化学反応

サリチル酸と水酸化ナトリウムの化学反応式は?中和滴定

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サリチル酸と水酸化ナトリウムの反応は、酸塩基反応の典型例として化学実験で広く取り上げられています。この反応は中和反応に分類され、中和滴定の実験教材としても非常に有用なのです。

本記事では、サリチル酸と水酸化ナトリウムの化学反応式、反応の詳しいメカニズム、中和滴定の方法と計算について解説していきます。

サリチル酸は2つの酸性官能基を持つため、通常のカルボン酸とは異なる挙動を示すことがあります。段階的な中和反応や当量点の見極め方など、実践的な知識を深めていきましょう。

サリチル酸と水酸化ナトリウムの反応式

それではまずサリチル酸と水酸化ナトリウムの反応式について解説していきます。

基本的な中和反応式

サリチル酸と水酸化ナトリウムの反応式は以下のように表されます。

C₇H₆O₃ + NaOH → C₇H₅O₃Na + H₂O
サリチル酸 + 水酸化ナトリウム → サリチル酸ナトリウム + 水

この反応は酸塩基中和反応に分類され、酸であるサリチル酸と塩基である水酸化ナトリウムが反応して、塩(サリチル酸ナトリウム)と水が生成されるのです。

サリチル酸1モルに対して水酸化ナトリウム1モルが反応し、サリチル酸ナトリウム1モルと水1モルが生成されます。これが最も基本的な反応の化学量論でしょう。

構造式で詳しく見ると、サリチル酸のカルボキシ基(-COOH)から水素イオン(H⁺)が放出され、水酸化ナトリウムの水酸化物イオン(OH⁻)と結合して水分子を形成するのです。

反応の段階性と2段階中和

サリチル酸は特殊な構造を持つため、反応の段階性を理解することが重要です。

サリチル酸にはカルボキシ基(-COOH)とフェノール性ヒドロキシ基(-OH)の2つの酸性官能基が存在します。これらは異なる酸性度を持つため、水酸化ナトリウムとの反応も段階的に進行するのです。

段階 反応部位 pKa 反応しやすさ
第一段階 カルボキシ基(-COOH) 約2.97 非常に高い
第二段階 フェノール性-OH 約13.4 低い

通常の条件下では、カルボキシ基のみが中和されることがほとんどです。カルボキシ基はpKaが約2.97と低く、強い酸性を示すため、水酸化ナトリウムと容易に反応します。

一方、フェノール性ヒドロキシ基はpKaが約13.4と非常に高く、弱酸性です。通常の中和滴定条件では反応しにくいといえるでしょう。

生成物サリチル酸ナトリウムの性質

反応によって生成するサリチル酸ナトリウム(C₇H₅O₃Na)は、水溶性の塩です。

サリチル酸ナトリウムは白色の結晶性固体で、水に良く溶解します。サリチル酸自体は水にあまり溶けませんが、ナトリウム塩にすることで水溶性が大幅に向上するのです。

水溶液は弱塩基性を示します。これは、サリチル酸イオンが弱酸の共役塩基であるため、わずかに加水分解して水酸化物イオンを生じるためでしょう。

サリチル酸ナトリウムは医薬品として、解熱鎮痛作用や抗リウマチ作用を持つことが知られています。かつては関節リウマチの治療に広く使用されていました。

サリチル酸の酸性度と中和反応の特徴

続いてはサリチル酸の酸性度と中和反応の特徴を確認していきます。

カルボキシ基とフェノール性ヒドロキシ基の酸性度

サリチル酸が持つ2つの酸性官能基は、大きく異なる酸性度を示します。

カルボキシ基は比較的強い酸性を示し、pKaは約2.97です。これは一般的なカルボン酸(酢酸のpKa約4.76)と比較しても強い酸性といえるでしょう。

この強い酸性は、オルト位のヒドロキシ基による分子内水素結合が関係しています。水素結合によってカルボキシ基のプロトン(H⁺)が放出されやすくなり、酸性度が高まるのです。

フェノール性ヒドロキシ基のpKaは約13.4であり、非常に弱い酸性を示します。これは水(pKa約15.7)よりはわずかに強い酸性ですが、実用的にはほとんど中和されないレベルといえるでしょう。

この大きなpKa差により、通常の中和滴定ではカルボキシ基のみが定量的に中和され、フェノール性ヒドロキシ基は実質的に反応しません。

中和反応のイオン反応式

サリチル酸と水酸化ナトリウムの反応をイオン反応式で表すと、より本質的な理解が深まります。

サリチル酸をHA、サリチル酸イオンをA⁻と表記すると、反応は以下のように書けるでしょう。

HA + OH⁻ → A⁻ + H₂O

この式は、サリチル酸(弱酸)から水酸化物イオン(強塩基)にプロトンが移動することを示しています。プロトン移動が中和反応の本質なのです。

より詳しく書くと、以下のようになります。

C₆H₄(OH)COOH + OH⁻ → C₆H₄(OH)COO⁻ + H₂O

カルボキシ基が脱プロトン化されてカルボキシラートイオン(-COO⁻)となり、ヒドロキシ基はそのまま残っていることが分かるでしょう。

反応の進行と平衡

サリチル酸と水酸化ナトリウムの中和反応は、実質的に不可逆反応として進行します。

弱酸(サリチル酸、pKa約2.97)と強塩基(水酸化ナトリウム)の反応であるため、平衡は生成物側に大きく偏っているのです。反応の平衡定数は非常に大きく、ほぼ完全に反応が進行します。

これにより、中和滴定において明瞭な当量点を観測できるのです。当量点付近でpHが急激に変化するため、指示薬による終点の判定が容易になるでしょう。

逆反応(サリチル酸ナトリウムと水の反応)は、わずかな加水分解としてのみ起こります。これが水溶液を弱塩基性にする原因となっているのです。

サリチル酸の中和滴定の方法

続いてはサリチル酸の中和滴定の方法を確認していきます。

中和滴定の基本操作

サリチル酸の中和滴定を行う際の基本的な手順を見ていきましょう。

まず、サリチル酸の一定量(例えば0.5〜1.0g程度)を正確に秤量し、コニカルビーカーに入れます。次に、エタノールと水の混合溶媒約50mLに溶解するのです。サリチル酸は水にあまり溶けないため、エタノールを加えることで溶解性を高める必要があるでしょう。

適切な指示薬(フェノールフタレインなど)を数滴加えます。ビュレットに標準濃度の水酸化ナトリウム水溶液を入れ、滴定を開始するのです。

操作 内容 注意点
試料調製 サリチル酸を秤量 正確な質量測定
溶解 エタノール・水混合溶媒 完全に溶解させる
指示薬添加 フェノールフタレイン2〜3滴 過剰に加えない
滴定 NaOH水溶液で滴定 終点近くはゆっくり

最初は比較的速く滴下し、終点が近づいたら1滴ずつ慎重に加えていきます。指示薬の色が変化して消えなくなった点を終点として記録するでしょう。

適切な指示薬の選択

中和滴定において、適切な指示薬を選択することは非常に重要です。

サリチル酸(弱酸)と水酸化ナトリウム(強塩基)の滴定では、当量点のpHは約8〜9の弱塩基性となります。フェノールフタレインが最も適した指示薬でしょう。

フェノールフタレインは、pH 8.0〜10.0の範囲で無色から赤紫色に変色します。当量点のpHがこの変色域に含まれるため、終点を正確に判定できるのです。

メチルオレンジ(pH 3.1〜4.4で変色)やメチルレッド(pH 4.4〜6.2で変色)は、この滴定には適していません。当量点のpHが変色域よりもはるかに高いため、正確な終点判定ができないのです。

フェノールフタレインを使用する場合、無色から淡いピンク色に変わり、その色が約30秒間持続した点を終点とすることが一般的でしょう。

滴定曲線とpH変化

サリチル酸を水酸化ナトリウムで滴定したときのpH変化を見てみましょう。

滴定開始時のpHは約2〜3(サリチル酸水溶液の弱酸性)です。水酸化ナトリウムを加えていくと、徐々にpHが上昇していきます。

当量点付近(中和点)では、pHが急激に上昇し、pH 7〜10程度の範囲で大きく変化するのです。このpH急変域が滴定曲線の特徴的な部分といえるでしょう。

当量点を過ぎると、過剰の水酸化ナトリウムによりpHは12〜13程度まで上昇し、その後はほぼ一定となります。

滴定曲線は、横軸に加えた水酸化ナトリウムの体積、縦軸にpHをとってグラフ化すると、S字型の曲線を描くのです。この曲線の変曲点が当量点に対応します。

中和滴定の計算方法と応用

続いては中和滴定の計算方法と応用を確認していきます。

基本的な滴定計算の公式

中和滴定における計算の基本は、中和の法則を用いることです。

酸と塩基が中和する際、以下の関係が成り立ちます。

酸の物質量 = 塩基の物質量
(サリチル酸の質量 ÷ 分子量) = (NaOHの濃度 × 体積)

サリチル酸の分子量は138であるため、サリチル酸の質量をW(g)、水酸化ナトリウムの濃度をC(mol/L)、滴定に要した体積をV(L)とすると、以下の式が成り立つでしょう。

W ÷ 138 = C × V

この式を変形することで、未知の値を求めることができるのです。

具体的な計算例

実際の数値を用いて計算してみましょう。

サリチル酸0.690gを秤量し、エタノール・水混合溶媒に溶解しました。これを0.100 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ、50.0 mLを要したとします。

項目 数値 単位
サリチル酸の質量 0.690 g
サリチル酸の分子量 138
NaOHの濃度 0.100 mol/L
滴定体積 50.0 mL = 0.0500 L

サリチル酸の物質量を計算すると、0.690 ÷ 138 = 0.00500 mol = 5.00 mmol

水酸化ナトリウムの物質量を計算すると、0.100 × 0.0500 = 0.00500 mol = 5.00 mmol

両者の物質量が一致しているため、正確に中和されたことが確認できるでしょう。

逆滴定と濃度決定への応用

中和滴定は、未知濃度の水酸化ナトリウム水溶液の濃度を決定する際にも使用できます。

既知質量のサリチル酸を用いて、未知濃度の水酸化ナトリウム水溶液を滴定すれば、その濃度を正確に求めることができるのです。これは標準物質としてのサリチル酸の利用といえるでしょう。

例えば、サリチル酸0.690gを未知濃度の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ、45.5 mLを要したとします。

サリチル酸の物質量は、0.690 ÷ 138 = 0.00500 mol

これと等量の水酸化ナトリウムが45.5 mL中に含まれているため、濃度は以下のように計算できるのです。

C = 0.00500 ÷ 0.0455 = 0.110 mol/L

このように、中和滴定は定量分析の重要な手法として、様々な場面で応用されています。

また、サリチル酸含有量を測定する品質管理や、医薬品の純度検定にも利用されるでしょう。正確な滴定操作と計算により、高精度な分析が可能となるのです。

まとめ サリチル酸と水酸化ナトリウムの中和滴定の反応式は?

サリチル酸と水酸化ナトリウムの反応について、化学反応式、酸性度、中和滴定の方法と計算まで詳しく解説してきました。

サリチル酸と水酸化ナトリウムは1対1の化学量論比で反応し、サリチル酸ナトリウムと水を生成します。サリチル酸はカルボキシ基とフェノール性ヒドロキシ基の2つの酸性官能基を持ちますが、通常の条件ではカルボキシ基のみが中和されるのです。

中和滴定では、フェノールフタレインを指示薬として使用し、当量点を正確に判定できます。滴定計算では中和の法則を用いることで、物質量や濃度を求めることが可能でしょう。

この反応は酸塩基化学の基本であり、分析化学における重要な手法として広く応用されています。本記事が皆様の化学学習や実験に役立てば幸いです。