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水酸化鉄(Ⅲ)は、鉄(Ⅲ)イオンと水酸化物イオンからなる難溶性の塩基であり、化学式はFe(OH)₃と表されます。
化学の学習において、化学式・組成式・分子量(式量)の正確な理解は、試験対策の基礎として欠かせません。
また、電子式・構造式・イオン式・示性式といった多様な表記方法も、しっかり押さえておきたいポイントです。
さらに、赤褐色沈殿としての外観・コロイド粒子としての性質・電気泳動・加熱による酸化鉄生成なども、試験で頻出のテーマのひとつ。
この記事では、水酸化鉄(Ⅲ)に関する基礎知識を、わかりやすく丁寧に解説していきます。
水酸化鉄(Ⅲ)の化学式はFe(OH)₃!組成式・分子量の基本まとめ
それではまず、水酸化鉄(Ⅲ)の化学式・組成式・分子量について解説していきます。
水酸化鉄(Ⅲ)の化学式はFe(OH)₃です。
これは、鉄(Ⅲ)イオンFe³⁺が1個と、水酸化物イオンOH⁻が3個で構成されていることを示しています。
電荷のバランスを確認すると、Fe³⁺=+3、OH⁻×3=−3となり、過不足なく釣り合っているのがわかるでしょう。
組成式は化学式と同様にFe(OH)₃と書くのが一般的です。
イオン結晶では化学式と組成式が一致することが多く、水酸化鉄(Ⅲ)もその典型例に当てはまります。
示性式についても、特別な官能基を強調する必要がないため、通常はFe(OH)₃として表記されます。
分子量(式量)の計算方法
水酸化鉄(Ⅲ)の分子量(正確には式量)を計算してみましょう。
各元素の原子量は、Fe=56、O=16、H=1を使用します。
Fe:56×1=56
O:16×3=48
H:1×3=3
合計:56+48+3=107
したがって、水酸化鉄(Ⅲ)の式量は107となります。
OH⁻が3個あるため、O×3とH×3を正確に計算することがポイントです。
「Fe(OH)₃=式量107」とセットで覚えておきましょう。
覚え方のコツ
化学式Fe(OH)₃の覚え方としては、Fe³⁺とOH⁻のたすき掛けが便利です。
Fe³⁺の価数3とOH⁻の価数1をたすき掛けすると、FeにはOHが3個つき、Fe(OH)₃が導けます。
「Fe³⁺に対してOH⁻が3個→Fe(OH)₃」という流れで確認しておきましょう。
外観・色・物理的性質
水酸化鉄(Ⅲ)は赤褐色の沈殿として観察されます。
Fe³⁺イオンを含む水溶液にNaOH水溶液などの塩基を加えると、この赤褐色の沈殿が生じるのです。
水への溶解度は非常に小さく、難溶性の塩基として分類される化合物です。
水酸化鉄(Ⅲ)の電子式・構造式・イオン式を解説
続いては、水酸化鉄(Ⅲ)の電子式・構造式・イオン式について確認していきます。
電子式の書き方
水酸化鉄(Ⅲ)はイオン結晶であるため、構成イオンであるFe³⁺とOH⁻のそれぞれの電子式を理解することが基本となります。
OH⁻(水酸化物イオン)の電子式では、OとHが共有結合し、O原子に非共有電子対が3組存在する構造として記述します。
Fe³⁺については、鉄原子が電子を3個失ったイオンとして表記するのがポイントです。
構造式のポイント
水酸化鉄(Ⅲ)の構造式は、Fe³⁺を中心に3つのOH⁻がイオン結合でつながった形として表されます。
(HO)₃Fe または Fe−(OH)₃として表記
実際には複雑な層状・非晶質構造を持つ固体として存在しており、高校化学レベルでは上記のシンプルな理解で問題ありません。
イオン式・生成反応
水酸化鉄(Ⅲ)の生成反応式は以下のとおりです。
Fe³⁺イオンを含む水溶液にNaOH水溶液を加えると、この反応により赤褐色の沈殿が生じます。
Fe²⁺の場合は緑白色のFe(OH)₂が生成するため、沈殿の色でFe²⁺とFe³⁺を区別できることも覚えておきましょう。
水酸化鉄(Ⅲ)のコロイドと電気泳動
続いては、水酸化鉄(Ⅲ)がコロイド粒子として示す性質と電気泳動について確認していきましょう。
水酸化鉄(Ⅲ)コロイドの生成
塩化鉄(Ⅲ)水溶液(FeCl₃)を沸騰水に加えて加水分解させると、水酸化鉄(Ⅲ)のコロイド溶液(疎水コロイド)が得られます。
生成したFe(OH)₃コロイドは赤褐色の半透明な溶液として観察されます。
このコロイド粒子は正の電荷を帯びており、疎水コロイドとしての性質を示すのです。
コロイドの性質
Fe(OH)₃コロイドは一般的なコロイドの性質をすべて示します。
| コロイドの性質 | 内容 | Fe(OH)₃での例 |
|---|---|---|
| チンダル現象 | 光を当てると光の通路が見える | 赤褐色の光の道筋が見える |
| ブラウン運動 | 粒子が不規則に動く | 顕微鏡で不規則な動きが観察される |
| 電気泳動 | 電場をかけると移動する | 正電荷を帯び陰極方向に移動 |
| 凝析 | 電解質を加えると沈殿する | 少量の電解質で沈殿が生じる |
電気泳動の詳細
電気泳動とは、コロイド粒子が電場をかけることによって一定方向に移動する現象のことです。
Fe(OH)₃コロイド粒子は正の電荷を帯びているため、電場をかけると陰極(−極)方向に移動します。
Fe(OH)₃コロイド粒子の表面にはFe³⁺イオンが吸着しており、粒子全体として正の電荷を持ちます。このため電気泳動では陰極方向に移動するのです。負電荷を帯びるコロイド(粘土・デンプンなど)とは移動方向が逆になる点も重要なポイントです。
凝析と塩析の違い
Fe(OH)₃のような疎水コロイドは少量の電解質を加えることで沈殿(凝析)します。
凝析は疎水コロイドに特有の現象であり、タンパク質などの親水コロイドでは多量の電解質が必要な「塩析」が起こる点が重要な違いです。
Fe(OH)₃=疎水コロイド=凝析しやすいという対応を覚えておきましょう。
水酸化鉄(Ⅲ)の加熱・酸化鉄生成・関連化合物
続いては、水酸化鉄(Ⅲ)の加熱による変化と関連化合物について確認していきましょう。
加熱による分解反応
水酸化鉄(Ⅲ)を加熱すると、水が脱離して赤褐色の酸化鉄(Ⅲ)(Fe₂O₃)が生成します。
赤褐色のFe(OH)₃が加熱によっても赤褐色系のFe₂O₃に変化するため、色変化が比較的わかりにくい点に注意が必要です。
生成したFe₂O₃は赤色〜赤褐色の粉末であり、さび(赤さび)の主成分として知られています。
鉄の水酸化物の比較
| 化合物 | 化学式 | 色 | Fe の酸化数 |
|---|---|---|---|
| 水酸化鉄(Ⅱ) | Fe(OH)₂ | 緑白色 | +2 |
| 水酸化鉄(Ⅲ) | Fe(OH)₃ | 赤褐色 | +3 |
| 酸化鉄(Ⅱ) | FeO | 黒色 | +2 |
| 酸化鉄(Ⅲ) | Fe₂O₃ | 赤褐色 | +3 |
| 四酸化三鉄 | Fe₃O₄ | 黒色 | +2と+3の混合 |
Fe(OH)₂を空気中に放置するとFe(OH)₃に酸化される変化も重要であり、緑白色→赤褐色への色変化として観察されます。
Fe³⁺の検出反応まとめ
・NaOH水溶液を加える→赤褐色沈殿(Fe(OH)₃)が生成
・チオシアン酸カリウム(KSCN)を加える→血赤色溶液が生成
・ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムを加える→濃青色沈殿(ターンブルブルー)が生成
これらの反応はFe³⁺の存在を確認するための定性分析に利用されます。
まとめ
この記事では、水酸化鉄(Ⅲ)の化学式・組成式・分子量(式量)を中心に、電子式・構造式・イオン式・示性式、赤褐色沈殿の特徴、コロイドとしての性質(チンダル現象・電気泳動・凝析)、加熱による酸化鉄(Ⅲ)生成まで幅広く解説しました。
化学式Fe(OH)₃、式量107、生成反応(Fe³⁺+3OH⁻→Fe(OH)₃↓赤褐色)という基本データを確実に押さえておきましょう。
Fe(OH)₃コロイドが正電荷を帯び陰極方向に移動すること・疎水コロイドとして凝析しやすいことは試験頻出のテーマです。
Fe²⁺(緑白色沈殿)との色の違い・KSCN添加による血赤色反応・加熱によるFe₂O₃生成も含めて、鉄の化学を幅広く理解しておくことが得点アップへの近道でしょう。