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リスクアセスメントとリスクマネジメントの違いは?関係性も(定義・目的・プロセス・役割分担)

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「リスクアセスメント」と「リスクマネジメント」はビジネスや安全管理の場面でよく使われる言葉ですが、両者の違いを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。

この二つの概念は密接に関係していますが、その役割・範囲・目的は明確に異なります。

本記事では、リスクアセスメントとリスクマネジメントの定義・違い・相互関係・それぞれのプロセスについて、わかりやすく整理して解説していきます。

安全管理・企業リスク対応・ISO規格への対応を検討している方に参考になる内容をお届けします。

リスクアセスメントとリスクマネジメントの基本的な定義と違い

それではまず、リスクアセスメントとリスクマネジメントの基本的な定義と違いについて解説していきます。

二つの言葉の関係を一言で表すなら、リスクアセスメントはリスクマネジメントのプロセスの中の一部(評価フェーズ)であり、リスクマネジメントはリスクアセスメントを含む包括的なリスク管理の枠組み全体を指します。

リスクアセスメントの定義

リスクアセスメントとは、組織や職場に存在するリスクを体系的に「特定・分析・評価」するプロセスのことです。

「どこに・どのようなリスクがあるか」「そのリスクはどの程度大きいか」「優先的に対処すべきリスクはどれか」を明らかにすることがリスクアセスメントの主な目的です。

ISO 31000(リスクマネジメント国際規格)においてもリスクアセスメントは「リスク特定・リスク分析・リスク評価の全体プロセス」と定義されており、リスクマネジメントの核心部分を担います。

リスクマネジメントの定義

リスクマネジメントとは、組織が直面するリスクを継続的に特定・評価・対処・監視・改善するための包括的な管理プロセスです。

リスクアセスメントの結果を受けて「どのような対策を取るか」を意思決定し、対策を実施・モニタリングし、必要に応じて見直すという一連のサイクルを含みます。

リスクマネジメントは経営戦略・組織文化・コミュニケーションまでを包含するより広い概念であり、組織全体のリスクへの姿勢と対応の枠組みを定めるものといえるでしょう。

両者の違いを整理した比較表

項目 リスクアセスメント リスクマネジメント
定義 リスクの特定・分析・評価のプロセス リスク全体を管理するための包括的な枠組み
目的 リスクの実態把握と優先順位づけ リスクへの対処・低減・監視・改善
範囲 評価フェーズ(診断的役割) 計画・実施・評価・改善の全サイクル
位置づけ リスクマネジメントの一部 リスクアセスメントを含む上位概念
主な成果物 リスク評価表・優先順位リスト リスク対応計画・モニタリング記録

この表からも明確なように、リスクアセスメントはリスクマネジメントの「インプット(分析・診断)」を担い、リスクマネジメントはその結果を活用して「アウトプット(対策・管理)」を行う関係にあります。

リスクマネジメントのプロセスとリスクアセスメントの位置づけ

続いては、リスクマネジメントの全体プロセスの中でリスクアセスメントがどのように位置づけられるかを確認していきます。

ISO 31000に基づくリスクマネジメントのプロセスは、以下の段階で構成されています。

ISO 31000に基づくリスクマネジメントの全体フロー

1. スコープ・状況・基準の確定(組織の内外の状況分析)

2. リスクアセスメント(リスクの特定→分析→評価)

3. リスク対応(回避・低減・移転・受容のいずれかの選択と実施)

4. モニタリングとレビュー(定期的な状況確認と評価の更新)

5. コミュニケーションと協議(ステークホルダーへの情報共有)

6. 記録と報告(文書化と改善へのフィードバック)

リスクアセスメントはこのフローの「ステップ2」に相当し、その後のリスク対応・モニタリングへつながるための情報基盤を提供する役割を担います

リスク対応の四つの選択肢

リスクアセスメントの結果を受けて、リスクマネジメントでは以下の四つの対応方針からいずれかを選択します。

リスク回避(リスクを生む活動自体をやめる)・リスク低減(対策を講じてリスクを小さくする)・リスク移転(保険・外部委託によってリスクを第三者に転嫁する)・リスク受容(コストとリスクの大きさのバランスからあえて受け入れる)の四つです。

どの対応方針を選ぶかは、リスクアセスメントで算出したリスクの大きさ・対策コスト・組織のリスク許容度を総合的に判断して決定されます。

モニタリングとレビューの重要性

リスクマネジメントにおいて、対策を講じた後のモニタリング(継続的な監視)とレビュー(定期的な評価の見直し)は非常に重要なプロセスです。

リスクは環境の変化・組織の変化・新たな情報の入手などによって変動するため、一度評価した結果が永続的に有効であり続けるとは限りません。

定期的にリスクアセスメントを再実施してリスクの実態を最新の状態に保つことが、リスクマネジメントを機能させるための根本的な条件となるでしょう。

企業リスクマネジメントにおける両者の役割分担

続いては、企業のリスクマネジメント体制における役割分担を確認していきます。

リスクアセスメントとリスクマネジメントはそれぞれ異なる担当部門・担当者が関与することが多く、組織的な連携が重要です。

安全衛生部門とリスクアセスメント

労働安全衛生の観点でのリスクアセスメントは、安全衛生部門・安全管理者・衛生管理者が中心となって実施することが一般的です。

現場作業者・班長・職長などとの連携によって現場レベルのリスクを正確に把握し、その結果を経営層や管理職に報告・共有する役割を担います。

経営層とリスクマネジメント

企業全体のリスクマネジメントは経営層が主体となって方針を定め、リスク対応の意思決定・資源配分・組織文化の醸成を行います。

CRO(最高リスク責任者)やリスク管理委員会を設置し、全社的なリスクを統合的に管理する体制を整えることが大企業では一般的です。

安全衛生部門からのリスクアセスメント結果が経営判断のインプットとなることで、現場と経営をつなぐリスクマネジメントの好循環が生まれるでしょう。

ERM(全社的リスクマネジメント)との関係

近年注目されているERM(Enterprise Risk Management=全社的リスクマネジメント)は、財務リスク・法務リスク・オペレーショナルリスク・安全衛生リスクなどすべてのリスクを統合的に管理するアプローチです。

労働安全衛生のリスクアセスメントもERMの一部として組み込まれることが増えており、経営リスクとしての安全衛生リスクの重要性が高まっています。

まとめ

本記事では、リスクアセスメントとリスクマネジメントの定義・違い・相互関係・組織における役割分担について解説してきました。

リスクアセスメントはリスクの特定・分析・評価を行う診断的なプロセスであり、リスクマネジメントはその結果を活用して対策・監視・改善を行う包括的な管理の枠組みです。

両者は一体的に運用されてこそ効果を発揮するものであり、リスクアセスメントの質を高めることがリスクマネジメント全体のパフォーマンス向上につながるという関係性を正しく理解することが大切です。

組織の規模・業種・リスクの性質に応じた体制を整えながら、リスクアセスメントとリスクマネジメントを有機的に連携させていきましょう。