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黄銅の熱伝導率は?W/m・Kの数値と温度依存性・銅・青銅との比較も解説

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金属材料を選定するうえで、熱伝導率は非常に重要な指標のひとつです。

黄銅(おうどう)は銅と亜鉛の合金であり、加工性の高さや美しい外観から幅広い産業で活用されています。

しかし、「実際に熱をどれだけ伝えるのか」「銅や青銅と比べてどう違うのか」といった疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、黄銅の熱伝導率はW/m・Kでどのくらいの数値なのかという核心から、温度依存性、そして銅・青銅との比較まで、わかりやすく解説していきます。

材料選定や設計の参考に、ぜひお役立てください。

黄銅の熱伝導率はおよそ100~120 W/m・K:まず結論から

それではまず、黄銅の熱伝導率の基本数値について解説していきます。

黄銅の熱伝導率はW/m・Kの単位で表すと、一般的におよそ100~120 W/m・Kとされています。

この数値は常温(約20~25℃)における代表的な値であり、合金の組成によって多少の幅があります。

黄銅は銅(Cu)と亜鉛(Zn)を主成分とする合金であり、亜鉛の含有量によって種類が変わります。

亜鉛の割合が増えるほど、熱伝導率はやや低下する傾向にある点が特徴的です。

黄銅の熱伝導率(常温)はおよそ100~120 W/m・K。亜鉛含有量が多い組成ほど熱伝導率は低くなる傾向があります。

代表的な黄銅の種類と熱伝導率の目安を以下の表にまとめました。

黄銅の種類 主な組成 熱伝導率(W/m・K)
七三黄銅(Cu70%/Zn30%) Cu:70、Zn:30 約120
六四黄銅(Cu60%/Zn40%) Cu:60、Zn:40 約109
快削黄銅(鉛入り) Cu:58~62、Zn:残、Pb:1~3 約100~115

このように、黄銅は一口に言っても組成によって熱伝導率が異なります。

設計や材料選定の際には、使用する黄銅の具体的なグレードを確認することが重要です。

たとえば熱交換部品に使用する場合、七三黄銅のほうが六四黄銅よりもわずかに有利といえるでしょう。

黄銅の熱伝導率における温度依存性とは

続いては、温度による熱伝導率の変化を確認していきます。

熱伝導率は温度によって変化することが知られており、黄銅も例外ではありません。

一般に、金属の熱伝導率は温度が上昇すると変化しますが、黄銅の場合は温度が上がるにつれて熱伝導率がやや上昇するという特性を持ちます。

これは純金属とは異なる挙動であり、合金特有の性質によるものです。

純金属(例:純銅)では温度上昇とともに熱伝導率が低下する傾向があります。一方、黄銅のような合金では格子散乱と電子散乱のバランスにより、温度上昇にともなって熱伝導率がわずかに増加する場合があります。

以下に黄銅(七三黄銅)の温度別熱伝導率の目安を示します。

温度(℃) 熱伝導率(W/m・K)
0℃ 約109
20℃(常温) 約120
100℃ 約125
200℃ 約130
300℃ 約133

このデータからわかるように、黄銅は低温から高温にかけて熱伝導率が緩やかに増加する傾向があります。

ただし、この変化は比較的緩やかであるため、通常の使用温度範囲では大きな差が出るわけではありません。

極端な高温環境での使用を想定する場合は、強度や熱膨張率なども含めた総合的な評価が必要となるでしょう。

また、黄銅には融点(約900~940℃)という上限があるため、使用温度範囲を適切に把握することも大切です。

銅・青銅と黄銅の熱伝導率を徹底比較

続いては、銅や青銅との熱伝導率の比較を確認していきます。

黄銅の数値だけを見ても、それが高いのか低いのかはわかりにくいものです。

ここでは代表的な銅系材料である純銅・黄銅・青銅を並べて比較してみましょう。

材料名 主な組成 熱伝導率(W/m・K) 特徴
純銅(タフピッチ銅) Cu:99.9%以上 約390~400 熱・電気伝導性が極めて高い
黄銅(七三黄銅) Cu:70、Zn:30 約120 加工性が高く汎用性が高い
青銅(砲金) Cu:90、Sn:10 約50~60 耐摩耗性・耐食性に優れる

この比較から、純銅の熱伝導率が圧倒的に高いことがわかります。

黄銅は純銅の約30%程度の熱伝導率であり、熱伝導だけを目的にするならば純銅のほうが優れているといえるでしょう。

一方で、青銅は黄銅よりもさらに熱伝導率が低く、約50~60 W/m・Kにとどまります。

熱伝導率の高さで比較すると「純銅(約400)>黄銅(約120)>青銅(約50~60)」という順位になります。熱を効率よく伝えたい用途では純銅、加工性や強度とのバランスを重視するなら黄銅が選ばれることが多いです。

それでは、なぜ黄銅が広く使われているのでしょうか。

その理由は、熱伝導率だけでなくコスト・加工性・強度・耐食性を総合的に見た際のバランスの良さにあります。

純銅は熱伝導率こそ高いものの、やわらかくて傷つきやすく、コストも高めです。

黄銅は適度な強度と良好な加工性を持ちながら、熱伝導率も実用上十分な水準を確保しています。

バルブ・継手・熱交換器・精密部品など、幅広い分野で黄銅が採用される理由はここにあるといえるでしょう。

熱伝導率以外にも知っておきたい黄銅の熱的性質

続いては、熱伝導率以外の黄銅の熱的特性についても確認していきます。

黄銅の性質を正しく理解するには、熱伝導率だけでなくその他の熱的特性も把握しておくことが重要です。

ここでは特に設計や実務で役立つ3つの指標を取り上げます。

比熱容量

比熱容量とは、単位質量の物質を1℃(または1K)上昇させるために必要な熱量のことです。

黄銅の比熱容量はおよそ0.38 J/g・Kとされています。

純銅の比熱(約0.385 J/g・K)と近い値であり、熱を蓄える能力という面では大きな差はありません。

ただし、青銅(約0.34 J/g・K)と比べるとわずかに高く、熱容量の観点では黄銅はやや優れています。

線膨張係数

線膨張係数は温度変化による寸法変化を表す指標であり、精密部品の設計において特に重要な値です。

黄銅の線膨張係数はおよそ19~21×10⁻⁶ /Kとされています。

この値は純銅(約17×10⁻⁶ /K)よりもやや大きく、温度変化による寸法変化が生じやすい点に注意が必要です。

熱サイクルを繰り返す用途では、この膨張・収縮による疲労や応力集中を考慮した設計が求められるでしょう。

熱拡散率

熱拡散率とは、材料が熱変化にどれだけ速く追従できるかを示す指標です。

熱拡散率(α)=熱伝導率(λ)÷(密度(ρ)×比熱容量(Cp))

黄銅の場合:α ≒ 120 ÷(8500 × 380)≒ 3.7×10⁻⁵ m²/s

この値は純銅(約1.2×10⁻⁴ m²/s)よりは低いものの、ステンレス鋼(約4×10⁻⁶ m²/s)と比べると約10倍近い熱拡散率を持ちます。

素早い熱の拡散が求められる部品において、黄銅はステンレスよりも大きなアドバンテージを持つといえるでしょう。

熱的特性 黄銅 純銅 青銅 ステンレス鋼
熱伝導率(W/m・K) 約120 約390 約50~60 約15~17
比熱容量(J/g・K) 約0.38 約0.385 約0.34 約0.50
線膨張係数(×10⁻⁶/K) 約19~21 約17 約17~18 約16~18
熱拡散率(×10⁻⁵ m²/s) 約3.7 約12 約2.0 約0.4

この表を参考にすることで、黄銅の熱的な特性を他の材料と相対的に理解することができます。

単純に熱伝導率の数値だけを比較するのではなく、使用条件や目的に応じた総合的な判断が材料選定では重要といえるでしょう。

まとめ

本記事では「黄銅の熱伝導率はW/m・Kの数値と温度依存性・銅・青銅との比較も解説」というテーマで、黄銅の熱的特性を多角的にご紹介しました。

黄銅の熱伝導率は常温においておよそ100~120 W/m・Kであり、純銅(約390 W/m・K)よりは低いものの、青銅(約50~60 W/m・K)やステンレス鋼(約15~17 W/m・K)と比べると十分に高い水準にあります。

温度依存性については、黄銅は温度上昇にともない熱伝導率がやや増加するという合金特有の特性を持ちます。

また、比熱容量・線膨張係数・熱拡散率といった熱的特性も含めて理解することで、設計や材料選定の精度を高めることができるでしょう。

黄銅はその優れた加工性・コストパフォーマンス・適度な熱伝導率を兼ね備えた、非常にバランスの取れた実用材料です。

用途に応じた最適な材料選びの一助として、本記事の内容をぜひご活用ください。