並列処理を設計・説明する際に、フローチャートを使って視覚的に表現することは非常に効果的です。
しかし並列処理は逐次処理と異なる要素(分岐・同期・合流)を含むため、適切な記号と書き方のルールを理解しておくことが正確なフローチャート作成の前提となります。
本記事では並列処理フローチャートの書き方・使用する記号・作成手順について詳しく解説していきます。
並列処理フローチャートとは?基本的な結論
それではまず、並列処理フローチャートの基本概念と一般的なフローチャートとの違いについて解説していきます。
並列処理フローチャートとは、複数の処理が同時進行する並列処理の流れを視覚的に表現したフローチャートのことで、処理の分岐(Fork)・並行実行・同期(Join)を明示的に表現します。
逐次処理のフローチャートとの最大の違いは、処理の流れが一本の線ではなく複数の並行する流れで表現される点です。
| 記号・要素 | 形状 | 意味 |
|---|---|---|
| 開始・終了 | 楕円形 | フローの開始・終了 |
| 処理 | 長方形 | 実行される処理・操作 |
| 判断・分岐 | ひし形 | 条件による分岐 |
| 並列分岐(Fork) | 太い横棒(二重線) | 並列処理の開始点 |
| 並列合流(Join) | 太い横棒(二重線) | 並列処理の同期・合流点 |
UML活動図(アクティビティ図)との関係
並列処理のフローチャートはUML(統一モデリング言語)の活動図(アクティビティ図)と密接に関連しています。
UMLアクティビティ図ではForkノード(並列処理の開始)とJoinノード(並列処理の同期合流)が標準的な記法として定義されており、並列処理の設計を厳密に表現するためにアクティビティ図を活用することが推奨されます。
スイムレーン(Swimlane)による担当の可視化
並列処理フローチャートでよく使われる表現方法がスイムレーンです。
スイムレーンとはフローチャートを複数の列または行に分割して、それぞれの列・行が担当するプロセス・スレッド・チームを表す手法です。
どの処理がどのスレッドやプロセスで実行されるかを視覚的に明確にできるため、並列処理の設計説明に非常に有効です。
並列処理フローチャートの作成手順
続いては、並列処理フローチャートを実際に作成するための手順を確認していきます。
ステップ1:処理を洗い出して依存関係を整理する
フローチャート作成の最初のステップは、実行する処理をすべて洗い出して依存関係を整理することです。
どの処理は他の処理が完了してからでないと開始できないか(依存あり)、どの処理は独立して実行できるか(依存なし)を明確にします。
依存関係のない処理グループが並列実行の候補となります。
ステップ2:Fork(並列分岐)とJoin(同期合流)を配置する
依存関係の整理が完了したら、並列実行の開始点にFork記号、並列実行の完了・同期点にJoin記号を配置します。
Forkから複数の処理の流れが分岐し、それぞれが並行して進み、Joinで全ての並列処理が揃ったことを確認してから次の処理に進む構造を表現します。
Joinは「すべての並列ブランチが完了するまで待機する同期点」であることを明確に示すことが重要です。
ステップ3:各ブランチの処理を詳細に記述する
ForkとJoinの間の各ブランチに、それぞれの並列処理の詳細な流れを記述します。
各ブランチは独立した処理の流れとして表現し、ブランチ内でさらに条件分岐がある場合はひし形の判断記号を使用します。
ブランチ同士の相互作用(共有リソースへのアクセス・メッセージ通信)がある場合は、矢印や注釈を使ってその関係を明示することでフローチャートの可読性が高まります。
並列処理フローチャートの作成例と注意点
続いては、具体的な作成例と注意点を確認していきます。
ウェブリクエスト処理の並列フローチャート例
具体的な例として、ウェブAPIへの複数リクエストを並列に処理するフローを考えてみましょう。
並列HTTPリクエスト処理のフロー概略
開始 → リクエストリスト取得 → [Fork] → スレッド1:APIリクエストA処理 / スレッド2:APIリクエストB処理 / スレッド3:APIリクエストC処理 → [Join:全結果取得完了] → 結果集約 → 終了
このようにForkで3つのスレッドに処理を分岐させ、すべてのスレッドの処理完了をJoinで待機した後に結果を集約する流れを表現できます。
フローチャート作成ツールの活用
並列処理フローチャートの作成には専用ツールの活用が便利です。
draw.io(diagrams.net)・Lucidchart・Microsoft Visio・PlantUMLなどがよく使われるツールであり、Fork/Join記号やスイムレーンの設定が容易に行えます。
draw.ioは無料で使えるWebベースのツールであり、UML活動図のテンプレートも提供されているため手軽に並列処理フローチャートを作成できます。
フローチャート作成時の注意点
並列処理フローチャートを作成する際の主な注意点として、Joinを忘れないこと・共有リソースへのアクセスを明示すること・フローが複雑になりすぎる場合はサブフローとして分割することが挙げられます。
また、エラー処理(並列処理中にエラーが発生した場合の挙動)も忘れずにフローチャートに含めることで、より実用的な設計資料となります。
| 作成ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 処理の洗い出し | 全処理と依存関係を整理する |
| 2. 並列化候補の特定 | 独立して実行できる処理グループを特定 |
| 3. Fork/Join配置 | 並列開始点と同期点を配置する |
| 4. 各ブランチの記述 | 各並列処理の詳細な流れを記述 |
| 5. エラー処理の追加 | 例外・エラー発生時の処理フローを追加 |
まとめ
本記事では、並列処理フローチャートの基本概念・使用する記号・作成手順・具体例・注意点について解説しました。
並列処理フローチャートはFork(並列分岐)とJoin(同期合流)を中心に構成され、スイムレーンを活用することで担当スレッドやプロセスを視覚的に表現できます。
処理の依存関係を正確に整理した上でFork/Joinを配置し、エラー処理も含めた完全なフローチャートを作成することで、並列処理システムの設計品質と可読性が大きく向上します。
適切なツールを活用しながら、チームで共有しやすい並列処理フローチャートの作成に取り組んでいきましょう。