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A5052の引張強度は?MPaやkgf/mm2の数値と焼きなまし・H34の違いも解説

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アルミニウム合金の中でも、A5052は耐食性と加工性のバランスに優れた材料として幅広い産業分野で使われています。

しかし「A5052の引張強度は実際どのくらいなのか」「MPaとkgf/mm²ではどう表記されるのか」「焼きなましやH34などの調質記号によって強度がどう変わるのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、A5052の引張強度をMPaおよびkgf/mm²の数値で詳しく解説するとともに、焼きなまし(O材)やH34などの調質の違いによる機械的性質の変化についても丁寧に説明していきます。

材料選定や設計の参考に、ぜひ最後までご覧ください。

A5052の引張強度はMPaで170〜260MPa程度、調質によって大きく異なる

それではまず、A5052の引張強度の基本的な数値について解説していきます。

A5052は、アルミニウムにマグネシウムを約2.2〜2.8%配合したAl-Mg系合金であり、非熱処理型合金の中でも特に優れた耐食性と成形性を持つ材料として知られています。

引張強度の数値は、調質(焼きなまし・加工硬化など)によって大きく変化するため、単純に「A5052の引張強度は○○MPa」と一概には言えません。

しかし一般的な目安として、A5052の引張強度はおよそ170〜260MPa(17〜27kgf/mm²)の範囲に収まることが多く、調質記号によって下限値から上限値まで幅があります。

A5052の引張強度の目安(調質別)

焼きなまし(O材) : 約170〜190MPa(約17〜19kgf/mm²)

H32 : 約215MPa(約22kgf/mm²)以上

H34 : 約240MPa(約24kgf/mm²)以上

H38 : 約260MPa(約27kgf/mm²)以上

このように、同じA5052であっても調質の違いによって引張強度は大きく変わります。

設計や材料選定においては、使用する調質記号を必ず確認することが重要です。

MPaとkgf/mm²の換算については、1kgf/mm² ≒ 9.807MPaという関係があります。

単位換算の例

240MPa ÷ 9.807 ≒ 24.5 kgf/mm²

25 kgf/mm² × 9.807 ≒ 245 MPa

古い設計書や規格書ではkgf/mm²が使われているケースも多いため、両方の単位に慣れておくと実務で役立つでしょう。

A5052の調質記号とは?焼きなまし・H34・H32の意味を理解しよう

続いては、A5052の調質記号の意味と種類を確認していきます。

アルミニウム合金には「調質」と呼ばれる熱処理や加工処理が施されており、その状態を表すために調質記号が使用されます。

A5052のような非熱処理型合金では、熱処理による強化は行えないため、加工硬化(冷間加工)によって強度を高めることが基本的なアプローチとなります。

代表的な調質記号の意味を以下に整理してみましょう。

調質記号 意味 特徴
O(焼きなまし) 完全焼きなまし処理を施した状態 最も軟らかく、延性・成形性が高い
H32 加工硬化後、安定化処理(1/4硬質) 中程度の強度と成形性のバランス
H34 加工硬化後、安定化処理(1/2硬質) 強度と耐食性のバランスが良い
H36 加工硬化後、安定化処理(3/4硬質) H34より強度が高い
H38 加工硬化後、安定化処理(硬質) 最も高強度だが延性は低い

Hの後につく数字の2桁目(2・4・6・8)が加工硬化の程度を示しており、数字が大きいほど強度は高くなるものの、延性や成形性は低下します。

なお「安定化処理」とは、加工硬化後にわずかに熱を加えて残留応力を除去し、材料の特性を安定させる処理のことを指します。

焼きなまし(O材)は最も軟らかい状態であり、複雑な形状への成形や深絞り加工を行う場合に適しています。

一方でH34は強度と加工性のバランスが取れており、板金加工や建材・船舶などに幅広く採用されているのが現状です。

A5052の引張強度を他のアルミ合金と比較してみよう

続いては、A5052の引張強度を他の代表的なアルミニウム合金と比較して確認していきます。

A5052の特徴をより深く理解するためには、他のアルミ合金との比較が有効です。

同じアルミニウム合金でも、系統(Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Zn-Mg系など)によって強度や特性は大きく異なります。

合金番号 系統 代表的な引張強度 主な特徴
A1050 純アルミ系 約60〜95MPa 耐食性・加工性は高いが強度は低い
A2017(ジュラルミン) Al-Cu系 約380〜430MPa 高強度だが耐食性は低い
A5052 Al-Mg系 約170〜260MPa 耐食性・溶接性・成形性のバランスが良い
A6061 Al-Mg-Si系 約260〜310MPa 熱処理で高強度化できる汎用合金
A7075(超々ジュラルミン) Al-Zn-Mg-Cu系 約500〜570MPa アルミ合金中トップクラスの高強度

この比較から、A5052はアルミニウム合金の中では「中強度クラス」に位置づけられることがわかります。

純アルミ(A1050)と比べると大幅に強度が高く、一方でA6061やA7075のような高強度合金には及びません。

しかしA5052の最大の強みは、海水や酸性環境に対する優れた耐食性と、溶接のしやすさにあります。

A2017などのAl-Cu系合金は強度は高いものの溶接性に劣り、海水などへの耐食性も低いため、用途によってはA5052のほうが適しているケースも多いでしょう。

A5052が選ばれる主な理由

耐海水性に優れているため、船舶や海洋構造物に最適です。

溶接性が良好なため、構造部材や圧力容器にも使われます。

成形性が高く、板金加工や絞り加工に適しています。

コストパフォーマンスが良く、汎用アルミ合金板として広く流通しています。

A5052の機械的性質まとめ(引張強度・耐力・伸び)

続いては、A5052の引張強度以外の機械的性質についても合わせて確認していきます。

材料を設計や加工に活用するためには、引張強度だけでなく耐力(0.2%耐力)・伸び・硬さなどの値も把握することが重要です。

以下に、JIS規格(JIS H 4000)に基づくA5052の代表的な機械的性質をまとめました。

調質 引張強度(MPa) 耐力(MPa) 伸び(%) 硬さ(HB)
O(焼きなまし) 170〜215 65以上 22以上 47程度
H32 215〜265 160以上 12以上 60程度
H34 240〜290 180以上 10以上 68程度
H36 255〜305 200以上 8以上 73程度
H38 270以上 220以上 7以上 77程度

引張強度と耐力の関係

引張強度は材料が破断するまで耐えられる最大の応力を示す値であり、耐力(0.2%耐力)は永久変形が生じ始める応力の目安となる値です。

設計においては引張強度だけでなく耐力を基準とすることが一般的であり、A5052-H34の場合は耐力が180MPa以上とされています。

焼きなまし(O材)では耐力が65MPa程度と低く、一方でH38では220MPa以上まで向上します。

同じ引張強度でも耐力が低い材料は弾性変形範囲が狭く、変形しやすい特性を持つため、使用目的に応じた選定が必要です。

伸び(延性)の変化

伸び(破断伸び)は材料の延性を示す指標であり、加工硬化が進むほど伸びは低下します。

O材(焼きなまし)では22%以上の伸びがあり、成形性に優れますが、H38になると7%程度にまで低下します。

曲げ加工や深絞り加工を行う場合は伸びの大きいO材やH32が向いており、強度を優先する構造用途にはH34やH38が適しているでしょう。

用途に合わせた調質の選択が、加工品質や製品寿命に大きく影響します。

硬さ(ブリネル硬さ)について

ブリネル硬さ(HB)は材料の表面硬度を示す指標であり、A5052の場合は調質によってHB47程度(O材)からHB77程度(H38)まで変化します。

硬さが高いほど耐摩耗性や切削加工時の寸法精度が向上する傾向がありますが、同時にドリルや工具への負担も増します。

なお、アルミニウム合金全体で見ればA5052の硬さは中程度であり、A7075などの高強度合金と比べると硬さはかなり低い水準です。

切削加工においては比較的加工しやすい材料とも言えます。

まとめ

今回は「A5052の引張強度はどのくらいか」という疑問を中心に、MPaおよびkgf/mm²での数値、調質記号の意味と違い、他合金との比較、そして機械的性質の詳細についてご説明しました。

A5052の引張強度は、調質によっておよそ170〜270MPa(約17〜27kgf/mm²)の範囲で変化します。

焼きなまし(O材)は最も軟らかく成形性に優れ、H34は強度と加工性のバランスが取れた汎用的な調質です。

設計や材料選定においては、引張強度だけでなく耐力・伸び・硬さを総合的に確認したうえで、使用環境や加工方法に最適な調質を選ぶことが大切です。

A5052の引張強度まとめ

O材(焼きなまし): 170〜215MPa(約17〜22kgf/mm²)、成形性最高

H32 : 215〜265MPa(約22〜27kgf/mm²)、バランス型

H34 : 240〜290MPa(約24〜30kgf/mm²)、最もよく使われる調質

H38 : 270MPa以上(約27kgf/mm²以上)、最高強度

A5052は耐食性・溶接性・成形性に優れた非常に使い勝手の良いアルミニウム合金です。

本記事が材料選定や設計作業の参考になれば幸いです。