高校数学において、絶対値を含む不等式は多くの生徒が苦手とする単元のひとつです。
「絶対値ってどう外せばいいの?」「場合分けはどのタイミングでするの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、絶対値を含む不等式の解き方を、場合分けの方法や例題を交えながらわかりやすく解説していきます。
0を含む場合の処理も含めて、しっかりと理解を深めていきましょう。
絶対値を含む不等式の解き方:まず「場合分け」が基本!
それではまず、絶対値を含む不等式の解き方の核心となる考え方から解説していきます。
絶対値を含む不等式を解くうえで、もっとも重要なポイントは「場合分け」です。
絶対値とは、数直線上での原点からの距離を表すもので、|a|はaが正または0のときはそのままa、負のときは−aになります。
この性質を利用して、絶対値の中の式が「0以上のとき」と「0未満のとき」に分けて解くのが基本的な方針です。
絶対値の定義
|a| = a (a ≧ 0 のとき)
|a| = −a (a < 0 のとき)
この定義をもとに、不等式の場合分けを行うことが解法の第一歩です。
絶対値を含む不等式では、まず絶対値の中の式がいつ0以上・0未満になるかを確認し、その境界となるxの値(臨界点)を求めることが大切です。
この臨界点を基準に場合分けを行い、それぞれの範囲で不等式を解いて、最後に共通部分(積集合)を求める流れになります。
絶対値を外すための基本手順
絶対値を外す基本手順は、以下のようになります。
手順1:絶対値の中の式 = 0 となるxの値を求める(臨界点)
手順2:臨界点を境に「中の式 ≧ 0 の場合」と「中の式 < 0 の場合」に分ける
手順3:それぞれの場合で絶対値を外して不等式を解く
手順4:各場合の解と場合分けの条件の共通部分を求める
手順5:すべての場合の解を合わせる(和集合)
この手順を丁寧に追うことで、複雑に見える絶対値の不等式もスムーズに解けるようになるでしょう。
絶対値と不等式の基本公式
絶対値を含む不等式には、よく使われる基本公式があります。
基本公式(a > 0 のとき)
|x| < a ⟺ −a < x < a
|x| > a ⟺ x < −a または x > a
|x| = a ⟺ x = a または x = −a
この公式は、絶対値を含む不等式を解く際の出発点として非常に重要です。
まずこの公式をしっかり覚え、応用問題へとつなげていくことをおすすめします。
0を含む場合の注意点
絶対値を含む不等式では、0を含む場合に特別な注意が必要です。
たとえば |x| < 0 という不等式は、絶対値が常に0以上であるため、解なしとなります。
一方で |x| ≧ 0 はすべての実数xが解となります。
このように、右辺が0または負の値の場合は、公式をそのまま適用するのではなく、絶対値の性質をもとに慎重に判断することが大切です。
場合分けを使った例題で解き方を確認しよう
続いては、実際の例題を通じて場合分けの方法を確認していきます。
ここでは、高校数学でよく出題されるタイプの問題を取り上げて解説していきましょう。
例題1:|x − 2| < 3 を解く
まず、基本公式を使うタイプの例題から見ていきます。
問題:|x − 2| < 3 を解け
公式 |A| < a ⟺ −a < A < a を利用します。
−3 < x − 2 < 3
各辺に2を加えると、
−1 < x < 5
答え:−1 < x < 5
この問題は基本公式をそのまま当てはめることで解けます。
公式の形に持ち込めるかどうかを意識することが、解法の鍵となるでしょう。
例題2:|2x + 1| ≧ 5 を解く
問題:|2x + 1| ≧ 5 を解け
公式 |A| ≧ a ⟺ A ≦ −a または A ≧ a を利用します。
2x + 1 ≦ −5 または 2x + 1 ≧ 5
左側:2x ≦ −6 → x ≦ −3
右側:2x ≧ 4 → x ≧ 2
答え:x ≦ −3 または x ≧ 2
「または」でつなぐのがポイントです。
「かつ」と「または」の使い方を間違えると答えが変わってしまうため、注意が必要です。
例題3:場合分けが必要なタイプ |x + 1| + |x − 3| < 6
問題:|x + 1| + |x − 3| < 6 を解け
臨界点:x = −1、x = 3 で場合分けします。
【場合1】x < −1 のとき
−(x + 1) + (−(x − 3)) < 6 → −2x + 2 < 6 → x > −2
条件 x < −1 との共通部分:−2 < x < −1
【場合2】−1 ≦ x < 3 のとき
(x + 1) + (−(x − 3)) < 6 → 4 < 6 → 常に成立
条件との共通部分:−1 ≦ x < 3
【場合3】x ≧ 3 のとき
(x + 1) + (x − 3) < 6 → 2x − 2 < 6 → x < 4
条件との共通部分:3 ≦ x < 4
答え:−2 < x < 4
絶対値が2つある場合は、臨界点が複数存在し、場合分けの数も増えます。
各場合の共通部分を忘れずに確認することが重要です。
絶対値を含む不等式でよくある間違いと対策
続いては、絶対値を含む不等式でよくある間違いと、その対策を確認していきます。
理解しているつもりでも、実際の問題でミスが出てしまうケースは少なくありません。
間違いやすいポイントを一覧で確認
| よくある間違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 絶対値をそのまま外してしまう | 場合分けをしてから外す |
| 「または」と「かつ」を混同する | < のときは「かつ」、> のときは「または」 |
| 場合分けの条件を確認しない | 解と条件の共通部分を必ず取る |
| 右辺が負の場合を見落とす | 右辺が負なら解なしか全体を検討する |
| 臨界点を境界に含めるか迷う | 不等号の種類(<か≦か)に合わせて判断する |
この表を参考に、自分がどこでミスをしやすいかを把握しておくとよいでしょう。
「かつ」と「または」の正しい使い分け
「かつ」と「または」の使い分けは、絶対値の不等式でもっともよくある混乱ポイントのひとつです。
|x| < a(a > 0)のとき
−a < x かつ x < a → −a < x < a(連立:「かつ」)
|x| > a(a > 0)のとき
x < −a または x > a(選択:「または」)
「または」は範囲が広がるイメージ、「かつ」は範囲が狭まるイメージで覚えると整理しやすいでしょう。
複数の絶対値がある場合の対策
絶対値が2つ以上ある場合は、場合分けの数が増えて複雑になりがちです。
対策としては、まずすべての臨界点をリストアップし、それらを数直線上に並べて範囲を整理することが有効です。
各範囲で丁寧に絶対値を外し、場合ごとの解と条件の共通部分を確実に求めていきましょう。
焦らず手順を踏むことが、複雑な問題を解く最短ルートです。
まとめ
今回は、絶対値を含む不等式の解き方と場合分けの方法について、例題を交えて解説しました。
絶対値を含む不等式の解法のポイントは、場合分けの徹底と、条件との共通部分を確実に取ることです。
基本公式 |x| < a ⟺ −a < x < a や |x| > a ⟺ x < −a または x > a は必ず押さえておきましょう。
また、0を含む場合や右辺が負の場合など、特殊なケースにも注意が必要です。
絶対値の不等式は、手順をしっかり守れば必ず解けるようになります。
例題を繰り返し練習しながら、解法の流れを自分のものにしていきましょう。