塩化銅を水に溶かすと、特徴的な色の水溶液ができあがります。この色は銅イオンによるものですが、なぜその色になるのでしょうか?
また、塩化銅水溶液は酸性・中性・塩基性のどれに分類されるのか、理科の試験でもよく問われる内容です。リトマス試験紙の色の変化や、pHの値についても正確に理解しておく必要があるでしょう。
本記事では、塩化銅水溶液の色と液性について、化学的な理由から実験での確認方法まで詳しく解説していきます。塩化銅(II)と塩化銅(I)の違い、加水分解による酸性の理由、濃度による色の変化など、4000字でしっかりとお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
塩化銅水溶液の色
それではまず、塩化銅水溶液の色について解説していきます。
塩化銅には(I)と(II)の2種類があり、それぞれ水溶液の色が大きく異なります。この違いを理解することが重要でしょう。
塩化銅(II)水溶液の色
一般的に「塩化銅水溶液」と言えば、塩化銅(II)の水溶液を指します。
塩化銅(II)水溶液の色は青緑色です。
厳密には「ターコイズブルー」とも呼ばれる、青と緑の中間的な美しい色を呈します。この色は非常に特徴的で、実験室で一目見ればすぐに塩化銅水溶液だと分かるほど印象的でしょう。
色:青緑色(ターコイズブルー)
原因:Cu²⁺イオン
濃度が高いほど色は濃くなり、薄い溶液では淡い青緑色となります。
塩化銅(I)水溶液の色
一方、塩化銅(I)の水溶液は全く異なる外観を示します。
塩化銅(I)水溶液は無色です。
ただし、塩化銅(I)は水溶液中で不安定であり、すぐに酸化されて塩化銅(II)に変化する傾向があります。そのため、純粋な塩化銅(I)水溶液を長時間保つことは難しいでしょう。
| 種類 | 化学式 | イオン | 水溶液の色 | 安定性 |
|---|---|---|---|---|
| 塩化銅(II) | CuCl₂ | Cu²⁺ | 青緑色 | 安定 |
| 塩化銅(I) | CuCl | Cu⁺ | 無色 | 不安定 |
実験や工業で使われるのはほとんどが塩化銅(II)であり、その特徴的な青緑色は銅イオンの存在を示す重要な指標となっているのです。
色が生じる理由
なぜ塩化銅(II)水溶液は青緑色を呈するのでしょうか?
この色は、水溶液中に存在するCu²⁺イオンによるものです。
Cu²⁺イオンは水分子に囲まれた状態(水和イオン)で存在しており、[Cu(H₂O)₆]²⁺という錯イオンを形成します。この錯イオンが特定の波長の光を吸収することで、青緑色に見えるのです。
具体的には、Cu²⁺イオンは赤色の光を吸収し、青と緑の光を反射します。そのため、私たちの目には青緑色として認識されるでしょう。
2. この錯イオンが赤色光を吸収
3. 青と緑の光が反射される
4. 結果として青緑色に見える
一方、Cu⁺イオンは完全に電子が詰まった配置(d¹⁰)を取るため、可視光をほとんど吸収しません。そのため、塩化銅(I)水溶液は無色なのです。
塩化銅水溶液は何性か
続いては、塩化銅水溶液の液性について確認していきます。
酸性・中性・塩基性のどれに分類されるのか、その理由とともに理解しましょう。
塩化銅(II)水溶液の液性
塩化銅(II)水溶液は酸性を示します。
リトマス試験紙で確認すると、青色リトマス紙が赤色に変化します。これは水溶液中に水素イオン(H⁺)が多く存在していることを示しているでしょう。
青色リトマス紙:赤色に変化
赤色リトマス紙:変化なし
中性の塩である塩化ナトリウム(NaCl)水溶液とは異なり、塩化銅水溶液は明確に酸性を示すのです。
酸性を示す理由
塩化銅水溶液が酸性を示す理由は、加水分解によるものです。
水溶液中のCu²⁺イオンは、水分子と反応して水素イオンを放出します。
加水分解の反応式Cu²⁺ + H₂O ⇄ CuOH⁺ + H⁺
または
[Cu(H₂O)₆]²⁺ ⇄ [Cu(H₂O)₅(OH)]⁺ + H⁺
この反応により、水溶液中にH⁺イオンが生じるため、溶液は酸性となるのです。
銅イオンは2価の陽イオンであり、比較的小さなイオン半径を持っています。そのため、水分子を強く引き付け、水分子から水素イオンを奪いやすい性質があるでしょう。
一般的に、金属イオンの電荷が大きく、イオン半径が小さいほど、加水分解しやすい傾向があります。Cu²⁺はこの条件に当てはまるため、塩化銅水溶液は酸性を示すのです。
化学物質の性質については、厚生労働省の職場のあんぜんサイトで安全データシート(SDS)を確認できます。
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/GHS_MSD_FND.aspx
pHの値
塩化銅(II)水溶液のpHは、濃度によって変化します。
一般的な実験で使用される濃度(0.1 mol/L程度)では、pH 3〜4程度の弱酸性を示すでしょう。
| 濃度 | おおよそのpH | 酸性の強さ |
|---|---|---|
| 1.0 mol/L | 2〜3 | やや強い酸性 |
| 0.1 mol/L | 3〜4 | 弱酸性 |
| 0.01 mol/L | 4〜5 | 弱い酸性 |
濃度が高いほどpHは低く(酸性が強く)なり、濃度が低いほどpHは高く(酸性が弱く)なります。
ただし、塩酸のような強酸と比べると、塩化銅水溶液の酸性は穏やかです。加水分解による酸性であるため、強酸ほど多くの水素イオンは生じないのです。
塩化銅水溶液中のイオンと性質
続いては、塩化銅水溶液中のイオンの状態と性質について確認していきます。
水溶液中では様々なイオンや化学種が存在しており、それらが溶液の性質を決定しているのです。
水溶液中のイオンの状態
塩化銅(II)を水に溶かすと、まず以下のように電離します。
電離の式CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻
しかし、実際の水溶液中では、Cu²⁺イオンは単独では存在せず、水分子に囲まれた水和イオンとして存在します。
[Cu(H₂O)₆]²⁺という形で、6個の水分子が銅イオンを取り囲んでいる状態です。この水和イオンが青緑色の原因となっているでしょう。
一方、Cl⁻イオンも水分子に取り囲まれていますが、こちらは無色です。そのため、溶液の色に影響を与えません。
水溶液中には以下のような化学種が存在しています。
– [Cu(H₂O)₆]²⁺(青緑色)
– Cl⁻(無色)
– [Cu(H₂O)₅(OH)]⁺(加水分解により生成)
– H⁺(加水分解により生成)
– H₂O(溶媒)
加水分解反応
先ほども触れましたが、塩化銅水溶液の酸性は加水分解によるものです。
加水分解反応について、もう少し詳しく見ていきましょう。
Cu²⁺イオンは水分子を強く引き付けるため、水分子のO-H結合を弱めます。その結果、水分子からH⁺が離れやすくなるのです。
加水分解の詳細段階1:[Cu(H₂O)₆]²⁺ ⇄ [Cu(H₂O)₅(OH)]⁺ + H⁺
段階2(さらに進む場合):
[Cu(H₂O)₅(OH)]⁺ ⇄ [Cu(H₂O)₄(OH)₂] + H⁺
通常の濃度では、主に第一段階の加水分解が起こり、溶液は弱酸性となります。
濃度が非常に高い場合や、塩基を加えた場合には、さらなる加水分解が進み、水酸化銅の沈殿が生じることもあるでしょう。
1. 電荷が大きい(2価、3価など)
2. イオン半径が小さい
3. 電子を引き付ける力が強いCu²⁺はこれらの条件を満たすため、加水分解しやすい
濃度による色の変化
塩化銅水溶液の色は、濃度によって変化します。
高濃度の場合
濃い塩化銅水溶液は、濃い青緑色を呈します。Cu²⁺イオンの濃度が高いため、光の吸収が強くなり、色が濃く見えるのです。
低濃度の場合
薄い塩化銅水溶液は、淡い青緑色から、非常に薄い場合はほぼ無色に近くなります。
超高濃度の場合
非常に濃い塩化銅水溶液では、緑色が強くなることがあります。これは、[CuCl₄]²⁻という錯イオンが形成されるためです。
| 濃度 | 主な化学種 | 色 |
|---|---|---|
| 希薄 | [Cu(H₂O)₆]²⁺ | 淡い青緑色 |
| 通常 | [Cu(H₂O)₆]²⁺ | 青緑色 |
| 高濃度 | [Cu(H₂O)₆]²⁺、一部[CuCl₄]²⁻ | 濃い青緑色〜緑色 |
このように、同じ塩化銅水溶液でも、濃度によって色合いが微妙に変化するのです。
塩化銅水溶液の確認方法と実験
続いては、塩化銅水溶液の性質を確認する実験方法について見ていきます。
リトマス試験紙やpH試験紙を使った簡単な実験で、液性を確かめることができるでしょう。
リトマス試験紙による確認
最も簡単な確認方法は、リトマス試験紙を使うことです。
2. 青色リトマス紙を浸す
3. 赤色に変化すれば酸性
4. 念のため赤色リトマス紙でも確認(変化なし)
塩化銅水溶液は酸性なので、青色リトマス紙が赤色に変化します。
赤色リトマス紙は変化しません。なぜなら、すでに酸性の環境で赤色を示しているためです。
リトマス試験紙は酸性・中性・塩基性の大まかな判定には便利ですが、具体的なpH値までは分かりません。
pH試験紙による確認
より詳しくpHを知りたい場合は、pH試験紙(万能試験紙)を使用します。
pH試験紙を塩化銅水溶液に浸すと、試験紙の色が変化します。この色を標準色と比較することで、おおよそのpH値を知ることができるでしょう。
通常の塩化銅(II)水溶液(0.1 mol/L程度)では、pH 3〜4を示す色に変化します。
pH測定の注意点
1. 試験紙は清潔な状態で使用する
2. 十分に試験紙を濡らす
3. すぐに色を確認する(時間が経つと変化することがある)
4. 標準色と明るい場所で比較する
より正確なpH測定が必要な場合は、pHメーターを使用します。これにより、小数点以下まで正確なpH値を測定できるのです。
文部科学省の学習指導要領では、酸・塩基とpHについての実験が重要な学習内容として位置づけられています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm
実験上の注意点
塩化銅水溶液を扱う際の注意点をまとめます。
塩化銅は刺激性があるため、素手で触らないこと2. 目に入れない
保護メガネの着用が推奨される
3. 誤飲しない
実験器具と飲食器具を明確に分ける
4. 換気を行う
特に加熱する場合は十分な換気が必要
5. 廃液処理を適切に行う
そのまま流さず、指定の方法で処理する
塩化銅は有害物質に分類されるため、取り扱いには十分な注意が必要です。
実験後は必ず手を洗い、使用した器具も適切に洗浄しましょう。廃液は中和処理や沈殿処理を行ってから廃棄することが環境保護の観点からも重要です。
学校での実験では、教師の指示に従い、安全に配慮しながら実験を進めることが大切でしょう。
まとめ 塩化銅水溶液は何性か?phなど
塩化銅水溶液の色と液性について、詳しく解説してきました。
塩化銅(II)水溶液は青緑色(ターコイズブルー)を呈し、この色は水溶液中のCu²⁺イオンによるものです。Cu²⁺イオンは水和して[Cu(H₂O)₆]²⁺という錯イオンを形成し、赤色光を吸収することで青緑色に見えます。一方、塩化銅(I)水溶液は無色ですが、水溶液中では不安定であり、すぐに酸化されて塩化銅(II)に変化する傾向があるでしょう。
液性については、塩化銅(II)水溶液は酸性を示します。これはCu²⁺イオンの加水分解によるもので、[Cu(H₂O)₆]²⁺が水素イオンを放出して[Cu(H₂O)₅(OH)]⁺となるためです。一般的な濃度(0.1 mol/L程度)ではpH 3〜4程度の弱酸性となり、青色リトマス紙を赤色に変化させます。
水溶液中では、Cu²⁺イオンは水分子に囲まれた水和イオンとして存在し、濃度によって色の濃さが変化します。また、塩化物イオン濃度が非常に高い場合には、[CuCl₄]²⁻という緑色の錯イオンが形成されることもあるのです。
実験では、リトマス試験紙やpH試験紙を使って液性を確認できます。ただし、塩化銅は有害物質であるため、皮膚への接触を避け、保護具を着用するなど、安全に十分配慮することが重要です。廃液処理も適切に行い、環境への影響を最小限に抑えましょう。
塩化銅水溶液の色と液性を理解することで、化学反応や分析化学の基礎知識が深まります。実験を通じて、イオンの性質や加水分解の概念をしっかりと学んでいきましょう。