データベースの世界には「行指向」と「列指向(カラム指向)」という2種類の主要なデータ格納方式があります。
カラム指向型データベースとは、データを行単位ではなく列単位でストレージに格納するデータベースの方式のことです。
大量データの分析クエリを高速に処理できる特性から、ビッグデータ分析やDWH(データウェアハウス)の分野で広く採用されています。
本記事では、カラム指向型データベースの仕組み・行指向との違い・データ圧縮の原理・代表的な製品まで詳しく解説していきます。
カラム指向型データベースとは何か?基本的な仕組み
それではまず、カラム指向型データベースの基本的な仕組みについて解説していきます。
カラム指向型データベース(Columnar Database / Column-Oriented Database)とは、データを行単位ではなく列単位でディスクに格納するデータベース方式のことです。
通常の行指向データベースでは「1行のすべての列データ」を連続して格納しますが、カラム指向では「同じ列のすべての行データ」を連続して格納します。
この格納方式の違いが、分析クエリのパフォーマンスに大きな差をもたらすのです。
行指向とカラム指向の格納方式の違い(イメージ)
テーブル:ID, 名前, 年齢, 売上
行指向の格納順:1, 田中, 30, 5000 | 2, 鈴木, 25, 3000 | 3, 佐藤, 40, 8000
カラム指向の格納順:
IDカラム:1, 2, 3 | 名前カラム:田中, 鈴木, 佐藤 | 年齢カラム:30, 25, 40 | 売上カラム:5000, 3000, 8000
「売上の合計を計算する」というクエリでは、カラム指向であれば売上カラムのデータだけを読み込めばよく、他のカラム(名前・年齢など)のデータを読む必要がありません。
これがカラム指向が分析クエリで高速な理由でしょう。
行指向との違いとメリット・デメリット
行指向データベースとカラム指向データベースの特性を比較します。
| 項目 | 行指向(OLTP向け) | カラム指向(OLAP向け) |
|---|---|---|
| データ格納単位 | 行単位 | 列単位 |
| 得意な操作 | 行の挿入・更新・削除 | 集計・分析クエリ |
| I/O効率 | 少数行の取得が速い | 少数列の全行読み込みが速い |
| 圧縮効率 | 低い | 高い(同一型データが連続) |
| 代表的な製品 | MySQL・PostgreSQL・Oracle | BigQuery・Redshift・ClickHouse |
データ圧縮効率が高い理由
カラム指向型データベースはデータ圧縮率が高いという大きなメリットがあります。
同じ列には同じデータ型の値が連続して並ぶため、ランレングス符号化・辞書圧縮・ビットマップ圧縮などの効果的な圧縮アルゴリズムを適用できます。
たとえば「都道府県」カラムに47種類の値しかない場合、辞書圧縮を使えばデータをごくわずかなビット数で表現できます。
圧縮によってデータ量が減ると、ディスクI/Oが減少してクエリのパフォーマンスがさらに向上するという好循環が生まれるでしょう。
カラム指向型データベースの活用シーン
続いては、カラム指向型データベースの主な活用シーンを確認していきます。
カラム指向型データベースが最も力を発揮するのは、大量データを対象とした集計・分析クエリの処理です。
ビッグデータ分析とDWHでの活用
DWH(データウェアハウス)は、業務系システムから大量のデータを集約して分析するためのデータベース基盤です。
DWHでは「先月の全商品の売上合計を都道府県別に集計する」といった大量データの集計クエリが多く実行されるため、カラム指向型データベースが最適な選択肢となります。
Google BigQuery・Amazon Redshift・Snowflakeなどのクラウドデータウェアハウスはカラム指向型を採用しており、ペタバイト規模のデータでも高速な分析が可能な設計となっているでしょう。
リアルタイム分析での活用
ClickHouseやApache Druidなどのカラム指向データベースは、大量のイベントデータをリアルタイムで取り込みながら集計クエリを高速に処理できる特性があります。
Webサービスのアクセスログ分析・EC事業の売上モニタリング・IoTデバイスのデータ分析など、リアルタイム性が求められるビジネス分析での活用が広がっています。
従来は時間がかかっていたバッチ処理での集計をリアルタイムに置き換えることで、よりタイムリーな意思決定支援が実現できるでしょう。
ベクトル化処理とCPU効率
カラム指向型データベースはCPUの処理効率の面でも優れた特性を持ちます。
同じデータ型の値が連続して並ぶカラム指向のデータは、SIMD(Single Instruction Multiple Data)命令を使ったベクトル化処理と相性が良く、複数データを1命令でまとめて処理できます。
この特性が現代のマルチコアCPUの性能を最大限に引き出し、集計クエリの圧倒的な高速化につながるのです。
代表的なカラム指向型データベース製品
続いては、代表的なカラム指向型データベース製品を確認していきます。
Google BigQuery
BigQueryはGoogleが提供するフルマネージドのクラウドデータウェアハウスで、カラム指向型ストレージを採用しています。
サーバーレスで利用できるため、インフラ管理の手間なくペタバイト規模のデータ分析が可能です。
SQLで操作でき、Google Analytics・Google Ads・Lookerなどのツールとの連携も充実しているでしょう。
Amazon Redshift・ClickHouse
Amazon RedshiftはAWSが提供するクラウドDWHで、カラム指向型ストレージと大規模な並列処理(MPP)を組み合わせた設計です。
ClickHouseはオープンソースの高速カラム指向データベースで、1秒あたり数十億行のデータを処理できる極めて高速な性能が特徴です。
Yandexが開発した後にオープンソース化されたシステムで、リアルタイム分析基盤として世界中の大規模サービスで採用されているでしょう。
まとめ
本記事では、カラム指向型データベースの仕組み・行指向との違い・データ圧縮の原理・活用シーン・代表的な製品まで詳しく解説してきました。
カラム指向型データベースは列単位でデータを格納することで、分析クエリの高速化・高い圧縮率・CPUの効率的な活用を実現する優れたデータベース方式です。
DWH・ビッグデータ分析・リアルタイム分析など、大量データを集計・分析する用途に最適な選択肢といえるでしょう。
データ分析基盤を構築・選定する際は、カラム指向型データベースの特性を理解したうえで最適なシステムを選択してください。