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エチレンに水付加の化学反応式は?触媒等も解説!

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エチレンは化学工業において最も重要な基礎原料の一つですが、その利用方法の中でも水を付加してエタノールを生成する反応は、歴史的にも工業的にも大きな意義を持っています。二重結合を持つエチレンに水分子が付加することで、日常生活で広く使用されるアルコールが生成されるのです。

この水和反応は、単純に見えて実は非常に奥深い化学反応でしょう。適切な触媒がなければ反応は進行せず、反応条件の選択によって収率や選択性が大きく変化します。また、この反応の理解は、有機化学における付加反応の基本原理を学ぶ上でも極めて重要なのです。

本記事では、エチレンへの水付加反応の化学反応式から、詳細な反応機構、使用される触媒の種類と役割、工業的製造プロセス、さらには反応条件の最適化まで、包括的に解説していきます。有機化学の基礎から工業応用まで、この重要な反応を深く理解していきましょう。

 

エチレンの水和反応の基本的な化学反応式

それではまず、エチレンに水が付加する反応の基本について解説していきます。

 

水付加反応の化学反応式と生成物

エチレン(C₂H₄)に水(H₂O)が付加すると、エタノール(C₂H₅OH)が生成されます。この反応は水和反応または付加反応と呼ばれ、以下の化学反応式で表されるのです。

CH₂=CH₂ + H₂O → CH₃CH₂OH

または

C₂H₄ + H₂O → C₂H₅OH

この反応では、エチレンの二重結合(C=C)が単結合(C−C)に変換され、一方の炭素に水素原子(H)が、もう一方の炭素にヒドロキシ基(−OH)が結合します。エチレンは対称な分子構造を持つため、どちらの炭素にOHが結合しても同じ生成物となるのです。

生成物のエタノールは、最も単純な第一級アルコールであり、分子式C₂H₅OH、分子量46.07の無色透明の液体です。沸点は78.4℃で、水とあらゆる割合で混和し、消毒用アルコール、燃料、溶媒など多様な用途に使用されています。

 

反応の分類と化学的特徴

エチレンへの水付加反応は、求電子付加反応に分類されます。エチレンの二重結合は電子が豊富な部位(求核的)であり、酸性条件下で活性化された水分子(求電子的)が攻撃することで反応が進行するのです。

この反応の化学的特徴として、以下の点が挙げられます。第一に、可逆反応であること。エタノールは脱水反応によってエチレンに戻ることができ、平衡が存在します。第二に、触媒が必須であること。無触媒では室温付近での反応速度は極めて遅く、実用的ではありません。第三に、反応は発熱反応であること。エチレンの二重結合が切れて新しい単結合が形成されるため、エネルギーが放出されるのです。

エチレンへの水付加反応の標準反応エンタルピーは約-45 kJ/molです。この負の値は発熱反応を示しており、熱力学的には自発的に進行する反応であることがわかります。しかし、活性化エネルギーが高いため、触媒なしでは反応が進みません。

 

マルコフニコフ則と反応の位置選択性

エチレンは対称分子であるため、水付加の位置選択性は問題になりません。しかし、非対称アルケン(例:プロピレン)に水が付加する場合は、マルコフニコフ則が適用されます。

マルコフニコフ則とは、「不対称アルケンへの水素化合物の付加では、水素原子はより多くの水素を持つ炭素に結合し、ヒドロキシ基はより少ない水素を持つ炭素に結合する」という経験則です。これは、より安定なカルボカチオン中間体を経由する反応経路が優先されるためでしょう。

エチレンの場合(対称)

CH₂=CH₂ + H₂O → CH₃CH₂OH(唯一の生成物)

プロピレンの場合(非対称)

CH₃CH=CH₂ + H₂O → CH₃CH(OH)CH₃(主生成物、2-プロパノール)

→ CH₃CH₂CH₂OH(副生成物、1-プロパノール)

エチレンの水和反応を理解することは、より複雑なアルケンの水和反応を予測する基礎となります。反応機構や触媒の役割を詳しく学ぶことで、有機化学の理解が深まるのです。

 

詳細な反応機構とカルボカチオン中間体

続いては、エチレンの水和反応がどのように進行するのか、反応機構を確認していきます。

 

酸触媒による反応の開始段階

エチレンの水和反応は、酸触媒の存在下で進行します。最も一般的な触媒は硫酸(H₂SO₄)やリン酸(H₃PO₄)などのブレンステッド酸です。反応は以下の段階を経て進行するのです。

【第1段階】エチレンの二重結合へのプロトン付加

酸触媒から供給されたプロトン(H⁺)が、エチレンの電子豊富な二重結合に付加します。この段階でカルボカチオン中間体が生成されるのです。

CH₂=CH₂ + H⁺ → CH₃−CH₂⁺

エチレンは対称分子であるため、どちらの炭素にプロトンが付加しても同じエチルカチオン(CH₃CH₂⁺)が生成されます。このカルボカチオンは正電荷を持つ反応性の高い中間体であり、次の段階で求核剤と反応するのです。

 

水分子の求核攻撃と生成物形成

【第2段階】水分子による求核攻撃

生成したカルボカチオンに、水分子が求核攻撃を行います。水の酸素原子が持つ非共有電子対が、正電荷を持つ炭素に配位結合を形成するのです。

CH₃−CH₂⁺ + H₂O → CH₃−CH₂−OH₂⁺

この段階で生成されるのは、オキソニウムイオン(CH₃CH₂OH₂⁺)です。これはエタノールがプロトン化された形であり、まだ中性のエタノールではありません。

【第3段階】プロトンの脱離

最後に、オキソニウムイオンから塩基(通常は別の水分子)がプロトンを引き抜き、中性のエタノールが生成されます。

CH₃−CH₂−OH₂⁺ → CH₃−CH₂−OH + H⁺

この段階で触媒であるプロトンが再生されるため、触媒サイクルが完結します。再生されたH⁺は次のエチレン分子と反応し、反応が継続するのです。

カルボカチオン中間体の安定性が、反応の進行を大きく左右します。エチレンから生成するエチルカチオンは第一級カルボカチオンであり、比較的不安定です。そのため、エチレンの水和反応には強い酸触媒と高温・高圧条件が必要となります。より置換基の多いアルケンでは、安定なカルボカチオンが生成しやすく、反応が容易に進行するのです。

 

反応の可逆性と平衡

エチレンの水和反応は可逆反応であり、エタノールは脱水反応によってエチレンに戻ることができます。反応の平衡は、温度、圧力、水とエチレンの比率によって決定されるのです。

C₂H₄ + H₂O ⇄ C₂H₅OH

ΔH° ≈ -45 kJ/mol(発熱反応)

ルシャトリエの原理により、以下のような関係が成り立ちます。第一に、低温ほど平衡が右側(エタノール生成側)に移動する。発熱反応であるため、低温が有利です。第二に、高圧ほど平衡が右側に移動する。気体分子数が減少する方向だからです。第三に、水を過剰に使用すると平衡が右側に移動する。これはル・シャトリエの原理の応用でしょう。

工業的には、エチレンの高い転化率を得るために、適度な高温(250~300℃)と高圧(6~8 MPa)、そして過剰な水の使用という条件が選択されます。この条件設定は、反応速度と平衡位置のバランスを考慮した最適化の結果なのです。

 

触媒の種類と工業的製造プロセス

続いては、エチレンの水和反応に使用される触媒と工業プロセスを確認していきます。

 

硫酸法(間接水和法)の歴史と原理

歴史的に最初に工業化されたのは、硫酸法(間接水和法)です。この方法は19世紀後半から20世紀前半にかけて広く使用されました。

硫酸法では、まずエチレンを濃硫酸に吸収させて硫酸エチルを生成し、次にこれを加水分解してエタノールを得ます。反応は2段階で進行するのです。

【第1段階】エチレンの硫酸への吸収

C₂H₄ + H₂SO₄ → C₂H₅OSO₃H(硫酸エチル)

【第2段階】硫酸エチルの加水分解

C₂H₅OSO₃H + H₂O → C₂H₅OH + H₂SO₄

この方法の利点は、比較的温和な条件(50~80℃、常圧~低圧)で反応が進行することです。しかし、硫酸の回収・再生が必要であり、装置の腐食や廃液処理の問題があるため、現在ではほとんど使用されていません。直接水和法の開発により、より効率的な製造が可能になったのです。

 

リン酸触媒による直接水和法

現在の主流は、リン酸触媒を用いた直接水和法です。この方法は1930年代にシェル社によって開発され、現在でも石油化学系エタノール製造の標準的プロセスとなっています。

触媒としては、ケイソウ土などの多孔質担体にリン酸(H₃PO₄)を担持させた固体酸触媒が使用されます。典型的な反応条件は、温度250~300℃、圧力6~8 MPa(60~80気圧)です。

項目 条件・仕様
触媒 リン酸/ケイソウ土(H₃PO₄含有率60~70%)
温度 250~300℃
圧力 6~8 MPa
水/エチレンモル比 0.6~0.8
エチレン転化率 4~5%(1パス)
エタノール選択性 95~98%

リン酸触媒の特徴は、硫酸よりも腐食性が低く、長期間安定して使用できることです。触媒寿命は通常1~3年であり、活性が低下したら再生または交換されます。

 

工業プロセスの流れと未反応物の循環

直接水和法の工業プロセスでは、以下のような流れで反応が進行します。

【工程1】原料の調整と加圧
エチレンガスと水を混合し、高圧ポンプで6~8 MPaまで加圧します。水は過剰に供給され、エチレンに対してモル比で0.6~0.8程度が使用されるのです。

【工程2】反応器での水和反応
加圧された混合ガスを、リン酸触媒を充填した管状反応器に導入します。反応器は複数の段から構成され、各段間で冷却されることで温度制御が行われます。

【工程3】生成物の分離
反応器出口のガスは、エタノール、水、未反応エチレン、副生成物(ジエチルエーテルなど)の混合物です。これを冷却・減圧して、エタノールと水を液化分離するのです。

【工程4】蒸留精製
液化した混合物を蒸留塔に送り、エタノールと水を分離します。得られる粗エタノールは約90~95%の濃度であり、さらに精密蒸留により95.6%(共沸組成)または無水エタノール(99.5%以上)に精製されるでしょう。

【工程5】未反応エチレンの循環
分離された未反応エチレンは、再び反応器に循環されます。この循環システムにより、全体としてのエチレン転化率を95%以上に高めることができるのです。

1パスあたりのエチレン転化率が4~5%と低い理由は、反応平衡の制約と副反応の抑制のためです。高転化率を追求すると、ジエチルエーテル(C₂H₅OC₂H₅)などの副生成物が増加します。未反応物を循環することで、全体としては高い効率を維持しながら、各パスでは最適条件を保つことができるのです。

 

反応条件の最適化と副反応の制御

続いては、エチレンの水和反応における条件最適化と副反応について確認していきます。

 

温度・圧力条件の選択と最適化

エチレンの水和反応における温度と圧力は、反応速度と平衡位置の両方に影響を与えます。最適条件の選択には、これらのバランスを考慮する必要があるのです。

温度に関しては、高温ほど反応速度が速くなりますが、発熱反応であるため平衡は左側(エチレン側)に移動します。一方、低温では平衡は右側(エタノール側)に有利ですが、反応速度が遅すぎて実用的ではありません。工業的には250~300℃という中程度の高温が選択され、触媒活性と反応速度を確保しつつ、適度な平衡転化率を得ているのです。

温度の影響

200℃:反応速度遅い、平衡転化率高い(約15%)

280℃:反応速度適度、平衡転化率中程度(約5%)← 工業条件

350℃:反応速度速い、平衡転化率低い(約2%)、副反応増加

圧力に関しては、高圧ほど平衡がエタノール生成側に移動します。これは、気体分子数が減少する方向(C₂H₄ + H₂O → C₂H₅OH)が高圧で有利になるためです。しかし、高圧は設備コストとエネルギーコストを増大させるため、経済性を考慮した最適圧力が選択されます。通常6~8 MPaが採用されるのです。

 

副生成物の生成機構と抑制方法

エチレンの水和反応では、目的生成物であるエタノール以外に、いくつかの副生成物が生成されます。主な副生成物はジエチルエーテルです。

ジエチルエーテルは、エタノールがさらにエチレンと反応するか、2分子のエタノールが脱水縮合することで生成されます。

【副反応1】エタノールとエチレンの反応

C₂H₅OH + C₂H₄ → C₂H₅OC₂H₅

【副反応2】エタノールの分子間脱水

2C₂H₅OH → C₂H₅OC₂H₅ + H₂O

ジエチルエーテルの生成は、高温、低水比、高エタノール濃度で促進されます。これを抑制するためには、以下の対策が取られるのです。第一に、適切な温度管理(過度な高温を避ける)。第二に、十分な水の供給。第三に、低いエチレン転化率での運転(未反応物循環による)。第四に、触媒の選択性向上(リン酸の担持方法の最適化)でしょう。

通常の運転条件では、エタノールへの選択性は95~98%に維持され、ジエチルエーテルは2~5%程度に抑えられます。生成したジエチルエーテルは、蒸留工程で分離され、副産物として回収されるか、再び水和反応に供されてエタノールに変換されるのです。

 

触媒の劣化と再生

リン酸触媒は長期使用により、徐々に活性が低下します。主な劣化原因は、リン酸の流失と炭素質物質(コーク)の堆積です。

リン酸は水に可溶であるため、反応中の水蒸気や液体水によって少しずつ流失します。これを補うため、定期的にリン酸を補充する必要があるのです。また、副反応により生成した炭化水素が触媒表面で重合・炭化し、コークとして堆積すると、活性点が覆われて活性が低下します。

触媒の再生は、以下の方法で行われます。第一に、リン酸の再担持。触媒を取り出してリン酸溶液に浸漬し、乾燥・焼成します。第二に、空気酸化によるコークの燃焼除去。ただし、過度な酸化は担体を損傷させる可能性があるため、温度と酸素濃度を慎重に制御します。第三に、新しい触媒への交換。通常1~3年ごとに実施されるでしょう。

触媒の管理指標

新品触媒の活性:100%(基準)

交換推奨レベル:活性70%以下

典型的な寿命:1~3年(運転条件により変動)

再生回数:通常2~3回可能

 

まとめ

エチレンへの水付加反応は、化学反応式C₂H₄ + H₂O → C₂H₅OHで表され、酸触媒の存在下でエタノールを生成する重要な工業プロセスです。反応はカルボカチオン中間体を経由する求電子付加機構で進行し、プロトンの付加、水の求核攻撃、プロトンの脱離という3段階を経て完結します。

工業的には、リン酸触媒を用いた直接水和法が主流であり、250~300℃、6~8 MPaという条件下で反応が行われます。発熱反応であり可逆反応であるため、温度・圧力・水比の最適化が重要です。未反応エチレンを循環させることで、全体として95%以上の高い転化率を達成しているのです。

副生成物としてジエチルエーテルが生成されますが、適切な条件管理によりエタノールへの選択性95~98%を維持できます。触媒の劣化管理と再生技術も、安定した工業生産には欠かせない要素でしょう。エチレンの水和反応の理解は、有機化学と工業化学の橋渡しとなる重要な知識なのです。