ラダー図を読み書きするためには、ラダー図に登場するさまざまな記号の意味と使い方を正確に理解することが前提となります。
ラダー図の記号はA接点・B接点・コイルという基本的なものから始まり、タイマー・カウンター・比較演算・データ転送命令など非常に多くの種類があります。
また三菱電機・オムロン・シーメンスなどのPLCメーカーによって記号の表記が一部異なる場合があり、メーカー固有の記号体系を理解することも実務では重要です。
この記事では、ラダー図の記号一覧について基本的な接点記号・コイル記号から始め、タイマー・カウンター・演算命令・データ転送命令・メーカー固有記号まで体系的に解説していきます。
ラダー図の記号を一から整理したい方も、特定の命令の意味を確認したい方もぜひ参考にしてください。
ラダー図の基本記号はA接点・B接点・出力コイルの3種類を最初に完全に理解することが重要!
それではまず、ラダー図の最も基本的な記号であるA接点・B接点・出力コイルについて解説していきます。
ラダー図の記号体系と規格について
ラダー図の記号はIEC 61131-3規格によって国際標準として定義されており、接点記号・コイル記号・ファンクションブロック記号の体系で構成されています。
ただし国際規格があっても各PLCメーカーが独自の拡張記号や表記方法を採用しているため、基本記号は共通でも一部の応用命令の記号はメーカーによって異なります。
日本国内で最もシェアが高い三菱電機(MELSECシリーズ)の記号体系はGX Worksプログラミングソフトウェアで確認できます。
また第2位のオムロン(SysmacシリーズやCSシリーズ)も独自の記号体系を持っています。
基本的な接点・コイル記号については各メーカー間でほぼ共通しているため、まず基本記号を完全に習得してからメーカー固有の応用命令へと学習を進めることが効率的です。
A接点(ノーマルオープン接点)の記号と動作詳細
A接点はラダー図の中で最も頻繁に使用される基本記号のひとつです。
| 名称 | 英語表記 | 記号形式(テキスト表現) | 動作説明 |
|---|---|---|---|
| A接点(ノーマルオープン接点) | Normally Open Contact (NO) | ─┤ ├─ | 対応デバイスがON(1)のとき、接点が閉じて電流が通過する |
A接点の「A」はドイツ語の「Arbeitskontakt(動作接点)」に由来しており、電気が通じたとき(コイルが励磁されたとき)に動作して閉じる接点を意味します。
A接点は「平常時(デバイスOFF時)は開いている」という状態がデフォルトです。
そのため英語では「ノーマルオープン(Normally Open)」と呼ばれます。
A接点の使用例としては「押しボタンが押されたとき(X000=ON)、対応するA接点が閉じてコイルをONにする」という基本的な起動条件の表現が挙げられます。
B接点(ノーマルクローズ接点)の記号と動作詳細
B接点はA接点の論理を反転させた接点であり、安全回路・インターロック・否定条件の表現に不可欠な記号です。
| 名称 | 英語表記 | 記号形式(テキスト表現) | 動作説明 |
|---|---|---|---|
| B接点(ノーマルクローズ接点) | Normally Closed Contact (NC) | ─┤/├─(斜線入り) | 対応デバイスがOFF(0)のとき、接点が閉じて電流が通過する |
B接点の「B」はドイツ語の「Bremskontakt(制動接点)」に由来しており、電気が通じたとき(コイルが励磁されたとき)に動作して開く接点を意味します。
B接点は「平常時(デバイスOFF時)は閉じている」という状態がデフォルトです。
英語では「ノーマルクローズ(Normally Closed)」と呼ばれます。
B接点の代表的な使用場面として、非常停止スイッチの接続があります。
非常停止スイッチにはB接点(NC接点)を使うことで、配線が断線した場合も非常停止と同じ動作(回路開放による停止)が得られる「フェールセーフ」設計が実現できます。
出力系の記号(コイルとファンクション)の詳細
続いては、ラダー図の出力側に配置されるコイル系の記号について確認していきます。
基本的な出力コイルの記号と使い方
出力コイルはラダー図の各ラングの右端(右母線の直前)に配置され、ラングの論理条件が成立したとき(電流が流れたとき)に対応するデバイスをONにします。
| 名称 | 記号形式 | 動作説明 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 出力コイル(OUT命令) | ─( )─ | 条件成立でデバイスをON・不成立でOFF | スキャンごとに条件に応じてON/OFFが変化する |
| セットコイル(SET命令) | ─(S)─ | 条件成立でデバイスをONにし、以降保持する | リセット命令が来るまでOFFにならない(ラッチ) |
| リセットコイル(RST命令) | ─(R)─ | 対応デバイスをOFFにする | SETで保持されたデバイスを解除する際に使用 |
通常の出力コイル(OUT命令)はスキャンのたびに条件に応じてON/OFFが変化しますが、セット・リセットコイルは「ラッチ(Latch)型」と呼ばれ、一度セットされたらリセット命令が実行されるまでON状態が保持されます。
セット・リセット型はインターロック回路・シーケンス制御の工程管理・エラーフラグ管理などに広く使われています。
立ち上がり・立ち下がり検出コイルと反転出力
実際のラダー図では、デバイスのON/OFFの状態だけでなく「変化の瞬間(エッジ)」を検出する記号も頻繁に使われます。
| 名称 | 記号形式 | 動作説明 |
|---|---|---|
| 立ち上がり検出接点(PLS接点) | ─┤↑├─ または ─┤P├─ | デバイスがOFF→ONになった瞬間(1スキャンのみ)閉じる |
| 立ち下がり検出接点(PLF接点) | ─┤↓├─ または ─┤N├─ | デバイスがON→OFFになった瞬間(1スキャンのみ)閉じる |
| 立ち上がり検出コイル(PLS命令) | ─(PLS M000)─ | コイルへの入力がOFF→ONになった瞬間、指定デバイスを1スキャンONにする |
立ち上がり検出は「ボタンが押された瞬間だけ1回実行したい処理」に使われます。
たとえばカウンターのカウントアップ、1回だけ実行するデータ転送処理などが典型的な用途です。
反転出力(NOT出力)と特殊コイルの種類
反転出力コイル(INV命令)は入力条件の論理を反転させて出力するコイルです。
入力条件がONのときOFFを出力し、OFFのときONを出力します。
これはNOT論理をコイル側で実現する方法であり、B接点を使うのと論理的には等価ですが設計の表現方法として使い分けます。
その他の特殊コイルとして、「即時出力コイル(即座に出力端子に反映)」「出力禁止コイル」などメーカー固有のコイル命令も存在します。
タイマー・カウンターの記号と動作詳細
続いては、ラダー図においてタイミング制御と計数制御を担うタイマーとカウンターの記号について確認していきます。
オンディレイタイマーの記号と動作
オンディレイタイマー(TON:Timer On-Delay)は最も基本的なタイマーであり、入力条件がONになってから設定時間経過後に出力接点をONにします。
オンディレイタイマーの記号と動作
記号(三菱電機形式):左母線 ─┤入力条件├─(T0 K50)─ 右母線
T0:タイマーデバイス番号、K50:設定値(0.1秒単位で5.0秒)
動作タイムチャート
入力条件:OFF → ON → OFF
T0の現在値:0 → カウントアップ → 50で停止(タイムアップ) → 0にリセット
T0接点(A接点):OFF → OFF(カウント中) → ON(タイムアップ後) → OFF(入力OFFでリセット)
IEC規格形式(TONファンクションブロック)
入力:IN(起動条件)・PT(設定時間)
出力:Q(タイムアップ出力)・ET(経過時間)
オフディレイタイマーの記号と動作
オフディレイタイマー(TOF:Timer Off-Delay)は入力条件がOFFになってから設定時間経過後に出力をOFFにするタイマーです。
入力条件がONになると出力は即座にONになり、入力がOFFになってから設定時間経過後に出力がOFFになります。
モーターの冷却ファンの遅延停止(モーター停止後も一定時間ファンを回し続ける)などの用途に使われます。
三菱電機のPLCではオフディレイタイマーはソフト的に構成することが多く、T命令に加えてTOF専用の命令が用意されているメーカーもあります。
カウンターの記号と動作
カウンターは入力信号の立ち上がり(OFF→ON変化)をカウントし、設定値に達したら出力をONにする機能です。
| カウンター種類 | 三菱電機デバイス | 動作説明 |
|---|---|---|
| アップカウンター(CTU) | C0〜C99等 | カウント入力のたびにカウント値が+1、設定値に達したら出力ON |
| ダウンカウンター(CTD) | 一部機種でサポート | 設定値からカウントダウンして0になったら出力ON |
| アップダウンカウンター(CTUD) | 一部機種でサポート | カウントアップとダウンの両方の入力を持つ |
| 高速カウンター | C235〜C255等(三菱) | 通常スキャンより高速なパルス(エンコーダー等)をカウント |
演算・比較命令の記号一覧
続いては、ラダー図における演算命令と比較命令の記号について確認していきます。
比較命令の記号と使い方
比較命令はデータの大小・等値比較を行い、比較結果が真のときに接点を閉じる命令です。
ラダー図では比較命令を接点として表現し、論理的には接点と同じように使用できます。
| 比較命令 | 三菱電機での記号 | 意味・動作 |
|---|---|---|
| 等値比較(=) | ─[= D0 K10]─ | D0の値がK10(10)と等しいとき接点が閉じる |
| 不等値比較(<>) | ─[<> D0 K10]─ | D0の値がK10と異なるとき接点が閉じる |
| 大なり比較(>) | ─[> D0 K10]─ | D0の値がK10より大きいとき接点が閉じる |
| 小なり比較(<) | ─[< D0 K10]─ | D0の値がK10より小さいとき接点が閉じる |
| 以上比較(>=) | ─[>= D0 K10]─ | D0の値がK10以上のとき接点が閉じる |
| 以下比較(<=) | ─[<= D0 K10]─ | D0の値がK10以下のとき接点が閉じる |
比較命令はアナログセンサーの閾値判定・カウンター値の条件チェック・製品寸法の合否判定など多くの場面で使われます。
算術演算命令の種類と記号
ラダー図では算術演算命令を使ってデータの計算が可能です。
三菱電機PLCの代表的な算術演算命令を示します。
算術演算命令の主な種類(三菱電機)
加算命令 ADD:ADD D0 D1 D2(D0+D1の結果をD2に格納)
減算命令 SUB:SUB D0 D1 D2(D0−D1の結果をD2に格納)
乗算命令 MUL:MUL D0 D1 D2(D0×D1の結果をD2に格納)
除算命令 DIV:DIV D0 D1 D2(D0÷D1の商をD2・剰余をD3に格納)
インクリメント(1加算)INC:INC D0(D0の値に1を加算)
デクリメント(1減算)DEC:DEC D0(D0の値から1を減算)
データ転送命令(MOV・DMOV)の記号
データ転送命令はデータをあるデバイスから別のデバイスにコピーするための命令です。
MOV命令は16ビットデータ(−32768〜32767の整数値)の転送に使われます。
たとえば「MOV K100 D0」でD0に定数100を書き込みます。
DMOV命令は32ビットデータ(ダブルワード)の転送に使われ、32ビット整数・浮動小数点数などの大きなデータを扱う場合に使用します。
タイマーやカウンターの設定値を動的に変更したり、アナログ入力値を保存したり、演算結果を出力デバイスに渡したりする場面でMOV命令は頻繁に使われます。
三菱電機などメーカー固有の記号と特徴
続いては、主要なPLCメーカー固有の記号と開発環境の特徴について確認していきます。
三菱電機(MELSEC)の特有記号と命令体系
三菱電機のPLC(MELSECシリーズ)では、IEC 61131-3の基本記号に加えて多くの固有命令が用意されています。
| 命令カテゴリー | 代表的な命令 | 概要 |
|---|---|---|
| プログラム制御 | CJ・CALL・FEND | 条件ジャンプ・サブルーチン呼び出し |
| 論理演算 | WAND・WOR・WXOR | ワード単位の論理積・論理和・排他的論理和 |
| ビット処理 | BSET・BRST・TEST | ワードデータの指定ビット操作 |
| 文字列処理 | SSTR・$MOV・$+ | 文字列の比較・転送・連結 |
| 通信命令 | IVCK・SLMP系命令 | インバーター・シリアル機器との通信 |
| 特殊計算 | SIN・COS・SQR・SQRT | 三角関数・平方根など数学演算 |
三菱電機の命令体系は「基本命令」と「応用命令(FNC番号で管理)」に大別されており、応用命令はFNC番号(FNC12:MOV、FNC20:ADD など)で管理されていましたが、GX Works3ではより直感的な命令名で参照できるようになっています。
オムロン・シーメンスの記号の違い
オムロンのPLC(CSシリーズ・CJシリーズ・NXシリーズなど)では基本的な接点・コイル記号は三菱電機と共通ですが、応用命令の名称・書き方が異なります。
オムロンではタイマーは「TIM」、カウンターは「CNT」という命令名を使い、設定値の入力方法も若干異なります。
シーメンス(SIMATICシリーズ)のラダー言語ではIEC 61131-3に準拠しつつも、接点記号の横に表示されるアドレス表記(I0.0・Q0.0・M0.0など)や命令ボックスの形式がTIA Portalという開発環境に最適化された独自のスタイルを持っています。
記号一覧表の活用方法と学習のポイント
ラダー図の記号を効率よく習得するための実践的なポイントを説明します。
ラダー図記号の効率的な習得方法
ステップ1:まずA接点・B接点・出力コイル・セット・リセットの5種類だけを完全に習得する
ステップ2:タイマーとカウンターを使った基本回路(自己保持・フリッカー・遅延起動)を実際に組んで動作を確認する
ステップ3:比較命令・演算命令・データ転送命令を実際の問題(製品の個数管理・温度監視など)に当てはめて使う
ステップ4:使用するPLCメーカーのプログラミングマニュアルと命令一覧を参照しながら固有命令を覚えていく
特にステップ1〜2の基本5種記号と基本回路の習得が、その後のすべての学習の基盤となります。
まとめ
ラダー図の最も基本的な記号はA接点(ノーマルオープン)・B接点(ノーマルクローズ)・出力コイルの3種類であり、これらの正確な理解がすべての学習の出発点となります。
セットコイル・リセットコイルは一度ONにしたら保持し続ける「ラッチ型」の出力命令であり、工程管理やエラーフラグ管理に活用されます。
タイマーはオンディレイ(TON)・オフディレイ(TOF)の2種類が基本であり、カウンターはカウントアップ・カウントダウン・高速カウンターなどの種類があります。
比較命令・演算命令・データ転送命令はPLCの高度な制御機能を実現するために不可欠であり、これらをラダー図で使いこなすことで幅広い制御要件に対応できます。
三菱電機・オムロン・シーメンスなど各メーカーで基本記号は共通ですが応用命令には固有の書き方があるため、使用するメーカーのマニュアルで確認することが重要です。
記号一覧を頭に入れるだけでなく実際にプログラムを組んで動作を確認することが、ラダー図の記号の真の習得につながるでしょう。