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ゴムの熱伝導率は?W/m・Kの数値と種類別の違い・シリコーンゴムとの比較も解説

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ゴムはさまざまな産業や日常生活の場面で幅広く使用されている素材ですが、その熱伝導率について正確に把握している方は少ないかもしれません。

熱伝導率はW/m・Kという単位で表され、素材がどれだけ効率よく熱を伝えるかを示す重要な指標です。

ゴムは一般的に熱を伝えにくい素材として知られていますが、その数値は種類によって大きく異なります。

天然ゴムやブチルゴム、ネオプレンゴムといった種類ごとの違いはもちろん、近年注目されているシリコーンゴムとの比較まで、しっかりと理解することで素材選びの精度が大きく向上するでしょう。

本記事では、ゴムの熱伝導率をW/m・Kの数値をもとに詳しく解説しつつ、種類別の特性やシリコーンゴムとの違いについても丁寧にお伝えしていきます。

ゴムの熱伝導率はW/m・Kで約0.1〜0.4程度と低く、断熱性に優れた素材

それではまず、ゴムの熱伝導率の基本的な数値と、その意味について解説していきます。

ゴムの熱伝導率は、種類にもよりますが一般的に0.1〜0.4 W/m・K程度の範囲に収まることが多い素材です。

これは金属と比較すると非常に低い数値であり、熱を伝えにくい、いわゆる断熱性に優れた素材であることを示しています。

たとえば、鉄の熱伝導率は約80 W/m・K、アルミニウムは約200 W/m・Kですので、ゴムがいかに熱を通しにくいかがイメージしやすいでしょう。

熱伝導率の比較例(参考値)

鉄      約80 W/m・K

アルミニウム 約200 W/m・K

天然ゴム   約0.13〜0.15 W/m・K

シリコーンゴム 約0.2〜0.3 W/m・K

ネオプレン  約0.19〜0.23 W/m・K

熱伝導率が低いということは、外部の熱が内部に伝わりにくく、逆に内部の熱が外部に逃げにくいことを意味します。

この性質がゴムを断熱材・防振材・シール材として幅広い用途に適した素材にしている大きな理由のひとつです。

ゴムの熱伝導率は約0.1〜0.4 W/m・Kと非常に低く、金属と比較すると数百分の一以下の値です。この低い熱伝導率こそが、ゴムが断熱・絶熱素材として多くの産業で活用されている根本的な理由といえます。

また、ゴムの熱伝導率は配合されるカーボンブラックや充填剤の種類・量によっても変化するため、用途に応じて調整が可能な点も大きな特徴といえるでしょう。

種類別に見るゴムの熱伝導率の違いと特性

続いては、ゴムの種類ごとに熱伝導率がどのように異なるかを確認していきます。

一口にゴムといっても、天然ゴムから合成ゴムまで多種多様な素材が存在しており、それぞれの熱伝導率や熱的特性は異なります。

素材選びの際には、熱伝導率だけでなく耐熱性・耐寒性・耐薬品性など複合的な観点から検討することが重要です。

天然ゴム(NR)の熱伝導率と特性

天然ゴム(NR)の熱伝導率は約0.13〜0.15 W/m・Kとされており、ゴム素材の中でも比較的低い部類に入ります。

優れた弾性と引張強度を持ち、振動吸収性も高いことから防振部品や自動車部品などに広く使用されています。

ただし、耐熱性はあまり高くなく、高温環境での使用には適さない場合があることに注意が必要でしょう。

耐熱温度は一般的に70〜80℃程度とされており、高温環境での長期使用では劣化が進みやすい素材です。

ブチルゴム(IIR)・ネオプレンゴム(CR)の熱伝導率

ブチルゴム(IIR)は気体透過性が非常に低く、タイヤのインナーライナーや防振材に多く使用されているゴムです。

熱伝導率は約0.10〜0.16 W/m・K程度で、断熱性能はゴム素材の中でもトップクラスといえるでしょう。

一方、ネオプレンゴム(CR)の熱伝導率は約0.19〜0.23 W/m・K程度で、耐候性・耐油性・難燃性に優れた素材です。

ウェットスーツや工業用ベルト、電線被覆材など、屋外や過酷な環境での使用に適しています。

EPDM・ニトリルゴム(NBR)の熱伝導率

EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)は耐候性・耐オゾン性・耐熱性に優れたゴムで、熱伝導率は約0.25〜0.35 W/m・K程度です。

自動車のシール材や建築用ガスケット、屋根材など、屋外用途での採用が多い素材です。

ニトリルゴム(NBR)は耐油性が高く、燃料や油脂類に接触する環境での使用に適しています。

熱伝導率は約0.25〜0.30 W/m・K程度で、油圧機器や自動車エンジン周辺部品などへの適用が一般的でしょう。

ゴムの種類 熱伝導率(W/m・K) 主な特徴 主な用途
天然ゴム(NR) 0.13〜0.15 高弾性・高引張強度 防振部品・自動車部品
ブチルゴム(IIR) 0.10〜0.16 低気体透過性・高断熱 タイヤ・防振材
ネオプレンゴム(CR) 0.19〜0.23 耐候性・難燃性 ウェットスーツ・電線被覆
EPDM 0.25〜0.35 耐候性・耐オゾン性 建築シール材・屋根材
ニトリルゴム(NBR) 0.25〜0.30 耐油性 油圧機器・エンジン部品
シリコーンゴム(VMQ) 0.20〜0.30 耐熱性・耐寒性 医療・食品・電子部品

シリコーンゴムの熱伝導率と一般ゴムとの比較

続いては、近年さまざまな産業で注目されているシリコーンゴムの熱伝導率と、一般的なゴムとの違いを確認していきます。

シリコーンゴム(VMQ)は、その名の通りシリコーン(ケイ素)を主成分としたゴムで、有機ゴムとは異なる独自の特性を持っています。

シリコーンゴムの熱伝導率と耐熱性の高さ

シリコーンゴムの熱伝導率は通常グレードで約0.20〜0.30 W/m・K程度です。

数値だけ見ると天然ゴムやブチルゴムよりやや高い程度ですが、シリコーンゴムの最大の特徴は耐熱性と耐寒性の広い使用温度範囲にあります。

一般的なシリコーンゴムは−60℃〜200℃以上の環境でも安定した性能を発揮することが可能です。

この広い温度範囲での使用適性が、医療機器・食品機械・電子部品など精密な用途でシリコーンゴムが選ばれる大きな理由のひとつといえるでしょう。

熱伝導性シリコーンゴムという特殊グレードの存在

通常のシリコーンゴムは熱を伝えにくい素材ですが、用途によっては逆に熱を効率よく伝えたい場面も存在します。

そのような場合に使用されるのが、アルミナや窒化ホウ素などの熱伝導性フィラーを配合した「熱伝導性シリコーンゴム」です。

このタイプのシリコーンゴムは熱伝導率が1.0〜5.0 W/m・K以上に達するものもあり、電子機器の放熱シートやサーマルパッドとして広く活用されています。

熱伝導性シリコーンゴムは、フィラーの種類や配合量を調整することで熱伝導率を大幅に向上させることが可能です。通常グレードの約0.2〜0.3 W/m・Kに対し、高熱伝導グレードでは5 W/m・Kを超えるものも存在し、放熱対策が求められる電子部品分野で重要な役割を担っています。

一般ゴムとシリコーンゴムを選ぶ際のポイント

一般ゴムとシリコーンゴムを選ぶ際は、熱伝導率だけでなく使用環境に応じた総合的な判断が必要です。

コスト面では天然ゴムやEPDMなどの一般ゴムの方が有利ですが、高温・低温環境や食品衛生基準が求められる場合はシリコーンゴムの方が適しているでしょう。

また、シリコーンゴムは引張強度が一般ゴムより低い場合があるため、機械的強度が重要な用途では注意が必要です。

用途・環境・コストのバランスを考慮しながら、最適な素材を選ぶことが大切といえます。

熱伝導率に影響を与えるゴムの配合・構造的な要因

続いては、ゴムの熱伝導率に影響を与える配合や構造上の要因について確認していきます。

ゴムの熱伝導率は素材そのものの性質だけでなく、製造過程での配合設計によっても大きく変化します。

この点を理解しておくことで、熱伝導率の数値をより正確に解釈できるようになるでしょう。

充填剤(フィラー)が熱伝導率に与える影響

ゴムに配合される充填剤(フィラー)の種類と量は、熱伝導率に直接影響を与える重要な因子です。

カーボンブラックはゴムの補強材として一般的に使用されますが、配合量が増えると熱伝導率が若干向上する傾向があります。

一方、アルミナ(酸化アルミニウム)や窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの無機フィラーは、ゴムの熱伝導率を大幅に向上させる効果が期待できます。

これらのフィラーを高充填することで、熱伝導率を数倍以上に引き上げることも可能です。

架橋密度・発泡構造が熱伝導率に与える影響

ゴムの架橋密度(加硫度)も熱伝導率に影響を与える要素のひとつです。

架橋密度が高いほど分子鎖の動きが制限され、熱伝導率がわずかに変化することが知られています。

また、発泡ゴム(スポンジゴム)の場合は内部に多くの空気の層が形成されるため、熱伝導率は無発泡のゴムよりもさらに低くなります。

発泡ゴムの熱伝導率は約0.03〜0.06 W/m・K程度まで下がるものもあり、断熱材としての性能は非常に高いものとなるでしょう。

発泡ゴムの熱伝導率の例

無発泡ゴム  約0.13〜0.35 W/m・K

発泡ゴム(スポンジ) 約0.03〜0.06 W/m・K

空気     約0.024 W/m・K

発泡構造によって内部に閉じ込められた空気が断熱層として機能し、熱伝導率を大幅に低下させます。

ゴムの厚みと熱抵抗の関係

熱伝導率はあくまで素材固有の物性値ですが、実際の断熱効果は素材の厚みと密接に関係しています。

熱抵抗はゴムの厚み(m)を熱伝導率(W/m・K)で割った値で求めることができます。

熱抵抗の計算式

熱抵抗(m²・K/W)= 厚み(m)÷ 熱伝導率(W/m・K)

例 熱伝導率0.15 W/m・Kのゴムを厚み10mm(0.01m)で使用した場合

熱抵抗 = 0.01 ÷ 0.15 ≒ 0.067 m²・K/W

同じ素材でも厚みを増やすことで熱抵抗が高まり、断熱性能を向上させることができます。

用途に合わせて素材の熱伝導率と厚みの両方を考慮した設計が、実用上は非常に重要なポイントといえるでしょう。

まとめ

本記事では「ゴムの熱伝導率は?W/m・Kの数値と種類別の違い・シリコーンゴムとの比較も解説」というテーマで、ゴムの熱伝導率に関する基本的な数値から種類別の特性、シリコーンゴムとの比較、そして配合・構造的な影響因子まで幅広くご説明してきました。

ゴムの熱伝導率は一般的に0.1〜0.4 W/m・K程度と低く、金属とは比較にならないほど熱を伝えにくい素材です。

天然ゴムやブチルゴムは特に断熱性が高く、EPDMやニトリルゴムは耐熱性や耐油性を加味した環境での使用に適しています。

シリコーンゴムは熱伝導率そのものは標準的なゴムと大差ありませんが、広い使用温度範囲と化学的安定性が際立った強みであり、熱伝導性グレードを活用すれば放熱材としての機能も持たせることができます。

また、発泡構造やフィラーの配合によって熱伝導率は大きく変化するため、設計段階での素材選定と仕様の確認が非常に重要です。

ゴムの熱伝導率への正しい理解が、用途に最適な素材選びと製品品質の向上につながるでしょう。

本記事がゴムの素材選定や設計のご参考になれば幸いです。