化学反応

エタノールは混合物か純物質か?定義から徹底解説

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化学を学ぶ上で、物質を「混合物」と「純物質」に分類することは基本中の基本です。では、私たちが日常的に使用するエタノールは、どちらに分類されるのでしょうか。

本記事では、エタノールが混合物か純物質か、混合物と純物質の定義、市販のエタノール製品の分類、実用的な見分け方について詳しく解説していきます。

「純粋なエタノール」と「消毒用エタノール」の違いや、化学的な純度の概念まで、体系的に理解していきましょう。

混合物と純物質の基本定義

それではまず混合物と純物質の基本定義について解説していきます。

純物質とは何か

純物質とは、一種類の物質のみからなる物質のことです。

化学的に単一の成分で構成され、一定の化学式で表すことができます。純物質は、さらに「単体」と「化合物」に分類されるのです。

単体は、一種類の元素のみからなる純物質です。例えば、酸素(O₂)、窒素(N₂)、金(Au)、炭素(C)などが該当するでしょう。

化合物は、二種類以上の元素が化学結合した純物質です。例えば、水(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、食塩(NaCl)などが該当します。

分類 定義
単体 一種類の元素のみ 酸素(O₂)、鉄(Fe)、硫黄(S)
化合物 二種類以上の元素が化学結合 水(H₂O)、アンモニア(NH₃)、エタノール(C₂H₆O)
純物質の重要な特徴は、組成が一定であることです。どこから採取しても、どのように調製しても、同じ化学式で表される物質であれば、常に同じ性質を示すのです。例えば、水は世界中どこでもH₂Oであり、融点0℃、沸点100℃(1気圧下)という性質を持ちます。

混合物とは何か

混合物とは、二種類以上の純物質が物理的に混ざり合った物質のことです。

混合物を構成する各成分は、化学結合しておらず、物理的な方法(蒸留、ろ過、抽出など)で分離することができます。混合物の組成は一定ではなく、混合比率によって変化するのです。

混合物は、さらに「均一混合物(溶液)」と「不均一混合物」に分類されます。

均一混合物(溶液)は、成分が均一に混ざり合い、どの部分を取っても同じ組成を持つ混合物です。例えば、食塩水、空気、エタノール水溶液などが該当するでしょう。

混合物の種類 定義
均一混合物(溶液) 成分が均一に混ざっている 食塩水、空気、エタノール水溶液
不均一混合物 成分が不均一に混ざっている 泥水、牛乳、コンクリート

不均一混合物は、成分が均一に混ざっておらず、部分によって組成が異なる混合物です。泥水、牛乳、煙、霧などが該当します。

見分け方のポイント

物質が純物質か混合物かを見分けるポイントがあります。

化学式で表せるかどうかが最も基本的な判断基準です。一つの化学式で表せる物質は純物質、複数の成分を含む場合は混合物といえるでしょう。

物理的な分離方法で成分を分けられるかも重要な判断基準です。蒸留、ろ過、抽出などの物理的操作で複数の成分に分離できる場合は混合物なのです。

判断基準のまとめ純物質:
・一つの化学式で表せる
・物理的方法では分離できない
・組成が一定
・融点・沸点が一定

混合物:
・複数の成分を含む
・物理的方法で分離可能
・組成が変化する
・融点・沸点が一定でない(または範囲を持つ)

融点や沸点の性質も判断材料となります。純物質は一定の融点・沸点を持ちますが、混合物は温度範囲を持つか、または混合比によって変化するでしょう。

エタノールは純物質か

続いてはエタノールは純物質かを確認していきます。

純粋なエタノールの化学的性質

純粋なエタノール(無水エタノール、99.5%以上)は、純物質です。

化学式C₂H₆O(または示性式C₂H₅OH)で表される単一の化合物であり、炭素、水素、酸素の三種類の元素が化学結合した物質といえます。

純粋なエタノールは、一定の物理化学的性質を持つのです。

物性 備考
分子式 C₂H₆O 一定の化学式
分子量 46 一定の値
融点 -114.1℃ 一定の融点
沸点 78.3℃ 一定の沸点
密度(20℃) 0.789 g/cm³ 一定の密度
純物質としてのエタノールは、世界中どこで合成しても、どのような原料から作っても、同じ性質を示します。サトウキビから発酵させたエタノールも、石油から化学合成したエタノールも、純粋であれば全く同じ分子構造と性質を持つのです。

純粋なエタノールの融点は-114.1℃、沸点は78.3℃であり、これらは一定の値を示します。混合物であれば、融点や沸点は一定の値ではなく温度範囲を持つでしょう。

「純粋」の意味と純度の概念

化学における「純粋」とは、不純物を含まない状態を意味します。

しかし、実際には100%純粋な物質を得ることは非常に困難です。工業的に製造される「無水エタノール」でも、純度は99.5%以上とされ、わずかな水分や不純物を含むのです。

それでも、主成分が圧倒的多数(99.5%以上)を占める場合、化学的には純物質として扱われます。

純度 分類 用途
99.9%以上 高純度、ほぼ純物質 精密分析、化学合成
99.5~99.9% 純物質として扱う 一般試薬、実験
95~99% 高純度だが混合物 一般用途
95%未満 明らかな混合物 工業用、消毒用

ただ、化学の教科書や試験問題で「エタノールは純物質か混合物か」と問われた場合、純物質が正解です。

これは、理想的な純粋エタノール(C₂H₆O)を指しているためでしょう。

水を含むエタノールの分類

水分を含むエタノールは、混合物に分類されます。

例えば、エタノール95%水溶液は、エタノール分子と水分子が物理的に混ざり合った均一混合物(溶液)です。化学結合はしておらず、蒸留などの物理的方法で分離できるのです。

エタノール水溶液の組成エタノール95%水溶液:
・エタノール(C₂H₅OH):95%
・水(H₂O):5%
→ 二種類の純物質の混合物

消毒用エタノール(80%):
・エタノール(C₂H₅OH):約80%
・水(H₂O):約20%
→ 二種類の純物質の混合物

エタノールと水の混合物は、単一の化学式では表せません。組成も変化可能であり、エタノールの濃度を10%にも50%にも90%にも調整できるでしょう。

融点や沸点も一定ではなく、濃度によって変化します。ただし、エタノール約95.6%の水溶液は共沸混合物として特殊な性質を示すのです。

市販のエタノール製品の分類

続いては市販のエタノール製品の分類を確認していきます。

無水エタノールの分類

無水エタノール(エタノール含量99.5%以上)は、ほぼ純物質として扱われます。

わずかな水分(0.5%未満)を含む可能性がありますが、主成分がエタノールであり、その割合が非常に高いため、化学的には純物質に近い状態といえるのです。

厳密にいえば、わずかでも水を含む場合は混合物ですが、実用上は純エタノールとして扱われます。

製品名 エタノール濃度 分類 理由
無水エタノール 99.5%以上 ほぼ純物質 主成分が圧倒的多数
エタノール(95%) 95.1~96.9% 混合物(溶液) 明らかに水を含む
消毒用エタノール 76.9~81.4% 混合物(溶液) 明らかに水を含む
化学の試験や教科書では、「無水エタノール」は純物質として扱われることが一般的です。一方、「エタノール水溶液」や「消毒用エタノール」は明確に混合物とされるでしょう。この区別を理解しておくことが重要なのです。

無水エタノールであっても、開封後は空気中の水分を吸収するため、次第に純度が低下します。長期保存したものは、実質的に混合物となっている可能性があるでしょう。

エタノール水溶液の分類

エタノール95%や消毒用エタノールは、明確に混合物です。

これらは、エタノールと水という二種類の純物質が物理的に混ざり合った均一混合物(溶液)に分類されます。蒸留によって分離可能であり、組成も調整可能なのです。

エタノール水溶液の性質は、濃度によって連続的に変化します。

エタノール水溶液の性質変化濃度0%(純水)

濃度50%(中間)

濃度95%(エタノール)

濃度99.5%以上(無水エタノール)

密度、沸点、粘度、表面張力などが連続的に変化

純物質であれば、このような連続的な性質変化は見られません。例えば、水(H₂O)の沸点は100℃で一定ですが、エタノール水溶液の沸点は濃度によって78.3℃~100℃の間で変化するのです。

添加物を含む製品の分類

市販の消毒用エタノールには、エタノールと水以外の成分が添加されている場合があります。

例えば、イソプロピルアルコール、保湿剤(グリセリン、プロピレングリコールなど)、香料などが添加された製品が存在するのです。これらは明らかに複数成分の混合物といえます。

製品例 主成分 添加物 分類
純粋エタノール(試薬) エタノール99.5%+ なし(または微量の水) ほぼ純物質
消毒用エタノール(基本) エタノール80% 水20% 二成分混合物
消毒用エタノール(保湿) エタノール70~80% 水、グリセリン、香料等 多成分混合物
変性エタノール エタノール メタノール、イソプロパノール等 多成分混合物

変性エタノールは、飲用を防ぐために意図的に他のアルコールや苦味成分を添加したエタノールです。これは明確に混合物であり、複数のアルコール類の混合物となるでしょう。

工業用エタノールには、様々な不純物が含まれる場合があります。精製度が低い製品は、複雑な混合物といえるのです。

実験的な見分け方

続いては実験的な見分け方を確認していきます。

蒸留による分離

混合物かどうかを確認する最も直接的な方法が蒸留です。

純物質であれば、蒸留しても成分は分離せず、全体が一定の温度で沸騰します。混合物であれば、成分ごとに沸点が異なるため、蒸留によって分離できるのです。

エタノール水溶液を蒸留すると、最初にエタノールが多く含まれる留分(沸点約78℃)が得られ、次第に水が多く含まれる留分(沸点100℃に近づく)が得られます。

ただし、エタノール-水混合物は約95.6%の濃度で共沸混合物を形成します。この組成では、蒸留してもこれ以上分離できず、78.15℃の一定温度で沸騰するのです。共沸混合物は混合物の特殊なケースといえるでしょう。

沸点測定による判定

沸点の測定も、純物質と混合物を見分ける有効な方法です。

純物質は一定の沸点を示します。加熱していくと、ある特定の温度に達したときに沸騰が始まり、液体がすべて気化するまでその温度が保たれるのです。

混合物の場合、沸点は温度範囲を持ちます。沸騰開始温度と終了温度が異なり、徐々に温度が上昇していくでしょう。

物質 沸騰時の温度変化 分類
純粋なエタノール 78.3℃で一定 純物質
純粋な水 100℃で一定 純物質
エタノール50%水溶液 約80~95℃で変化 混合物
エタノール95.6%水溶液 78.15℃で一定(共沸) 混合物(特殊)

実験室で沸点を測定する際、温度が一定に保たれれば純物質、徐々に上昇すれば混合物と判定できます。

密度測定による判定

密度の測定も判定の手がかりとなります。

純物質は一定の密度を持ちますが、混合物の密度は組成によって変化するのです。エタノール水溶液の密度を測定することで、エタノール濃度を推定できます。

エタノール水溶液の密度(20℃)純水:1.000 g/cm³
エタノール50%:0.935 g/cm³
エタノール80%:0.860 g/cm³
エタノール95%:0.810 g/cm³
純粋なエタノール:0.789 g/cm³

密度が0.789 g/cm³であれば純粋なエタノール(純物質)、それより大きい値であれば水を含む混合物と判定できるでしょう。

市販のアルコール度数計(比重計)は、この原理を利用しています。液体の密度を測定することで、エタノール濃度を推定する装置なのです。

教育現場での扱い

続いては教育現場での扱いを確認していきます。

中学・高校化学での分類

中学校や高校の化学教育では、エタノールは純物質の例として扱われることが一般的です。

これは、理想的な化学式C₂H₆Oで表される単一化合物としてのエタノールを指しています。混合物と純物質の概念を学ぶ際、エタノールは純物質(化合物)の代表例として登場するでしょう。

学習段階 扱い方 注意点
中学理科 純物質の例 化学式C₂H₆Oで表される化合物
高校化学基礎 純物質(化合物) 水溶液は混合物と区別
高校化学 純物質、構造や反応を詳しく学ぶ 純度の概念も扱う
大学化学 純度や精製法も含めて扱う 実用品と理想状態の区別
試験問題で「エタノールは純物質か混合物か」と問われた場合、特に断りがなければ「純物質」と答えるのが正解です。

ただし、「消毒用エタノールは純物質か混合物か」と問われた場合は「混合物」が正解となるでしょう。

よくある誤解と正しい理解

エタノールの分類について、いくつかの誤解があります。

誤解1:「エタノールは有機物だから混合物」
→ 正しくは、有機物でも純物質です。エタノールは有機化合物であり、純物質に分類されます。

誤解2:「液体だから混合物」
→ 正しくは、液体でも純物質は存在します。水、エタノール、水銀などは液体の純物質です。

誤解3:「市販品はすべて純物質」
→ 正しくは、市販のエタノール製品は多くが混合物です。無水エタノールでも完全に純粋ではありません。

正しい理解のポイント・化学式C₂H₆Oで表されるエタノール分子 → 純物質
・理論上の純粋なエタノール(100%) → 純物質
・無水エタノール(99.5%以上) → ほぼ純物質
・エタノール水溶液(95%、80%など) → 混合物
・添加物を含む消毒剤 → 混合物

実用と理論の区別

化学を学ぶ上で、理論的な理想状態と実用品を区別することが重要です。

教科書や試験問題で扱う「エタノール」は、理想的な純粋エタノール(C₂H₆O、純物質)を指すことが多いでしょう。一方、実験室や日常で使用するエタノールは、多くの場合わずかな不純物や水分を含む混合物なのです。

この区別を理解することで、化学的な概念と実際の物質の違いが明確になります。

文脈 指す対象 分類
「エタノールの化学式は?」 理想的な純粋エタノール 純物質
「エタノールは純物質か?」 理想的な純粋エタノール 純物質
「消毒用エタノールは?」 実際の製品(水溶液) 混合物
「実験で使うエタノールは?」 試薬製品(多くは混合物) 文脈による

化学の学習では、理論的な概念を理解することが重要ですが、実用品との違いも認識しておくことで、より深い理解が得られるでしょう。

まとめ エタノールは純物質か混合物か?定義から徹底解説

エタノールが混合物か純物質かという問いについて、定義から実用的な分類まで詳しく解説してきました。

理論的には、エタノール(C₂H₆O)は一つの化学式で表される化合物であり、純物質に分類されます。一定の融点(-114.1℃)、沸点(78.3℃)、分子量(46)を持つ単一の化学物質なのです。

しかし、実用上のエタノール製品は、その純度によって分類が異なります。無水エタノール(99.5%以上)はほぼ純物質として扱われますが、エタノール水溶液(95%、80%など)は明確に混合物です。市販の消毒用エタノールは、エタノールと水の混合物といえるでしょう。

化学の試験や教科書で「エタノールは純物質か混合物か」と問われた場合、特に断りがなければ「純物質」が正解です。ただし、実際に使用する製品がどのような状態かを理解し、理論と実用を区別することが重要でしょう。本記事が皆様の化学学習に役立てば幸いです。