機械部品の図面では、寸法の正確さだけでなく「公差(許容誤差)」を適切に指定することが、機能・互換性・製造コストに直接影響します。
公差には「一般公差」と「はめあい公差」があり、それぞれ異なる場面で使い分けることが重要です。
本記事では、図面の公差表記の種類・一般公差・はめあい公差・IT等級・穴と軸の公差記号について、JIS規格に基づいてわかりやすく解説していきます。
公差とは何か?寸法公差の基本概念
それではまず、公差の基本的な概念と寸法公差の定義について解説していきます。
公差とは、製造上の誤差を考慮した寸法の許容範囲のことで、上限寸法と下限寸法の差として定義されます。
公差の基本用語:
基準寸法:設計上の基本となる寸法
上限偏差:基準寸法からの最大の許容偏差(上方向)
下限偏差:基準寸法からの最大の許容偏差(下方向)
公差値 = 上限偏差 − 下限偏差
例:20 +0.02/-0.01 の場合、公差 = 0.02−(−0.01) = 0.03mm
公差を適切に設定することの重要性:公差が厳しすぎると製造コストが高騰し、ゆるすぎると機能・互換性が損なわれます。機能要件を満たす最適な公差の設定が設計の重要なポイントです。
一般公差とは
一般公差とは、図面上に個別の公差指示がない寸法に適用する標準的な公差のことです。
JIS B 0405(金属板の一般公差)やJIS B 0419(機械加工の一般公差)によって、加工精度クラスごとの公差値が定められています。
表題欄または注記に「一般公差:JIS B 0405 m級」などと記載することで、個別指示のない寸法の公差が一括で適用されます。
一般公差の精度クラス
| クラス記号 | 精度 | 適用場面 |
|---|---|---|
| f(精級) | 最も厳しい | 精密機器・計測機器 |
| m(中級) | 標準的 | 一般機械加工部品 |
| c(粗級) | 粗い | 板金・鋳造品 |
| v(極粗級) | 最もゆるい | 粗加工・鍛造品 |
はめあい公差:IT等級と穴・軸の公差記号
続いては、軸と穴の組み合わせ(はめあい)に使われる「はめあい公差」について確認していきます。
はめあい公差とは、穴と軸が嵌め合わさる寸法関係を規定する公差方式で、JIS B 0401によって定められています。
IT等級(公差等級)の意味
IT等級(IT公差)とは、基準寸法に対応した公差値の段階を表すもので、IT01・IT0・IT1〜IT18の20段階があります。
数字が小さいほど精度が高く(公差が小さく)、数字が大きいほど精度が低い(公差が大きい)ことを意味します。
IT等級の使い分けの目安:
IT1〜IT5:精密測定器・ゲージ類
IT6〜IT10:一般機械部品のはめあい
IT11〜IT16:粗い加工・素材寸法
穴・軸の公差記号の読み方
はめあい公差では、穴は大文字(例:H・F・E)、軸は小文字(例:h・f・e)のアルファベットで公差域クラスを表します。
はめあい公差の記入例:
Φ20H7:直径20mmの穴、H公差域、IT7等級
Φ20h6:直径20mmの軸、h公差域、IT6等級
Φ20H7/h6:穴と軸のはめあいの組み合わせ
H基準穴(穴ははH、軸を変えてはめあいを調整)が最も一般的なはめあい方式です。
はめあいの種類
はめあいには「すきまばめ(軸が穴より小さい)」「しまりばめ(軸が穴より大きい)」「中間ばめ(どちらにもなりうる)」の3種類があります。
部品の機能・分解のしやすさ・固定力などに応じて適切なはめあいの種類を選択することが重要です。
まとめ
本記事では、図面の公差表記として一般公差・はめあい公差・IT等級・穴と軸の公差記号について解説しました。
公差は寸法の許容誤差範囲を定めるもので、一般公差は個別指示のない寸法に一括適用され、はめあい公差は穴と軸の組み合わせ精度を規定します。
IT等級と穴・軸の公差記号(大文字・小文字)の読み方を覚えることで、機械図面の公差表記を正確に理解できるようになるでしょう。