技術(非IT系)

はんだの融点は?鉛フリーはんだとの違いや種類別の数値一覧も【公的機関のリンク付き】

当サイトでは記事内に広告を含みます

電子部品の接合に欠かせない「はんだ」ですが、その融点について正確に把握できていますか?

はんだの融点は、製品の品質や作業効率に直結する重要な数値です。

特に近年は環境規制の観点から鉛フリーはんだが普及し、従来の鉛入りはんだとの融点の違いを理解することが、現場での正確な作業に欠かせません。

本記事では、はんだの融点は?鉛フリーはんだとの違いや種類別の数値一覧も【公的機関のリンク付き】と題して、はんだの基本的な融点から種類別の数値まで、わかりやすく解説していきます。

公的機関の情報も交えながら正確な知識をお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。

はんだの融点は種類によって異なり、おおむね180〜230℃の範囲に集中している

それではまず、はんだの融点の全体像について解説していきます。

はんだの融点は、使用する合金組成によって大きく異なります。

一般的によく使われるはんだの融点は、おおむね180℃〜230℃の範囲に収まっているものが多いです。

ただし、特殊用途向けのはんだでは100℃以下で溶けるものや、300℃を超えるものも存在します。

はんだの融点とは、固体のはんだが溶けて液体になる温度のことです。

合金の場合、融点が一点に定まらず「固相線温度(溶け始める温度)」と「液相線温度(完全に溶ける温度)」の2つで表されるケースが多くあります。

この2つの温度の間は固体と液体が混在する「パスタ状態(糊状態)」となり、この範囲が広いほど作業難易度が上がることを覚えておきましょう。

共晶はんだと呼ばれる特定の組成のはんだは、固相線温度と液相線温度が一致するため、溶け始めと完全溶融が同じ温度で起こります。

代表的な共晶はんだであるSn-Pb共晶はんだ(スズ63%・鉛37%)の融点は183℃で、長らく電子工業の標準として使用されてきました。

融点を理解しておくことで、適切なはんだごての温度設定や、部品へのダメージを防ぐための適正な加熱条件を判断しやすくなります。

固相線温度と液相線温度の違いとは

はんだの融点を語るうえで、固相線温度と液相線温度の区別は非常に重要な概念です。

固相線温度(Solidus)とは、加熱時にはんだが溶け始める温度のことを指します。

一方、液相線温度(Liquidus)とは、はんだが完全に液体になる温度のことです。

この2つの温度差が小さいほど、はんだ付け作業がしやすいとされています。

例として、Sn-Ag-Cu系(SAC305)はんだの場合

固相線温度:約217℃

液相線温度:約221℃

温度差:約4℃(非常に小さく、作業性が良好)

共晶はんだが作業しやすい理由

共晶はんだとは、固相線温度と液相線温度が同一となる特定の合金組成のはんだのことです。

溶け始めと完全溶融が同じ温度で起こるため、はんだが急激に凝固しやすく、きれいなはんだ付けが実現しやすいという特徴があります。

Sn-Pb共晶はんだはその代表例で、183℃という明確な融点を持ちます。

現在でも試験や研究用途では使用されることがあります。

融点と作業温度の関係性

実際のはんだ付け作業では、はんだの融点よりも高い温度でこて先を設定する必要があります。

一般的には、融点より約50〜100℃高い温度がはんだごての設定温度の目安とされています。

融点が高い鉛フリーはんだでは、こて先温度も相応に高く設定する必要があり、部品へのダメージリスクが高まる点に注意が必要です。

適切な温度管理がはんだ付け品質を左右すると言っても過言ではありません。

鉛入りはんだと鉛フリーはんだの融点の違いを比較する

続いては、鉛入りはんだと鉛フリーはんだの融点の違いについて確認していきます。

両者の最も大きな違いの一つが、融点の高さです。

鉛入りはんだの代表格であるSn-Pb共晶はんだは183℃で溶けますが、鉛フリーはんだの主流であるSAC系(スズ・銀・銅)はんだは217℃前後の融点を持ちます。

この約30〜40℃の差が、現場の作業環境や設備に大きな影響を与えます。

鉛フリーはんだへの移行は、2006年に施行されたRoHS指令(有害物質使用制限指令)が大きなきっかけとなっています。

RoHS指令は電気・電子機器における鉛などの有害物質の使用を制限するEUの規制であり、日本でも対応が進みました。

詳細については、経済産業省の公式サイト(https://www.meti.go.jp/)でも関連情報を確認できます。

鉛フリーはんだは環境への配慮という点では優れていますが、融点が高いために以下のような課題もあります。

項目 鉛入りはんだ(Sn-Pb共晶) 鉛フリーはんだ(SAC305)
融点(目安) 183℃ 217〜221℃
作業温度(目安) 250〜280℃ 280〜320℃
ぬれ性 良好 やや劣る
環境負荷 高い(鉛含有) 低い
コスト 比較的安価 やや高価

表からもわかるように、鉛フリーはんだは作業温度が高くなるため、耐熱性の低い部品への使用には特別な注意が必要です。

RoHS指令と鉛フリー化の背景

鉛フリーはんだが普及した最大の要因は、環境規制の強化です。

鉛は人体や環境への有害性が高く、廃棄された電子機器から土壌や地下水に溶け出すリスクが問題視されてきました。

EUのRoHS指令やWEEE指令をはじめ、日本の資源有効利用促進法なども対応を後押しし、多くのメーカーが鉛フリーはんだへの切り替えを進めてきた経緯があります。

環境省の情報(https://www.env.go.jp/)でも有害物質に関する詳細な規制内容を確認できます。

鉛フリーはんだ特有の「ウィスカ」問題

鉛フリーはんだの課題として見逃せないのが、ウィスカ(whisker)と呼ばれる現象です。

ウィスカとは、スズを主成分とするはんだの表面から針状の金属結晶が成長する現象のことで、電気的ショートを引き起こすリスクがあります。

特にスズ純度の高い鉛フリーはんだで発生しやすいとされており、宇宙・航空・医療分野では鉛入りはんだの使用が引き続き認められているケースもあります。

ウィスカ対策としては、合金組成の工夫や表面処理技術の改善が進められています。

鉛フリーはんだの接合信頼性について

鉛フリーはんだは、鉛入りはんだと比較して機械的強度が高いという特性を持ちます。

ただし、熱疲労特性(温度変化による繰り返し応力への耐性)は用途や組成によって差があり、選定には注意が必要です。

IPC(電子回路工業協会)やJIS規格などでははんだの接合品質に関する基準が設けられており、信頼性試験を通じた評価が推奨されています。

製品用途に応じた適切な鉛フリーはんだを選ぶことが、長期的な品質確保につながるでしょう。

はんだの種類別融点一覧と主な用途

続いては、はんだの種類ごとの融点と用途について確認していきます。

はんだには非常に多くの種類があり、それぞれの融点や特性によって使われる場面が異なります。

代表的なはんだの種類と融点をまとめた一覧を見ていきましょう。

はんだの種類 主成分 固相線温度 液相線温度 主な用途
Sn-Pb共晶はんだ Sn63% Pb37% 183℃ 183℃ 一般電子回路(旧来品)
SAC305 Sn96.5% Ag3% Cu0.5% 217℃ 221℃ 一般電子機器・鉛フリー標準
SAC405 Sn95.5% Ag4% Cu0.5% 217℃ 225℃ 高信頼性電子機器
Sn-Cu共晶はんだ Sn99.3% Cu0.7% 227℃ 227℃ 低コスト鉛フリー・波はんだ
Sn-Ag共晶はんだ Sn96.5% Ag3.5% 221℃ 221℃ 高信頼性はんだ付け
Sn-Bi系はんだ Sn42% Bi58%(共晶) 138℃ 138℃ 低温はんだ付け・耐熱部品
In-Sn系はんだ In52% Sn48% 118℃ 118℃ 超低温用途・光学部品
Au-Sn系はんだ Au80% Sn20% 280℃ 280℃ 高信頼性・半導体パッケージ

このように、はんだの融点は合金組成によって100℃以上の幅があることがわかります。

低融点はんだ(138℃以下)の特徴と用途

低融点はんだは、耐熱性の低い部品や基板への実装に適したはんだです。

代表的なSn-Bi系はんだは138℃で溶ける共晶組成を持ち、熱に弱いコネクタやフレキシブル基板への使用で威力を発揮します。

ただし、Bi(ビスマス)を含むはんだは脆くなりやすいという性質があるため、機械的強度が求められる用途には不向きな場合があります。

In(インジウム)を主成分とするはんだは100℃台前半での溶融が可能で、光学部品や一部の医療機器に使用されています。

高融点はんだ(250℃以上)の特徴と用途

高融点はんだは、高温環境下での信頼性が求められる分野で使用されます。

Au-Sn(金スズ)はんだは280℃という高い融点を持ち、半導体パッケージのダイボンディングや光通信デバイスのパッケージングなど、高信頼性が要求される用途に使われています。

コストは高いものの、腐食しにくく長期間安定した接合を維持できるため、宇宙・航空・医療分野でも重用されています。

高融点はんだを使用する際は、対応した加熱設備と適切な雰囲気管理(酸化防止)が必要になります。

JIS規格やIPC規格ではんだの品質を確認する方法

はんだの品質や組成については、公的な規格によって基準が定められています。

JIS Z 3282(はんだ−化学成分及び形状)は、はんだの合金成分や融点範囲を規定した日本産業規格です。

日本産業標準調査会(JISC)の公式サイト(https://www.jisc.go.jp/)では、JIS規格の内容を無料で閲覧できます。

また、国際的にはIPC J-STD-006などの規格も広く参照されており、グローバルに部品調達・品質管理を行う際に重要な参照基準となります。

はんだの融点に影響を与える要因と選定のポイント

続いては、はんだの融点に影響を与える要因と、適切なはんだを選ぶためのポイントを確認していきます。

はんだの融点は単に合金の種類だけでなく、いくつかの外部要因によっても変化する場合があります。

正しい選定と使用のためにも、これらの要因を把握しておくことが大切です。

合金組成の比率が融点に与える影響

はんだの融点は、合金を構成する各金属の比率(組成比)によって大きく変化します。

例えば、SnとPbの2元系合金では、Pb含有量が約37%のときに最も融点が低くなる共晶組成(183℃)となります。

この組成から外れると固相線温度と液相線温度の差が広がり、はんだ付け作業の難易度が上がります。

Sn-Pb系はんだの組成と融点の変化(代表例)

Sn60% Pb40% 固相線183℃ / 液相線190℃

Sn63% Pb37%(共晶) 183℃(固液同温)

Sn50% Pb50% 固相線183℃ / 液相線215℃

このように、わずかな組成の違いが液相線温度を大きく変えることがあるため、使用するはんだの仕様書(データシート)を必ず確認することが大切です。

フラックスや添加物が融点に与える影響

はんだには、酸化膜を除去して濡れ性を高めるフラックスが含まれているものがあります(やに入りはんだなど)。

フラックス自体は金属ではないため、はんだの融点そのものを変えるわけではありませんが、はんだ付けの仕上がりや濡れ広がり方に大きな影響を与えます。

また、銀(Ag)やビスマス(Bi)などの第三元素を添加することで、融点を意図的に下げたり、機械的強度を高めたりすることが可能です。

用途や要求性能に応じた添加物の選択が、はんだ選定の重要なポイントの一つと言えます。

はんだを選ぶ際のチェックポイントまとめ

適切なはんだを選定するために、以下のポイントを総合的に判断することが重要です。

はんだ選定の主なチェックポイント

① 使用する部品・基板の耐熱温度を確認する

② 適用される環境規制(RoHS・REACH等)を確認する

③ 要求される接合信頼性(機械的強度・熱疲労特性)を確認する

④ 生産方式(リフロー・波はんだ・手はんだ)との適合性を確認する

⑤ JIS規格やIPC規格への準拠が必要かどうかを確認する

これらのチェックポイントを事前に整理しておくことで、適切なはんだを効率よく選定できるようになります。

特に鉛フリーはんだへの移行を検討している場合は、既存設備のリフロー炉やこての対応温度域も合わせて確認することをおすすめします。

まとめ

本記事では、はんだの融点は?鉛フリーはんだとの違いや種類別の数値一覧も【公的機関のリンク付き】と題して、はんだの融点に関する基礎知識から種類別の数値、鉛フリーはんだとの比較まで幅広く解説しました。

はんだの融点はおおむね180〜230℃の範囲に集中していますが、用途によっては100℃台から300℃近いものまで多様な種類が存在します。

鉛入りはんだと鉛フリーはんだの融点差は約30〜40℃あり、この差が作業温度や設備要件に直接影響します。

環境規制の観点からは鉛フリーはんだへの移行が主流となっており、JIS Z 3282やIPC規格などを参照しながら適切な選定を行うことが重要です。

本記事が、はんだ選定や品質管理の参考になれば幸いです。

引き続き、現場での正確な知識と判断を積み重ねていきましょう。