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酢酸の沸点と融点は?比重・密度・蒸気圧・引火点も解説【公的機関のリンク付き】

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化学工業や食品分野など、さまざまな場面で活用される酢酸(CH₃COOH)。

その物性を正しく理解することは、安全な取り扱いや実験・製造プロセスの設計において非常に重要です。

本記事では、酢酸の沸点・融点をはじめ、比重・密度・蒸気圧・引火点といった主要な物性データをわかりやすく解説していきます。

公的機関のデータも参照しながら正確な情報をお届けしますので、ぜひ最後までご確認ください。

酢酸の沸点・融点・主要物性まとめ【結論】

それではまず、酢酸の沸点・融点・主要物性について、結論として整理していきます。

酢酸(別名:エタン酸、氷酢酸)は、常温で特有の刺激臭を持つ無色透明の液体です。

食酢の主成分としてもよく知られていますが、工業用途では高純度品が広く使われています。

まず、最も基本的な熱的物性を確認しましょう。

酢酸の沸点は約118℃(1気圧)、融点は約16.6℃です。

融点が比較的高いため、冬季には固体(氷のような状態)になることがあり、「氷酢酸」と呼ばれる所以にもなっています。

以下に、酢酸の代表的な物性値を表にまとめました。

物性項目
分子式 CH₃COOH(C₂H₄O₂)
分子量 60.05
沸点 約118℃(1気圧)
融点 約16.6℃
密度(20℃) 約1.049 g/cm³
比重(20℃) 約1.05(水=1)
蒸気圧(20℃) 約1.5 kPa
引火点 約39℃

このように、酢酸は水よりわずかに重く、比較的低い引火点を持つ可燃性液体です。

取り扱いには火気や換気に関する十分な注意が必要となります。

各物性について、以降のセクションでさらに詳しく解説していきます。

酢酸の沸点と融点について詳しく解説

続いては、酢酸の沸点と融点をより詳しく確認していきます。

酢酸の沸点

酢酸の沸点は、1気圧(101.325 kPa)のもとで約118℃とされています。

これは水の沸点(100℃)よりも高い値です。

なぜ酢酸の沸点が水より高くなるのでしょうか。

その主な理由は、酢酸分子が液体中で水素結合によって二量体(ダイマー)を形成するためです。

分子同士が結合した状態になることで、沸騰するために必要なエネルギーが大きくなり、沸点が上昇します。

酢酸の二量体形成のイメージ

CH₃COOH + CH₃COOH → (CH₃COOH)₂

二分子が水素結合により結びつき、実質的に分子量が倍程度の挙動を示します。

この性質は、蒸気圧や揮発性にも大きく影響します。

酢酸の融点

酢酸の融点は約16.6℃です。

室温(約20℃)よりも低いため、通常は液体状態で存在します。

しかし冬場など室温が16℃以下になる環境では、酢酸は固体(結晶状態)になります。

この固体状態の酢酸が氷に似た外観を持つことから、高純度の酢酸は「氷酢酸(グレイシャル酢酸)」とも呼ばれています。

実験室や工場での保管時には、この固化現象を考慮した温度管理が求められます。

沸点・融点に関する公的データの参照先

酢酸の沸点・融点などの物性値は、信頼性の高い公的機関のデータベースで確認することができます。

代表的な参照先を以下に示します。

機関名 データベース名・URL
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST) SDBS(有機化合物スペクトルデータベース)https://sdbs.db.aist.go.jp/
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 化学物質総合情報提供システム(CHRIP)https://www.nite.go.jp/chem/chrip/
国立環境研究所 化学物質データベース https://www.nies.go.jp/

物性値は測定条件によって若干異なる場合がありますので、用途に応じて一次資料を確認する習慣をつけておきましょう。

酢酸の比重・密度について

続いては、酢酸の比重と密度を確認していきます。

比重と密度は似た概念ですが、厳密には区別が必要です。

密度とは何か

密度とは、単位体積あたりの質量のことで、単位はg/cm³(またはkg/m³)で表されます。

酢酸の密度は、20℃において約1.049 g/cm³です。

これは水(20℃で約0.998 g/cm³)よりもわずかに大きい値となります。

温度が上がると密度はやや低下するため、使用温度に応じた確認が重要です。

比重とは何か

比重とは、ある物質の密度を基準物質(液体の場合は水)の密度で割った無次元の値です。

酢酸の比重は20℃において約1.05(水=1)となります。

比重の計算式

比重 = 物質の密度 ÷ 水の密度(同温度)

例)1.049 g/cm³ ÷ 0.998 g/cm³ ≒ 1.051

比重が1より大きいということは、酢酸は水に沈む性質を持つということです。

ただし酢酸は水と任意の割合で混和するため、実際には分離せず混合溶液を形成します。

比重・密度の温度依存性

酢酸の密度は温度によって変化します。

以下に代表的な温度での密度の目安を示します。

温度(℃) 密度(g/cm³)
15℃ 約1.054
20℃ 約1.049
25℃ 約1.044
40℃ 約1.028

温度が上昇するにつれて密度はなだらかに低下します。

配管設計や液体の計量など、精度が求められる場面では使用温度での密度値を使用することが大切です。

酢酸の蒸気圧と引火点について

続いては、酢酸の蒸気圧と引火点を確認していきます。

これらは安全管理の観点から特に重要な物性です。

酢酸の蒸気圧

蒸気圧とは、液体と蒸気が平衡状態にあるときの蒸気の圧力のことで、温度が高いほど大きくなります。

酢酸の蒸気圧は20℃において約1.5 kPa(約11 mmHg)です。

これは水の蒸気圧(20℃で約2.3 kPa)よりも低い値です。

酢酸は常温でも蒸発し、独特の刺激臭を放ちます。

密閉された空間での取り扱いには十分な換気が必要です。

酢酸の蒸気は空気より重い(蒸気密度が大きい)ため、低い場所に滞留しやすい性質があります。

換気の際は床付近の空気の流れにも注意が必要です。

温度と蒸気圧の関係を以下の表に示します。

温度(℃) 蒸気圧(kPa)
20℃ 約1.5 kPa
40℃ 約4.4 kPa
60℃ 約10.3 kPa
80℃ 約21.4 kPa
118℃(沸点) 101.3 kPa(1気圧)

酢酸の引火点

引火点とは、液体の表面から発生した蒸気が空気と混合し、火源があれば着火する最低温度のことです。

酢酸の引火点は約39℃とされています。

これは夏場の気温や加熱器具の周辺など、日常的に到達しうる温度帯です。

酢酸は消防法における第4類危険物(引火性液体)の第2石油類に分類されており、保管・取り扱いには法令に基づく対応が求められます。

酢酸の引火点は約39℃であり、加熱作業や夏季の高温環境では特に注意が必要です。

裸火・電気スパーク・高温表面への接触を避け、適切な消火器(泡消火器・CO₂消火器など)を備えた環境での使用を徹底しましょう。

酢酸の爆発限界と安全上の注意

引火点とあわせて、爆発限界(燃焼範囲)も重要な安全指標です。

酢酸の爆発限界は、下限値 約4.0 vol%、上限値 約19.9 vol%とされています。

この範囲内の蒸気濃度に着火源が加わると爆発的な燃焼が起こります。

安全指標
引火点 約39℃
発火点 約463℃
爆発下限(LEL) 約4.0 vol%
爆発上限(UEL) 約19.9 vol%

酢酸を安全に取り扱うためには、NITEのCHRIPや労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)が提供するSDS(安全データシート)を参照することをお勧めします。

JNIOSHのウェブサイト(https://www.jniosh.johas.go.jp/)では、化学物質の安全情報が詳しく公開されています。

まとめ

本記事では、酢酸の沸点と融点は?比重・密度・蒸気圧・引火点も解説【公的機関のリンク付き】というテーマで、酢酸の主要な物性値を網羅的にご紹介しました。

酢酸の沸点は約118℃、融点は約16.6℃で、冬季には固化して「氷酢酸」になることがあります。

密度は20℃で約1.049 g/cm³、比重は約1.05と水より若干重い液体です。

蒸気圧は20℃で約1.5 kPaと比較的揮発性があり、刺激臭の原因ともなります。

引火点は約39℃と低く、消防法上の第2石油類に該当するため、火気管理・換気・適切な保管が欠かせません。

物性値の詳細はAISTのSDBSやNITEのCHRIPといった公的機関のデータベースでも確認できますので、ぜひ実務や学習に役立ててください。

正確な物性の理解が、安全で効率的な酢酸の利用につながるでしょう。