エタノールの燃焼反応は、化学反応式を学ぶ上で非常に重要な例題です。アルコールランプや燃料として身近に使用されるエタノールが、どのように燃焼して何が生成されるのかを理解することは、化学の基礎を学ぶ上で欠かせません。
本記事では、エタノールの燃焼反応式、生成される気体(二酸化炭素)と水、反応式の作り方、不完全燃焼との違いについて詳しく解説していきます。
化学反応式の立て方の基本から、係数の合わせ方、実際の燃焼現象まで、体系的に理解していきましょう。
エタノールの完全燃焼の反応式
それではまずエタノールの完全燃焼の化学反応式について解説していきます。
基本的な燃焼反応式
エタノールが十分な酸素と反応して完全燃焼すると、二酸化炭素と水が生成されます。
化学反応式は以下のように表されるのです。
エタノール + 酸素 → 二酸化炭素 + 水
この式は、エタノール1分子が酸素3分子と反応して、二酸化炭素2分子と水3分子を生成することを示しています。
より詳しく示性式で書くと、以下のようになるでしょう。
この反応は発熱反応であり、大量の熱エネルギーを放出します。そのため、エタノールは燃料として利用されるのです。
生成される気体と液体
燃焼によって生成される物質を詳しく見ていきましょう。
二酸化炭素(CO₂)は無色無臭の気体です。常温常圧では気体として存在し、空気より重いという性質を持ちます。エタノール1分子から2分子の二酸化炭素が生成されるのです。
水(H₂O)は、燃焼時の高温では水蒸気(気体)として生成されます。冷却されると液体の水になるでしょう。エタノール1分子から3分子の水が生成されます。
| 生成物 | 化学式 | 常温での状態 | 生成量(エタノール1分子あたり) |
|---|---|---|---|
| 二酸化炭素 | CO₂ | 気体 | 2分子 |
| 水 | H₂O | 液体(燃焼時は水蒸気) | 3分子 |
反応の物質量比
化学反応式の係数は、物質量(モル)の比を表しています。
エタノール1モルが完全燃焼するためには、酸素3モルが必要です。そして、二酸化炭素2モルと水3モルが生成されるでしょう。
質量で考えると、以下のようになります。
反応物の総質量 = 46 + 96 = 142 g
生成物の総質量 = 88 + 54 = 142 g
(質量保存の法則により一致)
エタノールの分子量は46、酸素の分子量は32、二酸化炭素の分子量は44、水の分子量は18です。これらの値を使って質量計算ができるのです。
実用的な例として、エタノール1 L(約789 g、約17.1モル)を完全燃焼させるには、酸素約51.3モル(常温常圧で約1,150 L)が必要となります。
化学反応式の作り方
続いては化学反応式の作り方を確認していきます。
反応式を立てる基本ステップ
エタノールの燃焼反応式を一から作る方法を見ていきましょう。
ステップ1:反応物と生成物を書く
まず、燃焼反応であることから、反応物はエタノールと酸素、生成物は二酸化炭素と水であることが分かります。
(まだ係数が合っていない状態)
ステップ2:原子の数を数える
左辺(反応物側)と右辺(生成物側)で、各原子の数を数えます。
左辺:C = 2個、H = 6個、O = 3個(エタノール)+ 2個(酸素)= 5個
右辺:C = 1個、H = 2個、O = 3個
まだバランスが取れていません。
係数の合わせ方(原子のバランス)
各原子の数を合わせるために、係数を調整していきます。
ステップ3:炭素原子のバランスを取る
左辺に炭素が2個あるので、右辺のCO₂に係数2をつけます。
ステップ4:水素原子のバランスを取る
左辺に水素が6個あるので、右辺のH₂Oに係数3をつけます。
ステップ5:酸素原子のバランスを取る
右辺の酸素の数を数えます。
CO₂:2 × 2 = 4個
H₂O:3 × 1 = 3個
合計:7個
左辺のエタノールに酸素が1個含まれているので、O₂から供給される酸素は6個必要です。O₂は2個セットなので、係数は3となります。
左辺:C = 2、H = 6、O = 1 + 6 = 7
右辺:C = 2、H = 6、O = 4 + 3 = 7
すべての原子数が一致しているので、この反応式は正しいのです。
係数決定の別のアプローチ
もう一つの方法として、分数係数を使う方法もあります。
最初にエタノールの係数を1とし、他の物質の係数を分数で表すこともできるのです。
C₂H₅OH + 3O₂ → 2CO₂ + 3H₂O
| 方法 | 手順 | 利点 |
|---|---|---|
| 原子バランス法 | C→H→Oの順で合わせる | 体系的、確実 |
| 分数係数法 | 分数で係数を決め、最後に整数化 | 複雑な式に有効 |
| 未定係数法 | 代数的に係数を求める | 数学的に厳密 |
どの方法を使っても、最終的には同じ反応式が得られます。自分にとって分かりやすい方法を選ぶと良いでしょう。
燃焼反応の詳細とエネルギー
続いては燃焼反応の詳細とエネルギーを確認していきます。
燃焼反応のメカニズム
エタノールの燃焼は、気相ラジカル反応として進行します。
実際の燃焼過程は非常に複雑で、多数の中間体と素反応を経て進行するのです。簡略化すると、以下のような段階を経ます。
まず、熱によりエタノール分子が気化します。次に、高温で酸素分子と衝突し、C-H結合やC-C結合が切断されて、様々なラジカル(不対電子を持つ活性な分子)が生成されるのです。
これらのラジカルが酸素と次々に反応し、最終的に二酸化炭素と水に至ります。炎の青い部分では、中間体の発光が観察されるでしょう。
C₂H₅OH(気)+ 熱 → ラジカル生成
ラジカル + O₂ → 中間生成物
中間生成物 + O₂ → CO₂ + H₂O
燃焼熱とエネルギー収支
エタノールの燃焼は大きな発熱を伴います。
エタノールの燃焼熱は、約1,368 kJ/mol(約29.7 kJ/g)です。これは、エタノール1モル(46 g)が完全燃焼すると、約1,368 kJの熱エネルギーが放出されることを意味します。
| 燃料 | 燃焼熱(kJ/mol) | 燃焼熱(kJ/g) | 比較 |
|---|---|---|---|
| エタノール | 1,368 | 29.7 | 基準 |
| メタノール | 726 | 22.7 | やや低い |
| プロパン | 2,220 | 50.3 | 高い |
| ガソリン(平均) | – | 約47 | 高い |
エタノール1 Lを燃焼させると、約23,400 kJ(約23.4 MJ)のエネルギーが得られます。これは、約1.5 kWの電力を4時間以上供給できる量に相当するでしょう。
炎の色と温度
エタノールの炎は、条件によって異なる色を示します。
十分な酸素がある完全燃焼では、青白い炎が観察されます。炎の温度は約1,000~1,200℃に達するのです。
青い炎は、励起状態の中間体(特にCH、C₂などのラジカル)が基底状態に戻る際に放出する光によるものです。
酸素が不足すると、炎は黄色やオレンジ色を帯びます。これは、不完全燃焼により生じた固体炭素粒子(すす)が高温で発光するためでしょう。
| 燃焼条件 | 炎の色 | 温度 | 生成物 |
|---|---|---|---|
| 完全燃焼 | 青白い | 1,000~1,200℃ | CO₂ + H₂O |
| 不完全燃焼 | 黄色~オレンジ | 800~1,000℃ | CO + CO₂ + H₂O + すす |
アルコールランプの炎が青いのは、芯から供給されるエタノール蒸気と周囲の空気(酸素)が適切な比率で混合され、完全燃焼している証拠なのです。
不完全燃焼との違い
続いては不完全燃焼との違いを確認していきます。
不完全燃焼が起こる条件
酸素の供給が不足すると、不完全燃焼が起こります。
密閉空間や換気が不十分な場所でエタノールを燃焼させると、酸素が不足して不完全燃焼となるのです。また、芯を長くしすぎたアルコールランプでも不完全燃焼が起こりやすくなります。
不完全燃焼では、二酸化炭素だけでなく、一酸化炭素(CO)や炭素(すす、C)が生成されるでしょう。
(一酸化炭素が生成)2C₂H₅OH + 5O₂ → 4CO + 6H₂O
(一酸化炭素と水が生成)C₂H₅OH + O₂ → 2C + 3H₂O
(炭素(すす)と水が生成)
実際の不完全燃焼では、これらの反応が混在し、CO₂、CO、C、H₂Oが様々な割合で生成されます。
一酸化炭素の危険性
不完全燃焼で生成する一酸化炭素(CO)は、非常に有毒です。
一酸化炭素は無色無臭の気体であり、人体に気づかれずに侵入します。血液中のヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬を妨げるため、中毒症状や死亡事故の原因となるのです。
| 物質 | 毒性 | 検出 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 二酸化炭素(CO₂) | 低濃度では無害 | 検知器で測定可能 | 換気 |
| 一酸化炭素(CO) | 極めて有毒 | 無色無臭で検出困難 | 換気、CO警報器 |
不完全燃焼の兆候として、黄色い炎、すすの発生、刺激臭などがあります。これらが観察されたら、直ちに換気を行うべきです。
すす(炭素粒子)の生成
酸素が極端に不足すると、炭素(すす)が生成されます。
すすは微細な固体炭素粒子であり、黒色を呈するのです。不完全燃焼の炎が黄色く見えるのは、このすす粒子が高温で赤熱し、黒体放射による光を発するためでしょう。
すすの生成反応は複雑ですが、簡略化すると以下のように表せます。
(極端な酸素不足の場合)
実際には、すすの生成と同時にCOやCO₂も生成されるため、様々な生成物の混合物となります。
すすは燃焼器具や周囲の物品を汚染し、また吸入すると健康被害を引き起こす可能性があります。完全燃焼させることが重要なのです。
実験での観察と応用
続いては実験での観察と応用を確認していきます。
アルコールランプでの燃焼観察
アルコールランプは、エタノールの燃焼を観察する最も身近な方法です。
正しく調整されたアルコールランプでは、青白い炎が観察されます。これは完全燃焼が起こっている証拠でしょう。
実験で確認できる現象は以下の通りです。
| 観察項目 | 方法 | 結果 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 二酸化炭素の生成 | 石灰水に燃焼ガスを通す | 白濁する | CO₂が生成されている |
| 水の生成 | 冷たいガラス板を炎に近づける | 水滴が付着する | H₂Oが生成されている |
| 酸素の消費 | 密閉容器内で燃焼させる | 炎が消える | O₂が消費されている |
石灰水 + 二酸化炭素 → 炭酸カルシウム(白色沈殿) + 水
炭酸カルシウムの白色沈殿が生成することで、石灰水が白濁するのです。これは、二酸化炭素の存在を証明する古典的な方法でしょう。
燃料としての応用
エタノールは、様々な燃料用途に使用されています。
アルコールランプや固形燃料(ジェル状エタノール)は、実験室や家庭用の加熱源として利用されるのです。また、キャンプ用のアルコールストーブも普及しています。
自動車燃料としては、ガソリンに混合して使用されます。E10(エタノール10%混合)やE85(エタノール85%混合)など、様々な混合比の燃料が存在するでしょう。
工業的には、溶剤や化学原料としても重要ですが、燃焼によるエネルギー利用も大きな用途の一つといえます。
安全な取り扱いと注意点
エタノールの燃焼を扱う際には、安全対策が必須です。
エタノールは引火点が13℃と低く、常温でも可燃性蒸気を発生します。火気の近くでの保管や取り扱いは絶対に避けるべきでしょう。
アルコールランプの使用時には、以下の点に注意が必要です。
| 注意点 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 芯の長さ調整 | 長すぎると不完全燃焼 | 3~5mm程度に調整 |
| 換気の確保 | 酸素不足と一酸化炭素中毒防止 | 窓を開ける、換気扇使用 |
| 消火方法 | 吹き消しは危険 | 必ず蓋で消火 |
| 補充のタイミング | 熱い状態での補充は引火の危険 | 完全に冷えてから補充 |
万が一、エタノールに引火した場合は、水をかけてはいけません。エタノールは水に溶けるため、火が広がる危険性があるのです。アルコール火災には、消火器(粉末、二酸化炭素、泡消火器)を使用するか、蓋や濡れた布で窒息消火する必要があるでしょう。
実験や燃料使用の際は、必ず火災予防と安全対策を徹底することが重要です。
まとめ エタノールの完全燃焼の反応式は?気体はco2が出る?【式の作り方も解説】
エタノールの燃焼反応について、化学反応式、生成物、反応式の作り方、エネルギーまで詳しく解説してきました。
エタノールの完全燃焼反応式は「C₂H₅OH + 3O₂ → 2CO₂ + 3H₂O」であり、二酸化炭素と水が生成されます。反応式は、原子のバランスを取りながら係数を調整することで作成できるのです。
不完全燃焼では一酸化炭素やすすが生成され、これらは有毒であったり環境を汚染したりするため、十分な酸素供給と換気が重要でしょう。エタノールの燃焼熱は約1,368 kJ/molであり、燃料として有用なエネルギー源となっています。
化学反応式の理解は、物質の変化を定量的に扱う基礎となります。エタノールの燃焼という身近な現象を通じて、化学反応式の立て方や燃焼反応の本質を理解することができるでしょう。本記事が皆様の化学学習に役立てば幸いです。
