ショア硬さ試験機は、ゴムやプラスチックなどの柔らかい材料に押針を押し込み、その抵抗から硬さを数値化する測定器です。
デュロメータとも呼ばれ、材料の受入検査、配合管理、劣化評価、製品開発まで幅広い場面で活用されています。
ただし、硬さの値だけを比べても、試験片の厚み、測定位置、温度、押針の種類が異なれば適切な判断につながりません。
本記事では、ショア硬さ試験機の仕組み、構造、JIS規格、測定手順、ゴムとプラスチックにおける実務上の注意点をわかりやすく整理します。
ショア硬さ試験機の意味と測定原理

それではまず、ショア硬さ試験機の基本的な役割と測定原理について解説していきます。
押針の侵入量で判断する硬さ
ショア硬さ試験機とは、一定形状の押針を材料表面へ押し当て、どの程度まで押針が入り込むかを硬さとして表示する装置です。
材料が柔らかいほど押針は深く侵入し、硬いほど侵入しにくくなります。
この侵入のしにくさを、ばね荷重と押針の変位の関係で読み取る考え方が、ショア硬さ試験の中心です。
ショア硬さは、材料そのものの絶対的な強度を直接示す数値ではなく、定められた条件下での押込み抵抗を示す値と理解すると、測定結果を扱いやすくなります。
表示値は一般に0から100の範囲で扱われます。
数値が高いほど硬い傾向を表しますが、100に近い値では押針の侵入が小さくなり、使用するタイプによっては差を判別しにくくなる場合もあります。
ショア硬さのイメージは、押針の侵入量が小さいほど硬さ値が高く、侵入量が大きいほど硬さ値が低くなる関係です。
同じ材料でも、表面付近と内部で硬さが異なる場合があるため、測定位置の管理が重要になります。
デュロメータという呼び方
ショア硬さ試験機は、現場ではデュロメータと呼ばれることが少なくありません。
デュロメータは英語の硬さ測定器に由来する呼称であり、ショアAデュロメータ、ショアDデュロメータのようにタイプ名と組み合わせて使われます。
本体を試験片へ垂直に当てる携帯式のものが代表的ですが、試験条件を安定させるためのスタンド付き装置や、自動で押込みと読取りを行う機器もあります。
手持ち式は持ち運びやすく、成形現場での確認に便利です。
一方で、押し当てる角度や力の加え方が作業者によって変わりやすいため、比較測定ではスタンドの活用が有効でしょう。
ゴムとプラスチックに使われる理由
ゴム、エラストマー、軟質塩化ビニル、ウレタン、シリコーン、樹脂部品などは、金属のように一般的な押込み硬さ試験だけでは扱いにくい材料です。
柔軟に変形する材料では、測定荷重、押針の形状、読取り時間が結果に大きく影響します。
ショア硬さ試験は、こうした高分子材料の柔らかさを短時間で確認しやすく、製造工程での品質管理に向いています。
たとえば、パッキンが予定より柔らかい場合は密封性や組付け性に影響することがあります。
反対に、ホースやシール材が硬すぎる場合には、曲げや圧縮への追従性が低下する可能性もあります。
硬さ測定は合否判定だけでなく、材料配合や成形条件の変化を早期に見つけるための管理指標として役立ちます。
ショア硬さの値を確認するときは、材料名と硬さ値だけで記録を終えないことが大切です。
使用したデュロメータのタイプ、試験片の厚み、測定温度、読取り時間も一緒に残すことで、後日の比較精度が高まります。
デュロメータの構造とタイプ
続いては、デュロメータを構成する部品と代表的なタイプを確認していきます。
押針とばね機構
ショア硬さ試験機の内部には、材料に接触する押針、押針を動かすばね、変位を指示値へ変換する機構が組み込まれています。
測定時には、試験機の押え面を材料表面に密着させます。
そのとき押針は材料へ入り込み、材料から受ける反力によってばねの状態が変化します。
この変化が目盛りやデジタル表示へ反映され、ショア硬さとして読み取られる仕組みです。
押針の先端形状はタイプごとに異なります。
先端が丸いもの、円すい形のもの、鋭い形状のものがあり、対象材料の硬さ域や変形特性に応じて使い分けます。
押針形状とばね荷重が異なる試験機で測った値は、そのまま横並びで比較できません。
ショアAとショアDの使い分け
ショアAは、一般的なゴム、軟質プラスチック、柔らかいエラストマーなどに用いられる代表的なタイプです。
タイヤ、ゴムシート、パッキン、柔軟な樹脂製品の検査では、ショアAが採用される場面が多く見られます。
ショアDは、より硬いゴム、硬質プラスチック、硬めの樹脂材料などに適しています。
ショアAで高い値に集中してしまう材料は、ショアDへ切り替えると差を把握しやすくなることがあります。
| タイプ | 主な対象材料 | 押針の特徴 | 活用場面 |
|---|---|---|---|
| ショアA | 一般ゴム、軟質樹脂、エラストマー | 比較的丸みのある先端形状 | パッキン、ホース、ゴムシート |
| ショアD | 硬質プラスチック、硬いゴム | より鋭い先端形状 | 樹脂成形品、硬質ウレタン |
| ショアE | 非常に柔らかい材料 | 柔軟材料向けの構成 | 発泡体、軟質材料の一部 |
| ショアOO | ゲル状材料、低硬度フォーム | 低硬度域向け | スポンジ、低反発材料 |
| ショアC | 中程度の硬さを持つ材料 | 用途に応じた専用形状 | 特殊ゴム、特定配合品 |
対象材料がどのタイプに適するかは、規格、顧客仕様、過去の管理実績を合わせて決めます。
迷った場合は、まず試料の硬さ域を見積もり、値が測定範囲の端に偏らないタイプを検討する方法が実務的です。
アナログ式とデジタル式
アナログ式デュロメータは、針が目盛りを指す構造で、電池を必要とせず、現場で扱いやすい点が魅力です。
一方、読取り時に視差が生じることがあり、記録は作業者の確認に依存しやすくなります。
デジタル式は数値が画面に表示され、ホールド機能、平均値表示、データ出力機能を備えた機種もあります。
記録の効率化やトレーサビリティを重視する場合には、デジタル式が便利でしょう。
ただし、デジタル表示であっても、試験片の準備や当て方が不適切なら信頼性は確保できません。
測定器の表示方式よりも、規格に沿った試験条件をそろえることが再現性の土台になります。
JIS規格と試験条件
続いては、ショア硬さ試験に関係するJIS規格と管理すべき試験条件を確認していきます。
規格を確認する重要性
ショア硬さ試験では、試験方法、デュロメータの種類、試験片の状態、測定回数などが規格で定められています。
日本ではJIS K 6253の関連規定が、加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験を行う際の重要な基準として参照されます。
プラスチックの試験では、対象材料や取引先の要求に応じて、該当するJIS、ISO、ASTMなどを確認する必要があります。
規格番号だけを記録するのではなく、どの版に基づき、どのタイプのデュロメータで試験したのかを明確にすることが重要です。
仕様書にショアA 70と書かれていても、測定温度や読取り時間が決められていなければ、判断の余地が残ります。
硬さ値には必ず試験条件が伴います。
社内基準をつくる際は、測定器のタイプ、試験片の厚み、温度、測定時間、測定箇所、測定回数を一組の条件として文書化するとよいでしょう。
試験片の厚みと支持面
試験片が薄すぎると、押針が材料だけでなく下にある支持台の影響を受けやすくなります。
その結果、本来より硬い値として表れることがあります。
必要な厚みに満たない場合は、同じ材料を重ねて規定に近い厚みを確保する方法が用いられます。
ただし、重ねた試験片の間に隙間があると結果が不安定になるため、平らで密着した状態をつくる必要があります。
支持面は硬く平滑で、測定中にたわまないものを選びます。
柔らかいスポンジや段差のある机上で測ると、材料本来の硬さではなく、支持条件を含んだ値になってしまいます。
試験片の厚み不足は、ショア硬さ測定で起こりやすい誤差要因の一つです。
温度と読取り時間
ゴムやプラスチックは温度によって硬さが変化します。
一般に温度が低いと硬くなりやすく、温度が高いと柔らかくなりやすい傾向があります。
冷えた倉庫から取り出した直後の試料と、空調された検査室に十分な時間置いた試料を比べると、異なる値が出ることも珍しくありません。
また、粘弾性を持つ材料では、押針を当てた直後と数秒後で表示値が変化します。
このため、測定後すぐに読むのか、一定時間経過後に読むのかを統一することが欠かせません。
粘弾性材料では、押込み開始直後の値と時間経過後の値が異なる場合があります。
たとえば社内手順で3秒後に読むと決めたなら、すべての試料を同じ3秒条件で測定し、記録にも残します。
ゴムとプラスチックの測定手順
続いては、ゴムやプラスチックを測定するときの基本手順を確認していきます。
測定前の準備
最初に、試験機の押針先端と押え面に汚れ、傷、付着物がないか確認します。
押針に油分や粉じんが付いていると、材料への接触状態が変わり、測定値に影響することがあります。
次に、試験片の表面を確認します。
バリ、深い傷、凹凸、印字部、ゲート付近、曲面の強い箇所は、標準的な測定位置としては避けるのが基本です。
試験片は測定環境へ十分になじませ、必要な厚みと平面性を確保します。
成形直後の温かい製品をすぐに測る場合は、その条件自体を工程管理条件として明確にする必要があります。
垂直に押し当てる操作
デュロメータの押え面を試験片へ静かに接触させ、材料表面に対して垂直に押し当てます。
傾いた状態で測定すると、押針の侵入方向がずれ、押え面が均一に接触しないため、正しい値を得にくくなります。
測定器を勢いよく押し付けると、材料の反発や衝撃によって値がぶれることがあります。
一定の速度で、過度な横方向の力を加えずに操作することが大切です。
手持ち測定でばらつきが大きいときは、専用スタンドを使用すると押込み条件を安定させやすくなります。
手持ち測定の基本は、押え面を全面で密着させ、試料面へ垂直に当て、定めた時間で値を読む流れです。
数値を見ながら本体を動かすと測定条件が乱れやすいため、姿勢を安定させてから表示を確認します。
複数箇所の測定と平均値
材料の硬さは、製品全体で完全に均一とは限りません。
射出成形品ではゲート周辺と末端部、ゴムシートでは端部と中央部、発泡材料ではセル構造の違いによって、局所的な差が生じる場合があります。
そのため、一点だけで合否を決めるのではなく、規定した複数箇所を測定し、平均値や最大値、最小値を評価します。
測定箇所同士を近づけすぎると、先に押し込んだ部分の変形が残り、次の値に影響する可能性があります。
測定点には適切な間隔を設け、試験片の端部からも十分に離すことが必要です。
平均値だけでなく、測定値のばらつきも確認すると、配合変動や成形不良の兆候をつかみやすくなります。
| 確認項目 | 管理のポイント | 乱れた場合の影響 |
|---|---|---|
| 測定器のタイプ | 材料に合うショアAやショアDを選ぶ | 値の比較性が失われる |
| 試験片の厚み | 規定に沿った厚みを確保する | 支持台の影響を受ける |
| 測定姿勢 | 表面へ垂直に押し当てる | 侵入量が不安定になる |
| 読取り時間 | 開始から読取りまでを統一する | 粘弾性による差が増える |
| 測定点 | 傷や端部を避けて複数点測る | 局所的な偏りを拾う |
精度管理と校正の注意点
続いては、信頼できる測定値を維持するための精度管理と校正を確認していきます。
ゼロ点と動作の点検
測定前には、デュロメータの表示が正常かどうかを確認します。
無負荷時の指示、押針の戻り、針やデジタル画面の動作に異常がないかを見ます。
押針の動きが重い、戻りが遅い、表示が安定しないといった状態では、測定を続けるべきではありません。
落下や強い衝撃を受けた機器は、外観に大きな損傷がなくても、内部のばねや指示機構に影響が及んでいることがあります。
日常点検の結果を記録しておくと、異常の発生時期を追跡しやすくなります。
基準ブロックによる確認
校正済みの硬さ基準ブロックを用いると、デュロメータが想定どおりの範囲を示すか確認できます。
基準ブロックは材質や硬さが管理されており、日常的な機能確認に役立ちます。
ただし、基準ブロックでの確認は、実際の製品測定を完全に代替するものではありません。
ゴム製品のように厚み、表面状態、曲率が異なる対象では、実試料に対する測定の安定性も別途確認する必要があります。
基準ブロックの値が良好でも、現場の測定条件が乱れていれば製品の評価精度は保証されません。
精度管理は、校正証明書を保管するだけで完了しません。
日常点検、基準ブロック確認、定期校正、作業者教育を組み合わせることで、測定システム全体の信頼性を維持できます。
ばらつきの原因と対策
同じ試料を測っても値がばらつくときは、まず測定者、測定位置、試料厚み、温度、読取り時間を確認します。
手持ちでの測定者間差が大きい場合には、操作手順を動画や作業標準で統一し、スタンド測定へ移行する方法が有効です。
材料ロットごとの差を疑う前に、測定系の再現性を確認する視点も欠かせません。
複数人で同じ試料を測り、結果を比較すると、操作由来のばらつきと材料由来のばらつきを切り分けやすくなります。
許容範囲ぎりぎりの製品では、平均値だけで判断せず、測定の不確かさを踏まえた管理方法を検討すると安心です。
硬さ測定の品質は、測定器単体ではなく、人、試料、環境、手順を含めた運用で決まります。
用途別の選定と記録方法
続いては、用途に応じたデュロメータの選定と、実務で役立つ記録方法を確認していきます。
ゴム製品における管理
ゴム製品では、ショアAが品質管理の基準として使われる例が多くあります。
Oリング、ガスケット、ロール、ゴム脚、ベルト、シール材では、硬さが組付け性、圧縮特性、摩耗、密封性に関わります。
配合に使う充填材や可塑剤の量、加硫条件、保管条件が変わると、ショア硬さにも変化が現れやすくなります。
そのため、工程内で定期測定を行えば、成形後の外観だけでは見つけにくい変動の監視につながります。
ただし、硬さが仕様内であっても、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみまで保証されるわけではありません。
目的に応じて、ほかの物性試験と組み合わせることが重要です。
プラスチック製品における管理
プラスチックでは、軟質から硬質まで材料の幅が広く、ショアAとショアDの選定が特に重要になります。
軟質PVC、熱可塑性エラストマー、ポリウレタンなどでは、触感や曲げやすさの管理にショア硬さが用いられます。
硬質樹脂では、表面の耐傷性や成形条件の変化を確認する補助指標として使われることがあります。
成形品はリブ、ボス、曲面、薄肉部を持つことが多いため、どの面を測るかを製品図面や検査要領書で決めておくと、担当者が変わっても比較しやすくなります。
製品形状が複雑な場合は、平らで十分な肉厚を持つ測定専用部を設ける設計も有効です。
測定記録に残す項目
測定結果の記録には、硬さ値だけでなく、製品名、ロット番号、測定日、測定者、使用機器、デュロメータタイプを含めます。
さらに、試験片の状態、温度、測定位置、読取り時間、測定回数、平均値、判定結果を残すと、異常発生時の原因調査が進めやすくなります。
電子データで管理する場合は、測定器番号と校正期限を紐付けておくと、監査や顧客対応にも役立ちます。
記録例として、製品名、ロット番号、ショアA、測定温度、読取り時間、測定回数、平均値、最大値、最小値、判定、測定者を一つの帳票で管理します。
この形なら、数値の変化だけでなく、条件変更が結果へ与えた影響も確認しやすくなります。
まとめ
ショア硬さ試験機は、ゴムやプラスチックに押針を押し込み、その抵抗から硬さを評価するデュロメータです。
ショアAやショアDなどのタイプは、材料の硬さ域や用途に合わせて選定します。
正しい測定には、JIS規格や仕様書を確認し、試験片の厚み、表面状態、温度、読取り時間、測定姿勢をそろえることが欠かせません。
同じ条件で繰り返し測れる状態をつくることが、ショア硬さ試験の最も大切なポイントです。
日常点検、基準ブロックによる確認、定期校正、測定記録の整備を続ければ、硬さ値を品質保証や工程改善に生かしやすくなるでしょう。