化学工業において、エチレンは最も重要な基礎化学品の一つです。年間の世界生産量は1億トンを超え、プラスチックや化学繊維の原料として欠かせない存在でしょう。
本記事では、エチレンの工業的製法と実験室での合成方法、さらに各製法の反応式について詳しく解説していきます。石油化学工業における熱分解法から、実験室で学ぶエタノールの脱水反応まで、様々な製造方法を網羅的に取り上げましょう。
各製法の原理や条件、生成メカニズムを理解することで、有機化学の基礎知識を深めることができます。
エチレンの工業的製法
それではまず、大規模に行われている工業的なエチレン製造方法について解説していきます。
ナフサの熱分解法(スチームクラッキング)
現代の石油化学工業において、エチレンの主要な製造方法はナフサの熱分解です。
ナフサ(粗製ガソリン)は、原油を蒸留して得られる沸点30〜180℃程度の炭化水素混合物でしょう。このナフサを高温で熱分解することにより、エチレンをはじめとする様々なオレフィン類が生成されます。
スチームクラッキング法の基本条件:
温度:800〜900℃
圧力:常圧〜やや加圧
滞留時間:0.1〜0.5秒
希釈剤:水蒸気(スチーム)
この製法は「スチームクラッキング」または「熱分解」と呼ばれています。水蒸気を添加するのは、炭化水素の分圧を下げてより低い温度で分解を促進し、コークス(炭素)の生成を抑制するためです。
代表的な反応式を以下に示します。例としてヘキサン(C₆H₁₄)の熱分解を考えましょう。
C₆H₁₄ → C₂H₄ + C₄H₁₀
C₆H₁₄ → 2C₂H₄ + C₂H₆
C₆H₁₄ → 3C₂H₄
実際には、ナフサは多種多様な炭化水素の混合物であるため、反応は極めて複雑です。エチレン以外にもプロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエンなど、多数の有用な化学品が同時に生成されるのです。
| 生成物 | 収率(重量%) |
|---|---|
| エチレン | 25〜35% |
| プロピレン | 15〜20% |
| ブタジエン | 4〜6% |
| 芳香族化合物 | 10〜15% |
| その他 | 30〜40% |
熱分解炉から出たガスは急冷され、その後複雑な分離プロセスを経て、各成分が精製されます。エチレンは深冷分離法により、他の成分から分離されて高純度品として回収されるでしょう。
エタンの熱分解法
続いては、エタンを原料とする製法を確認していきます。
天然ガスの主成分はメタンですが、エタンを豊富に含む天然ガス田も存在します。特に北米では、エタンを原料としたエチレン製造が盛んです。
エタンの熱分解反応式は比較的単純でしょう。
C₂H₆ → C₂H₄ + H₂
反応条件はナフサ分解とほぼ同様ですが、エタンの方がやや高温(850〜900℃)を必要とします。エタンは比較的安定な分子であるため、C-C結合やC-H結合を切断するには高いエネルギーが必要なのです。
エタン分解の利点は、エチレンの収率が高いことでしょう。ナフサ分解では25〜35%程度の収率ですが、エタン分解では50〜55%に達します。また副生成物が少なく、分離精製が比較的容易です。
| 原料 | エチレン収率 | 主な副生成物 |
|---|---|---|
| ナフサ | 25〜35% | プロピレン、ブタジエン、芳香族 |
| エタン | 50〜55% | 水素、メタン |
| プロパン | 35〜40% | プロピレン、メタン |
ただしエタンの入手可能性は地域によって大きく異なります。北米ではシェールガス革命により、安価なエタンが豊富に供給されるようになり、エタン分解によるエチレン製造が主流となったのです。
一方、日本を含むアジア地域では、エタンの供給が限られているため、依然としてナフサ分解が中心でしょう。原料の選択は、地域の資源状況と経済性によって決定されます。
エタン分解では、副生する水素ガスも有用な資源として回収・利用されます。水素は燃料として使用されるほか、石油精製や化学合成の原料としても価値があるのです。
その他の工業的製法
エチレンの製造には、他にもいくつかの方法が存在します。
プロパンやブタンなどのLPG(液化石油ガス)を原料とする熱分解も行われています。プロパン分解では、エチレンとプロピレンの両方が生成するのが特徴です。
【プロパンの熱分解反応例】
C₃H₈ → C₂H₄ + CH₄
C₃H₈ → C₃H₆ + H₂
また石炭を原料とする方法も研究されています。石炭をガス化して得られる合成ガス(COとH₂)から、メタノールを経由してエチレンを製造する「MTO(Methanol To Olefins)プロセス」が中国などで実用化されているのです。
| 製法 | 原料 | 特徴 |
|---|---|---|
| ナフサ分解 | 粗製ガソリン | 最も一般的、多様な副生成物 |
| エタン分解 | エタン | 高収率、北米で主流 |
| LPG分解 | プロパン、ブタン | エチレン・プロピレン両方生成 |
| MTOプロセス | メタノール(石炭由来) | 石油に依存しない |
バイオマスからエチレンを製造する研究も進められています。エタノール発酵により得られるバイオエタノールを脱水してエチレンを製造する方法は、「バイオエチレン」として注目されているでしょう。
これらの多様な製法は、原料の入手可能性、経済性、環境負荷などを総合的に考慮して選択されます。将来的には、持続可能性を重視した製法への移行が進むことが期待されるのです。
実験室でのエチレン合成法
続いては、教育現場や研究室で行われる小規模なエチレン合成方法を確認していきます。
エタノールの脱水反応
高校化学の実験で最もよく行われるエチレン合成法は、エタノールの脱水反応です。
この反応では、エタノール(C₂H₅OH)を濃硫酸の存在下で加熱することにより、水分子が除去されてエチレンが生成します。
エタノールの脱水によるエチレン生成:
C₂H₅OH → C₂H₄ + H₂O
触媒:濃硫酸(H₂SO₄)
温度:約170℃
実験操作としては、エタノールと濃硫酸の混合液(体積比1:3程度)を丸底フラスコに入れ、徐々に加熱します。発生したエチレンガスは、水上置換法または水酸化ナトリウム水溶液上で捕集するのです。
濃硫酸は脱水剤として機能し、エタノールからH₂Oを引き抜く役割を果たします。反応機構は以下の段階を経るでしょう。
【反応機構】
1. エタノールのプロトン化
C₂H₅OH + H⁺ → C₂H₅OH₂⁺
2. 水分子の脱離とカルボカチオンの生成
C₂H₅OH₂⁺ → C₂H₅⁺ + H₂O
3. プロトンの脱離とエチレンの生成
C₂H₅⁺ → C₂H₄ + H⁺
温度管理が重要です。温度が低すぎると反応が進行せず、高すぎるとエタノールの炭化や、エチレンの重合が起こる可能性があります。約170℃が最適温度とされているのです。
また温度が140℃程度の場合、脱水反応ではなく分子間脱水が優先され、ジエチルエーテル(C₂H₅OC₂H₅)が生成します。これは同じ出発物質から異なる生成物を得る興味深い例でしょう。
| 温度 | 主生成物 | 反応式 |
|---|---|---|
| 約140℃ | ジエチルエーテル | 2C₂H₅OH → C₂H₅OC₂H₅ + H₂O |
| 約170℃ | エチレン | C₂H₅OH → C₂H₄ + H₂O |
実験時の注意点として、濃硫酸は強酸性で腐食性があるため、取り扱いには十分な注意が必要です。また発生するエチレンは可燃性ガスであるため、火気を遠ざけることも重要でしょう。
臭化エチルの脱ハロゲン化水素反応
もう一つの実験室的製法として、ハロゲン化アルキルからの脱離反応があります。
臭化エチル(C₂H₅Br)を水酸化カリウムのエタノール溶液と反応させると、臭化水素が脱離してエチレンが生成するのです。
C₂H₅Br + KOH → C₂H₄ + KBr + H₂O
(エタノール溶液中、加熱)
この反応はE2反応(2分子的脱離反応)に分類されます。水酸化物イオン(OH⁻)が強塩基として働き、臭化エチルのβ位の水素を引き抜くと同時に、臭素原子が脱離してエチレンが生成する協奏的な反応です。
反応機構を詳しく見てみましょう。
E2反応機構:
・OH⁻がβ位のH原子を攻撃
・C-H結合が切れると同時にC=C二重結合が形成
・Br⁻が脱離基として離脱
・一段階で進行する協奏的反応
この方法の利点は、比較的温和な条件で反応が進行することです。エタノール脱水法のような高温を必要とせず、還流温度(約78℃)で十分でしょう。
ヨウ化エチルを用いることもできますが、臭化エチルの方が脱離しやすく、反応が速やかに進行します。一方、塩化エチルは脱離しにくいため、この反応にはあまり適していません。
| ハロゲン化物 | 脱離しやすさ | 反応速度 |
|---|---|---|
| C₂H₅I | 非常に高い | 非常に速い |
| C₂H₅Br | 高い | 速い |
| C₂H₅Cl | 低い | 遅い |
塩基の選択も重要です。水酸化カリウムの代わりに、ナトリウムエトキシド(C₂H₅ONa)やt-ブトキシカリウムなど、より強力な塩基を用いると、反応がさらに促進されるでしょう。
その他の実験室的製法
実験室では、他にもいくつかのエチレン合成法が知られています。
1,2-ジブロモエタン(BrCH₂CH₂Br)に亜鉛粉末を作用させると、脱臭素反応によりエチレンが生成します。
BrCH₂CH₂Br + Zn → C₂H₄ + ZnBr₂
この反応では、亜鉛が還元剤として働き、2つの臭素原子を引き抜いて二重結合を形成します。反応はエタノールやジエチルエーテルなどの溶媒中で行われるのです。
酸化カルシウム(生石灰)を触媒として、エタノールを加熱分解する方法もあります。濃硫酸を用いる方法より安全性が高く、教育現場で好まれることがあるでしょう。
| 製法 | 原料 | 試薬・触媒 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| エタノール脱水 | エタノール | 濃硫酸 | 最も一般的、高温必要 |
| 脱HBr反応 | 臭化エチル | KOH/エタノール | 温和な条件 |
| 脱臭素反応 | 1,2-ジブロモエタン | 亜鉛粉末 | 還元的脱離 |
| 酸化カルシウム法 | エタノール | CaO | 比較的安全 |
これらの方法は、それぞれ異なる有機化学の反応機構を学ぶための教材として有用です。脱水反応、脱離反応、還元的脱離など、多様な反応タイプを理解することができるでしょう。
実験室規模でのエチレン合成は、工業的製法と比べて収率や効率は劣りますが、有機化学の基礎を理解する上で重要な学習機会となります。反応条件の最適化や副反応の抑制など、化学実験の基本技術を習得できるのです。
各製法の反応メカニズム
続いては、主要な製法の反応メカニズムをより詳しく確認していきます。
熱分解のラジカル機構
ナフサやエタンの熱分解は、ラジカル連鎖反応によって進行します。
高温条件下では、C-C結合やC-H結合がホモリティック開裂(均等開裂)し、ラジカル種が生成するのです。これらのラジカルがさらに反応を引き起こし、連鎖的に分解が進行します。
エタンの熱分解におけるラジカル機構:
【開始反応】
C₂H₆ → 2CH₃・(メチルラジカル)
【成長反応】
CH₃・+ C₂H₆ → CH₄ + C₂H₅・
C₂H₅・→ C₂H₄ + H・
H・+ C₂H₆ → H₂ + C₂H₅・
【停止反応】
2C₂H₅・→ C₄H₁₀
開始段階では、熱エネルギーによってC-C結合が切断され、メチルラジカルが生成します。C-C結合の結合エネルギーは約348 kJ/molであり、800℃以上の高温ではこの結合が切断されるのです。
成長段階では、生成したラジカルが分子から水素原子を引き抜き、新たなラジカルを生成します。エチルラジカル(C₂H₅・)は、β開裂によりエチレンと水素ラジカルに分解するでしょう。
| 反応段階 | 特徴 |
|---|---|
| 開始 | C-C結合の均等開裂、ラジカル生成 |
| 成長(連鎖) | 水素引き抜き、β開裂、ラジカル伝播 |
| 停止 | ラジカル同士の結合、連鎖の終了 |
停止反応では、2つのラジカルが結合して安定な分子を形成します。ただし高温では分子の濃度が低く、ラジカル同士の衝突確率も低いため、停止反応は比較的起こりにくいのです。
この連鎖反応により、1つの開始反応から多数の分解反応が進行します。そのため少量のラジカル生成でも、大量の炭化水素が分解されるでしょう。
副反応として、ラジカルの付加反応による高分子化(コーキング)も起こります。これを抑制するために、水蒸気による希釈や滞留時間の短縮が重要となるのです。
エタノール脱水のカルボカチオン機構
エタノールの脱水反応は、カルボカチオン中間体を経由するE1機構で進行します。
濃硫酸による酸触媒条件下では、まずエタノールの酸素原子がプロトン化され、より良い脱離基となる水分子が形成されるのです。
【詳細な反応機構】
ステップ1:プロトン化
C₂H₅OH + H₂SO₄ → C₂H₅OH₂⁺ + HSO₄⁻
ステップ2:水分子の脱離(律速段階)
C₂H₅OH₂⁺ → C₂H₅⁺ + H₂O
ステップ3:プロトンの脱離
C₂H₅⁺ → C₂H₄ + H⁺
ステップ2では、プロトン化されたエタノールから水分子が脱離し、エチルカチオン(C₂H₅⁺)が生成します。これが反応の律速段階であり、最もエネルギーを要する過程でしょう。
エチルカチオンは非常に不安定な化学種です。そのため直ちに隣接する炭素からプロトンを放出し、より安定なエチレン分子となるのです。
カルボカチオンの安定性:
第三級 > 第二級 > 第一級 > メチルカチオン
エチルカチオンは第一級で不安定
エチルカチオンは第一級カルボカチオンであり、非常に不安定です。超共役や共鳴による安定化がほとんどないため、生成後すぐにプロトンを失ってエチレンになります。
より複雑なアルコールの場合、カルボカチオンの転位反応が起こることがあります。しかしエタノールの場合、最も単純な構造であるため転位は起こりません。
温度が低い場合(約140℃)、E1機構ではなくSN2機構により分子間脱水が進行し、ジエチルエーテルが生成します。温度によって反応機構と生成物が変化する興味深い例でしょう。
脱離反応のE2機構
臭化エチルからのエチレン生成は、E2機構(2分子的脱離反応)で進行します。
この反応は協奏的であり、塩基による水素引き抜き、二重結合の形成、脱離基の脱離が同時に起こるのです。
【E2反応の特徴】
・一段階反応(中間体なし)
・立体選択性:アンチペリプラナー配置
・反応速度:[基質][塩基]に比例
・強塩基が有利
反応の遷移状態では、OH⁻がβ位の水素に部分的に結合し、同時にC-H結合が切れ、C=C二重結合が形成され、C-Br結合が切れて臭素が脱離します。これらすべてが協奏的に進行するのです。
立体化学的には、脱離する水素と臭素がアンチペリプラナー配置(180°の二面角)を取ることが最も有利でしょう。この配置では、軌道の重なりが最大となり、遷移状態のエネルギーが最小になります。
| 反応機構 | 段階数 | 中間体 | 立体選択性 |
|---|---|---|---|
| E1(エタノール脱水) | 2段階 | カルボカチオン | なし |
| E2(脱HBr) | 1段階 | なし | アンチ脱離 |
E2反応の速度は、基質と塩基の両方の濃度に依存します。塩基の強さが増すほど、また脱離基の脱離能が高いほど、反応は速く進行するでしょう。
臭素はヨウ素に次いで良い脱離基です。臭化物イオンは安定であり、容易に脱離できるため、臭化エチルはE2反応に適した基質となるのです。
この反応機構の理解は、より複雑なアルケンの合成を計画する際の基礎となります。Zaitsev則(より置換度の高いアルケンが優先的に生成する)やHofmann則などの経験則も、E2機構の理解から説明できるでしょう。
製法の選択と経済性
続いては、実用面での製法選択について確認していきます。
工業的製法の比較と選択基準
エチレンの工業的製法を選択する際には、原料の入手可能性、コスト、環境負荷など、多くの要因を考慮する必要があります。
ナフサ分解は世界的に最も広く採用されている方法です。原油精製の副産物であるナフサは比較的安定して供給され、既存のインフラも整っているためでしょう。
| 製法 | 原料コスト | エチレン収率 | 設備投資 | 主要地域 |
|---|---|---|---|---|
| ナフサ分解 | 中 | 25〜35% | 大 | 日本、欧州、アジア |
| エタン分解 | 低 | 50〜55% | 中 | 北米、中東 |
| MTOプロセス | 変動大 | 30〜40% | 大 | 中国 |
北米では、シェールガス革命により安価なエタンが大量に供給されるようになりました。そのためエタン分解への転換が進み、競争力が大幅に向上したのです。
中東では、豊富な天然ガス資源を活用したエタン分解が主流でしょう。原料コストの優位性により、世界市場での競争力を保っています。
中国では、石炭資源を活用したMTOプロセスが発展しています。石油への依存度を下げる戦略的な選択といえるでしょう。
製法選択の主要因:
1. 原料の入手可能性と価格
2. エチレン収率と副生成物の価値
3. 設備投資と運転コスト
4. 環境規制とCO₂排出量
5. 既存インフラとの整合性
環境負荷とカーボンニュートラル
近年、エチレン製造における環境負荷の低減とカーボンニュートラルへの対応が重要な課題となっています。
熱分解法は高温を必要とするため、大量のエネルギーを消費します。このエネルギーは主に化石燃料の燃焼から得られるため、CO₂排出量が多いのです。
エチレン1トン生産あたりのCO₂排出量:
ナフサ分解:約1.8〜2.2トン-CO₂
エタン分解:約1.0〜1.5トン-CO₂
(製造プロセス全体での平均値)
カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、以下のような技術開発が進められています。
バイオエチレンの製造では、サトウキビなどから発酵により得られるバイオエタノールを脱水してエチレンを生成します。ブラジルではすでに商業生産が行われており、化石資源由来のエチレンと比べてCO₂排出量を大幅に削減できるでしょう。
電気分解によるエチレン製造も研究されています。再生可能エネルギーによる電力を使用すれば、理論的にはカーボンニュートラルなエチレン生産が可能です。
CO₂回収・利用技術(CCU)も注目されています。排出されたCO₂を回収し、水素と反応させてメタノールを経由してエチレンを製造する方法が研究されているのです。
将来の製法展望
エチレン製造技術は、持続可能性を重視した方向へと進化しています。
電気加熱による熱分解炉の開発が進められており、化石燃料燃焼による加熱から、電気による加熱への転換が検討されているのです。再生可能エネルギー由来の電力を使用すれば、CO₂排出を大幅に削減できます。
触媒技術の進歩により、より低温・低圧での反応が可能になる可能性もあるでしょう。エネルギー効率の向上は、経済性と環境性の両面で重要です。
| 技術 | 特徴 | 開発段階 |
|---|---|---|
| バイオエチレン | バイオマス原料、カーボンニュートラル | 商業生産開始 |
| 電気加熱分解炉 | 電力による加熱、CO₂削減 | 実証段階 |
| CO₂からの合成 | CCU技術、CO₂利用 | 研究開発段階 |
| 低温触媒プロセス | エネルギー効率向上 | 研究段階 |
プラスチックのリサイクル技術も重要でしょう。使用済みポリエチレンを熱分解してエチレンに戻す「ケミカルリサイクル」が実用化されれば、循環型社会の構築に貢献します。
これらの技術革新により、エチレン製造はより持続可能なプロセスへと変革していくことが期待されるのです。
まとめ
本記事では、エチレンの製法について、工業的製法から実験室での合成法まで詳しく解説してきました。
工業的には、ナフサやエタンの高温熱分解(スチームクラッキング)が主流であり、800〜900℃でラジカル連鎖反応によりエチレンが生成されます。ナフサ分解は世界的に広く採用され、エタン分解は北米や中東で主流となっているのです。
実験室では、エタノールの脱水反応が最も一般的でしょう。濃硫酸触媒下、約170℃で加熱することにより、カルボカチオン中間体を経由してエチレンが生成されます。また臭化エチルからのE2脱離反応も、有機化学の教育において重要な製法です。
将来的には、環境負荷の低減とカーボンニュートラルへの対応が重要課題となります。バイオエチレンや電気加熱技術、CO₂利用技術など、持続可能な製法への転換が進められているのです。エチレン製造技術の進化は、化学工業全体の持続可能性を高める鍵となるでしょう。