カーボンナノチューブの最も特異な性質のひとつが、その電気伝導性です。
「なぜ同じ炭素なのに金属にも半導体にもなるの?」「バンドギャップって何?」という疑問に答えるべく、本記事ではCNTの電気伝導メカニズム・金属型と半導体型の違い・バンド構造を詳しく解説していきます。
カーボンナノチューブの電気伝導性は「カイラリティが決める金属型または半導体型」で根本的に異なる
それではまず、CNTの電気伝導の根本的なメカニズムを解説していきます。
CNTの電気特性の決定則:チラルベクトル (n, m) において n-m が3の倍数の場合は「金属型(ゼロバンドギャップまたは小ギャップ)」、そうでない場合は「半導体型」となる。アームチェア型(n=m)は常に金属型。ランダム合成では約1/3が金属型・2/3が半導体型となる。
グラフェンのバンド構造とCNT
CNTの電子構造はグラフェンのバンド構造から出発して理解できます。
グラフェンはディラック点と呼ばれる点でバンドが接しており、実質的にバンドギャップがゼロ(半金属)です。
グラフェンをCNTに丸めると、周方向の境界条件(量子化条件)が適用され、許容された波数ベクトルのみが存在できます。
この量子化された波数がディラック点を通るかどうかで、金属型か半導体型かが決まります。
金属型CNTの電気特性
金属型SWCNT(アームチェア型など)はバンドギャップがゼロで自由電子が存在し、優れた電気伝導体です。
理論上、弾道電子輸送(散乱なしに電子が伝わる)が実現し、電気抵抗が極めて低くなります。
電流密度耐性は銅の約1000倍と報告されており、超微細配線・ナノスケールの電気配線への応用が研究されています。
半導体型CNTとバンドギャップ
半導体型SWCNTのバンドギャップは直径 d に反比例してEg ≈ 0.9 eV / d (nm)と表されます。
直径1nmのSWCNTでは約0.9 eVのバンドギャップを持ち、シリコン(1.1 eV)に近い値です。
この半導体型CNTをチャネル材料とするFET(電界効果トランジスタ)は、シリコンFETを超える電子移動度・低電力動作が可能であり、次世代LSIへの応用が期待されています。
MWCNTの電気特性
MWCNTは複数の層が同心円状に積み重なっており、外層・内層が金属型・半導体型の組み合わせになります。
一般的に金属的な挙動を示し、SWCNTほど電子特性が精密ではないため、電子デバイスよりも導電性複合材料・電極材料への応用に向いています。
CNTの電気特性の応用
続いては、CNTの電気伝導性が活かされる応用例を確認していきましょう。
| 応用 | 使用するCNT | 活用する特性 |
|---|---|---|
| トランジスタ(CNT-FET) | 半導体型SWCNT | 高移動度・低バンドギャップ |
| ナノスケール配線 | 金属型SWCNT | 高電流密度耐性・弾道伝導 |
| 導電性複合材料 | MWCNT・金属型SWCNT | 少量添加で高導電性 |
| 透明導電膜 | 金属型SWCNT薄膜 | 高透明性+導電性(ITO代替) |
| 電池・キャパシタ電極 | MWCNT・SWCNT | 高表面積・高電子伝導性 |
透明導電膜(ITO代替)
スマートフォンのタッチパネルや太陽電池に使われる透明導電膜(現在は主にITO:酸化インジウムスズ)の代替材料としてCNT薄膜が研究されています。
ITOはインジウムの希少性・フレキシブルデバイスへの不適合(折り曲げると割れる)という問題を持つのに対し、CNT薄膜は柔軟性・資源的制約のなさという利点を持ちます。
まとめ
本記事では、カーボンナノチューブの電気伝導メカニズム・金属型と半導体型の違い・バンドギャップ・応用例を解説してきました。
カイラリティによって電気特性が根本的に変わるというCNTの独自の性質が、次世代半導体・導電性材料・透明電極など多様な応用への道を開いています。