契約書、見積書、社内規程、メールなどで見かける「但し書き」は、本文だけでは伝え切れない条件や例外を補うための重要な表現です。
読み方や使い方を曖昧にしたまま扱うと、相手との認識にずれが生じたり、合意したはずの内容が誤解されたりするおそれがあります。
本記事では、但し書きの基本的な意味からビジネス文書での書き方、例文、注記との違いまで、実務で使いやすい形で整理します。
但し書きの意味と読み方

それではまず、但し書きの意味と読み方について解説していきます。
但し書きの読み方と基本的な意味
但し書きは「ただしがき」と読みます。
本文に書かれた原則に対して、条件、例外、補足事項、適用範囲などを付け加える記載を指します。
たとえば「返品は受け付けません。ただし、商品に初期不良がある場合を除きます」という文章では、返品不可が原則であり、初期不良だけが例外として扱われます。
このように、但し書きは文章の内容を否定するものではなく、原則をより正確に運用するための補足です。
法律文書では「ただし、」の接続詞として本文中に置かれることもあれば、契約条件欄や脚注欄に「但し書き」として独立して記載されることもあります。
但し書きは、原則と例外の境界を明確にするための記載です。
本文の結論だけを読むのではなく、ただし以下に続く条件まで確認する姿勢が重要でしょう。
本文との関係と役割
但し書きの役割は、短い本文に必要な条件を追加し、解釈の幅を小さくすることにあります。
商品案内なら対象期間や在庫状況、契約書なら責任範囲や解除条件、社内通知なら例外的な申請方法などが代表例です。
本文だけでルールを示すと、すべてのケースに一律に当てはまるように読まれる場合があります。
そこで但し書きを添えることで、「原則はこうだが、この条件では異なる」という構造を伝えられます。
特に取引先との合意に関わる文書では、条件付きの合意内容を明文化する意味でも欠かせません。
ただしと但し書きの使い分け
「ただし」は接続詞として文章をつなぐ言葉です。
一方の「但し書き」は、そのただし以下に書かれた補足や例外の記載全体を指す名詞として使われます。
会話やメールでは「ただし、事前連絡が必要です」と書く形が自然です。
社内で確認する場面では「契約書の但し書きに納期変更時の扱いがあります」のように、記載箇所そのものを指せます。
文中で使う例
利用料金は月額で請求します。ただし、初月は日割り計算とします。
説明として使う例
申込書の但し書きには、キャンセル時の返金条件が記載されています。
ビジネス文書での使い方
続いては、ビジネス文書での但し書きの使い方を確認していきます。
契約書での条件整理
契約書では、報酬、納期、秘密保持、損害賠償、契約解除などの条項に但し書きが置かれます。
本文で原則を決めたうえで、例外的な事情が発生した場合の対応を示す流れが一般的です。
たとえば納品期限について「受託者は毎月末日までに納品するものとする。ただし、発注者の確認遅延に起因する場合はこの限りではない」と定める場合があります。
この記載があることで、発注者側の事情による遅れまで受託者の責任とされることを避けやすくなります。
ただし、条件を広く書きすぎると、誰にでも都合よく解釈できる文面になります。
例外となる条件、判断する主体、発生した場合の対応をできるだけ具体的に書くことが大切です。
見積書と請求書での注意事項
見積書では、金額に含まれない作業、交通費、追加費用、見積有効期限などを但し書きとして示すことがあります。
請求書では、振込手数料の負担者や支払期限に関する補足がよく記載されます。
相手にとって不利になり得る条件ほど、文字を小さくして目立たなくするのではなく、内容を読み取れる位置に置く配慮が必要でしょう。
口頭で説明済みでも、書面に残っていなければ後から認識違いになりかねません。
| 文書の種類 | 但し書きで示しやすい内容 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 見積書 | 追加作業、交通費、税金、期限 | 金額に含む範囲 |
| 契約書 | 例外条件、責任範囲、解除条件 | 条件発生時の対応 |
| 請求書 | 支払期限、振込手数料、遅延時の扱い | 支払方法と負担者 |
| 注文書 | 数量変更、納期調整、検収条件 | 変更の連絡方法 |
| 案内文 | 対象者、定員、申込条件 | 対象外となるケース |
メールでの穏やかな伝え方
メールでは、強い断定を避けつつ条件を明確に伝える書き方が向いています。
「ただし、状況によりご希望に添えない場合がございます」のように書けば、相手への配慮と実務上の条件を両立できます。
一方で、曖昧な表現だけに頼ると、相手が必要な行動を判断できません。
期限や手続きがある場合は、「ただし、変更をご希望の場合は前営業日までにご連絡ください」と具体的に示しましょう。
メールでの例文
ご依頼いただいた内容でお見積りを作成しました。
ただし、現地確認の結果によっては追加費用をご相談する場合がございます。
条件や例外を伝える書き方
続いては、条件や例外を伝える書き方を確認していきます。
原則を先に示す構成
但し書きを使うときは、最初に原則を示し、その後に例外を置く構成が基本です。
読み手は何が通常の扱いなのかを理解してから、どのような場合に扱いが変わるのかを把握できます。
たとえば「参加費は返金いたしません。ただし、主催者都合で中止となった場合は全額返金します」という順序なら、情報が整理されます。
先に例外を書いてしまうと、重要度の順序が逆転し、文意を取り違える可能性があります。
原則、例外、必要な手続きの順で並べると、案内文や規程文でも読みやすくなります。
条件を具体化する要素
適切な但し書きには、いつ、誰が、どのような場合に、何をするのかという情報が含まれます。
「事情により変更することがあります」だけでは、変更の範囲も判断の基準も不明確です。
「天候警報の発表または交通機関の計画運休がある場合、開催時刻を変更することがあります」と書けば、想定する状況が伝わります。
必要に応じて、連絡方法、判断時刻、返金の有無も追記すると安心です。
曖昧な但し書きは、トラブルを防ぐどころか新しい疑問を生むことがあります。
例外の範囲を限定し、読み手が行動を選べる情報まで書き添えることが実務上の要点です。
条件付き合意での確認事項
「この条件であれば承諾する」という条件付き合意では、但し書きの内容が合意の中心になることがあります。
たとえば、価格は了承するものの納期変更時の追加費用については別途協議とする場合、その条件がどこまでを対象とするのか確認が必要です。
相手から送られた発注書や覚書に但し書きがあるときは、本文と矛盾していないかを確認しましょう。
承認前に疑問点を解消し、修正した場合は最新版を双方で共有する流れが安全です。
| 確認項目 | 確認する内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 適用条件 | どの事実が起きた場合か | 発注内容が変更となった場合 |
| 対象範囲 | 誰と何に適用するか | 追加作業分に限る |
| 対応内容 | 何を変更するか | 納期を再協議する |
| 連絡期限 | いつまでに申し出るか | 変更希望日の三営業日前まで |
| 判断方法 | 誰が判断するか | 双方協議のうえ決定する |
例文と表現の選び方
続いては、但し書きの例文と表現の選び方を確認していきます。
社外向け案内の例文
顧客や取引先に向ける文章では、条件を伝えながらも一方的な印象を与えない表現が大切です。
「お申込みは先着順で受け付けます。ただし、定員に達した場合は受付を終了いたします」という書き方は、受付の基準を分かりやすく示せます。
「商品の発送はご入金確認後、三営業日以内に行います。ただし、繁忙期および天候不良時は遅延する場合がございます」もよく使われる形です。
ただし、遅延が起きた場合の問い合わせ先や連絡基準まで案内すれば、より親切な文面になります。
社内規程と業務連絡の例文
社内向けの規程では、公平な運用を意識した記載が求められます。
「原則として在宅勤務は週二日までとします。ただし、業務上の必要性が認められる場合は所属長の承認によりこの限りではありません」と書けば、例外を認める手続きも示せます。
業務連絡では、「会議資料は前日までに共有してください。ただし、緊急案件については当日共有でも差し支えありません」のように簡潔にまとめられます。
例外を認める権限者を明記すると、現場での判断がぶれにくくなります。
社内連絡の例文
経費精算の申請期限は毎月五営業日までです。
ただし、長期出張その他やむを得ない事情がある場合は、事前に経理担当者へご相談ください。
避けたい曖昧な表現
「必要に応じて」「原則として」「場合によっては」は便利な表現ですが、基準がなければ曖昧さを残します。
これらの言葉を使う場合は、何をもって必要と判断するのか、どのケースが対象なのかを補足しましょう。
また、「ただし、例外とします」のように例外の中身が書かれていない文章も避けるべきです。
読み手にとって重要なのは、例外が存在するという事実より、自分のケースが例外に当たるかどうかです。
注記や備考との違い
続いては、注記や備考との違いを確認していきます。
注記との違い
注記は、本文を理解するための補足説明や注意点を付け加える記載です。
但し書きが原則に対する条件や例外を示すのに対し、注記は必ずしもルールの適用を変えるものではありません。
たとえば資料の「注記として表示価格は税込です」とある場合、価格の意味を補う説明です。
一方で「ただし、離島への配送には追加料金がかかります」は、料金条件を変える但し書きに当たります。
備考との違い
備考は、文書に関する参考情報、伝達事項、補足内容を自由度高く書ける欄です。
見積書の備考欄には、納品場所、作業時間、連絡先、前提条件などが記載されます。
ただし、備考欄に書いたからといって重要な契約条件が自動的に明確になるわけではありません。
金額や責任のように影響が大きい事項は、本文の該当箇所や契約条項にも反映することが望ましいでしょう。
| 言葉 | 主な目的 | 内容の特徴 | 使用場面 |
|---|---|---|---|
| 但し書き | 条件や例外の追加 | 原則の適用範囲を調整する | 契約書、規程、案内文 |
| 注記 | 理解を助ける補足 | 注意点や前提を説明する | 資料、商品表示、表 |
| 備考 | 参考事項の記載 | 補足情報を広く扱える | 見積書、申請書、帳票 |
| 特記事項 | 特に伝えたい事項 | 個別性の高い内容を示す | 報告書、契約関連書類 |
脚注との違い
脚注は、本文の末尾やページ下部に置く補足説明です。
専門用語の説明、出典、表の条件などを本文の流れを妨げずに示せます。
但し書きの内容を脚注に置くこともありますが、重要な条件であれば見落とされない配置を選ぶべきです。
契約上の重要事項を脚注だけに隠さないという考え方は、信頼関係の面でも大切です。
注記、備考、脚注は補足のための表現です。
原則の適用を変える条件や例外を示すなら、但し書きとして明確に扱うとよいでしょう。
但し書きの確認とまとめ
但し書きは「ただしがき」と読み、本文の原則に対して条件、例外、補足を加えるための記載です。
契約書、見積書、請求書、案内メール、社内規程などでは、内容の解釈をそろえる重要な役割を担います。
書くときは、原則を先に示し、例外が適用される条件、対象範囲、対応方法、連絡期限を具体的にしましょう。
「事情により変更する場合があります」のような曖昧な表現だけではなく、何が起きたときに何が変わるのかまで示すことが大切です。
また、注記や備考は補足情報を示す言葉であり、条件や例外を定める但し書きとは役割が異なります。
文書を受け取る側も、本文だけで判断せず、ただし以下や備考欄、脚注まで確認する習慣を持つと安心です。
短い一文でも取引条件や対応範囲を左右することがあるため、読み手に誤解なく届く言葉を選びましょう。