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ジメチルエーテルの沸点は(sds)?比重や密度や引火点や発火点や融点)をわかりやすく(炎で爆発?)

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ジメチルエーテルという化学物質をご存知でしょうか。最も単純な構造を持つエーテル化合物であり、常温で気体として存在する特殊な性質を持っています。

沸点が-24.8℃と非常に低いため、室温では完全に気体状態です。LPガスの代替燃料やエアゾール噴射剤として利用される一方で、引火点-41℃という極めて高い引火性を持つ危険な物質でもあります。

ジメチルエーテルは空気と混合すると爆発性混合気を形成し、炎や火花に接触すれば瞬時に引火・爆発する危険性があります。気体であるため拡散しやすく、広範囲に可燃性ガスが広がる可能性もあるのです。

本記事では、ジメチルエーテルの物理的性質(沸点、融点、密度、比重)、危険性(引火点、発火点、爆発範囲)、取り扱い上の注意点、用途と利用方法、SDS情報まで、わかりやすく解説していきます。

ジメチルエーテルの物理的性質

それではまず、ジメチルエーテルの詳細な物理的性質について解説していきます。

沸点と融点

ジメチルエーテルの沸点は-24.8℃と非常に低く、常温(約20℃)では完全に気体として存在します。融点は-141.5℃であり、極低温でのみ固体となります。

沸点と融点のデータ:

沸点(1気圧):-24.8℃

融点:-141.5℃

臨界温度:126.9℃

臨界圧力:5.37 MPa

沸点が-24.8℃ということは、真冬の寒冷地でも気体状態であることを意味します。液体として存在するのは、-24.8℃以下に冷却した場合か、高圧下で圧縮した場合のみです。

この低い沸点により、ジメチルエーテルは加圧液化ガスとして容器に充填されます。常温で加圧すると液化し、容器内では液体と気体が共存する状態となるのです。

エーテル類 沸点(℃) 常温での状態
ジメチルエーテル -24.8 気体
エチルメチルエーテル 10.8 液体(揮発性高)
ジエチルエーテル 34.6 液体

同じエーテル類でも、分子量が大きくなるほど沸点が上昇します。ジメチルエーテルは最も小さな分子量(46.07)を持つため、沸点が最も低いのです。

密度と比重

ジメチルエーテルは常温で気体であるため、密度の表記は液体密度と気体密度の両方があります。取り扱いの際は、それぞれの値を理解することが重要です。

密度と比重のデータ:

液体密度(-25℃):0.735 g/cm³

液体密度(0℃):0.668 g/cm³

気体密度(0℃、1気圧):2.11 g/L

蒸気比重(空気=1):1.59

液体状態では水より軽く(比重約0.67~0.74)、液体の状態で水面に浮く性質を持ちます。ただし、常温では液体として存在しないため、この性質が問題となることは少ないでしょう。

重要なのは気体密度です。ジメチルエーテルの蒸気は空気より重い(蒸気比重1.59)ため、低所に滞留しやすい性質があります。

ジエチルエーテル(蒸気比重2.6)ほどではありませんが、それでも空気よりかなり重いため、漏洩すると床面や窪地に溜まり、火災の危険性を高めるのです。

容器から放出されたジメチルエーテルは、急速に気化しながら周囲に拡散します。密閉空間や換気の悪い場所では、可燃性ガスが蓄積する危険性があるでしょう。

蒸気圧と揮発性

ジメチルエーテルの蒸気圧は非常に高く、常温で大気圧を大きく超える値を示します。

蒸気圧データ:

蒸気圧(20℃):約510 kPa(約5.0気圧)

蒸気圧(25℃):約597 kPa(約5.9気圧)

蒸気圧(-25℃):約100 kPa(約1.0気圧)

20℃での蒸気圧が510 kPaということは、常温では容器内の圧力が約5気圧に達することを意味します。そのため、高圧ガス容器として厳重に管理する必要があるのです。

容器が破損したり弁が開いたりすると、高圧のガスが一気に放出され、周囲に拡散します。この際、断熱膨張により温度が低下し、白い霧状の気体が観察されることもあるでしょう。

引火性と爆発性の危険性

続いては、ジメチルエーテルの最も重要な危険性である引火性と爆発性を確認していきます。

引火点と発火点

ジメチルエーテルは極めて引火しやすいガスです。引火点は-41℃と非常に低く、ほぼすべての使用環境で引火の危険性があります。

引火性データ:

引火点:-41℃

発火点(自然発火温度):350℃

燃焼熱:約31.7 MJ/kg

引火点-41℃という値は、極寒の環境を除くすべての場所で引火の危険性があることを意味します。気体であるため、液体の引火点とは概念が異なりますが、非常に低温でも点火源があれば着火するのです。

発火点350℃は、ジエチルエーテル(160℃)やガソリン(300℃)と比較すると高い値です。しかし、引火点が極めて低いため、実際の危険性は引火による火災・爆発が主となります。

物質 引火点(℃) 発火点(℃) 常温での状態
ジメチルエーテル -41 350 気体
ジエチルエーテル -45 160 液体
プロパン -104 450 気体
ブタン -60 365 気体

LPガスの主成分であるプロパンやブタンと比較しても、引火点は同程度に低く、非常に危険な可燃性ガスであることがわかります。

爆発範囲と爆発の危険性

ジメチルエーテルは空気と混合すると爆発性混合気を形成します。爆発範囲は比較的広く、容易に爆発する危険性があるのです。

爆発範囲データ:

爆発下限界(LEL):3.4 vol%

爆発上限界(UEL):27.0 vol%(または17~27 vol%)

爆発範囲:3.4~27.0 vol%

爆発下限界3.4%は、空気100リットル中にジメチルエーテルが3.4リットル以上存在すれば、点火源により爆発する可能性があることを示しています。

この範囲はジエチルエーテル(1.9~36.0%)と比較すると若干狭いものの、依然として広範囲であり、危険性は非常に高いと言えます。

炎による爆発のメカニズムは以下の通りです。

爆発のメカニズム:

1. ジメチルエーテルガスが空気と混合

2. 爆発範囲(3.4~27.0%)内の混合気形成

3. 点火源(火花、炎、高温表面)により着火

4. 急速な燃焼反応で高温・高圧ガス発生

5. 圧力波が伝播し爆発

気体であるため、液体エーテルよりも拡散が速く、広範囲に爆発性混合気が形成される可能性があります。密閉空間では特に危険であり、爆発による圧力上昇で建物や設備が破壊される危険性もあるのです。

スプレー缶などに充填されたジメチルエーテルが火災に巻き込まれると、容器内の圧力が急上昇し、破裂・爆発する危険性があります。これをBLEVE(沸騰液体膨張蒸気爆発)と呼び、非常に危険な現象として知られているのです。

燃焼特性と火炎の性質

ジメチルエーテルが燃焼する際の特性も理解しておく必要があります。

燃焼反応式:

2CH3-O-CH3 + 6O2 → 4CO2 + 6H2O + 熱

(完全燃焼の場合)

完全燃焼すれば、二酸化炭素と水が生成されます。しかし、酸素が不足する不完全燃焼では、一酸化炭素(CO)やすす(炭素粒子)が発生し、毒性ガスによる中毒の危険性も生じるでしょう。

ジメチルエーテルの火炎は、比較的クリーンで煤が少ない特徴があります。これは炭素数が少なく、酸素原子を分子内に含むためです。青白い炎を形成し、昼間は視認しにくい場合もあるため注意が必要なのです。

安全な取り扱いと保管方法

続いては、ジメチルエーテルを安全に取り扱い、保管するための方法を確認していきます。

取り扱い時の注意事項

ジメチルエーテルは高圧ガスかつ引火性ガスであるため、厳格な安全対策が必要です。

取り扱い時の基本原則:

・火気厳禁(すべての点火源を排除)

・換気の良い場所で使用

・高圧ガス保安法の遵守

・静電気対策(接地、帯電防止)

・容器の転倒・衝撃防止

・容器の温度上昇防止

実験室や工場では、防爆型の電気設備を使用することが推奨されます。通常のスイッチやモーターから発生する火花でも着火する危険性があるためです。

容器からガスを取り出す際は、圧力調整器(レギュレーター)を使用し、流量を制御します。急激な減圧は容器や配管の凍結を引き起こす可能性があるため、ゆっくりと操作する必要があるでしょう。

漏洩検知器の設置も重要です。可燃性ガス検知器を適切な場所に配置し、漏洩を早期に発見できる体制を整えます。

保管上の注意と容器管理

ジメチルエーテルは高圧ガスとして容器に充填されているため、高圧ガス保安法に基づく管理が必要です。

適切な保管条件:

・直射日光を避ける

・40℃以下の温度で保管

・換気の良い場所

・火気から離れた場所

・容器は立てて保管

・転倒防止措置(鎖やバンドで固定)

容器の温度上昇は内部圧力の上昇を招き、安全弁の作動や破裂の危険性を高めます。直射日光や暖房器具の近くは絶対に避ける必要があるのです。

容器には以下の表示・色分けがあります。

– 可燃性ガス:赤色の容器
– 高圧ガス:容器の刻印
– 内容物表示:ジメチルエーテル、DME
– 充填圧力・容量の表示

空容器であっても、内部にガスが残っている可能性があるため、実容器と同様の注意が必要です。容器の廃棄は、専門業者に依頼しなければなりません。

エアゾール製品の取り扱い

ジメチルエーテルは、スプレー缶の噴射剤として広く使用されています。一般家庭でも使用されるため、その危険性を理解することが重要です。

エアゾール製品使用時の注意:

・火気の近くで使用しない

・使用後は換気する

・高温の場所に放置しない(40℃以下)

・火中に投じない

・穴を開けない

・子供の手の届かない場所に保管

エアゾール缶を火気の近くで使用すると、噴射されたガスに引火し、火炎放射器のようになる危険性があります。また、容器自体が火災に巻き込まれると爆発する可能性もあるのです。

使用済みのエアゾール缶は、ガスを完全に抜いてから廃棄する必要があります。自治体の指示に従い、適切に処理しましょう。

用途と産業利用

続いては、ジメチルエーテルの主な用途と産業での利用方法を確認していきます。

クリーン燃料としての利用

ジメチルエーテルは、環境に優しいクリーン燃料として注目されています。燃焼時に煤や硫黄酸化物をほとんど発生しないためです。

燃料としての特徴:

・セタン価が高い(55~60)

・煤の発生が少ない

・硫黄分を含まない

・低温始動性が良い

・ディーゼルエンジンに使用可能

ディーゼル代替燃料として、トラックやバスでの実用試験が行われています。従来のディーゼル燃料と比較して、粒子状物質(PM)の排出が大幅に削減できる利点があるのです。

また、天然ガスや石炭、バイオマスなど、様々な原料から製造できる点も魅力です。エネルギー安全保障の観点からも、重要な燃料オプションとなるでしょう。

家庭用燃料としても研究が進められており、LPガスの代替としての可能性が検討されています。

化学原料としての用途

ジメチルエーテルは、様々な化学製品の原料としても利用されます。

化学反応によってメタノールに変換したり、オレフィン(エチレン、プロピレンなど)を合成したりする原料となります。特に、DME to Olefins(DTO)プロセスは、石油に依存しない化学品製造として期待されているのです。

また、ジメチルスルフェート、酢酸メチルなどの化学品の合成原料としても使用されます。

エアゾール噴射剤としての利用

最も身近な用途が、エアゾール製品の噴射剤です。

製品分類 用途例
化粧品 ヘアスプレー、制汗剤、日焼け止めスプレー
医薬品 外用消炎鎮痛剤スプレー
工業用品 防錆剤、潤滑剤、接点洗浄剤
家庭用品 殺虫剤、芳香剤

従来のフロンガス(CFCやHCFC)の代替として、環境負荷の低い噴射剤として広く採用されています。オゾン層を破壊せず、地球温暖化係数(GWP)も低いためです。

ただし、可燃性であるため、使用時の火気厳禁が重要となります。

緊急時の対応と応急処置

続いては、ジメチルエーテルに関する事故が発生した際の対応を確認していきます。

火災時の消火方法

ジメチルエーテルによる火災は、ガス火災として対応する必要があります。

適切な消火方法:

○ ガス供給源の遮断(最優先)

○ 粉末消火器

○ 二酸化炭素消火器

○ 霧状の水(冷却用)

× 水による直接消火は効果が低い

ガス火災では、まず供給源を遮断することが最優先です。供給が続く限り、消火しても再着火する危険性があります。

バルブを閉じることができない場合は、周囲の可燃物を除去し、容器を冷却しながら燃焼させ続ける方が安全な場合もあります。無理に消火すると、未燃ガスが蓄積して大規模な爆発を引き起こす危険性があるためです。

容器が火災に巻き込まれている場合は、安全な距離を保ち、破裂・爆発に備えます。放水による冷却は有効ですが、近づきすぎないよう注意が必要でしょう。

漏洩時の処理

ジメチルエーテルが漏洩した場合、気体として急速に拡散します。

漏洩時の対応手順:

1. すべての火気を除去

2. 漏洩源の遮断(バルブを閉じる)

3. 換気の実施

4. 立ち入り禁止区域の設定

5. ガス検知器による濃度測定

6. 爆発範囲以下への希釈確認

屋内での漏洩は特に危険です。気体は低所に滞留するため、床面近くの換気を重視し、扇風機やファンで強制的に換気する必要があります。

電気設備のスイッチ操作は火花の原因となるため、避けるべきです。換気設備も防爆型でない場合は、使用を控える必要があるでしょう。

大量漏洩の場合は、周辺住民の避難も検討します。

人体への暴露時の応急処置

ジメチルエーテルが人体に作用した場合の応急処置です。

吸入した場合:直ちに新鮮な空気の場所へ移動させます。ジメチルエーテルには麻酔作用があり、高濃度では意識喪失の危険性もあるため、速やかに医師の診断を受けます。

皮膚接触(液化ガス):凍傷の危険性があります。液化ガスが皮膚に触れると、急速な蒸発により凍傷を引き起こすのです。ぬるま湯で温めながら、医師の診断を受けましょう。

眼に入った場合:流水で洗眼し、速やかに眼科医の診断を受けます。

すべての場合において、SDSを持参して医療機関を受診することが重要です。

ジメチルエーテルの基本情報とSDS

最後に、ジメチルエーテルの基本情報とSDSの参照方法をまとめます。

化学的基本情報

ジメチルエーテルの基本データ:

分子式:C2H6O

構造式:CH3-O-CH3

分子量:46.07

CAS番号:115-10-6

IUPAC名:メトキシメタン

別名:DME、メチルエーテル

常温常圧では無色の気体であり、わずかに甘いエーテル様の臭気を持っています。最も単純な構造を持つエーテル化合物です。

SDS情報の入手方法

厚生労働省の職場のあんぜんサイトで、ジメチルエーテルのSDSを閲覧できます。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト:

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/

「化学物質」→「GHS対応モデルラベル・SDS情報」

「ジメチルエーテル」または「DME」で検索

CAS番号:115-10-6でも検索可能

また、実際に使用する製品のSDSは、メーカーや販売元から入手することが重要です。製品によって純度や添加物が異なる場合があるためです。

高圧ガスとしての情報は、高圧ガス保安協会のウェブサイトでも確認できるでしょう。

まとめ ジメチルエーテルの比重や密度や引火点や発火点や融点をわかりやすく(炎で爆発?)

ジメチルエーテルは沸点-24.8℃、融点-141.5℃という極めて低い値を持ち、常温では完全に気体として存在します。液体密度は約0.67~0.74 g/cm³、気体の蒸気比重は1.59(空気=1)であり、空気より重いため低所に滞留する性質があるのです。

最も重要な危険性は引火点-41℃、発火点350℃という値であり、爆発範囲3.4~27.0 vol%という広い範囲で爆発性混合気を形成します。炎や火花に接触すれば瞬時に引火し、空気との混合気が爆発範囲内にあれば爆発する危険性があるため、火気の完全な排除が不可欠です。

高圧ガスとして容器に充填されており、常温で約5気圧の圧力を示すため、高圧ガス保安法に基づく厳格な管理が必要となります。クリーン燃料やエアゾール噴射剤として有用な物質ですが、その危険性を十分に理解し、適切な取り扱い、保管、緊急時対応を行うことが極めて重要です。

厚生労働省の職場のあんぜんサイト(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/)で詳細なSDS情報を確認し、安全な作業環境を確保してください。