技術(非IT系)

ポリスチレンの融点と密度や比重は?発泡スチロールとの違い・熱伝導率も解説【公的機関のリンク付き】

当サイトでは記事内に広告を含みます

プラスチック素材のなかでも幅広い用途で活躍する「ポリスチレン」。しかし、その融点や密度・比重、熱伝導率といった物性値を正確に把握している方は意外と少ないかもしれません。

また、日常生活でおなじみの「発泡スチロール」との違いについても、混同されているケースが多く見受けられます。

本記事では、ポリスチレンの融点と密度や比重は?発泡スチロールとの違い・熱伝導率も解説というテーマで、材料としての基本的な物性から実用上のポイントまで、わかりやすく解説していきます。

工業・包装・断熱など、さまざまな分野でポリスチレンを扱う方にとって、ぜひ参考にしていただける内容です。

ポリスチレンの融点・密度・比重・熱伝導率の基本まとめ

それではまず、ポリスチレンの物性値についての結論から解説していきます。

ポリスチレン(Polystyrene、略称PS)は、スチレンモノマーを重合して得られる熱可塑性樹脂です。透明性が高く、成形加工が容易なため、食品容器・家電部品・文具など多くの製品に使われています。

その基本的な物性値を表にまとめると、以下のとおりです。

物性項目 ポリスチレン(汎用グレード)の値
融点(軟化点) 約80〜100℃(ガラス転移温度)/完全な融点は約240℃前後
密度 約1.04〜1.06 g/cm³
比重 約1.04〜1.06(水を1とした場合)
熱伝導率 約0.10〜0.17 W/(m・K)
引張強度 約35〜60 MPa
耐熱温度 約70〜90℃

ポリスチレンは非晶性樹脂であるため、明確な融点(結晶融点)を持たない素材です。熱可塑性樹脂としての加工温度は200〜240℃付近であり、ガラス転移温度(Tg)は約80〜100℃が目安とされています。

ガラス転移温度とは、非晶性高分子が硬くてガラス状の状態から、柔らかくゴム状へと変化し始める温度のことです。

ポリスチレンはこのガラス転移温度が比較的低いため、熱には弱い素材として知られています。

密度と比重はほぼ同じ数値(約1.04〜1.06)となっており、これは水よりわずかに重いことを意味します。つまり、固体のポリスチレンを水に入れると沈むことになります。

ポリスチレンの融点について詳しく解説

続いては、ポリスチレンの「融点」について詳しく確認していきます。

冒頭でも触れたように、ポリスチレンは非晶性(アモルファス)高分子であるため、結晶性樹脂のように明確な「融点」が存在しません。

ナイロンやポリエチレンのような結晶性樹脂では、加熱すると特定温度で急激に溶けだす「結晶融点」が見られます。一方、ポリスチレンのような非晶性樹脂は、加熱とともに徐々に軟化していく特徴があります。

非晶性樹脂の熱変化の流れ(ポリスチレンの例)

室温(固体・硬い状態)→ ガラス転移温度(約80〜100℃)付近で軟化開始 → 約200〜240℃で溶融・成形可能な流動状態に

製造・加工の現場では、射出成形や押出成形の際の加工温度として200〜240℃が一般的に使用されます。

また、耐熱性の観点から見ると、ポリスチレンは70〜90℃を超えると変形や軟化が起こりやすいため、電子レンジ対応の容器や高温環境での使用には向いていません。

このような耐熱性の低さを改善するために、アクリロニトリルやブタジエンを共重合させたAS樹脂(スチレン-アクリロニトリル共重合体)ABS樹脂といった改良素材も広く使われています。

公的機関の情報として、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)でも各種プラスチックの物性データが参照可能です。

参考リンク:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)公式サイト

ガラス転移温度(Tg)とは

ガラス転移温度(Tg)は、高分子材料の重要な特性値のひとつです。

この温度を超えると、高分子鎖の運動性が高まり、素材が柔らかくなる現象が起こります。ポリスチレンではTgが約80〜100℃とされており、日常的な使用環境では硬くて脆い特性を示します。

Tg以下の状態では分子鎖の動きが凍結されたような状態にあるため、外力に対して脆く割れやすい性質があることも覚えておきたいポイントです。

加工温度と成形条件

ポリスチレンの射出成形における一般的な条件として、シリンダー温度は180〜280℃程度、金型温度は20〜60℃程度が目安とされています。

流動性が高く成形しやすいことが、ポリスチレンが大量生産品に採用される大きな理由のひとつでしょう。

ただし、高温での熱分解によりスチレンモノマーが発生することがあるため、過剰な加熱は避ける必要があります。

耐熱性を高めたポリスチレン系素材

通常のポリスチレン(GPPS)の耐熱性の低さを補うために、さまざまな改良グレードが開発されています。

代表的なものとして、耐熱PS(HIPS:ハイインパクトポリスチレン)があり、ゴム成分を添加することで耐衝撃性も向上させた素材です。

また、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)は結晶性を持つ特殊なポリスチレンであり、融点が約270℃と高く、エンジニアリングプラスチックとしての用途も持ちます。

ポリスチレンの密度・比重と発泡スチロールとの違い

続いては、ポリスチレンの密度・比重と、発泡スチロールとの関係・違いを確認していきます。

「発泡スチロール」はポリスチレンと同じ素材ではないのか、と思われる方もいるかもしれません。実際のところ、発泡スチロールはポリスチレンをベースにした素材ではありますが、製法と構造が大きく異なります。

発泡スチロールの正式名称は「発泡ポリスチレン(EPS:Expanded Polystyrene)」です。ポリスチレンのビーズに発泡剤を含ませ、蒸気で加熱・膨張させることで、内部に無数の気泡を持つ構造体となります。この気泡の存在が、物性値を大きく変化させる要因です。

以下の表で、固体ポリスチレンと発泡スチロール(EPS)の物性値を比較してみましょう。

物性項目 固体ポリスチレン(GPPS) 発泡スチロール(EPS)
密度 約1.04〜1.06 g/cm³ 約0.01〜0.03 g/cm³
比重 約1.04〜1.06 約0.01〜0.03
熱伝導率 約0.10〜0.17 W/(m・K) 約0.03〜0.04 W/(m・K)
水への浮き沈み 沈む(水より重い) 浮く(水より大幅に軽い)
断熱性 比較的低い 非常に高い

表を見るだけで、両者の性質が大きく異なることがわかるでしょう。

発泡スチロールの密度が0.01〜0.03 g/cm³というのは、固体ポリスチレンの約1/50〜1/30程度の軽さを意味します。内部のほとんどが空気であるため、非常に軽量で断熱性に優れています。

密度・比重の違いが生む特性差

固体のポリスチレンは水に沈みますが、発泡スチロールは水に浮きます。

この違いは、発泡スチロール内部に閉じ込められた空気の密度(約0.0012 g/cm³)が全体の密度を大幅に下げているためです。

梱包材や断熱材として発泡スチロールが重宝される理由は、まさにこの軽量性と断熱性の高さにあります。

熱伝導率の比較と断熱材としての優位性

熱伝導率は、その素材がどれだけ熱を伝えやすいかを示す指標です。

固体ポリスチレンの熱伝導率が約0.10〜0.17 W/(m・K)であるのに対し、発泡スチロールは約0.03〜0.04 W/(m・K)と大幅に低くなっています。

この値は、建築用断熱材としてよく使われるグラスウール(約0.038 W/(m・K))と同程度であり、発泡スチロールが優れた断熱材であることを裏付けています。

断熱材としての性能を示すλ(ラムダ)値(熱伝導率)が低いほど、断熱性能が高いとされています。

用途における使い分け

固体ポリスチレンは、透明性・剛性・成形性が求められる用途に適しています。

一方、発泡スチロールは断熱性・緩衝性・軽量性が求められる用途に向いており、食品の保冷容器・建築断熱材・精密機器の梱包材などとして幅広く活用されています。

同じポリスチレン系素材でも、製法の違いによってこれほど異なる特性を持つのは興味深いポイントといえるでしょう。

ポリスチレンの熱伝導率と熱的特性の詳細

続いては、ポリスチレンの熱伝導率と熱的特性についてさらに詳しく確認していきます。

熱伝導率はW/(m・K)という単位で表され、値が大きいほど熱を伝えやすく、小さいほど熱を伝えにくい(断熱性が高い)素材であることを示します。

主な素材の熱伝導率の比較

金属(銅):約400 W/(m・K)

金属(アルミニウム):約236 W/(m・K)

ガラス:約1.0 W/(m・K)

固体ポリスチレン:約0.10〜0.17 W/(m・K)

発泡スチロール(EPS):約0.03〜0.04 W/(m・K)

空気:約0.026 W/(m・K)

上記の比較からもわかるように、固体ポリスチレンでも金属と比較すると圧倒的に熱を伝えにくい素材です。

プラスチック全般に共通する特性として、熱伝導率が低いことが挙げられます。これが、プラスチック製品が日用品として広く使われる理由のひとつでもあります。

熱伝導率と断熱性能の関係

建築分野では、断熱材の性能を評価する際に熱伝導率(λ値)が基準のひとつとなっています。

国土交通省や経済産業省では、省エネ基準に関連した断熱材の性能規定を公表しており、ポリスチレン系断熱材(EPS・XPS)もそこに含まれています。

参考リンク:国土交通省 住宅の省エネ基準に関する情報

押出発泡ポリスチレン(XPS)は、EPSよりもさらに熱伝導率が低く約0.028〜0.040 W/(m・K)程度とされ、床下断熱材や外断熱工法などに広く使用されています。

耐薬品性・電気特性との関連

ポリスチレンは熱的特性だけでなく、電気絶縁性も優れた素材です。

誘電率が低く、高周波絶縁材料としても利用されることがあります。一方で、有機溶剤(ベンゼン・トルエン・アセトンなど)には溶解しやすく、耐薬品性には限界があります。

また、紫外線による劣化(黄変・脆化)も起こりやすいため、屋外用途には耐候グレードへの変更やコーティング処理が必要です。

リサイクルと環境への配慮

ポリスチレンのリサイクル識別番号は「6」(PS)として国際的に定められています。

発泡スチロールのリサイクルについては、公益財団法人日本容器包装リサイクル協会が回収・再資源化の仕組みを提供しており、溶融固化やサーマルリサイクルなどの方法が活用されています。

参考リンク:公益財団法人日本容器包装リサイクル協会(JCPRA)

環境負荷の観点から、使用量の削減や代替素材への移行も進んでいる分野ですが、断熱性能の高さや加工性の良さから、ポリスチレン系素材の需要は依然として高い水準を維持しています。

まとめ

本記事では、ポリスチレンの融点と密度や比重は?発泡スチロールとの違い・熱伝導率も解説というテーマで、ポリスチレンの基本物性から発泡スチロールとの違いまで詳しく解説してきました。

ポイントを振り返ると、ポリスチレンは非晶性樹脂であるため明確な融点を持たず、ガラス転移温度(Tg)が約80〜100℃、加工温度が約200〜240℃という特性を持ちます。

密度は約1.04〜1.06 g/cm³で水より重く、熱伝導率は約0.10〜0.17 W/(m・K)と金属に比べて大幅に低い値です。

一方、発泡スチロール(EPS)はポリスチレンをベースにしながらも、内部に空気を含む構造によって密度が約0.01〜0.03 g/cm³と非常に軽く、熱伝導率も約0.03〜0.04 W/(m・K)まで低下した優れた断熱材となっています。

素材の物性値を正しく理解することは、用途に合った材料選定の第一歩です。ポリスチレン系素材を扱う際には、本記事の内容をぜひ参考にしてみてください。