技術(非IT系)

土質力学のせん断強さとは?公式や求め方も!(モール・クーロンの破壊基準:粘着力:内部摩擦角など)

当サイトでは記事内に広告を含みます

土質力学を学び始めると、必ずと言っていいほどぶつかる壁があります。

それが「せん断強さ」という概念です。

専門用語が多く、公式も複雑に見えるため、最初は戸惑う方が多いのではないでしょうか。

特にモール・クーロンの破壊基準や、粘着力、内部摩擦角といった言葉が並ぶと、それだけで苦手意識を持ってしまいがちです。

しかし、せん断強さは土の強度を語るうえで欠かせない、非常に実践的な指標です。

擁壁や盛土、地盤の支持力計算、斜面の安定解析など、あらゆる地盤設計の土台になっています。

この記事では、土質力学におけるせん断強さの意味、公式、求め方について、できるだけかみ砕いて解説していきます。

モール・クーロンの破壊基準、粘着力、内部摩擦角についても、それぞれ丁寧に確認していきます。

土木や建築の試験勉強をしている方はもちろん、実務で地盤調査結果を扱う方にも役立つ内容を目指しました。

それではまず、土質力学のせん断強さについての結論から確認していきましょう。

土質力学のせん断強さとは何か 結論から確認していきます

それではまず、土質力学のせん断強さについて結論から解説していきます。

結論から言うと、せん断強さとは、土がずれ動いて破壊するときの最大のせん断応力のことです。

そしてこのせん断強さは、次のモール・クーロンの破壊基準という式で表されます。

τf = c + σ・tanφ

τf はせん断強さ、c は粘着力、σ は破壊面に働く垂直応力、φ は内部摩擦角を表します。

この式さえ理解してしまえば、土質力学のせん断強さに関する多くの問題が解けるようになります。

せん断強さの結論を一言でまとめると

せん断強さを一言でまとめるなら、土のねばり強さと粒同士の摩擦の合計です。

粘土のような粒子の細かい土は、粒子間の吸着力によって粘着力cが大きくなる傾向があります。

一方、砂のような粒子の粗い土は、粒子同士のかみ合わせによる摩擦、つまり内部摩擦角φが強さの中心になります。

土によってどちらの成分が強さを支えているのか、大きく異なるという点が重要でしょう。

モール・クーロンの破壊基準の公式が結論の中心

先ほどの式、τf = c + σ・tanφ が、せん断強さを語るうえでの結論そのものです。

この式は、垂直応力σが大きくなるほど、せん断強さτfも大きくなることを示しています。

つまり土に加わる荷重が大きいほど、その土はせん断に対して強くなるということです。

直感的には少し不思議に感じるかもしれませんが、拘束される力が強まることで粒子同士の摩擦抵抗が増すためだと考えると納得できるのではないでしょうか。

粘着力と内部摩擦角の役割が結論を支えている

粘着力cと内部摩擦角φは、いわばせん断強さを構成する二本の柱です。

粘着力は垂直応力に関係なく発揮される強さの成分です。

内部摩擦角は垂直応力に比例して発揮される強さの成分です。

この二つの成分をどう求めるか、どう使い分けるかが、これから解説していく本題になります。

せん断強さとは何か 基本的な定義を確認していきます

続いては、せん断強さの基本的な定義について確認していきます。

せん断強さを理解するには、まず「せん断応力」という言葉を整理しておく必要があります。

せん断応力とせん断強さの違いを整理する

せん断応力とは、物体のある面に沿って働く、面をずらそうとする方向の応力のことです。

せん断応力とせん断強さは似た言葉ですが、意味は明確に異なります。

せん断応力は、実際にその瞬間に働いている力の大きさを指します。

一方でせん断強さは、土が耐えられる限界の値、つまり破壊が起きるぎりぎりのせん断応力を指します。

せん断応力がせん断強さを上回った瞬間に、土はすべり破壊を起こします。

この関係性を理解しておくと、後の破壊基準の話がぐっと分かりやすくなるでしょう。

土がせん断破壊するメカニズムとは

土は、岩盤のような一体化した材料とは違い、無数の粒子が積み重なってできています。

そのため土の破壊は、粒子同士がずれて滑ることで発生します。

この滑りが起こる面のことを、すべり面と呼びます。

すべり面上でせん断応力がせん断強さを超えたとき、土は一気に変形し、崩壊に至ります。

斜面崩壊や地すべり、擁壁の背面破壊なども、基本的にはこのメカニズムで説明できます。

地盤の設計において、このすべり面をどこに想定するかが、非常に重要なポイントになります。

有効応力とせん断強さの関係を確認する

土質力学において避けて通れないのが、有効応力の概念です。

土は土粒子と、その隙間を満たす水や空気で構成されています。

実際にせん断強さに寄与するのは、全応力ではなく、土粒子どうしが直接伝え合う有効応力です。

特に重要なのは、間隙水圧が高い状態では有効応力が小さくなり、その結果せん断強さも低下してしまうという点です。

豪雨時の斜面崩壊の多くは、この間隙水圧の上昇によるせん断強さの低下が引き金になっています。

有効応力σ´は、全応力σから間隙水圧uを引いた値、つまりσ´=σ-uで表されます。

実務での破壊基準式も、σの代わりにσ´を用いて評価するのが基本になります。

モール・クーロンの破壊基準を詳しく解説していきます

続いては、モール・クーロンの破壊基準について詳しく確認していきます。

この破壊基準は、土質力学の中でも特に頻出する重要な理論です。

モールの応力円とは何か

モールの応力円とは、ある一点に働くさまざまな方向の応力を、円グラフのように図示したものです。

横軸に垂直応力σ、縦軸にせん断応力τをとり、応力の状態を円として表現します。

三軸圧縮試験などで得られた最大主応力と最小主応力から、この円を描くことができます。

複数の試験結果から得られた円をいくつも描き、それらに共通して接する直線を引くと、土の破壊基準を求めることができます。

この共通接線こそが、モール・クーロンの破壊包絡線と呼ばれるものです。

クーロンの破壊基準式を確認する

クーロンが提唱したのが、せん断強さを垂直応力の一次関数として表すという考え方です。

τf = c + σ・tanφ

この式をグラフにすると、縦軸との切片が粘着力c、傾きがtanφとなる直線になります。

モールの応力円とクーロンの直線を組み合わせたものが、モール・クーロンの破壊基準です。

応力円が破壊包絡線に接した瞬間、その土は破壊状態にあると判断します。

逆に、応力円が破壊包絡線の内側にある間は、土はまだ破壊していないと考えられます。

モール・クーロン破壊基準の使い方

実際の設計や試験結果の整理では、複数の垂直応力条件で試験を行い、それぞれのせん断強さを測定します。

得られたσとτfの組み合わせを、下記のような表とグラフにまとめるのが一般的です。

試験番号 垂直応力σ(kN/m2) せん断強さτf(kN/m2)
1回目 50 32
2回目 100 52
3回目 150 72

このような数値を横軸σ、縦軸τのグラフにプロットし、直線を当てはめます。

その直線の切片から粘着力c、傾きから内部摩擦角φを求めることができます。

この一連の手続きこそ、モール・クーロンの破壊基準を実務で使う際の基本的な流れになるでしょう。

粘着力cについて確認していきます

続いては、モール・クーロンの破壊基準式に登場する粘着力cについて確認していきます。

粘着力の物理的な意味とは

粘着力とは、垂直応力がゼロの状態でも土が持っている、粒子間のせん断抵抗力のことです。

粘土鉱物同士の電気的な吸着力や、水分による表面張力などが、この粘着力の正体だと考えられています。

粘着力は単位面積あたりの力で表され、単位はkN/m2やkPaが一般的です。

垂直応力に依存しないという性質から、粘着力は土の「地の強さ」とも言える成分でしょう。

粘着力が大きい土と小さい土の違い

粘着力の大きさは、土の種類によって大きく変わります。

土の種類 粘着力の傾向 特徴
粘土 大きい 粒子が細かく吸着力が強い
シルト やや大きい 粘土と砂の中間的な性質
ほぼゼロ 粒子間の吸着力がほとんどない
ほぼゼロ 粒子が大きく摩擦が支配的

砂質土は基本的に粘着力を持たない土、いわゆる砂質土と呼ばれることが多いです。

これに対して粘性土は、粘着力を主な強さの源とする土として扱われます。

設計計算においても、砂質土ではc=0として計算を簡略化するケースが少なくありません。

粘着力の測定方法

粘着力は、単独で直接測定できる値ではありません。

先ほどのモール・クーロンの破壊基準式から、間接的に求めるのが一般的な方法です。

複数の垂直応力条件でせん断試験を行い、得られた直線の切片として算出します。

ここで注意したいのは、排水条件によって同じ土でも粘着力の値が変わってしまうという点です。

非排水条件で得られる粘着力は、排水条件で得られる粘着力よりも大きく評価されることが多いため、どちらの条件で求めた値なのかを必ず確認する必要があります。

この違いを見落とすと、設計上大きな誤差につながる恐れがあるでしょう。

内部摩擦角φについて確認していきます

続いては、もう一つの重要な指標である内部摩擦角φについて確認していきます。

内部摩擦角の物理的な意味

内部摩擦角とは、土粒子同士がすべり合うときに生じる摩擦抵抗の大きさを角度で表したものです。

垂直応力が大きくなるほど、粒子同士の接触圧が高まり、摩擦による抵抗力も大きくなります。

内部摩擦角は、せん断強さの垂直応力依存性を決める、非常に重要なパラメータです。

角度が大きいほど、土は垂直応力の増加に対して敏感に強度を増していくということになります。

内部摩擦角に影響する要因

内部摩擦角は、土の性質によって大きく変動します。

粒子の形状が角ばっているほど、かみ合わせが強くなり、内部摩擦角は大きくなる傾向があります。

逆に粒子が丸みを帯びていると、すべりやすくなるため、内部摩擦角は小さくなりがちです。

また、土の密度も無視できない要因の一つです。

密に締め固められた土は、粒子同士のかみ合わせが強くなるため、緩い状態の土よりも内部摩擦角が大きく評価される傾向にあります。

粒度分布が広く、いろいろな大きさの粒子が混ざっている土ほど、密実な構造になりやすいという点も覚えておきたいところです。

内部摩擦角の代表的な値

参考までに、代表的な土質ごとの内部摩擦角のおおよその目安を紹介します。

土の種類 内部摩擦角の目安
ゆるい砂 28度から32度程度
密な砂 35度から40度程度
礫質土 35度から45度程度
粘性土(正規圧密) 0度から数度程度

あくまで目安であり、実際の値は必ず試験によって確認する必要があります。

特に構造物の基礎設計など、安全性が強く求められる場面では、現場の土から採取した試料での試験結果を優先すべきでしょう。

せん断強さの求め方 試験方法を確認していきます

続いては、実際にせん断強さを求めるための試験方法について確認していきます。

代表的な試験には、直接せん断試験、三軸圧縮試験、一軸圧縮試験があります。

直接せん断試験

直接せん断試験は、上下二つに分かれた箱に土を詰め、水平方向に力を加えてすべらせる試験です。

構造がシンプルで、比較的短時間で結果が得られるという利点があります。

垂直応力を変えながら複数回試験を行い、σとτfの関係から粘着力と内部摩擦角を求めます。

例えば垂直応力を50、100、150kN/m2と変化させ、それぞれのせん断強さを測定し、直線近似することでcとφを算出します。

ただし、せん断面があらかじめ固定されてしまうため、実際の破壊面と一致しない場合があるという弱点も持っています。

三軸圧縮試験

三軸圧縮試験は、円柱状の供試体に周囲から等方的な圧力を加えたうえで、軸方向にさらに荷重をかけて破壊させる試験です。

排水条件を細かく制御できるため、より実際の地盤条件に近い形でせん断強さを評価できます。

排水条件によって、UU試験、CU試験、CD試験という三種類に大きく分類されます。

UU試験は非圧密非排水条件、CU試験は圧密非排水条件、CD試験は圧密排水条件での試験です。

どの試験を選ぶかは、対象とする地盤の施工過程や荷重の速度に応じて判断する必要があります。

短期的な安定性を評価したい場合はUU試験やCU試験、長期的な安定性を評価したい場合はCD試験が選ばれることが多いでしょう。

一軸圧縮試験との違い

一軸圧縮試験は、側方から拘束を加えず、供試体を軸方向にのみ圧縮して破壊させる試験です。

主に粘性土を対象とし、比較的簡易に一軸圧縮強さquを求めることができます。

この一軸圧縮強さから、粘着力cは近似的にqu÷2として求められます。

試験方法 特徴 主な対象土質
直接せん断試験 構造が簡単で短時間 砂質土や粘性土
三軸圧縮試験 排水条件を制御できる 幅広い土質
一軸圧縮試験 簡易で迅速だが側方拘束なし 粘性土

どの試験にも一長一短があるため、目的や対象土質に応じて適切に選択することが大切でしょう。

実務では複数の試験結果を突き合わせ、総合的にせん断強さを評価することが望ましいと言えます。

まとめ

今回は、土質力学におけるせん断強さについて、モール・クーロンの破壊基準、粘着力、内部摩擦角を中心に解説してきました。

せん断強さは、τf = c + σ・tanφというシンプルな式で表される一方、その背後には有効応力や間隙水圧、試験条件といった多くの要素が絡み合っています。

粘着力は垂直応力に依存しない強さの成分であり、主に粘性土で大きな値を示します。

内部摩擦角は垂直応力に比例して発揮される強さの成分であり、主に砂質土や礫質土で重要な役割を果たします。

直接せん断試験や三軸圧縮試験、一軸圧縮試験といった試験方法を通じて、これらの値を実際に求めることができます。

土質力学のせん断強さを正しく理解することは、地盤の安全性を正しく評価するための第一歩と言えるでしょう。

ぜひ今回の内容を、実際の試験結果の読み解きや設計計算に役立てていただければ幸いです。