複数の認証規格を取得している企業にとって、それぞれを別々に運用する負担は決して小さくありません。
そこで注目されているのが、マネジメントシステムの統合とは?方法やメリットも!というテーマで語られる統合マネジメントシステムの考え方です。
ISO9001やISO14001など複数の規格を一元管理できれば、文書作成や内部監査の手間を大きく減らせます。
とはいえ、統合の方法や進め方を正しく理解していないと、かえって現場が混乱してしまうケースも見受けられます。
この記事では、統合マネジメントシステムの基本的な考え方から具体的な導入方法、得られるメリットや注意点まで、順を追ってわかりやすく解説していきます。
ISOの一元管理を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
マネジメントシステムの統合とは?結論からわかりやすく解説
それではまずマネジメントシステムの統合とは何かについて解説していきます。
結論から言うと、マネジメントシステムの統合とは、品質や環境、労働安全衛生といった複数のISO規格を、ひとつの仕組みの中でまとめて運用管理することです。
別々に構築されていた文書体系や内部監査の仕組みを共通化し、一元管理できる状態に整えることが最大のポイントでしょう。
これは単に書類を一冊にまとめるという話ではありません。
方針や目標設定、責任者の役割、監査プロセスといった運用の骨格そのものを統合することを意味します。
統合マネジメントシステム(IMS)の基本的な定義
統合マネジメントシステムは、英語でIntegrated Management Systemと呼ばれ、IMSという略称で呼ばれることも多くあります。
複数の規格を横断する共通の要素、たとえば経営方針やリスク管理の考え方を一本化し、重複した作業を減らす仕組みです。
単独運用のままだと、同じような文書を規格ごとに何度も作成することになりがちです。
こうした無駄を解消できる点が、IMSの本質的な価値と言えるでしょう。
ISO9001・ISO14001・ISO45001などの代表的な対象規格
統合の対象としてよく挙げられるのが、品質マネジメントのISO9001、環境マネジメントのISO14001、労働安全衛生マネジメントのISO45001です。
これらは規格の構成が共通化されており、統合しやすい設計になっています。
下記の表で、それぞれの規格の特徴を簡単に整理してみます。
| 規格名 | 対象分野 | 主な目的 |
|---|---|---|
| ISO9001 | 品質マネジメント | 製品やサービスの品質向上、顧客満足度の維持 |
| ISO14001 | 環境マネジメント | 環境負荷の低減、法令遵守の徹底 |
| ISO45001 | 労働安全衛生マネジメント | 労働災害の防止、従業員の安全確保 |
このように分野は異なりますが、いずれもPDCAサイクルを基本とした運用構造を持っています。
だからこそ、統合による相乗効果が生まれやすいのです。
なぜ今マネジメントシステムの統合が注目されているのか
近年、複数の認証を同時に保有する企業が増えてきました。
取引先からの要求や社会的な信頼性向上のために、品質と環境、安全衛生をあわせて認証取得するケースが珍しくなくなっています。
一方で、担当者の人手不足や業務効率化の必要性も高まっているのが実情でしょう。
限られたリソースで複数の規格を維持するために、統合という選択肢が現実的な解決策として広がっているのです。
マネジメントシステムを統合する具体的な方法
続いてはマネジメントシステムを統合する具体的な方法を確認していきます。
統合を成功させるには、いきなり文書を一本化するのではなく、段階を踏んで進めることが重要です。
共通要素を洗い出して整理するステップ
最初に行うべきは、各規格の要求事項を比較し、共通する部分を洗い出す作業です。
文書管理の方法や記録の保存ルール、教育訓練の仕組みなどは、多くの規格で共通していることが多くあります。
共通部分を先に統合し、規格特有の要求事項は個別のルールとして残しておくのが基本的な進め方でしょう。
重複作業の洗い出しこそが、統合の第一歩と言えます。
方針や目標を一元化する進め方
次に取り組みたいのが、経営方針や目標設定の一元化です。
品質方針、環境方針、安全衛生方針をばらばらに掲げるのではなく、統合方針としてひとつにまとめる企業も増えています。
経営層が一貫したメッセージを発信できるようになる点は、大きな利点でしょう。
現場の従業員にとっても、覚えるべき方針がひとつにまとまることで理解しやすくなります。
内部監査や文書体系を統合する手順
最後に、内部監査の仕組みと文書体系を統合していきます。
規格ごとに別々の監査員が別日程で監査を行っていた体制を、統合監査として一度にまとめて実施する形に変えるのです。
例えば、これまで品質監査を4月、環境監査を7月、安全衛生監査を10月と分けて実施していた企業が、統合監査として年1回にまとめて実施するケースがあります。
この場合、監査対応にかかる工数はおよそ半分近くまで削減できると言われています。
文書についても、マニュアルや手順書のフォーマットを統一し、共通の管理番号で運用することで、検索性や更新のしやすさが向上します。
マネジメントシステム統合の主なメリット
続いてはマネジメントシステム統合によって得られる主なメリットを確認していきます。
統合には手間がかかる一方で、それを上回るメリットが数多く存在します。
コスト削減と業務効率化につながる理由
統合の最大のメリットは、やはりコスト削減でしょう。
審査機関への支払い費用や、監査対応にかかる人件費を圧縮できる点は見逃せません。
複数の規格を別々に運用していた場合と比較すると、統合後はどれくらいの差が生まれるのでしょうか。
以下の表で、統合前と統合後の違いをイメージしてみましょう。
| 項目 | 統合前 | 統合後 |
|---|---|---|
| 文書管理 | 規格ごとに個別作成 | 共通フォーマットで一元管理 |
| 内部監査 | 規格ごとに別日程で実施 | 統合監査として同時実施 |
| 管理責任者 | 規格ごとに選任 | 統合管理責任者に一本化 |
| 審査対応 | 審査機関ごとに個別対応 | まとめて審査を受審 |
このように整理すると、統合によって省ける工数の多さが一目瞭然です。
一元管理による情報共有のスムーズ化
マネジメントシステムを統合すると、部門をまたいだ情報共有もスムーズになります。
品質部門と環境部門、安全衛生部門がそれぞれ別々に情報を抱え込んでいた状態から抜け出せるのです。
一元管理による情報の見える化は、経営判断のスピードにも直結する重要な要素でしょう。
問題が発生した際にも、関連部門がすぐに情報を共有できる体制は心強いものです。
監査対応や認証維持の負担軽減
認証を維持し続けるためには、毎年の定期審査や更新審査への対応が欠かせません。
統合していれば、審査機関とのやり取りも一本化でき、担当者の負担は大きく軽くなります。
統合マネジメントシステムを導入した企業の多くが、審査対応にかかる年間工数を大幅に削減できたと報告しています。
特に、中小規模の企業ほど専任担当者を置く余裕がないため、統合による恩恵は大きいと言えるでしょう。
統合時に気をつけたいデメリットや注意点
続いては統合を進める際に気をつけたいデメリットや注意点を確認していきます。
メリットばかりに目を向けてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることもあるため注意が必要です。
規格ごとの違いを無視すると起こるトラブル
ISO9001とISO14001、ISO45001は共通点が多い一方で、それぞれ独自の要求事項も存在します。
共通化を急ぐあまり、規格固有の要求事項まで一緒くたにしてしまうと、審査で指摘を受けるおそれがあるでしょう。
統合はあくまで効率化の手段であり、要求事項そのものを緩めることではありません。
現場の混乱を防ぐための周知方法
統合によって業務フローが変わると、現場の従業員が戸惑ってしまうことは少なくありません。
新しい文書体系や監査スケジュールについて、事前に丁寧な説明会を開くことが欠かせないでしょう。
変更点を一方的に通達するだけでは、現場に根づかないものです。
質問を受け付ける窓口を設けるなど、双方向のコミュニケーションを意識してみてください。
統合スケジュールを詰め込みすぎるリスク
短期間ですべてを統合しようとすると、担当者に過度な負荷がかかってしまいます。
方針の統合、文書の統合、監査の統合と、優先順位をつけて段階的に進めるのが現実的でしょう。
無理のない統合スケジュールを組むことが、結果的に成功への近道になります。
ISOにおける統合マネジメントシステムの位置づけ
続いてはISOの体系における統合マネジメントシステムの位置づけを確認していきます。
統合がしやすくなった背景には、ISO自体の規格構成の変化があります。
ISOが示すハイレベルストラクチャーとの関係
ISOは近年発行されるマネジメントシステム規格に対して、共通の枠組みを採用しています。
この共通枠組みはハイレベルストラクチャーと呼ばれ、章立てや用語の定義が規格間で統一される仕組みです。
ISO9001もISO14001もISO45001も、このハイレベルストラクチャーに基づいて構成されています。
だからこそ、規格をまたいだ統合が以前よりも格段にやりやすくなったのです。
統合を後押しする附属書SLの役割
ハイレベルストラクチャーの根拠となっているのが、ISOの附属書SLと呼ばれる文書です。
附属書SLでは、マネジメントシステム規格に共通して盛り込むべき章立てや要求事項の枠組みが定められています。
この共通の土台があるからこそ、企業側は複数の規格を無理なく統合しやすい環境が整っているのでしょう。
認証機関を選ぶ際に確認したいポイント
統合マネジメントシステムを構築する際には、審査を担当する認証機関選びも重要なポイントです。
複数規格の統合審査に対応しているか、事前に確認しておく必要があるでしょう。
すべての認証機関が統合審査に慣れているわけではありません。
過去の統合審査実績や、審査員の対応範囲をしっかり確認してから契約することをおすすめします。
統合マネジメントシステムを導入する際の進め方と成功のコツ
続いては統合マネジメントシステムを実際に導入する際の進め方と成功のコツを確認していきます。
制度としての仕組みだけでなく、人と組織の動かし方も成功の鍵を握っています。
経営層を巻き込むことの重要性
統合プロジェクトは、担当者だけで完結させられるものではありません。
経営層が統合の意義を理解し、方針として明確に打ち出すことが不可欠でしょう。
トップダウンでの後押しがあることで、各部門の協力も得やすくなります。
現場担当者との連携を深める工夫
実際に日々の業務を回しているのは現場の担当者です。
統合の設計段階から現場の意見を取り入れることで、実務に即したルール作りができるでしょう。
トップダウンとボトムアップ、どちらかに偏らないバランスが求められます。
現場を巻き込んだ統合設計こそが、運用が定着するかどうかを左右するのです。
段階的な導入計画を立てるポイント
統合は一度にすべてを終わらせる必要はありません。
まずは方針の統合から始め、次に文書、そして監査という順番で段階的に進める企業も多く見られます。
ある製造業の企業では、初年度に方針と目標を統合し、翌年に文書体系を統合、三年目にようやく統合監査へ移行するという三段階の計画を実行しました。
結果として、現場の混乱を最小限に抑えながら統合を完了できたそうです。
無理のないペースで進めることが、長期的な定着につながるのではないでしょうか。
まとめ
ここまで、マネジメントシステムの統合とは?方法やメリットも!というテーマで、基本的な考え方から具体的な統合方法、メリットや注意点まで解説してきました。
統合マネジメントシステムとは、複数のISO規格をひとつの仕組みで運用することであり、コスト削減や業務効率化、一元管理による情報共有の円滑化といった多くのメリットをもたらします。
一方で、規格ごとの違いを無視した強引な統合や、現場への周知不足はトラブルの原因になりかねません。
経営層と現場担当者が協力しながら、段階的にスケジュールを組んで進めることが成功の近道でしょう。
これから統合を検討している方は、まず共通要素の洗い出しから始めてみてはいかがでしょうか。