化学反応

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応式を徹底解説!二酸化炭素が発生する仕組み

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私たちの身の回りには、クエン酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)の反応を利用した製品が数多く存在しています。発泡入浴剤のシュワシュワとした泡、炭酸飲料を作る実験、掃除用の発泡洗浄剤など、すべてこの2つの物質が反応して二酸化炭素が発生する現象を利用しているのです。

この反応は、弱酸であるクエン酸と弱塩基である炭酸水素ナトリウムの中和反応であり、生成した炭酸が不安定で分解するため、二酸化炭素が発生します。身近でありながら、化学の基本的な概念を理解するのに最適な反応なのです。

この記事では、クエン酸と炭酸水素ナトリウムの化学反応式について、基本的な反応の仕組みから二酸化炭素発生のメカニズム、反応式の作り方と覚え方、実験時の観察ポイント、日常生活での応用まで詳しく解説していきます。

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応式の基本

それではまず、反応式の基本について解説していきます。

化学反応式の全体像

クエン酸と炭酸水素ナトリウムが反応すると、クエン酸ナトリウム、水、二酸化炭素が生成されます。この反応を化学反応式で表すと次のようになるでしょう。

C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ → Na₃C₆H₅O₇ + 3H₂O + 3CO₂
(クエン酸)(炭酸水素Na)(クエン酸Na)(水)(二酸化炭素)

この式から、クエン酸1分子と炭酸水素ナトリウム3分子が反応して、クエン酸ナトリウム、水3分子、二酸化炭素3分子が生成されることが分かります。

係数の「3」が炭酸水素ナトリウム、水、二酸化炭素についている理由は、クエン酸が3価の酸であり、3つのカルボキシ基(-COOH)を持っているためです。それぞれのカルボキシ基が炭酸水素ナトリウムと反応するため、3倍の量が必要になるのです。

発生する泡の正体が二酸化炭素(CO₂)です。この気体が水中や溶液中で泡となって放出されることで、シュワシュワという感覚や音が生まれます。

反応に関わる物質の性質

この反応に関わる各物質の特徴を整理してみましょう。

物質名 化学式 主な特徴
クエン酸 C₆H₈O₇ 白色の結晶、弱酸、3価の酸、レモンなどに含まれる
炭酸水素ナトリウム NaHCO₃ 白色の粉末、弱塩基、重曹、ベーキングソーダ
クエン酸ナトリウム Na₃C₆H₅O₇ 白色の結晶、水溶性の塩
二酸化炭素 CO₂ 無色無臭の気体、炭酸ガス

クエン酸は、柑橘類や梅干しなどに含まれる有機酸です。3つのカルボキシ基を持つため、3価の酸として働きます。水によく溶け、爽やかな酸味を持つため、食品添加物としても広く使われているのです。

炭酸水素ナトリウムは、別名を重曹やベーキングソーダとも呼ばれる物質です。弱塩基性を示し、水溶液のpHは約8.3になります。掃除や料理、消臭など、家庭で多用途に使える便利な物質でしょう。

クエン酸ナトリウムは、中和反応で生成される塩であり、食品添加物や医薬品として利用されています。血液凝固を防ぐ作用があるため、輸血用血液の保存剤としても使用されるのです。

弱酸と弱塩基の中和反応

この反応は、弱酸と弱塩基の中和反応に分類されます。

中和反応とは、酸と塩基が反応して塩と水を生成する反応のことです。一般的な中和反応の式は次のように表されます。

酸 + 塩基 → 塩 + 水

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応も、この基本パターンに従います。ただし、この反応では水だけでなく二酸化炭素も発生するという特徴があるのです。

弱酸と弱塩基の特徴
・クエン酸:弱酸(部分的にしか電離しない)
・炭酸水素ナトリウム:弱塩基(弱い塩基性を示す)
・反応は穏やか(強酸・強塩基ほど激しくない)
・生成した炭酸が分解して二酸化炭素が発生

強酸(塩酸や硫酸)と強塩基(水酸化ナトリウム)の中和反応と比べると、この反応は比較的穏やかに進行します。そのため、入浴剤や食品など、人体に直接触れる製品にも安全に使用できるのです。

二酸化炭素が発生する仕組み

続いては、二酸化炭素が発生する理由について確認していきます。

なぜ二酸化炭素が発生するのか

この反応で二酸化炭素が発生する理由を、段階的に見ていきましょう。

まず、クエン酸のカルボキシ基(-COOH)と炭酸水素ナトリウムが反応します。炭酸水素ナトリウムは水溶液中で次のように電離しています。

NaHCO₃ → Na⁺ + HCO₃⁻
(炭酸水素イオン)

クエン酸の水素イオン(H⁺)が、炭酸水素イオン(HCO₃⁻)と反応して炭酸(H₂CO₃)を生成します。

H⁺ + HCO₃⁻ → H₂CO₃
(炭酸)

そして、生成した炭酸が不安定であるため、すぐに分解して二酸化炭素と水になるのです。

H₂CO₃ → H₂O + CO₂↑

炭酸は非常に不安定な物質であり、水溶液中でほとんど存在できません。そのため、生成するとすぐに分解して二酸化炭素が気体として放出されるのです。

炭酸の不安定性と分解

炭酸(H₂CO₃)が不安定である理由を詳しく見てみましょう。

炭酸は理論上存在する物質ですが、実際には水溶液中でほぼ完全に二酸化炭素と水に分解しています。炭酸分子として存在している割合は1%未満なのです。

炭酸の分解
H₂CO₃ ⇄ H₂O + CO₂この平衡は大きく右側(分解側)に偏っている。そのため、炭酸が生成されるとすぐに二酸化炭素が放出される。

炭酸飲料のシュワシュワも、同じ原理です。水に溶けている二酸化炭素は、ほとんどがCO₂分子のままで存在し、わずかに炭酸(H₂CO₃)になっていますが、すぐに分解して二酸化炭素に戻ります。

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応では、この炭酸の分解が連続的に起こるため、激しく泡が発生するのです。発生した二酸化炭素は水に溶けきれず、気泡として放出されます。

温度も重要な要因です。温度が高いほど、二酸化炭素の溶解度が下がり、より多くの気泡が発生します。これが、お風呂のお湯に入浴剤を入れると激しく泡が出る理由なのです。

クエン酸ナトリウムの生成

反応の結果、クエン酸ナトリウム(Na₃C₆H₅O₇)という塩が生成されます。

クエン酸は3つのカルボキシ基を持つため、3つのナトリウムイオンと結合できます。完全に中和されると、3つの水素がすべてナトリウムに置き換わった形になるのです。

クエン酸の構造
COOH
|
HOOC−CH₂−C−CH₂−COOH
|
OH3つのカルボキシ基(COOH)を持つ

3つすべてがナトリウム塩になる

クエン酸三ナトリウム Na₃C₆H₅O₇

クエン酸ナトリウムは水によく溶ける白色の結晶です。食品添加物として、酸味料やpH調整剤、乳化剤などに使用されています。また、血液の凝固を防ぐ作用があるため、医療分野でも重要な物質なのです。

反応後の溶液を蒸発させると、クエン酸ナトリウムの結晶が得られます。この結晶は無毒であり、食品や化粧品にも安全に使用できる物質です。

反応式の作り方と覚え方のコツ

続いては、反応式の作り方と効率的な覚え方について見ていきましょう。

化学反応式を導く方法

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応式を作る際は、段階的に考える方法が理解しやすいでしょう。

反応式の導出手順ステップ1:クエン酸が3価の酸であることを確認
C₆H₈O₇(3つのCOOHを持つ)

ステップ2:中和に必要な炭酸水素ナトリウムの量を決定
3つのCOOHに対して3つのNaHCO₃が必要

ステップ3:生成物を考える
・クエン酸ナトリウム:Na₃C₆H₅O₇
・水:H₂O
・二酸化炭素:CO₂

ステップ4:係数を調整
C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ → Na₃C₆H₅O₇ + 3H₂O + 3CO₂

ステップ5:原子数を確認
左辺:C 9個、H 11個、O 16個、Na 3個
右辺:C 9個、H 11個、O 16個、Na 3個
→バランスが取れている

この方法で考えると、なぜ炭酸水素ナトリウムの係数が3になるのかが明確に分かります。クエン酸が3価の酸であるため、完全に中和するには3倍の量が必要になるのです。

反応式を覚えるポイント

化学反応式を効率よく覚えるには、いくつかのコツがあります。

覚え方のポイント
1. クエン酸は3価の酸(3つのCOOHを持つ)
2. 炭酸水素ナトリウムも3分子必要
3. 二酸化炭素が3分子発生(泡の正体)
4. 水も3分子生成
5. 係数比は 1:3:1:3:3

「クエン酸1個に対して重曹3個で、二酸化炭素が3個出る」と覚えると分かりやすいでしょう。

また、実際の現象と関連付けて覚えることも効果的です。入浴剤を水に入れたときのシュワシュワとした泡を思い浮かべれば、二酸化炭素が発生する反応だと記憶しやすくなります。

よくある間違いと注意点

この反応式を書く際、生徒がよく間違えるポイントがいくつかあります。

よくある間違いパターン
× C₆H₈O₇ + NaHCO₃ → Na₃C₆H₅O₇ + H₂O + CO₂(係数が合わない)
× 二酸化炭素を書き忘れる
× 水を書き忘れる
× クエン酸ナトリウムの化学式を間違える
× 係数を1:1:1:1:1にしてしまう
○ C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ → Na₃C₆H₅O₇ + 3H₂O + 3CO₂(正しい)

最も多い間違いは、係数を正しく書けないことです。クエン酸が3価の酸であることを理解していないと、炭酸水素ナトリウムの係数を1にしてしまいがちです。

また、二酸化炭素や水を書き忘れるケースもあります。中和反応では、塩だけでなく水や気体も生成されることを忘れないようにしましょう。

反応式を書いた後は、必ずC、H、O、Naの原子数が左辺と右辺で一致しているか確認する習慣をつけることが大切です。

実験での観察ポイントと応用

続いては、実際の実験や応用について確認していきます。

実験時の観察事項と現象

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応実験では、印象的な現象が観察できます。

クエン酸の粉末と炭酸水素ナトリウムの粉末を混ぜただけでは、ほとんど反応は起こりません。しかし水を加えると、激しく泡が発生します。

観察できる現象
1. 水を加える前:変化なし
2. 水を加えた直後:激しく泡が発生
3. シュワシュワという音
4. 溶液が冷たくなる(吸熱反応)
5. 発生した気体は石灰水を白濁させる(CO₂の確認)
6. 反応後は透明な溶液が残る
7. 溶液は弱酸性〜中性を示す

発生する泡の正体が二酸化炭素であることは、石灰水を使って確認できます。発生した気体を石灰水に通すと、白く濁ることで二酸化炭素であることが分かるのです。

興味深いのは、この反応が吸熱反応であることです。反応が進むと溶液の温度が下がります。手で触れると、ひんやりと冷たく感じられるでしょう。

水の温度も反応速度に影響します。温度が高いほど反応が速く進み、より激しく泡が発生します。また、高温では二酸化炭素の溶解度が低いため、より多くの気泡が観察できるのです。

粉末の細かさも重要です。粒子が細かいほど表面積が大きくなり、反応が速く進みます。市販の入浴剤では、適度な粒度に調整することで、発泡時間をコントロールしているのです。

発泡入浴剤の仕組み

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応は、発泡入浴剤の主要な原理となっています。

市販の発泡入浴剤(バスボムなど)には、クエン酸と炭酸水素ナトリウムが主成分として含まれています。製品を乾燥状態に保つことで、使用するまで反応が起こらないようにしているのです。

発泡入浴剤の構成
・クエン酸(酸性成分)
・炭酸水素ナトリウム(塩基性成分)
・結合剤(固形化するための材料)
・香料、色素
・保湿成分などお湯に入れると水分で反応が始まり、二酸化炭素の泡が発生する。

発泡入浴剤の効果は、単なる見た目や音だけではありません。発生した二酸化炭素の泡が皮膚に付着することで、血管が拡張して血行が促進されると言われています。

また、反応後に残るクエン酸ナトリウムは、お湯を弱酸性〜中性に保ち、肌に優しい状態にします。クエン酸自体にも角質を柔らかくする効果があるとされているのです。

手作り入浴剤を作る実験も人気があります。クエン酸と炭酸水素ナトリウムを1:2の質量比で混ぜ、少量の水で固めて乾燥させれば、簡単なバスボムができあがります。

日常生活での応用例

この反応は、入浴剤以外にも様々な場面で応用されています。

日常生活での応用例
・発泡入浴剤(バスボム)
・炭酸飲料の手作り実験
・発泡洗浄剤(トイレ、排水管)
・ベーキングパウダー(膨張剤)
・消火器(一部のタイプ)
・理科実験教材
・DIY火山モデル

炭酸飲料を手作りする実験では、水にクエン酸と炭酸水素ナトリウムを加えて、二酸化炭素を発生させます。砂糖や香料を加えれば、簡易的な炭酸飲料ができあがるのです。

発泡洗浄剤は、トイレや排水管の掃除に使われます。クエン酸の酸性で汚れを溶かし、発生する二酸化炭素の泡で物理的に汚れを浮かせる効果があるのです。

子供向けの科学実験では、火山の噴火を再現するモデルでよく使われます。火山の模型の中にこの2つの物質を入れて水を加えると、溶岩に見立てた泡が噴き出す様子を観察できるのです。

ベーキングパウダーにも、炭酸水素ナトリウムと酸性の物質(クエン酸や酒石酸など)が含まれています。生地に水分が加わると反応して二酸化炭素が発生し、パンやケーキを膨らませるのです。

このように、私たちの身近なところで、この化学反応が広く活用されていることが分かるでしょう。

まとめ

クエン酸と炭酸水素ナトリウムの反応は、弱酸と弱塩基の中和反応であり、二酸化炭素が発生する身近な化学反応です。

反応式「C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ → Na₃C₆H₅O₇ + 3H₂O + 3CO₂」は、クエン酸1分子と炭酸水素ナトリウム3分子が反応して、クエン酸ナトリウム、水、二酸化炭素が生成されることを示しています。クエン酸が3価の酸であるため、係数が3になるのです。

二酸化炭素が発生する理由は、中和反応で生成した炭酸が不安定で、すぐに分解するためです。この気体が水中で泡となって放出されることで、シュワシュワという特徴的な現象が生まれます。

実験では、水を加えた瞬間に激しく泡が発生する様子が観察でき、吸熱反応であることも確認できます。この反応は、発泡入浴剤、炭酸飲料の手作り、発泡洗浄剤など、日常生活の様々な場面で応用されているのです。

身近な化学反応を通じて、中和反応や気体の発生、吸熱反応などの化学の基本概念を理解し、科学への興味をさらに深めていってください。