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銅の引張強度は?MPaやkgf/mm2の数値と純銅・合金・加工硬化後の変化も解説

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銅(Cu)はその優れた電気・熱伝導性から、電気配線や熱交換器など幅広い分野で使用されている金属材料です。

しかし実際に設計や材料選定を行う際には、「銅の引張強度はどのくらいなのか」「MPaやkgf/mm²でどう表されるのか」という疑問が生まれることも多いでしょう。

純銅のままと合金にした場合、さらには加工硬化を加えた後では、引張強度は大きく異なります。

本記事では、銅の引張強度はどれくらいなのか?MPaやkgf/mm²の数値と純銅・合金・加工硬化後の変化についてわかりやすく解説していきます。

材料選定や強度計算の参考として、ぜひ最後までご覧ください。

銅の引張強度はMPaで約200〜250MPa(純銅状態)が基準となる

それではまず、銅の引張強度の基本的な数値について解説していきます。

引張強度(Tensile Strength)とは、材料が引っ張られる力に対して破断せずに耐えられる最大応力のことを指します。

単位はMPa(メガパスカル)またはkgf/mm²(キログラム力毎平方ミリメートル)で表されることが一般的です。

純銅(無酸素銅・タフピッチ銅など)の焼きなまし状態における引張強度は、おおよそ以下のとおりです。

銅の種類 引張強度(MPa) 引張強度(kgf/mm²) 備考
タフピッチ銅(焼きなまし) 約200〜250 MPa 約20〜25 kgf/mm² 一般的な電気用途に多用
無酸素銅(焼きなまし) 約210〜250 MPa 約21〜25 kgf/mm² 高純度・高導電性
リン脱酸銅(焼きなまし) 約210〜260 MPa 約21〜26 kgf/mm² 溶接性・加工性に優れる

MPaとkgf/mm²の換算関係は「1 kgf/mm² ≒ 9.807 MPa」です。

純銅の引張強度である約200〜250 MPaは、kgf/mm²に換算するとおよそ20〜25 kgf/mm²に相当します。

設計や図面で単位が異なる場合も、この換算を覚えておくと非常に便利です。

純銅は電気伝導性・熱伝導性の観点では非常に優秀な材料ですが、引張強度としては鉄鋼材料(一般的な鋼材で約400〜500 MPa以上)と比べるとかなり低めに位置します。

そのため、強度が必要な構造部材への適用には注意が必要となるでしょう。

また、降伏点(耐力)については純銅焼きなまし材でおよそ70〜100 MPa程度であり、引張強度と比べても相当低い水準です。

銅は塑性変形しやすい材料である、という点を設計時には念頭に置いておくことが大切です。

銅合金にすると引張強度はどう変化するのか

続いては、銅合金にした場合の引張強度の変化を確認していきます。

純銅の引張強度は前述のとおり約200〜250 MPa程度ですが、他の元素を加えて合金化することで引張強度を大幅に高めることが可能です。

代表的な銅合金の引張強度を以下にまとめました。

銅合金の種類 主な添加元素 引張強度(MPa) 引張強度(kgf/mm²)
黄銅(真鍮)C2600 亜鉛(Zn) 約300〜400 MPa 約31〜41 kgf/mm²
青銅(スズ青銅) スズ(Sn) 約300〜500 MPa 約31〜51 kgf/mm²
白銅(キュプロニッケル) ニッケル(Ni) 約350〜450 MPa 約36〜46 kgf/mm²
ベリリウム銅 ベリリウム(Be) 約1000〜1400 MPa 約102〜143 kgf/mm²
リン青銅 スズ・リン 約400〜700 MPa 約41〜71 kgf/mm²

特に注目したいのがベリリウム銅(BeCu)です。

ベリリウム銅は時効硬化処理を施すことで、引張強度が1000 MPaを超えることもある非常に高強度な銅合金として知られています。

バネ材・精密部品・工具などの用途に多く採用されており、「銅合金の中で最も高い強度を持つ」と言っても過言ではないでしょう。

ベリリウム銅の引張強度は最大で約1400 MPa(約143 kgf/mm²)に達することもあり、一般的な鋼材に匹敵する強度水準を誇ります。

ただし、ベリリウムは有害物質であるため取り扱いには十分な安全管理が必要です。

黄銅(真鍮)は亜鉛の含有量によって強度が変化し、加工性・コスト・強度のバランスが良い銅合金として最も広く普及しています。

スズを添加した青銅やリン青銅は耐摩耗性・ばね性も高く、軸受けやバネ部品に適した材料と言えるでしょう。

合金の種類と熱処理の組み合わせによって引張強度は大きく変わるため、用途に応じた合金選定が材料設計の重要なポイントとなります。

加工硬化によって銅の引張強度はどこまで高まるのか

続いては、加工硬化が銅の引張強度に与える影響を確認していきます。

銅は加工硬化(加工硬さとも呼ばれる「ひずみ硬化」)によって、加工を加えるほど硬度・引張強度が上昇する特性を持っています。

加工硬化とは、金属に塑性変形を与えることで転位が増加し、変形抵抗が高まって強度が向上する現象のことです。

銅の加工硬化による引張強度の変化を以下に示します。

加工状態 引張強度(MPa) 引張強度(kgf/mm²) 硬さの目安(HV)
焼きなまし(軟質) 約200〜250 MPa 約20〜25 kgf/mm² 約40〜60 HV
1/4硬質(1/4H) 約260〜300 MPa 約27〜31 kgf/mm² 約65〜80 HV
1/2硬質(1/2H) 約300〜350 MPa 約31〜36 kgf/mm² 約80〜95 HV
硬質(H) 約350〜400 MPa 約36〜41 kgf/mm² 約95〜110 HV
特硬質(EH) 約380〜430 MPa以上 約39〜44 kgf/mm²以上 約110 HV以上

このように、加工硬化によって純銅の引張強度は焼きなまし材の約200 MPaから特硬質では430 MPa以上まで大幅に向上することがわかります。

ただし、加工硬化が進むほど延性(伸び率)は低下するため、「強度を高めたい」のか「加工しやすさを維持したい」のか、用途に応じたバランスの検討が不可欠です。

加工硬化の程度は「加工率」で表されることもあります。

加工率(断面減少率)=(元の断面積 – 加工後の断面積)÷ 元の断面積 × 100(%)

加工率が大きいほど硬化量も大きくなり、引張強度は高まる傾向にあります。

銅板・銅箔・銅棒など製品形態によっても表記される「調質記号(O・1/4H・1/2H・H・EH)」が異なるため、材料を発注・選定する際には調質記号の確認が必要不可欠です。

加工硬化後に焼きなましを行えば強度は元に戻るため、繰り返し加工が可能という点も銅材料の大きな特長と言えるでしょう。

冷間加工と引張強度の関係

冷間加工(常温での加工)は銅の加工硬化を促進する代表的な方法です。

圧延・引き抜き・プレス加工などの冷間加工を繰り返すことで、転位密度が増加して材料内部の変形抵抗が高まり、引張強度・硬さともに上昇していきます。

電線の製造では、銅を細く引き抜く「伸線加工」が繰り返し行われており、加工硬化のコントロールが品質に直結します。

熱処理(焼きなまし)による強度の回復

加工硬化した銅材を高温で加熱する「焼きなまし(アニール処理)」を行うと、転位が回復・再結晶化して引張強度は元の軟質状態に戻ります。

銅の再結晶温度はおよそ200〜300℃程度と比較的低く、適切な焼きなまし温度の管理が重要です。

過度な加熱は結晶粒の粗大化につながり、強度低下だけでなく加工性にも悪影響を与えることがあります。

加工硬化と疲労強度への影響

引張強度が高まった加工硬化銅は、疲労強度(繰り返し荷重への耐性)も向上する傾向があります。

ただし、加工硬化が進んだ状態では材料の延性が低下しているため、急激な衝撃荷重や繰り返し変形には脆くなる点に注意が必要です。

バネ材として使用する場合などは、引張強度だけでなく疲労強度・バネ限界値も考慮した材料選定が求められます。

銅の引張強度に関連する規格と設計での注意点

続いては、銅の引張強度に関連する規格と設計上の注意点を確認していきます。

JIS規格における銅材の引張強度規定

日本では、JIS(日本産業規格)によって銅および銅合金の引張強度が規定されています。

代表的なJIS規格を以下に示します。

JIS規格番号 対象材料 引張強度の規定(例)
JIS H 3100 銅および銅合金の板・帯 種類・調質ごとに規定
JIS H 3250 銅および銅合金の棒 種類・調質ごとに規定
JIS H 3300 銅および銅合金の管 種類・調質ごとに規定
JIS H 3510 銅合金鋳物 合金種ごとに規定

実際の設計では、使用するJIS規格材の調質ごとの引張強度保証値を必ず確認することが重要です。

カタログ値はあくまで代表値であり、ロットや製造条件によって多少の変動が生じることも念頭に置いておきましょう。

安全率と許容応力の設定

設計においては、引張強度をそのまま設計値として使用するのではなく、安全率(Safety Factor)を考慮した許容応力の設定が必要です。

許容応力 = 引張強度 ÷ 安全率

例として、純銅(焼きなまし材)の引張強度が220 MPaで安全率を3とした場合、

許容応力 = 220 MPa ÷ 3 ≒ 73 MPa となります。

安全率は用途・荷重条件・品質要求などによって異なりますが、一般的な静的荷重の場合は2〜4程度が目安とされることが多いでしょう。

動的荷重・衝撃荷重が加わる場合はさらに高い安全率を設定することが求められます。

銅の引張強度と他の材料との比較

銅の引張強度を他の代表的な金属材料と比較すると、その位置づけがより明確になります。

材料 引張強度(MPa) 特徴
純銅(焼きなまし) 約200〜250 MPa 高導電性・高熱伝導性
純アルミニウム(軟質) 約70〜100 MPa 軽量・耐食性
SS400(一般構造用鋼) 約400〜510 MPa 汎用構造材
SUS304(ステンレス鋼) 約520 MPa以上 耐食性・耐熱性
ベリリウム銅(時効硬化後) 約1000〜1400 MPa 最高強度の銅合金

純銅の引張強度はアルミニウムよりは高いものの、鉄鋼材料と比べると低い水準にあります。

しかし、電気伝導率・熱伝導率という点では銅は群を抜いて優れており、強度が必要な場合は合金化や加工硬化で対応するというのが一般的なアプローチです。

まとめ

本記事では、銅の引張強度はどれくらいなのか?MPaやkgf/mm²の数値と純銅・合金・加工硬化後の変化について解説してきました。

純銅(焼きなまし材)の引張強度はおよそ200〜250 MPa(約20〜25 kgf/mm²)が基準となります。

合金化によって引張強度は大きく向上し、ベリリウム銅では最大1400 MPa以上に達することも可能です。

また、加工硬化によっても純銅の引張強度は400 MPa超まで高めることができ、調質記号によって管理されています。

設計・材料選定の際には、JIS規格の保証値を確認するとともに、適切な安全率を設定して許容応力を算出することが重要です。

銅材料は強度だけでなく導電性・熱伝導性・加工性など多くの特性を総合的に評価したうえで選定することが、信頼性の高い設計につながるでしょう。

引張強度の数値をしっかりと把握して、最適な銅材料・銅合金の選択にお役立てください。