の形 平面三角形(窒素中心)
O-N-O角度 約120度
結合の種類 共鳴構造(単結合と二重結合の中間)

この平面構造が、硝酸の化学的性質に影響を与えています。

硝酸の分子量と計算方法

続いては、硝酸の分子量と計算方法を確認していきます。分子量は化学計算の基礎となる重要な概念です。

分子量の定義と計算

分子量とは、分子を構成する全ての原子の原子量の総和のことです。

硝酸の分子量

硝酸の分子量を求めるには、構成原子である水素、窒素、酸素の原子量を知る必要があります。

水素(H)の原子量:1
窒素(N)の原子量:14
酸素(O)の原子量:16

硝酸HNO₃の分子量は、以下のように計算されます。

硝酸の分子量の計算:

水素(H)の原子量:1

窒素(N)の原子量:14

酸素(O)の原子量:16

分子量 = 1 × 1 + 14 × 1 + 16 × 3

= 1 + 14 + 48 = 63

したがって、硝酸の分子量は63となります。

計算の手順

分子量を求める手順を、ステップごとに確認しましょう。

ステップ1:化学式を確認する
硝酸の化学式はHNO₃です。

ステップ2:構成元素と個数を特定する
H:1個、N:1個、O:3個

ステップ3:各元素の原子量を調べる
H=1、N=14、O=16

ステップ4:「原子量×個数」を各元素について計算する
H:1×1=1
N:14×1=14
O:16×3=48

ステップ5:全てを足し合わせる
1+14+48=63

ポイント:硝酸の分子量は63。水素1、窒素14、酸素48を足し合わせて求めます。

この計算方法は、どんな化合物の分子量を求める場合にも使える基本的な手順です。

原子量を使った分子量の求め方

分子量の計算をより詳しく見ていきましょう。

各元素の原子量と個数

硝酸HNO₃の場合、各元素の原子量と個数の関係を表にまとめると、以下のようになります。

元素 元素記号 原子量 個数 原子量×個数
水素 H 1 1 1
窒素 N 14 1 14
酸素 O 16 3 48
合計(分子量) 63

この表を見れば、分子量63のうち、酸素が48と最も大きな割合を占めていることが分かります。

計算例と練習問題

硝酸の分子量計算を繰り返し練習することで、確実に身につけましょう。

計算例1:硝酸63gは何molか?
63g ÷ 63g/mol = 1mol

計算例2:硝酸0.5molの質量は?
0.5mol × 63g/mol = 31.5g

練習問題:硝酸126gは何molか?
答え:126g ÷ 63g/mol = 2mol

ポイント:分子量63を使えば、硝酸の質量とモル数を相互に変換できます。「質量÷分子量=モル数」という公式を覚えましょう。

分子量から物質量(モル)を計算する

分子量が分かれば、物質の質量から物質量(モル数)を計算することができます。

モル質量の概念

物質量(モル)とは、物質の量を表す単位で、6.02×10²³個(アボガドロ数)の粒子(原子、分子、イオンなど)を1モルと定義します。

分子量にグラム(g)の単位をつけた質量が、その物質1モルの質量(モル質量)となります。硝酸の場合、分子量が63なので、63gの硝酸が1モルに相当します。

硝酸のモル質量:63 g/mol

つまり、硝酸63g = 1mol = 6.02×10²³個の分子

質量とモルの変換

物質量の計算式は以下の通りです。

物質量(mol) = 質量(g) ÷ 分子量

質量(g) = 物質量(mol) × 分子量

具体例で確認しましょう。

例1:硝酸189gは何molか?
189g ÷ 63g/mol = 3mol

例2:硝酸2.5molの質量は?
2.5mol × 63g/mol = 157.5g

硝酸の質量 物質量(モル数) 分子の個数
63 g 1 mol 6.02×10²³個
126 g 2 mol 1.20×10²⁴個
31.5 g 0.5 mol 3.01×10²³個

ポイント:分子量63を使えば、硝酸の質量とモル数を相互に変換できます。化学量論計算の基礎となる重要なスキルです。

この計算方法は、化学反応の量的関係を扱う化学量論において必須のスキルです。

硝酸の化学式・構造式・分子量の覚え方

続いては、硝酸の化学式・構造式・分子量の覚え方を確認していきます。効率的な覚え方を知ることで、試験でも自信を持って答えられるようになります。

化学式HNO₃の簡単な覚え方

硝酸の化学式HNO₃を覚えるコツを見ていきましょう。

語呂合わせと覚え方のコツ

化学式HNO₃を覚える語呂合わせをいくつか紹介します。

語呂合わせ1:「エイチ(H)、エヌ(N)、オー(O)が3つ」
シンプルですが、リズムよく覚えられます。

語呂合わせ2:「H(エイチ)は NO(ノー)と3回言う」
HとNOを組み合わせた覚え方です。

覚え方のコツ:硝酸は「硝」という漢字に「石」が含まれています。これは窒素(N)を連想させます。そして、酸には必ず水素(H)があり、酸素(O)も含まれることを思い出しましょう。

他の酸との比較で覚える

硝酸を他の代表的な酸と比較して覚えると、より記憶に定着しやすくなります。

酸の種類 化学式 特徴
塩酸 HCl 水素+塩素
硫酸 H₂SO₄ 水素2+硫黄+酸素4
硝酸 HNO₃ 水素+窒素+酸素3
酢酸 CH₃COOH 有機酸

パターンに注目すると、無機酸は「H+中心元素+O(酸素)」という構造が多いことが分かります。硝酸の場合、中心元素が窒素(N)で、酸素が3個ついています。

ポイント:化学式HNO₃は「水素1つ、窒素1つ、酸素3つ」。他の酸と比較しながら覚えると効果的です。

構造式・電子式の覚え方のコツ

構造式と電子式を覚えるには、「窒素を中心に、酸素が3つ、そのうち1つに水素がつく」というイメージを持つことが重要です。

構造式を覚えるポイント

硝酸の構造式を覚えるポイントは、以下の3つです。

ポイント1:窒素が中心
窒素原子を中心に置き、そこから3本の結合が伸びていると考えます。

ポイント2:酸素が3個
3本の結合の先に、それぞれ酸素原子があります。

ポイント3:水素は1個の酸素にだけ
3個の酸素のうち、1個だけに水素(H)が結合しています。この部分がヒドロキシ基(-OH)です。

構造式の覚え方:

中心にN、周りにO3個、1個のOにHがつく

視覚的に覚えるコツとして、「窒素を中心とした平面三角形の頂点に酸素が3つ、そのうち1つにHがくっついている」とイメージすると良いでしょう。

電子式と共鳴構造の理解

電子式については、完全に書けなくても、共鳴構造の概念を理解しておくことが重要です。

硝酸の窒素-酸素結合は、単結合でも二重結合でもない、中間的な性質を持ちます。これは電子が複数の構造の間で共鳴しているためです。

覚え方のコツ:「硝酸は共鳴する」という事実だけでも記憶しておきましょう。この共鳴により、硝酸は安定した構造を持ち、強い酸性を示します。

ポイント:構造式は「窒素中心、酸素3個、水素1個」。共鳴構造を持つことが硝酸の特徴です。

分子量63の覚え方と確認問題

硝酸の分子量63を覚える方法と、確認問題で理解度をチェックしましょう。

分子量の語呂合わせ

硝酸の分子量63を覚える語呂合わせをいくつか紹介します。

語呂合わせ1:「硝酸は、ロックさん(63)」
ロック(rock)と63をかけた覚え方です。

語呂合わせ2:「硝酸、むさん(63)」
「無酸」と「63」の語呂合わせです。

計算で覚える方法:
語呂合わせが苦手な人は、計算式そのものを覚えるのも有効です。

H(1) + N(14) + O×3(48) = 63

1 + 14 + 48 = 63

「1、14、48で63」というリズムで覚えましょう。または、「酸素48がメイン、そこに窒素14と水素1を足して63」と覚える方法もあります。

練習問題で確認

最後に、練習問題で理解度を確認しましょう。

問題1:硝酸の化学式を書きなさい。
答え:HNO₃

問題2:硝酸の分子量を求めなさい。
答え:1 + 14 + 16×3 = 63

問題3:硝酸126gは何molか。
答え:126g ÷ 63g/mol = 2mol

問題4:硝酸1.5molの質量は何gか。
答え:1.5mol × 63g/mol = 94.5g

問題5:硝酸分子を構成する原子の種類と個数を答えなさい。
答え:水素(H)1個、窒素(N)1個、酸素(O)3個

ポイント:分子量63を覚えていれば、質量とモル数の変換問題は確実に解けます。「質量÷63=モル数」「モル数×63=質量」を使いこなしましょう。

繰り返し練習問題を解くことで、硝酸に関する知識が確実に定着します。

まとめ

硝酸の化学式・構造式・電子式・分子量について、基礎から覚え方まで詳しく解説してきました。

硝酸の化学式はHNO₃で、水素原子1個、窒素原子1個、酸素原子3個で構成されています。構造式では、窒素を中心に3個の酸素が平面三角形状に配置され、そのうち1個に水素が結合しています。

分子量は63で、水素の原子量1、窒素の原子量14、酸素の原子量16×3を足し合わせて求めます。この分子量を使えば、硝酸の質量とモル数を相互に変換できます。

重要ポイント総まとめ:

・化学式:HNO₃

・構成:H 1個、N 1個、O 3個

・分子の形:平面三角形(窒素中心)

・分子量:63

・モル質量:63 g/mol

・特徴:共鳴構造を持つ

覚え方のコツとしては、化学式は「H、N、Oが3つ」というリズム、構造式は「窒素中心、酸素3個、水素1個」、分子量は「1+14+48=63」または「ロックさん(63)」という語呂合わせが効果的です。

この記事で学んだ知識を活かして、化学の試験や問題演習に自信を持って取り組んでください。硝酸の化学式・構造式・分子量を理解することは、化学の基礎を固める上で非常に重要です。繰り返し復習して、確実に身につけていきましょう。