ITシステムの規模が拡大するにつれ、多数のサーバー・ネットワーク機器・アプリケーションの設定を正確に把握・管理することは非常に重要な課題となっています。
そのような状況で注目されるのがコンフィグレーションマネジメント(構成管理)です。
本記事では、コンフィグレーションマネジメントの目的・手法・自動化ツール・ITILとの関係について詳しく解説していきます。
システム管理者やインフラエンジニアはもちろん、DevOps・クラウド運用に関わる方にとって参考になる内容をお届けします。
コンフィグレーションマネジメントとは?基本的な意味と目的
それではまず、コンフィグレーションマネジメントの基本的な意味と目的について解説していきます。
コンフィグレーションマネジメント(Configuration Management:CM)とは、ITシステムを構成するハードウェア・ソフトウェア・設定情報・ドキュメントを体系的に識別・記録・管理するプロセスのことです。
日本語では「構成管理」や「設定管理」と訳されます。
コンフィグレーションマネジメントの主な目的:
①ITシステムの構成情報を正確に把握・維持する
②無許可の変更を防止し、変更の影響を正確に評価する
③システムの可視性・制御性・説明責任を確保する
④インシデント・問題・変更管理の意思決定を支援する
コンフィグレーションアイテム(CI)とは
コンフィグレーションマネジメントにおいて管理対象となる個々のコンポーネントをコンフィグレーションアイテム(CI:Configuration Item)と呼びます。
CIにはサーバー・ネットワーク機器・ソフトウェア・データベース・ドキュメント・SLAなど、ITサービスを構成するあらゆる要素が含まれます。
CIに関する情報(属性・バージョン・ステータス・他のCIとの関係)はCMDB(Configuration Management Database:構成管理データベース)に記録・管理されます。
| CIの種類 | 具体例 | 管理する主な属性 |
|---|---|---|
| ハードウェアCI | サーバー・スイッチ・ルーター | 型番・IPアドレス・設置場所 |
| ソフトウェアCI | OS・ミドルウェア・アプリケーション | バージョン・ライセンス・インストール先 |
| 設定ファイルCI | コンフィグファイル・スクリプト | ファイルパス・最終更新日・内容 |
| ドキュメントCI | 設計書・手順書・SLA | バージョン・承認者・更新履歴 |
コンフィグレーションマネジメントが必要な理由
大規模なITシステムでは、管理対象のCI数が数千・数万に及ぶことがあります。
このような環境で構成情報を正確に管理しないと、どのサーバーに何のソフトウェアが何のバージョンでインストールされているか把握できなくなるという「構成ドリフト」が発生するでしょう。
構成ドリフトが発生すると、障害発生時の原因特定が困難になり・セキュリティ脆弱性の管理ができなくなり・変更の影響範囲が読めなくなるという深刻な問題が生じます。
コンフィグレーションマネジメントを適切に実施することで、これらの問題を未然に防ぐことができます。
コンフィグレーションマネジメントの主な手法
続いては、コンフィグレーションマネジメントの主な手法を確認していきます。
コンフィグレーションマネジメントには手動による管理から自動化ツールを活用した管理まで、さまざまな手法があります。
CMDBによる構成情報の一元管理
コンフィグレーションマネジメントの中核となる手法が、CMDB(構成管理データベース)を活用した構成情報の一元管理です。
CMDBはすべてのCIとその属性・関係性を記録するデータベースであり、ITサービス管理の情報基盤として機能します。
SnowServicesなどのITSMツールやServiceNowなどの製品が、CMDB機能を提供する代表的なソリューションとして広く活用されています。
CMDBを活用することで、「どのサーバーが影響を受けるか」「このサービスはどのCIに依存しているか」という問いに素早く答えられる環境が整うでしょう。
Infrastructure as Code(IaC)による自動化
現代のクラウドネイティブ環境では、Infrastructure as Code(IaC:インフラのコード化)がコンフィグレーションマネジメントの重要な手法として普及しています。
IaCとは、インフラの構成・設定をコードとして記述し、バージョン管理システムで管理するアプローチです。
TerraformやAWS CloudFormation・Pulumiなどがインフラの構成をコード化するIaCツールとして代表的です。
IaCのメリット:
・インフラの構成変更を自動化・再現性高く適用できる
・設定のバージョン管理により変更履歴が追跡可能
・コードレビューによる品質管理が可能
・複数環境への一括展開(マルチリージョン展開など)が容易
構成管理自動化ツールの活用
サーバーやOSの設定を自動的に望ましい状態に維持するための構成管理自動化ツールが広く活用されています。
Ansible・Puppet・Chef・SaltStackなどが代表的な構成管理自動化ツールです。
これらのツールを活用することで、数百台・数千台のサーバーに対して同一の設定を一括適用したり、設定の状態を継続的に監視して意図しない変更を検出・修正したりすることが可能になります。
特にAnsibleはエージェントレス(対象サーバーへの専用ソフトウェアのインストールが不要)で使いやすい構成管理ツールとして、多くの現場で採用されているでしょう。
ITILにおけるコンフィグレーションマネジメントの位置づけ
続いては、ITILにおけるコンフィグレーションマネジメントの位置づけを確認していきます。
ITILフレームワークにおいてコンフィグレーションマネジメントはどのように位置づけられ、他のプロセスとどのように連携するのでしょうか。
ITILとサービスアセット・コンフィグレーション管理
ITIL(IT Infrastructure Library)は、ITサービス管理のベストプラクティスをまとめたフレームワークです。
ITIL v3では「サービスアセット及びコンフィグレーション管理(SACM:Service Asset and Configuration Management)」としてコンフィグレーションマネジメントが定義されています。
SACMの目的は、サービスの提供と管理に必要なアセットとコンフィグレーションアイテムに関する正確な情報を保持・提供することとされています。
| ITILプロセス | コンフィグレーションマネジメントとの連携 |
|---|---|
| 変更管理 | 変更の影響を受けるCIの特定と変更後のCMDB更新 |
| インシデント管理 | 影響を受けているCIの迅速な特定と復旧支援 |
| 問題管理 | 根本原因分析のためのCI関係性情報の提供 |
| リリース管理 | リリース対象CIの管理とバージョン追跡 |
変更管理との密接な連携
コンフィグレーションマネジメントは変更管理(Change Management)と特に密接な関係にあります。
変更管理では、システムへの変更を計画・承認・実施・レビューするプロセスを管理しますが、コンフィグレーションマネジメントは変更の影響を受けるCIを特定し、変更後のCI情報をCMDBに反映する役割を担います。
変更管理とコンフィグレーションマネジメントが適切に連携することで、変更の影響範囲の正確な評価と、変更後のシステム構成情報の最新化が実現するでしょう。
DevOpsとコンフィグレーションマネジメントの融合
現代のDevOps実践においては、コンフィグレーションマネジメントはCI/CDパイプラインと密接に統合されています。
インフラの構成変更もアプリケーションコードと同様にGitで管理し、プルリクエストによるレビューと承認を経てパイプラインで自動適用するという「GitOps」の考え方が普及しています。
GitOpsアプローチにより、インフラ変更の透明性・追跡可能性・自動化が同時に実現し、DevOpsの目標である高速かつ安定したデリバリーが可能となるでしょう。
まとめ
本記事では、コンフィグレーションマネジメントの目的・手法・ITILとの関係・DevOpsとの融合について詳しく解説しました。
コンフィグレーションマネジメントはITシステムの構成情報を体系的に管理するプロセスであり、CMDBを中核として変更管理・インシデント管理・問題管理と密接に連携します。
IaCや構成管理自動化ツールを活用することで、大規模環境でも一貫性のある設定管理が実現し、運用の効率と品質が大幅に向上するでしょう。
コンフィグレーションマネジメントを適切に実施することが、安定・安全・効率的なITシステム運用の基盤となります。