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エチレンの極性を分子の形・構造から解説!立体構造も!無極性分子か?

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分子の極性は、その物理的・化学的性質を決定する重要な要素です。水への溶解性や沸点、反応性など、様々な性質が分子の極性によって大きく影響を受けるでしょう。

本記事では、エチレンの極性について、分子の形状や立体構造から詳しく解説していきます。結合の極性と分子全体の極性の違い、対称性と極性の関係、さらには双極子モーメントの概念まで、化学の基礎から応用まで幅広くカバーしましょう。エチレンが無極性分子である理由を、分子構造に基づいて論理的に理解することで、他の分子の極性判断にも応用できる力が身につきます。

 

分子の極性とは?基本概念の理解

それではまず、分子の極性に関する基本的な概念について解説していきます。

 

極性と無極性の定義

分子の極性とは、分子内の電荷分布に偏りがあるかどうかを表す性質です。

電荷の偏りがある分子を「極性分子」、偏りがない分子を「無極性分子」と呼びます。この電荷分布の偏りは、分子の物理的・化学的性質に大きな影響を与えるのです。

極性分子:電荷分布に偏りがあり、正の部分と負の部分が存在する

無極性分子:電荷分布が均一で、偏りが存在しない

極性分子の代表例は水(H₂O)でしょう。水分子では酸素原子側がわずかに負に、水素原子側がわずかに正に帯電しています。この部分電荷により、水分子は電気双極子を形成するのです。

一方、無極性分子の例としては二酸化炭素(CO₂)やメタン(CH₄)があります。これらの分子では、電荷分布が対称的であり、全体として電荷の偏りがありません。

極性の有無は、「似たものは似たものを溶かす」という溶解の原則に直結します。極性分子は極性溶媒(水など)に溶けやすく、無極性分子は無極性溶媒(ヘキサンなど)に溶けやすいでしょう。

 

電気陰性度と結合の極性

続いては、結合レベルでの極性について確認していきます。

電気陰性度とは、原子が共有電子対を引き寄せる強さを表す指標です。ポーリングの電気陰性度が最もよく使われ、フッ素が最大値の4.0、セシウムが最小値の0.7程度となっています。

原子 電気陰性度
水素(H) 2.1
炭素(C) 2.5
窒素(N) 3.0
酸素(O) 3.5
フッ素(F) 4.0

2つの原子の電気陰性度に差があると、共有電子対が電気陰性度の大きい原子側に偏ります。これにより結合に極性が生じるのです。

例えばC-H結合では、炭素の電気陰性度が2.5、水素が2.1であり、わずかに差があります。そのため厳密にはC-H結合にも極性がありますが、その差は小さく、ほぼ無極性と見なされることが多いでしょう。

【結合の極性の判断基準】

電気陰性度の差 < 0.4:無極性共有結合

0.4 ≦ 電気陰性度の差 < 1.7:極性共有結合

1.7 ≦ 電気陰性度の差:イオン結合

重要なのは、結合の極性と分子全体の極性は別物だということです。極性結合を持っていても、分子全体としては無極性になる場合があるのです。

 

双極子モーメントの概念

分子の極性を定量的に表す指標が双極子モーメント(dipole moment)です。

双極子モーメントは、電荷の大きさと電荷間の距離の積で定義され、記号μ(ミュー)で表されます。単位はデバイ(D)またはC·m(クーロン・メートル)です。

双極子モーメントがゼロの分子は無極性分子、ゼロでない分子は極性分子と判定されます。値が大きいほど極性が強いことを意味するでしょう。

分子 双極子モーメント(D) 極性
二酸化炭素(CO₂) 0 無極性
エチレン(C₂H₄) 0 無極性
水(H₂O) 1.85 極性
アンモニア(NH₃) 1.47 極性
メタノール(CH₃OH) 1.70 極性

双極子モーメントはベクトル量であり、大きさと方向を持ちます。分子内に複数の極性結合がある場合、各結合双極子のベクトル和が分子全体の双極子モーメントとなるのです。

したがって対称的な分子では、個々の結合双極子が打ち消し合い、分子全体の双極子モーメントがゼロになることがあります。これがエチレンを含む多くの無極性分子に当てはまる原理でしょう。

 

エチレンの分子構造と形状

続いては、エチレンの具体的な分子構造について確認していきます。

 

エチレンの平面構造

エチレン(C₂H₄)は、すべての原子が同一平面上に配置された平面分子です。

6個の原子すべて(炭素2個、水素4個)が一つの平面に存在し、立体的な広がりを持ちません。この平面構造は、炭素原子のsp²混成と密接に関係しているのです。

エチレンの構造的特徴:

・平面構造(全原子が同一平面上)

・D₂ₕ対称性を持つ高対称分子

・C=C二重結合を中心とした対称配置

エチレンの分子式はC₂H₄、示性式はCH₂=CH₂と表記されます。構造式では以下のように書かれるでしょう。

“`
H H
\ /
C=C
/ \
H H
“`

この平面構造により、エチレンは高い対称性を持つ分子となります。対称性は分子の極性を考える上で極めて重要な要素なのです。

 

結合角と結合長

エチレンの幾何学的パラメータを詳しく見ていきましょう。

各炭素原子はsp²混成状態にあり、3つのσ結合が平面三角形状に配置されます。理論的にはsp²混成軌道間の角度は120°ですが、実際のエチレンではわずかに異なる値を示すのです。

結合・角度 測定値
C=C結合長 1.339 Å
C-H結合長 1.087 Å
H-C-H結合角 117.6°
H-C-C結合角 121.2°

H-C-H結合角が117.6°とやや狭く、H-C-C結合角が121.2°とやや広くなっています。これは二重結合のπ電子雲による反発が、水素原子間の反発よりも強いためでしょう。

C=C結合長は1.339 Åであり、これは典型的な二重結合の長さです。参考までに、エタン(C₂H₆)のC-C単結合は約1.54 Å、アセチレン(C₂H₂)のC≡C三重結合は約1.20 Åとなっています。

【炭素-炭素結合長の比較】

C-C単結合(エタン):1.54 Å

C=C二重結合(エチレン):1.34 Å

C≡C三重結合(アセチレン):1.20 Å

これらの結合長の違いは、結合次数が高いほど原子間距離が短くなることを示しています。π結合の存在により、二重結合は単結合よりも強固で短いのです。

 

分子の対称性と対称要素

エチレンは非常に高い対称性を持つ分子です。

分子の対称性は、対称操作(回転、鏡映、反転など)によって記述されます。エチレンはD₂ₕ点群に属する高対称分子なのです。

エチレンが持つ主な対称要素は以下の通りでしょう。

【エチレンの対称要素】

・C₂軸(2回回転軸):3本

 - C=C結合に垂直な軸

 - C=C結合を含む2つの軸

・鏡面(σ):3つ

 - 分子平面

 - C=C結合に垂直な2つの面

・反転中心(i):1つ

C₂軸とは、その軸周りに180°回転させると元の配置と区別できない状態になる軸です。エチレンでは、C=C結合の中点を通り、結合に垂直な軸がC₂軸となります。

鏡面とは、その面で反射させると元の配置と重なる面のことです。エチレンの分子平面自体が鏡面であり、さらにC=C結合を含む垂直な面も鏡面となるでしょう。

反転中心とは、その点を通って反転(各原子を中心から等距離の反対側に移動)させると元の配置と重なる点です。エチレンではC=C結合の中点が反転中心となります。

この高い対称性が、エチレンの極性を考える上で決定的に重要な役割を果たすのです。

 

エチレンの極性判定

続いては、エチレンが極性分子か無極性分子かを判定していきます。

 

C-H結合の極性

まず個々の結合の極性から検討しましょう。

エチレンにはC-H結合が4本存在します。炭素の電気陰性度は2.5、水素の電気陰性度は2.1であり、その差は0.4です。

結合 電気陰性度差 結合の極性
C-H 2.5 – 2.1 = 0.4 わずかに極性あり
C=C 2.5 – 2.5 = 0 無極性

電気陰性度の差が0.4というのは、極性共有結合と無極性共有結合の境界付近の値です。厳密にはわずかに極性がありますが、その程度は非常に小さいでしょう。

C-H結合では、炭素原子側がわずかに負(δ-)、水素原子側がわずかに正(δ+)に帯電します。この部分電荷により、各C-H結合は小さな結合双極子モーメントを持つのです。

一方、C=C結合は同じ原子同士の結合であり、電気陰性度の差はゼロです。したがってC=C結合自体は完全に無極性となります。

では、これらの結合双極子が分子全体でどのように組み合わさるかが次の問題でしょう。

 

双極子モーメントのベクトル和

分子全体の双極子モーメントは、各結合双極子のベクトル和として求められます。

エチレンでは4本のC-H結合が対称的に配置されているため、各結合双極子が互いに打ち消し合うのです。

エチレンの双極子モーメント = 0 D(デバイ)

理由:対称的な構造により結合双極子が完全に相殺

具体的に見てみましょう。左側の炭素に結合した2つのC-H結合双極子と、右側の炭素に結合した2つのC-H結合双極子は、分子の対称性により完全に打ち消し合います。

例えば、左上の水素と右上の水素は、C=C結合の中点に関して点対称の位置にあります。したがって、これら2つのC-H結合による双極子モーメントのベクトルは、大きさが等しく方向が正反対となり、相殺されるのです。

同様に、左下の水素と右下の水素、左上の水素と左下の水素、右上の水素と右下の水素のペアについても、対称性により双極子モーメントが打ち消し合います。

【双極子モーメント相殺の原理】

1. 分子が対称中心を持つ

2. 各結合双極子に対して、対称な位置に逆向きの双極子が存在

3. すべての双極子のベクトル和 = 0

4. 分子全体の双極子モーメント = 0

実験的にもエチレンの双極子モーメントは0と測定されており、理論と一致します。

 

エチレンは無極性分子である

以上の検討から、エチレンは無極性分子であると結論できます。

個々のC-H結合にはわずかに極性がありますが、分子全体の対称性により双極子モーメントが完全に相殺され、分子全体としては電荷分布が均一なのです。

判定基準 エチレンの状況 結論
双極子モーメント μ = 0 D 無極性
対称性 反転中心あり(D₂ₕ点群) 無極性
電荷分布 対称的で偏りなし 無極性

一般に、反転中心を持つ分子は必ず無極性分子となります。エチレンはC=C結合の中点に反転中心を持つため、この規則からも無極性と判定できるでしょう。

エチレンの無極性という性質は、その物理的・化学的性質に影響します。例えば、エチレンは水にほとんど溶けず、無極性溶媒によく溶けるのです。また、双極子-双極子相互作用を持たないため、分子間力が比較的弱く、沸点が低くなります(-103.7℃)。

この無極性という特徴は、エチレンを含む多くの炭化水素に共通する性質でしょう。メタン、エタン、プロパンなども同様に無極性分子です。

 

分子の対称性と極性の関係

続いては、より一般的な観点から、分子の対称性と極性の関係を確認していきます。

 

対称性から極性を判断する方法

分子の極性は、詳細な計算をしなくても対称性から判断できることが多いのです。

最も重要な規則は、反転中心を持つ分子は必ず無極性分子であるということでしょう。反転中心があるということは、分子内の任意の点に対して、反対側に同じ環境の点が存在することを意味します。

極性判定の基本ルール:

・反転中心がある → 必ず無極性

・鏡面がない → 極性の可能性あり

・高対称分子 → 無極性の傾向

・低対称分子 → 極性の可能性あり

エチレンの場合、C=C結合の中点が反転中心となっているため、この規則から即座に無極性と判定できます。

他の例を見てみましょう。二酸化炭素(O=C=O)も直線形で反転中心を持つため無極性です。ベンゼン(C₆H₆)も平面六角形で反転中心を持ち、無極性となります。

分子 反転中心 極性
エチレン(C₂H₄) あり 無極性
二酸化炭素(CO₂) あり 無極性
ベンゼン(C₆H₆) あり 無極性
水(H₂O) なし 極性
アンモニア(NH₃) なし 極性

一方、水やアンモニアは反転中心を持たず、双極子モーメントが相殺されないため極性分子となるのです。

 

平面分子の極性判定

エチレンのような平面分子の場合、特有の判定方法があります。

平面分子で分子平面に垂直な方向の双極子モーメント成分は、必ずゼロです。問題は分子平面内の双極子モーメントがゼロになるかどうかでしょう。

平面分子が分子平面内に反転中心または2つ以上の鏡面を持つ場合、その分子は無極性となります。エチレンは両方の条件を満たしているのです。

【平面分子の極性判定】

条件1:分子平面内に反転中心がある → 無極性

条件2:分子平面を含む複数の鏡面がある → 無極性の可能性

条件3:対称性が低い → 極性の可能性

例えばホルムアルデヒド(H₂C=O)は平面分子ですが、対称性が低く反転中心がないため極性分子です。C=O結合の極性が打ち消されず、分子全体として双極子モーメントを持ちます。

トランス-1,2-ジクロロエチレン(ClHC=CHCl、トランス配置)は平面分子で反転中心を持つため無極性ですが、シス-1,2-ジクロロエチレン(シス配置)は反転中心がなく極性分子となるでしょう。

これらの例から、分子の形状と対称性が極性を決定する上で決定的に重要であることが分かります。

 

類似分子との比較

エチレンと類似した構造を持つ分子の極性を比較してみましょう。

同じアルケンでもプロピレン(C₃H₆、CH₂=CH-CH₃)は、対称性が低いため極性分子となります。片側にメチル基がある非対称な構造のため、双極子モーメントが相殺されないのです。

分子 構造の対称性 双極子モーメント(D) 極性
エチレン(C₂H₄) 高対称(D₂ₕ) 0 無極性
プロピレン(C₃H₆) 低対称 0.35 弱い極性
1-ブテン(C₄H₈) 低対称 0.34 弱い極性
アセチレン(C₂H₂) 高対称(D∞ₕ) 0 無極性

アセチレン(C₂H₂、HC≡CH)も直線形で高い対称性を持つため無極性です。炭素原子の両側に1個ずつ水素があり、対称的な構造となっています。

一方、アセトアルデヒド(CH₃CHO)やアクリロニトリル(CH₂=CHCN)のように、二重結合に異なる置換基が結合した分子は極性を持つでしょう。

エチレンを基本骨格として、水素原子を他の原子や官能基で置換すると、対称性が失われて極性が生じる場合が多いのです。このように、分子の対称性が極性を決定する重要な因子となります。

 

エチレンの無極性がもたらす性質

続いては、エチレンが無極性分子であることから生じる様々な性質を確認していきます。

 

溶解性と無極性の関係

「似たものは似たものを溶かす」という原則により、無極性のエチレンは無極性溶媒にはよく溶けるが、極性溶媒(特に水)にはほとんど溶けないのです。

エチレンの水への溶解度は25℃で約0.131 g/Lと非常に低い値です。これは、極性の高い水分子とエチレン分子の間に強い相互作用が働かないためでしょう。

溶媒 溶媒の極性 エチレンの溶解性
極性 低い(0.131 g/L)
エタノール 極性 やや低い
ベンゼン 無極性 高い
ヘキサン 無極性 高い

一方、ベンゼンやヘキサンなどの無極性有機溶媒には、エチレンはよく溶解します。これらの溶媒分子とエチレン分子の間には、ファンデルワールス力による弱い相互作用が働くのです。

この溶解性の差は、エチレンの工業的な取り扱いにも影響を与えます。水系での反応は進行しにくく、有機溶媒中での反応が一般的でしょう。

また植物ホルモンとして働く際も、エチレンは水溶性が低いため、気体として空気中を拡散して作用します。水に溶けにくいことが、気体ホルモンとしての機能に適しているのです。

 

沸点と分子間力

エチレンの沸点は-103.7℃と非常に低い値です。

この低沸点は、分子間力が弱いことを反映しています。無極性分子であるエチレンは、双極子-双極子相互作用を持たず、分子間に働く力はファンデルワールス力(ロンドン分散力)のみなのです。

【分子間力の種類と強さ】

1. 水素結合:最も強い(10-40 kJ/mol)

2. 双極子-双極子相互作用:中程度(2-10 kJ/mol)

3. ロンドン分散力:最も弱い(0.5-5 kJ/mol)

エチレンの分子間には、最も弱いロンドン分散力しか働きません。この力は分子の大きさ(電子数)に比例して強くなりますが、エチレンは小さな分子であるため、分散力も弱いのです。

同じ炭素数2の化合物でも、極性を持つアセトアルデヒド(沸点20℃)やエタノール(沸点78℃)は、双極子相互作用や水素結合により沸点が大幅に高くなります。

化合物 極性 主な分子間力 沸点
エチレン(C₂H₄) 無極性 ロンドン分散力 -103.7℃
エタン(C₂H₆) 無極性 ロンドン分散力 -88.6℃
アセトアルデヒド(C₂H₄O) 極性 双極子相互作用 20.2℃
エタノール(C₂H₆O) 極性 水素結合 78.4℃

エタン(C₂H₆)も無極性で、沸点は-88.6℃です。エチレンよりわずかに高いのは、分子量が大きく電子数が多いため、ロンドン分散力がやや強いからでしょう。

このように、無極性という性質が、エチレンが常温で気体として存在する理由の一つとなっているのです。

 

化学反応性への影響

エチレンの無極性という性質は、その化学反応性にも影響を与えます。

エチレンの二重結合は、π電子が比較的自由に動けるため、求電子剤との反応が進行しやすいのです。無極性であることにより、π電子雲が特定の方向に偏っておらず、様々な方向から求電子剤が接近できます。

エチレンの主な反応:

・付加反応(水素、ハロゲン、ハロゲン化水素、水など)

・重合反応(ポリエチレン生成)

・酸化反応(エチレンオキシド生成)

例えばエチレンに臭素を加えると、速やかに付加反応が起こり1,2-ジブロモエタンが生成します。この反応は、π電子が臭素分子を求核攻撃することから始まるのです。

重合反応においても、無極性であることが重要です。ポリエチレンは無極性の高分子となり、優れた電気絶縁性や耐水性を示します。これはエチレンの無極性が重合後も保持されるためでしょう。

一方、極性を持つアクリロニトリル(CH₂=CHCN)から作られるポリアクリロニトリルは、極性高分子となり、異なる性質を示します。このように、モノマーの極性が、ポリマーの性質を決定する重要な因子となるのです。

エチレンの無極性という特徴は、その化学的・物理的性質全体に影響を及ぼし、工業的な応用においても重要な意味を持っています。

 

まとめ

本記事では、エチレンの極性について、分子構造と対称性の観点から詳しく解説してきました。

エチレンは平面構造を持ち、6個の原子すべてが同一平面上に配置されています。C-H結合にはわずかに極性がありますが、分子の高い対称性(D₂ₕ点群)により、各結合双極子が完全に相殺されるのです。その結果、分子全体の双極子モーメントはゼロとなり、エチレンは無極性分子と判定されます。

反転中心を持つ分子は必ず無極性分子となるという一般則からも、エチレンの無極性が確認できるでしょう。この無極性という性質は、エチレンの様々な物理的・化学的性質に影響を与えます。水への溶解度が低く有機溶媒によく溶けること、沸点が非常に低いこと、そして特定の化学反応性を示すことなどが、すべて無極性に起因するのです。

分子の極性は、結合の極性だけでなく分子全体の構造と対称性によって決まります。エチレンの例から学んだ極性判定の原理は、他の多くの分子の性質を理解する上でも有用な知識となるでしょう。化学の基礎として、分子構造と極性の関係を正しく理解することが重要です。