ネットワーク機器の中で最も身近な存在の一つが「L2スイッチ」です。
「スイッチングハブ」や「L2SW」とも呼ばれ、オフィスや家庭のLAN構築において中心的な役割を果たしています。
「L2スイッチはどんな仕組みで動いているのか」「IPアドレスとの関係は?」「VLANはどうやって設定するのか」という疑問を持つ方のために、本記事ではL2スイッチの基本から設定方法までを丁寧に解説していきます。
L2スイッチとは?MACアドレスで通信を制御するネットワーク機器
それではまず、L2スイッチの基本的な意味と仕組みについて解説していきます。
L2スイッチ(Layer 2 Switch)とは、OSI参照モデルの第2層(データリンク層)で動作し、MACアドレスを基にデータフレームを転送するネットワーク機器です。
「L2SW」と略されることもあり、「スイッチングハブ」とほぼ同義で使われることが多いでしょう。
受け取ったフレームの宛先MACアドレスを確認し、学習済みのMACアドレステーブルを参照して該当するポートだけにフレームを送出します。
これにより、ハブ(リピーターハブ)のように全ポートにデータを送り出す「フラッディング」の頻度を最小化し、ネットワークの効率を高めています。
L2スイッチはIPアドレスを参照せずMACアドレスだけで転送先を決定します。そのため、異なるIPサブネット間の通信(ルーティング)はL2スイッチ単体では行えません。VLAN間の通信にはL3スイッチやルーターが必要となります。
L2スイッチは全二重通信(送受信の同時実行)をサポートしているため、ハブより帯域を効率的に使えます。
現在市販されているネットワークスイッチの多くはL2スイッチまたはL3スイッチであり、リピーターハブはほぼ使われなくなっています。
MACアドレステーブルの学習と管理
L2スイッチの中核機能であるMACアドレステーブルの動作を理解しておくことが重要です。
L2スイッチは受信したフレームの送信元MACアドレスと受信ポートの対応をテーブルに記録(学習)します。
宛先MACアドレスがテーブルに登録されていれば、対応するポートにのみフレームを送出します(ユニキャスト転送)。
テーブルに未登録の宛先の場合は、受信ポート以外の全ポートへフラッディングを行いテーブルを更新していきます。
MACアドレステーブルのエントリは一定時間(エイジングタイム:通常300秒)経過後に自動削除されるため、ネットワーク構成の変化にも追従できます。
フレームの転送方式の種類
L2スイッチがフレームを転送する方式にはいくつかの種類があります。
| 転送方式 | 動作 | レイテンシ | エラー検出 |
|---|---|---|---|
| ストア&フォワード | フレーム全体を受信してからFCS確認後転送 | やや高い | あり |
| カットスルー | 宛先MACアドレス確認後すぐに転送開始 | 低い | なし |
| フラグメントフリー | 64バイト受信後に転送開始 | 中程度 | 一部あり |
ストア&フォワード方式はFCS(フレームチェックシーケンス)によるエラー検出ができるため信頼性が高く、現代のL2スイッチで最も広く採用されています。
カットスルー方式はレイテンシが最小ですが、エラーフレームもそのまま転送してしまう点に注意が必要です。
低レイテンシが求められる高頻度取引や金融システムでは、カットスルー方式のスイッチが使われることもあります。
スイッチングハブとL2スイッチの関係
「スイッチングハブ」と「L2スイッチ」はほぼ同じ意味で使われますが、厳密には若干のニュアンスの違いがあります。
スイッチングハブは一般向けや家庭用の比較的シンプルな製品に使われることが多い呼び方です。
L2スイッチはVLAN・QoS・ポートセキュリティ・リンクアグリゲーションなどの管理機能を持つエンタープライズ向け製品を指すことが多いでしょう。
家庭用の安価なスイッチングハブは「アンマネージドスイッチ」とも呼ばれ、設定変更ができない固定仕様のものが多いです。
企業向けのL2スイッチは「マネージドスイッチ」とも呼ばれ、WebやCLI(コマンドライン)から詳細な設定が可能です。
L2スイッチとVLANの仕組みと設定
続いては、L2スイッチの重要な機能であるVLANの仕組みと基本的な設定方法を確認していきます。
VLAN(Virtual LAN)とは、物理的な接続に関わらず論理的にネットワークを分割する技術です。
VLAN対応のL2スイッチでは、ポートをVLAN IDで区分けすることでブロードキャストドメインを分割し、セキュリティ向上とトラフィック管理の効率化を実現できます。
アクセスポートとトランクポート
VLANを設定する際に理解しておくべき概念が「アクセスポート」と「トランクポート」です。
アクセスポートは単一のVLANに所属するポートであり、エンドデバイス(PC・プリンターなど)を接続するために使用します。
トランクポートは複数のVLANタグを持つフレームを通過させるポートであり、スイッチ間やスイッチとルーター間の接続に使います。
トランクリンクではIEEE 802.1Qによるタグ付け(4バイトのVLANヘッダー挿入)が行われ、フレームがどのVLANに属するかを識別します。
アクセスポートはタグなし、トランクポートはタグありでフレームを扱うという区別が、VLAN設定の基本となります。
VLAN設定の基本コマンド例
Cisco製L2スイッチでのVLAN設定を例に、基本的なコマンドを確認します。
VLAN作成と確認
Switch(config)# vlan 10 ←VLAN 10を作成する
Switch(config-vlan)# name SALES ←VLAN名をSALESに設定する
Switch(config)# show vlan brief ←VLAN一覧を確認する
アクセスポート設定(VLAN 10に割り当て)
Switch(config-if)# switchport mode access ←アクセスモードに設定する
Switch(config-if)# switchport access vlan 10 ←VLAN 10を割り当てる
トランクポート設定
Switch(config-if)# switchport mode trunk ←トランクモードに設定する
Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20 ←通過させるVLANを指定する
これらのコマンドはCisco IOSの基本構文であり、メーカーや機種によって異なる場合があります。
設定後は「show vlan brief」「show interfaces trunk」コマンドで正しく適用されているかを確認することが重要です。
スパニングツリープロトコル(STP)との連携
L2スイッチを複数台接続する環境では、ループが発生するリスクがあります。
ループが発生するとブロードキャストストームが起きてネットワーク全体が麻痺するため、STP(Spanning Tree Protocol)によるループ防止が必須です。
STPはネットワークのトポロジーを自動検出し、論理的にループのない木構造(スパニングツリー)を維持します。
高速コンバージェンスが必要な環境ではRSTP(Rapid STP)やMSTP(Multiple STP)が採用されます。
PortFast・BPDUGuardなどのSTP拡張機能を活用することで、エンドデバイス接続ポートでの不要な遅延やセキュリティリスクを低減できます。
L2スイッチの選定ポイントと種類
続いては、L2スイッチを選ぶ際の主なポイントと製品の種類を確認していきます。
L2スイッチには家庭向けの安価なものから、データセンター向けの高性能なものまで幅広い製品が揃っています。
マネージドとアンマネージドの違い
L2スイッチは管理機能の有無によって「マネージドスイッチ」と「アンマネージドスイッチ」に分類されます。
マネージドスイッチはWeb UIやCLI・SNMPを通じてVLAN・QoS・ポートミラーリング・リンクアグリゲーションなどの詳細設定が可能です。
アンマネージドスイッチは設定不要で箱から出してすぐ使えるプラグアンドプレイ対応であり、家庭やSOHO向けに適しています。
その中間として「スマートスイッチ(セミマネージドスイッチ)」も存在し、基本的なVLAN設定など限られた管理機能をWeb UIから操作できます。
企業ネットワークでは可視性・制御性の観点からマネージドスイッチの採用が推奨されます。
PoEスイッチとスタッカブルスイッチ
L2スイッチの中でも特に便利な機能として、PoEとスタッキングがあります。
PoE(Power over Ethernet)対応スイッチは、LANケーブルを通じてIPカメラ・IPフォン・無線APなどに電力を供給できるため、電源工事が不要になります。
PoE規格にはPoE(15.4W)・PoE+(30W)・PoE++(60W・90W)があり、接続デバイスの消費電力に合わせて選択します。
スタッカブルスイッチは複数台のスイッチを専用ケーブルで接続し、仮想的に1台のスイッチとして管理できる機能であり、障害時の冗長性と管理効率が向上します。
Cisco StackWiseやHPE IRF・Juniper Virtual Chassisなどのスタッキング技術が企業ネットワークで広く採用されています。
まとめ
L2スイッチはOSI第2層で動作し、MACアドレスを基にフレームを転送するネットワーク機器であり、「L2SW」や「スイッチングハブ」とも呼ばれます。
IPアドレスは参照せず同一サブネット内の通信制御に特化しているため、VLAN間ルーティングにはL3スイッチやルーターが別途必要です。
VLANを活用してブロードキャストドメインを分割したり、スパニングツリーでループを防止したりすることで、効率的で安全なLANを構築できます。
製品選定ではマネージド・アンマネージドの区別、PoEの有無、スタッキング対応などを用途に合わせて確認することが重要です。
L2スイッチの仕組みと設定を正しく理解することが、ネットワーク構築・運用の確かな基礎となるでしょう。