化学物質の物性データを調べる際、沸点や融点・密度・比重・分子量といった基本情報は非常に重要です。
今回取り上げるのは、柑橘系の香りで知られるリモネン(Limonene)という化合物。
リモネンはレモンやオレンジなどの精油に多く含まれるモノテルペン系炭化水素であり、食品・香料・洗浄剤・医薬品など幅広い分野で活用されています。
本記事では「リモネンの沸点は?融点・密度・比重・分子量・用途も解説【公的機関のリンク付き】」というテーマのもと、リモネンの各種物性データをわかりやすくまとめました。
公的機関の信頼性の高いデータベースも紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
リモネンの沸点は約176℃、融点・密度・比重・分子量などの物性まとめ
それではまず、リモネンの基本的な物性データについて解説していきます。
リモネンの最も重要な物性のひとつが沸点(約176℃)です。
常圧(1気圧)下における沸点はおおよそ175〜177℃の範囲で報告されており、文献によって若干の差異がある点には注意が必要です。
融点はマイナス74℃前後であり、常温では液体として存在する化合物です。
密度は約0.84 g/cm³、比重も同様に0.84程度(水=1基準)であることから、水よりも軽い液体であることがわかります。
リモネンは常温・常圧で無色〜淡黄色の液体であり、沸点は約176℃、融点は約−74℃、密度は約0.84 g/cm³という物性を持ちます。
分子量は136.23 g/molであり、モノテルペンに分類されるシクロヘキセン誘導体です。
以下の表に、リモネンの主要な物性データを整理しました。
| 物性項目 | 値・概要 |
|---|---|
| 化学式 | C₁₀H₁₆ |
| 分子量 | 136.23 g/mol |
| 沸点 | 約175〜177℃(常圧) |
| 融点 | 約−74℃ |
| 密度 | 約0.840 g/cm³(20℃) |
| 比重(対水) | 約0.84 |
| 屈折率 | 約1.471(20℃) |
| 引火点 | 約46〜48℃ |
| 外観 | 無色〜淡黄色の液体 |
| 臭気 | 柑橘系(レモン・オレンジ様) |
| 水溶性 | 水にほぼ不溶、有機溶媒に可溶 |
| CAS番号(d体) | 5989-27-5 |
これらの数値は、後述する公的機関のデータベースでも確認することができます。
引火点が約46〜48℃と比較的低い点は、取り扱い時の安全管理において重要な情報です。
リモネンの化学的特徴と構造
続いては、リモネンの化学的な特徴と構造について確認していきます。
リモネンの分子式はC₁₀H₁₆であり、分子量は136.23 g/molです。
IUPAC名は「1-メチル-4-(プロパン-2-イリデン)シクロヘキサン」または「(R)-1-メチル-4-(プロプ-1-エン-2-イル)シクロヘキサ-1-エン」と表記されることがあります。
構造的にはシクロヘキセン環を基本骨格とし、4位にイソプロペニル基(−C(CH₃)=CH₂)が結合したモノテルペンです。
光学異性体(d体・l体・dl体)について
リモネンには不斉炭素原子が存在するため、光学異性体が存在します。
d-リモネン((R)-(+)-リモネン)はオレンジやレモンなど多くの柑橘類に豊富に含まれており、甘い柑橘系の香りを持ちます。
一方、l-リモネン((S)-(−)-リモネン)はスペアミントなどに含まれ、テルペンチン様の香りがあります。
dl-リモネン(ラセミ体)はジペンテンとも呼ばれ、工業用溶剤などに使用されることがあります。
モノテルペンとしての分類
リモネンはモノテルペン(C₁₀)に分類される天然有機化合物であり、イソプレン単位2つが結合したテルペン化合物です。
天然界では多くの植物の精油成分として確認されており、特にオレンジ果皮油における含有率は90%を超えることもある主要成分です。
モノテルペンは揮発性が高く、アロマセラピーや香料産業で古くから利用されてきた化合物群です。
溶解性と他の溶媒との相性
リモネンは水にほぼ不溶ですが、エタノール・エーテル・クロロホルム・アセトンなどの有機溶媒には溶解しやすい性質があります。
この疎水性の高さが、洗浄剤・脱脂剤としての用途に結びついています。
天然物由来の有機溶剤として、環境負荷の低い洗浄剤原料としての需要が高まっています。
分子式 C₁₀H₁₆
分子量 136.23 g/mol
主な骨格 シクロヘキセン環+イソプロペニル基
光学異性体 d体(R体)・l体(S体)・dl体(ラセミ体)
リモネンの主な用途と活用分野
続いては、リモネンがどのような分野で活用されているのかを確認していきます。
リモネンは天然由来の化合物であり、その多様な機能性から非常に幅広い用途に使用されています。
以下に主要な用途を分野別に整理しました。
香料・フレグランス分野
リモネンの最もよく知られた用途のひとつが香料・フレグランスへの応用です。
d-リモネンはさわやかな柑橘系の香りを持ち、食品・飲料・化粧品・洗剤・ルームフレグランスなど多くの製品に使用されています。
食品添加物としても認可されており、清涼飲料水やキャンディ・ガムなどに香りを付与する目的で利用されています。
日本においても食品添加物(香料)として認められており、安全性が確認された成分です。
洗浄剤・溶剤としての用途
リモネンは優れた溶解力を持ち、石油系溶剤の代替として注目されています。
金属部品の脱脂洗浄・電子部品のフラックス除去・印刷インキの洗浄など、工業的な洗浄工程での活用が進んでいます。
天然物由来であることから、従来の石油系溶剤に比べて環境への負荷が低いとされており、グリーンケミストリーの観点から評価されています。
リモネンは「天然由来の有機溶剤」として注目されており、石油系溶剤の代替として工業洗浄・脱脂用途に採用されるケースが増えています。
生分解性が高く、環境にやさしい溶剤として持続可能な製造プロセスに貢献しています。
医薬・健康分野での研究
リモネンは健康機能性に関する研究も進んでいます。
抗菌作用・抗炎症作用・抗酸化作用・抗がん活性などについての研究報告が蓄積されており、機能性食品やサプリメント原料としての活用も検討されています。
ただし、医薬品として確立された用途とは区別して理解することが重要であり、あくまでも研究段階の知見が多いことに留意が必要です。
また、皮膚への直接塗布では刺激や感作を起こす場合があるため、取り扱いには注意が求められます。
リモネンの物性データが確認できる公的機関のリンク
続いては、リモネンの信頼性の高い物性データを確認できる公的機関のデータベースをご紹介します。
化学物質の物性情報は、公的・学術的なデータベースを利用することで正確な情報を得ることができます。
以下に主要なデータベースをまとめました。
NIST WebBook(米国国立標準技術研究所)
NIST Chemistry WebBookは、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)が提供する化学物質データベースです。
リモネンの沸点・融点・密度・蒸気圧・熱力学データなど、詳細な物性情報を無料で閲覧することができます。
CAS番号(5989-27-5)で検索するとd-リモネンのページにアクセスできます。
NIST WebBook リモネン(d体)
URL https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=5989-27-5
PubChem(米国国立衛生研究所)
PubChemは、米国国立衛生研究所(NIH)の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する化学物質データベースです。
リモネンの構造式・分子量・物性データ・毒性情報・関連文献など、多角的な情報を包括的に確認することができます。
CID(化合物ID)としてはd-リモネンがCID 440917で登録されています。
PubChem d-リモネン
URL https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/440917
国際化学物質安全性カード(ICSC)および日本の公的情報
国際化学物質安全性カード(ICSC)は、WHOとILOが共同で作成する化学物質の安全性情報カードです。
リモネンの健康影響・爆発危険性・環境影響・応急処置などの安全情報が整理されており、取り扱い上の注意を確認するのに適しています。
日本においては、国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が提供するデータベースや、製品評価技術基盤機構(NITE)の化学物質総合情報提供システム(J-CHECK)でもリモネンの情報を検索可能です。
NITE J-CHECK(日本語)
URL https://www.nite.go.jp/chem/jcheck/
(CAS番号「5989-27-5」で検索可能)
以下の表に、リモネンの物性情報が確認できる主な公的データベースをまとめました。
| データベース名 | 運営機関 | 特徴 |
|---|---|---|
| NIST WebBook | 米国国立標準技術研究所(NIST) | 熱力学・物性データが豊富 |
| PubChem | NIH / NCBI(米国) | 構造・毒性・文献情報を網羅 |
| ICSC(国際化学物質安全性カード) | WHO / ILO | 安全性・危険性情報に特化 |
| J-CHECK(NITE) | 製品評価技術基盤機構(日本) | 日本語で化学物質情報を確認可能 |
| ChemSpider | 英国王立化学会(RSC) | 構造検索・物性データ・同義語 |
まとめ
本記事では「リモネンの沸点は?融点・密度・比重・分子量・用途も解説【公的機関のリンク付き】」というテーマで、リモネンの各種物性データと応用分野について詳しく解説しました。
リモネンの沸点は約175〜177℃(常圧)であり、融点は約−74℃、密度は約0.840 g/cm³、比重は約0.84(対水)、分子量は136.23 g/molという物性を持ちます。
常温で液体であり、水よりも軽く、有機溶媒に溶けやすい性質があります。
化学的にはC₁₀H₁₆という分子式のモノテルペンであり、d体・l体・dl体の光学異性体が存在します。
用途は香料・洗浄剤・溶剤・健康機能性成分など非常に多岐にわたり、天然由来の汎用性の高い化合物として産業界で広く活用されています。
物性データの正確な情報が必要な場合は、NIST WebBook・PubChem・NITEのJ-CHECKなど公的機関のデータベースを積極的にご活用ください。
信頼性の高い一次情報に当たることで、研究・設計・安全管理においてより確かな判断が可能になるでしょう。