化学式等の物性

エチレンは何に使う?使用用途や需要を徹底解説!

当サイトでは記事内に広告を含みます

エチレンは現代の化学工業において、最も重要な基礎原料の一つとして位置づけられています。

年間世界で約2億トンが生産されるこの化合物は、私たちの日常生活を支える無数の製品の出発点となっているのです。レジ袋からペットボトル、自動車部品から医療器具まで、エチレンから作られる製品は実に多岐にわたります。

しかし、エチレンそのものを直接目にする機会はほとんどありません。エチレンは化学品の中間原料であり、様々な化学反応を経て、最終的に私たちが使用する製品へと変換されるからです。この変換プロセスを理解することで、化学工業の全体像と、エチレンが果たす中心的な役割が見えてくるでしょう。

本記事では、エチレンの主要な使用用途を体系的に整理し、それぞれの用途における生産量や重要性、さらには地域別・世界的な需要動向まで、包括的に解説していきます。化学工業の基礎から市場動向まで、エチレンの多面的な利用を深く理解していきましょう。

 

エチレンの主要誘導品と用途の全体像

それではまず、エチレンがどのような製品に変換されるのか、全体像を解説していきます。

 

エチレンから作られる主要化学品の分類

エチレンは、重合反応、付加反応、酸化反応など様々な化学反応によって、多数の誘導品に変換されます。これらの誘導品は、さらに加工されて最終製品となるのです。

主要な誘導品は以下のように分類できます。第一に、ポリマー類。ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンゴムなどです。第二に、アルコール・エーテル類。エタノール、エチレングリコール、エチレンオキシドなどでしょう。第三に、ハロゲン化物。塩化ビニル、二塩化エチレンなど。第四に、芳香族化合物。エチルベンゼン、スチレンなどです。

エチレンの主要誘導品

・ポリエチレン(LDPE、HDPE、LLDPE)

・エチレンオキシド → エチレングリコール

・二塩化エチレン → 塩化ビニル

・エチルベンゼン → スチレン

・エタノール

・酢酸ビニル

・α-オレフィン類

これらの誘導品の中で、最も消費量が多いのはポリエチレンです。全エチレン消費量の約50~60%がポリエチレン製造に使用されています。次いで、エチレンオキシド(約15~20%)、二塩化エチレン(約10~15%)、エチルベンゼン(約5~10%)となるでしょう。

 

用途別消費量の内訳と比率

世界のエチレン消費量を用途別に見ると、その産業構造が明確になります。以下の表に、主要用途とその消費比率をまとめました。

用途(誘導品) 消費比率 主な最終製品
ポリエチレン 50~60% フィルム、容器、パイプ、成形品
エチレンオキシド 15~20% 不凍液、ポリエステル繊維、界面活性剤
二塩化エチレン 10~15% 塩化ビニル樹脂、溶剤
エチルベンゼン 5~10% スチレン樹脂、ABS樹脂
エタノール 2~5% 溶剤、燃料、化学品原料
その他 5~10% 酢酸ビニル、α-オレフィンなど

この比率は地域や時期によって変動しますが、ポリエチレンの圧倒的な優位性は世界共通です。ポリエチレンは最も汎用的なプラスチックであり、需要が安定的に拡大しているためでしょう。

エチレンの用途構成は、その地域の産業構造を反映します。先進国では包装材や消費財向けのポリエチレン需要が高く、発展途上国ではインフラ整備に必要な塩化ビニル管などの需要が相対的に高い傾向があります。また、中国では繊維産業が盛んなため、エチレングリコール(ポリエステル繊維原料)の需要比率が他地域より高いのです。

 

川上から川下への製品フロー

エチレンから最終製品に至るまでの流れを理解することで、化学工業のバリューチェーンが見えてきます。典型的な製品フローは、原料 → 基礎化学品 → 中間体 → 最終製品という段階を経るのです。

【例1:ポリエチレン製品のフロー】
原料(ナフサ、エタン)→ エチレン → ポリエチレン → 成形加工 → レジ袋、容器、フィルム

【例2:ポリエステル繊維のフロー】
エチレン → エチレンオキシド → エチレングリコール + テレフタル酸 → ポリエチレンテレフタレート(PET)→ 繊維製品、ペットボトル

【例3:塩化ビニル製品のフロー】
エチレン + 塩素 → 二塩化エチレン → 塩化ビニルモノマー → 塩化ビニル樹脂(PVC)→ パイプ、建材、電線被覆

このように、エチレンは1~3段階の化学変換を経て、私たちが日常使用する製品へと姿を変えます。各段階で付加価値が加わり、最終製品の価格はエチレンの数倍から数十倍になるでしょう。

 

ポリエチレンとしての利用(最大用途)

続いては、エチレンの最大用途であるポリエチレン製造について確認していきます。

 

ポリエチレンの種類と生産比率

ポリエチレンは、製造方法と物性の違いにより、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の3種類に大別されます。世界のポリエチレン生産量は年間約1億トン以上であり、プラスチック全体の約30%を占めるのです。

3種類の生産比率は、おおよそHDPE:LLDPE:LDPE = 45:35:20程度です。HDPEが最も多く生産されており、剛性が要求される用途に広く使用されています。LLDPEは強靭性に優れ、フィルム用途で需要が拡大中でしょう。LDPEは柔軟性と透明性が特徴ですが、性能面でLLDPEに置き換えられつつあります。

ポリエチレンの世界生産量(概算)

HDPE:約4,500万トン/年(45%)

LLDPE:約3,500万トン/年(35%)

LDPE:約2,000万トン/年(20%)

合計:約1億トン/年

 

LDPEの主要用途と市場

低密度ポリエチレン(LDPE)は、柔軟性と透明性に優れるため、主にフィルム用途に使用されます。包装フィルムが最大の用途であり、全LDPE消費量の60~70%を占めるのです。

【主要用途】
– レジ袋、ゴミ袋などの各種袋類
– 食品包装用ラップフィルム
– 農業用ビニールフィルム(温室、マルチフィルム)
– ラミネート用フィルム(紙やアルミ箔との複合材料)
– 電線・ケーブルの被覆材
– 容器(柔軟性が必要なもの)

LDPEフィルムは、加工性が良く、透明性が高く、防湿性に優れるという特徴があります。食品包装では、内容物を保護しながら視認性を確保できるため、広く使用されているのです。

 

HDPEとLLDPEの用途展開

高密度ポリエチレン(HDPE)は、剛性と強度に優れるため、構造材料として広く使用されます。主要用途は以下の通りです。

【HDPEの主要用途】
– パイプ(水道管、ガス管、下水管)
– 容器(洗剤ボトル、シャンプー容器、灯油タンク)
– フィルム・袋(買い物袋、ゴミ袋の一部)
– 成形品(コンテナ、パレット、まな板、玩具)
– 燃料タンク

特にパイプ用途は重要であり、HDPE消費量の約30~40%を占めます。HDPEパイプは耐食性、耐久性、施工性に優れ、インフラ整備に不可欠な材料となっているのです。

直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、LDPEとHDPEの中間的な性質を持ち、特に引張強度と引裂強度のバランスに優れます。

【LLDPEの主要用途】
– ストレッチフィルム(パレット梱包用)
– 重包装袋(肥料袋、セメント袋など)
– 農業用フィルム
– 食品包装フィルム(高性能品)
– ゴミ袋(高強度タイプ)

LLDPEは、LDPEよりも薄いフィルムで同等以上の強度が得られるため、省資源化の観点からも需要が拡大しています。特にストレッチフィルム市場では、LLDPEが主流となっているでしょう。

種類 主要用途 特徴を活かした製品
LDPE 包装フィルム、電線被覆 レジ袋、ラップ、ラミネート
HDPE パイプ、容器、成形品 水道管、洗剤ボトル、コンテナ
LLDPE ストレッチフィルム、重包装袋 パレット梱包、肥料袋、農業フィルム

 

エチレンオキシドとその誘導品

続いては、エチレンの第二の主要用途であるエチレンオキシド製造を確認していきます。

 

エチレンオキシドの製造と特性

エチレンオキシド(EO)は、エチレンを酸素または空気で直接酸化することで製造されます。銀触媒を用いた気相酸化反応により、選択的にエチレンオキシドが生成されるのです。

2C₂H₄ + O₂ → 2C₂H₄O(エチレンオキシド)

触媒:銀/アルミナ

温度:220~280℃

圧力:1~3 MPa

エチレンオキシドは、三員環エポキシド構造を持つ反応性の高い化合物です。沸点は10.4℃と低く、常温では気体ですが、加圧下では液体として貯蔵・輸送されます。この高い反応性により、様々な化学品の原料となるのです。

世界のエチレンオキシド生産量は年間約3,000万トン以上であり、そのほとんどがエチレングリコール製造に使用されます。約75~80%がエチレングリコール、約10~15%が非イオン界面活性剤、残りがエタノールアミン、グリコールエーテルなどの製造に向けられるでしょう。

 

エチレングリコールの用途と需要

エチレングリコール(EG)は、エチレンオキシドを水と反応させることで製造されます。無色透明の粘性液体であり、2つのヒドロキシ基を持つジオールです。

エチレングリコールの最大用途は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の原料でしょう。PETは、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合により製造され、繊維とボトルの主要材料となっています。

エチレングリコールの用途別消費(概算)

PET樹脂・繊維:70~75%

不凍液・冷却液:15~20%

不飽和ポリエステル樹脂:5~8%

その他(溶剤、中間体など):5~10%

PET繊維は、衣料品、カーペット、産業資材など幅広く使用されます。PETボトルは、飲料容器として世界中で使用されており、需要が拡大し続けているのです。特に中国やインドなどアジア諸国での繊維需要増加により、エチレングリコールの需要は堅調に推移しています。

不凍液用途も重要でしょう。自動車のラジエーター液(LLC:Long Life Coolant)として、エチレングリコールは広く使用されています。凝固点降下作用により、-30℃~-50℃でも凍結せず、冷却システムを保護するのです。

 

界面活性剤とその他の誘導品

エチレンオキシドは、アルコールやフェノールと反応させることで、非イオン界面活性剤を製造できます。これらは洗剤、乳化剤、分散剤として広く使用されるのです。

【主要な界面活性剤】
– アルコールエトキシレート:家庭用・工業用洗剤
– ノニルフェノールエトキシレート:工業用乳化剤
– 脂肪酸エトキシレート:繊維処理剤、化粧品

また、エチレンオキシドとアンモニアを反応させると、エタノールアミン類が生成されます。モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)があり、それぞれ用途が異なるのです。

エタノールアミン類は、ガス精製(CO₂、H₂Sの除去)、界面活性剤原料、金属加工油、医薬品中間体など多様な用途に使用されます。特にMEAは、石油精製や天然ガス処理におけるガス精製剤として重要であり、エネルギー産業を支える化学品なのです。

グリコールエーテル類も重要な誘導品でしょう。エチレングリコールとアルコールを反応させて得られ、塗料溶剤、洗浄剤、インク溶剤として使用されます。低毒性で環境負荷が小さいという特徴があるのです。

 

その他の重要用途と誘導品

続いては、ポリエチレンとエチレンオキシド以外の重要な用途を確認していきます。

 

塩化ビニルモノマーの製造経路

エチレンは、塩化ビニルモノマー(VCM)の主要原料の一つです。VCMは塩化ビニル樹脂(PVC)の原料であり、世界で年間約5,000万トン以上が生産されています。

VCM製造には、主に2つの方法があります。第一に、直接塩素化法。エチレンと塩素を直接反応させて二塩化エチレン(EDC)を製造し、これを熱分解してVCMを得る方法です。第二に、オキシ塩素化法。エチレン、塩化水素、酸素を反応させてEDCを製造する方法でしょう。

【直接塩素化法】

C₂H₄ + Cl₂ → C₂H₄Cl₂(EDC)

C₂H₄Cl₂ → C₂H₃Cl(VCM)+ HCl

【オキシ塩素化法】

C₂H₄ + 2HCl + 1/2O₂ → C₂H₄Cl₂ + H₂O

実際のプラントでは、これら2つの方法を組み合わせたバランスドプロセスが採用されています。直接塩素化で副生するHClをオキシ塩素化で再利用することで、塩素の利用効率を最大化しているのです。

PVCは、パイプ、建材、電線被覆、床材など幅広い用途に使用されます。特に建築・建設分野での需要が大きく、世界のPVC生産量の約60%が建設用途に向けられているでしょう。

 

スチレンモノマーとエチルベンゼン

エチレンとベンゼンを反応させると、エチルベンゼンが生成されます。このエチルベンゼンを脱水素化することで、スチレンモノマーが製造されるのです。

C₂H₄ + C₆H₆ → C₆H₅C₂H₅(エチルベンゼン)

C₆H₅C₂H₅ → C₆H₅CH=CH₂(スチレン)+ H₂

スチレンモノマーは、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)などの原料として使用されます。世界のスチレン生産量は年間約3,000万トン以上であり、主要な汎用プラスチック原料の一つなのです。

ポリスチレンは、包装材、断熱材、家電筐体などに広く使用されます。発泡ポリスチレン(EPS)は、優れた断熱性と緩衝性を持ち、建材や梱包材として不可欠でしょう。ABS樹脂は、耐衝撃性に優れ、自動車部品、家電製品、玩具などに使用されています。

 

エタノールとその他の誘導品

エチレンへの水付加により、エタノールが製造されます。石油化学系エタノールは、溶剤、化学品原料、燃料などに使用されるのです。

世界のエタノール生産量の大半は、バイオエタノール(発酵法)が占めますが、石油化学系エタノールも重要な役割を果たしています。特に工業用溶剤や酢酸エチル製造原料としては、高純度の石油化学系エタノールが好まれるでしょう。

エチレン誘導品 主な用途 世界生産量(概算)
ポリエチレン 包装材、容器、パイプ 約1億トン/年
エチレングリコール PET繊維・樹脂、不凍液 約2,500万トン/年
塩化ビニル パイプ、建材、電線被覆 約5,000万トン/年
スチレン PS、ABS、SBR 約3,000万トン/年
エタノール 溶剤、化学品原料 約500万トン/年(石油化学系)

その他にも、酢酸ビニルモノマー(接着剤、塗料原料)、α-オレフィン類(界面活性剤、潤滑油添加剤)、アセトアルデヒド(酢酸、化学品中間体)など、多様な誘導品が製造されています。これらすべてが、エチレンという単一の基礎化学品から派生しているのです。

 

まとめ エチレンの使用用途や需要を徹底解説!

エチレンは、現代化学工業の中核をなす基礎原料であり、年間世界で約2億トンが生産されています。その約50~60%はポリエチレン製造に使用され、包装材、容器、パイプなど私たちの日常生活を支える製品となっているのです。

次いで重要な用途は、エチレンオキシド経由でのエチレングリコール製造(約15~20%)であり、これはPET繊維・樹脂や不凍液の原料となります。塩化ビニルモノマー(約10~15%)、スチレンモノマー(約5~10%)、エタノール(約2~5%)もそれぞれ重要な誘導品でしょう。

これらの誘導品は、さらに加工されて、プラスチック製品、繊維、建材、自動車部品、電子機器など、無数の最終製品へと変換されます。エチレンの用途を理解することは、現代の物質文明がいかにして成り立っているかを知ることに他なりません。化学工業の川上に位置するエチレンが、川下の多様な産業と私たちの生活を支えているのです。