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ヤング率とは?わかりやすく解説!単位や求め方・金属別の数値一覧も

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機械設計や材料工学の世界では、「ヤング率」という言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか。

材料の硬さや変形のしにくさを示すこの値は、エンジニアや研究者にとって非常に重要な指標のひとつです。

しかし、「ヤング率って何?」「単位はどうなっているの?」「金属ごとにどう違うの?」と疑問に感じている方も多いでしょう。

この記事では、ヤング率とは何か?わかりやすく解説!単位や求め方・金属別の数値一覧もまとめてご紹介します。

弾性率・縦弾性係数・応力・ひずみといった関連する重要なキーワードも交えながら、初心者の方にも理解しやすいよう丁寧に解説していきます。

ヤング率とは「材料の変形しにくさ」を示す弾性指標のこと

それではまず、ヤング率の基本的な概念について解説していきます。

ヤング率とは、材料に力を加えたときにどれだけ変形しにくいかを示す指標のことです。

正式には「縦弾性係数」とも呼ばれ、英語では「Young’s modulus」と表記されます。

18世紀から19世紀にかけて活躍したイギリスの科学者トーマス・ヤング(Thomas Young)の名前に由来しており、材料力学や弾性論の基礎を成す概念のひとつです。

ヤング率は「材料がどれだけ伸び縮みしにくいか」を数値で表したもので、値が大きいほど変形しにくい(剛性が高い)材料を意味します。

たとえば、鋼(スチール)はゴムと比べてはるかに変形しにくい性質を持っています。

この「変形のしにくさの差」を定量的に表現できるのがヤング率の大きな役割です。

材料の弾性変形、すなわち力を取り除いたときに元の形に戻る性質の範囲内においてのみ、ヤング率は一定の値を示します。

塑性変形(元に戻らない変形)の領域では、ヤング率の概念はそのまま適用できない点も覚えておきたいポイントでしょう。

弾性変形と塑性変形の違い

ヤング率を理解するうえで欠かせないのが、弾性変形と塑性変形の区別です。

弾性変形とは、外力を取り除くと元の形状に戻る変形のことを指します。

バネを軽く引っ張って手を離したときに元に戻る、あのイメージがまさに弾性変形です。

一方、塑性変形とは、力を取り除いても元の形状に戻らない変形を指します。

粘土を押してへこませると、手を離してもそのまま変形が残るのが塑性変形のわかりやすい例といえるでしょう。

ヤング率はあくまで弾性変形の領域での材料特性を表すため、設計においては材料が弾性限界を超えないよう配慮することが重要です。

応力とひずみの基本概念

ヤング率を深く理解するには、「応力」と「ひずみ」という二つの概念を押さえておく必要があります。

応力(stress)とは、材料の断面に作用する単位面積あたりの力のことです。

単位はPa(パスカル)またはN/m²で表されます。

一方、ひずみ(strain)とは、材料が変形した量を元の長さで割った無次元の値です。

たとえば、長さ100mmの棒が1mm伸びた場合、ひずみは0.01(または1%)となります。

応力とひずみはフックの法則によって比例関係にあり、この比例定数がまさにヤング率です。

フックの法則とヤング率の関係

フックの法則は、材料の弾性変形の範囲内において応力とひずみが比例するという法則です。

この関係を式で表すと、次のようになります。

応力(σ) = ヤング率(E) × ひずみ(ε)

σ = E × ε

つまり、ヤング率 E = σ ÷ ε

この式が示すように、ヤング率は応力をひずみで割った値として求めることができます。

同じ応力をかけたとき、ひずみが小さい(変形が少ない)材料ほどヤング率が高くなる、というイメージを持っておくとわかりやすいでしょう。

ヤング率の単位と求め方を確認しよう

続いては、ヤング率の単位と具体的な求め方を確認していきます。

ヤング率の単位は、応力と同じくPa(パスカル)またはN/m²(ニュートン毎平方メートル)で表されます。

実際の材料では非常に大きな値になることが多いため、GPa(ギガパスカル)やMPa(メガパスカル)といった単位が頻繁に使われます。

1GPa = 1,000MPa = 1,000,000,000Pa(10億パスカル)という関係を覚えておきましょう。

ヤング率の求め方(計算手順)

ヤング率を実際に求めるには、以下の手順で計算します。

【手順1】試験片に加えた力(荷重)F(N)を計測する

【手順2】試験片の断面積 A(m²)を計測し、応力 σ = F ÷ A を求める

【手順3】試験片の元の長さ L₀(m)と変形後の長さ L(m)から、ひずみ ε = (L-L₀) ÷ L₀ を求める

【手順4】ヤング率 E = σ ÷ ε を計算する

実験的にはこの手順を「引張試験(テンシルテスト)」によって行うことが一般的です。

試験片を引っ張り、荷重と変位を記録することで応力-ひずみ曲線(S-Sカーブ)が得られます。

この曲線の初期直線部分の傾きがヤング率に相当し、グラフから視覚的に確認することも可能です。

計算例でイメージをつかもう

具体的な数値を使って計算してみましょう。

例:断面積 1cm²(=0.0001m²)の鉄の棒に、10kN(=10,000N)の力をかけたところ、元の長さ1mから0.05mm(=0.00005m)伸びた場合

応力 σ = 10,000 ÷ 0.0001 = 100,000,000 Pa(100MPa)

ひずみ ε = 0.00005 ÷ 1 = 0.00005

ヤング率 E = 100,000,000 ÷ 0.00005 = 2,000,000,000,000 Pa = 2,000GPa

※実際の鉄のヤング率は約206GPaであるため、この例は計算の流れを示すための仮定値です。

このように、実際の測定値を代入することでヤング率を算出できます。

実験では誤差が生じることもあるため、複数回の測定と平均値の算出が重要です。

ヤング率と剛性・強度の違い

ヤング率と混同されやすい概念に「剛性」と「強度」があります。

剛性(stiffness)は変形のしにくさを示し、形状や寸法も含めた概念です。

一方、強度(strength)は材料が破断するまでに耐えられる力の大きさを意味します。

ヤング率は材料固有の弾性的性質を示すものであり、形状に依存しない点が剛性とは異なります。

たとえば、同じ鋼材でも細い棒と太い棒では剛性が異なりますが、ヤング率は同じ値です。

この違いを理解しておくことで、設計における材料選定をより正確に行えるでしょう。

金属別のヤング率数値一覧と比較

続いては、代表的な金属材料のヤング率数値を確認していきます。

材料によってヤング率は大きく異なり、用途に応じた材料選定の重要な判断基準となります。

以下に主な金属材料のヤング率をまとめた一覧表を示します。

材料名 ヤング率(GPa) 主な用途・特徴
鋼(炭素鋼・構造用鋼) 約 206 建築・自動車・機械構造部品
ステンレス鋼 約 193〜200 食品・医療・化学プラント
鋳鉄 約 100〜170 エンジンブロック・フレーム
アルミニウム合金 約 69〜70 航空機・自動車・電子機器
約 110〜130 電気配線・熱交換器
チタン合金 約 100〜120 航空宇宙・医療インプラント
マグネシウム合金 約 41〜45 モバイル機器・自動車部品
タングステン 約 400〜411 超硬工具・電球フィラメント
金(Au) 約 78〜79 電子部品・装飾品
ニッケル 約 200〜210 耐熱合金・めっき材料

鋼とアルミニウムの比較

機械設計においてよく比較されるのが、鋼とアルミニウムです。

鋼のヤング率は約206GPaであるのに対し、アルミニウム合金は約70GPaと、鋼の約3分の1程度のヤング率しかありません。

しかしアルミニウムは密度が鋼の約3分の1と非常に軽量なため、比強度(重量あたりの強度)の観点では優れた材料です。

航空機や自動車の軽量化設計において、アルミニウム合金が多用される理由がここにあります。

用途に応じて「軽さ」を優先するか「変形しにくさ」を優先するかを検討することが、材料選定のポイントといえるでしょう。

チタンとステンレスの比較

医療や航空宇宙分野で注目されているのがチタン合金です。

チタン合金のヤング率は約110〜120GPaで、ステンレス鋼(約193〜200GPa)よりも低い値を示します。

しかしチタンは軽量かつ高い耐食性・生体適合性を持つため、インプラントや人工関節など生体内での使用にも適しています。

骨のヤング率が約10〜30GPaであることを考えると、チタンは骨に比較的近い弾性特性を持つ金属ともいえます。

硬すぎる材料を体内に埋め込むと骨に応力遮蔽が起こるため、適度なヤング率が求められる場面では重要な判断基準となります。

タングステンが飛び抜けて高い理由

一覧表の中で特に目を引くのが、タングステンのヤング率(約400〜411GPa)です。

鋼の約2倍にも達するこの高さは、タングステンの原子間の結合が非常に強固であることに起因しています。

融点も金属の中で最高水準(約3,422℃)を誇り、超硬工具や電球のフィラメントなど、極めて高い耐熱性・硬度が求められる用途で活躍する金属です。

ただし非常に重く加工も難しいため、用途は限定的になることが多いでしょう。

ヤング率が活用される場面と設計への応用

続いては、ヤング率が実際の設計や工学の現場でどのように活用されているかを確認していきます。

ヤング率は単なる材料特性の数値にとどまらず、構造設計・有限要素解析(FEM)・製品開発など幅広い場面で活用される重要な指標です。

構造設計における活用

橋や建築物、機械フレームの設計では、ヤング率を用いて部材の変形量(たわみ)を計算します。

たとえば、はりのたわみ量の計算式にはヤング率(E)と断面二次モーメント(I)の積であるEI(曲げ剛性)が含まれています。

単純支持はりの中央集中荷重によるたわみ δ の計算式(参考)

δ = FL³ ÷ (48EI)

F:荷重(N)、L:はりの長さ(m)、E:ヤング率(Pa)、I:断面二次モーメント(m⁴)

この式からもわかるように、ヤング率が高いほどたわみが小さくなり、剛性の高い構造を実現できます。

安全設計のためにもヤング率の正確な把握が欠かせません。

有限要素法(FEM)解析での役割

現代の設計現場では、コンピューターを使った有限要素法(FEM)解析が広く普及しています。

FEM解析では、材料のヤング率やポアソン比(横ひずみと縦ひずみの比)を入力することで、複雑な形状の応力分布や変形を数値的に予測できます。

ヤング率が正確でないと解析結果の信頼性が大きく低下するため、材料データシートから正確な値を取得することが重要です。

自動車のボディ設計や航空機の翼構造解析など、あらゆる分野でFEMとヤング率は切り離せない関係にあります。

複合材料・非金属材料のヤング率との比較

金属材料以外でも、ヤング率は材料選定の重要な指標となります。

以下にいくつかの非金属材料のヤング率を参考として示します。

材料名 ヤング率(GPa) 特徴
炭素繊維強化プラスチック(CFRP) 約 70〜300(方向による) 超軽量・高剛性・航空宇宙向け
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP) 約 10〜45 電気絶縁性・耐食性
コンクリート 約 20〜40 建築・土木構造物
天然ゴム 約 0.01〜0.1 極めて柔軟・防振材料
木材(繊維方向) 約 10〜20 建築・家具

ゴムのヤング率は鋼の約200万分の1程度という非常に低い値であり、材料による弾性特性の違いがいかに大きいかがわかります。

CFRPのように方向によってヤング率が異なる異方性材料も多く、設計時には材料の方向性も考慮が必要です。

まとめ

この記事では、ヤング率とは何か?わかりやすく解説!単位や求め方・金属別の数値一覧も含めてご紹介しました。

ヤング率とは、材料の変形しにくさを示す弾性係数であり、応力をひずみで割ることで求められます。

単位はPa(パスカル)またはGPa(ギガパスカル)が一般的に用いられます。

金属ごとにヤング率は大きく異なり、タングステンの約400GPaから、マグネシウム合金の約41GPaまで幅広い範囲に分布しています。

設計の場面では、たわみ計算やFEM解析において欠かせない材料定数として活用されており、正確な値の把握が信頼性の高い設計につながります。

弾性変形・応力・ひずみ・フックの法則といった関連概念とあわせて理解することで、ヤング率をより深く活用できるようになるでしょう。

材料選定や構造設計の場面でぜひ本記事を参考にしていただければ幸いです。