ITインフラを設計・構築するうえで、システムの停止を最小限に抑えるための手段として欠かせないのが冗長化という考え方です。
「冗長化ってどんな意味?」「なぜ必要なの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、冗長化の基本的な意味から仕組み、実際のITインフラにおける活用方法まで、わかりやすく解説していきます。
システムの可用性や信頼性を高めたいと考えている方にぜひ役立てていただきたい内容です。
冗長化とはシステムやネットワークのバックアップ構成を設けて障害時に継続稼働できる仕組みである
それではまず、冗長化の基本的な定義と目的について解説していきます。
冗長化(英語ではRedundancy)とは、システムやネットワーク、電源などのコンポーネントを二重・多重に用意することで、一方が障害に陥っても処理を継続できる構成にすることを指します。
冗長化の目的は、単一障害点(SPOF:Single Point of Failure)をなくし、システム全体の可用性と信頼性を高めることにあります。
冗長化が重要な理由は、現代のビジネス環境においてシステムの停止が直接的な損失につながるからです。
ECサイトやオンラインサービスでは、数分のシステム停止が数百万円〜数千万円規模の機会損失を生じさせることがあり、冗長化による高可用性の確保はビジネスリスク管理の一環ともいえます。
冗長化を実現するために様々なアプローチが存在しており、サーバー・ネットワーク・ストレージ・電源など、各コンポーネントにおいてそれぞれの冗長化手法が活用されています。
冗長化レベルの目標値は一般的に可用性(Availability)という指標で表され、「99.9%」や「99.99%(フォーナイン)」といった形で示されます。
冗長化の主な方式と仕組み
続いては、冗長化の代表的な方式とその仕組みについて確認していきます。
アクティブ・スタンバイ方式
アクティブ・スタンバイ方式は、現用系(アクティブ)と待機系(スタンバイ)の2つのシステムを用意し、現用系が障害に陥った際に待機系が自動的に引き継ぐ(フェイルオーバー)構成です。
スタンバイ側は平時はアイドル状態であるため、コールドスタンバイ・ウォームスタンバイ・ホットスタンバイの3段階の待機状態が存在します。
フェイルオーバーの速さはスタンバイの種類によって異なり、ホットスタンバイが最も短時間での切り替えを実現できます。
アクティブ・アクティブ方式
アクティブ・アクティブ方式は、複数のシステムが同時に稼働して負荷を分散し、一方が障害に陥っても残りのシステムが処理を継続する構成です。
全てのシステムリソースを有効活用できるため、アクティブ・スタンバイ方式に比べてコスト効率が高い点が特徴です。
WebサーバーやAPIサーバーの負荷分散構成によく採用される方式です。
N+1冗長化
必要最低限の台数(N台)に対して予備システムを1台追加(+1)するN+1冗長化は、コストと冗長性のバランスを取った現実的な構成として広く採用されています。
電源システムや冷却システムなど、インフラ設備においてよく用いられる考え方です。
冗長化における主要技術と活用例
続いては、冗長化を実現するための代表的な技術と具体的な活用例について確認していきます。
RAID(ストレージ冗長化)
RAID(Redundant Array of Independent Disks)は複数のHDDやSSDを組み合わせてストレージの冗長性と性能を高める技術です。
RAID 1(ミラーリング)はデータを2台のディスクに同時書き込みし、1台が故障してもデータを保全します。
RAID 5・6はパリティ情報を活用した冗長化方式であり、複数台の障害にも対応できます。
ロードバランサー(負荷分散)
ロードバランサーは複数のサーバーにリクエストを分散させるとともに、障害サーバーへのルーティングを自動的に除外する機能を持ちます。
Webアプリケーションの高可用性構成において、ロードバランサーは冗長化の要となるコンポーネントです。
クラスタリング
複数のサーバーをひとつのグループ(クラスター)として管理し、障害時に自動的に処理を引き継ぐ仕組みです。
データベースの高可用性クラスター構成はビジネスクリティカルなシステムに広く採用されています。
| 冗長化の対象 | 代表的な技術・手法 | 主な目的 |
|---|---|---|
| ストレージ | RAID・レプリケーション | データの保全・可用性確保 |
| サーバー | クラスタリング・フェイルオーバー | 処理継続・停止時間の最小化 |
| ネットワーク | マルチパス・リンクアグリゲーション | 通信の継続・帯域確保 |
| 電源 | UPS・二重化電源 | 停電対策・給電の安定化 |
冗長化を設計する際のポイントと注意事項
続いては、冗長化を実際に設計する際に押さえておくべきポイントと注意事項について確認していきます。
単一障害点(SPOF)の排除
冗長化設計の第一歩は、システム全体の中に単一障害点が存在しないかを洗い出すことです。
どれだけサーバーを冗長化しても、ロードバランサーやネットワークスイッチがSPOFになっていれば全体が停止するリスクが残ります。
全コンポーネントの障害シナリオを想定した設計レビューが重要です。
コストと可用性のバランス
完全な冗長化はコストが大幅に増加するため、要求される可用性レベルに応じた冗長化の範囲と深さを設計することが現実的なアプローチです。
99.9%と99.99%では許容ダウンタイムが年間8.76時間と52.6分と大きく異なるため、ビジネス要件に合わせた目標設定が必要です。
フェイルオーバーテストの定期実施
冗長化を導入しただけでは安心できません。
定期的なフェイルオーバーテスト(障害発生の模擬試験)を実施し、切り替えが正常に機能することを確認しておくことが重要です。
障害発生時に初めてフェイルオーバーを試すのでは手遅れになる可能性があります。
まとめ
冗長化とはシステムやネットワーク、電源などのコンポーネントを二重・多重に設けることで、障害時もサービスを継続させるための仕組みです。
アクティブ・スタンバイ・アクティブアクティブ・クラスタリングなど、要件に応じた方式を選択し、単一障害点を排除することが冗長化設計の基本です。
コストと可用性のバランスを考慮しながら、定期的なフェイルオーバーテストで冗長化の有効性を検証し続けることが高信頼性システムの実現につながるでしょう。
ITインフラの設計・運用を担う方は、ぜひ冗長化の考え方を積極的に取り入れてみてください。