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熱伝導率の測定方法は?レーザーフラッシュ法・熱線法など装置と原理も解説

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熱伝導率の測定方法は?レーザーフラッシュ法・熱線法など装置と原理も解説

材料の熱的特性を評価するうえで、熱伝導率の測定は非常に重要な役割を担っています。

電子デバイスの放熱設計や断熱材の性能評価、新素材の開発など、あらゆる産業分野において熱伝導率のデータは欠かせない指標となっています。

しかし、「熱伝導率はどのように測定するのか」「どんな装置や方法があるのか」について、詳しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。

本記事では、熱伝導率の測定方法として代表的なレーザーフラッシュ法・熱線法・定常法などをわかりやすく解説するとともに、それぞれの測定原理や使用される装置の特徴も詳しくご紹介します。

材料選定や研究開発に携わる方はもちろん、熱伝導率の基礎から学びたい方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

熱伝導率の測定方法は目的と試料に合わせた手法の選定が重要

それではまず、熱伝導率の測定方法の全体像と、手法選定のポイントについて解説していきます。

熱伝導率(単位はW/m・K)とは、物質がどれだけ熱を伝えやすいかを示す物性値です。

この値を正確に把握することで、断熱材・放熱材・半導体パッケージなど、熱管理が求められる製品の設計精度が大きく向上します。

測定方法は大きく「定常法」と「非定常法(過渡法)」の2種類に分類されます。

定常法は熱の流れが一定の状態(定常状態)になってから測定を行う手法で、試料全体の温度勾配が安定してから評価します。

一方、非定常法は熱が伝わる過程の変化を時間的に追うことで熱伝導率を算出する手法であり、短時間での測定が可能です。

どちらの手法が適しているかは、試料の形状・サイズ・材質、求められる測定精度、測定温度範囲などによって大きく異なります。

たとえば金属や半導体のように熱伝導率が高い固体材料には非定常法が向いており、断熱材のように熱伝導率が低い材料には定常法が適しているケースが多いです。

適切な測定方法を選ぶことが、信頼性の高いデータ取得への第一歩と言えるでしょう。

レーザーフラッシュ法の原理と装置の特徴

続いては、最も広く使用されている非定常法の代表格であるレーザーフラッシュ法を確認していきます。

レーザーフラッシュ法(Laser Flash Method)は、1961年にParkerらによって考案された手法で、現在でも熱拡散率測定の標準的な方法として世界中で採用されています。

レーザーフラッシュ法の基本原理

この方法では、円盤状や正方形状に加工した試料の片面にレーザーパルスを照射し、反対面の温度上昇を赤外線検出器でリアルタイムに計測します。

得られた温度-時間曲線から熱拡散率(α)を算出し、別途測定した比熱容量(Cp)と密度(ρ)を用いて以下の式で熱伝導率を算出します。

熱伝導率 λ(W/m・K) = 熱拡散率 α(m²/s) × 比熱容量 Cp(J/kg・K) × 密度 ρ(kg/m³)

熱拡散率αは、試料の厚さと温度上昇が最大値の半分に達するまでの時間(半値時間)から計算されます。

この測定はわずか数秒から数十秒で完了するため、測定の効率が非常に高いのが特徴です。

使用される装置の構成

レーザーフラッシュ法の装置は主に、レーザー光源・試料ホルダー・加熱炉・赤外線検出器・データ処理システムから構成されています。

高温環境での測定にも対応しており、-100℃から2800℃程度まで幅広い温度域での計測が可能な装置も存在します。

国内外のメーカーが多様なラインナップを展開しており、NETZSCH社やHitachi High-Tech社などが代表的な製造メーカーとして知られています。

レーザーフラッシュ法の適用範囲と注意点

この手法は金属・セラミックス・半導体・複合材料など幅広い固体材料の測定に対応しています。

一方で、試料が光を透過する場合や、表面の反射率が高い場合には、グラファイトコーティングなどの前処理が必要になることがあります。

また、液体や軟質材料の測定には不向きであるため、対象材料の性状に応じた判断が求められます。

熱線法の原理と定常法との違い

続いては、もう一つの代表的な測定手法である熱線法(Hot Wire Method)について確認していきます。

熱線法は非定常法の一種であり、試料中に埋め込んだ細い熱線(ヒーター)に一定電流を流し、その温度変化を記録することで熱伝導率を算出する手法です。

熱線法の基本原理と計算式

熱線に電流を流すと、ジュール熱によって熱線の温度が上昇します。

この温度上昇の速さは、周囲の材料の熱伝導率に依存するため、温度-時間特性を解析することで熱伝導率が求められます

熱伝導率 λ = Q / (4π × ΔT) × ln(t2/t1)

Q:単位長さあたりの発熱量(W/m)

ΔT:時間t1からt2の間の温度差(K)

この計算式からわかるように、熱線法は比較的シンプルな原理に基づいており、装置のセットアップも容易な点が魅力です。

熱線法の種類と特徴

熱線法にはいくつかのバリエーションが存在します。

代表的なものとしては、クロスワイヤー法・平行熱線法・熱線プローブ法などが挙げられます。

クロスワイヤー法では熱線と熱電対を交差させて配置し、より精度の高い温度測定を実現しています。

また、熱線プローブ法は針状のプローブを試料に差し込むだけで測定できるため、土壌や粉体、食品材料など不定形試料の評価に広く活用されています。

定常法との比較と使い分け

熱線法(非定常法)と定常法の特徴を比較すると、以下のようになります。

項目 熱線法(非定常法) 定常法
測定時間 短い(数分程度) 長い(数十分〜数時間)
適した試料 固体・液体・粉体 板状・均質な固体
測定精度 中〜高精度 高精度
装置の複雑さ 比較的シンプル やや複雑
熱伝導率範囲 0.01〜20 W/m・K程度 低熱伝導材に強い

測定精度を最優先とする場合や断熱材料の評価には定常法が選ばれることが多く、迅速に多数のサンプルを評価したい場合には熱線法が有利でしょう。

定常法・その他の測定手法と用途別の選び方

続いては、定常法をはじめとするその他の熱伝導率測定手法について、特徴や適用事例とともに確認していきます。

熱伝導率の測定手法は、レーザーフラッシュ法・熱線法以外にも複数存在しており、それぞれが異なる試料条件や測定目的に対応しています。

定常法(平板法・熱流計法)の概要

定常法は、試料を挟んで上下から一定の熱流を与え、温度が安定した状態で測定を行う手法です。

代表的なものとして平板法(グアードヒーター法)熱流計法(HFM法)が挙げられます。

平板法は精度が高く、断熱材・建材・樹脂フォームなど低熱伝導率材料の評価に適しています。

熱流計法は比較的安価で扱いやすく、品質管理の現場でも広く使われている手法です。

温度波法・3ω法などの特殊測定手法

近年注目されている手法として、温度波熱分析法(TWA)があります。

これは試料に周期的な温度波を与え、その伝わり方から熱拡散率を求める方法であり、薄膜や繊維状材料にも適用できる点が特徴です。

また、3ω法(サードオメガ法)は薄膜材料の熱伝導率評価に特化した手法で、電子デバイス用薄膜の熱設計において重要な役割を担っています。

マイクロ・ナノスケールの材料評価が求められる現代の研究開発では、このような高精度・微小領域対応の手法の重要性が増しています。

用途・材料別の測定手法の選び方まとめ

各手法の用途別の適性をまとめると、以下のようになります。

材料・用途 推奨される測定手法
金属・セラミックス・半導体 レーザーフラッシュ法
断熱材・建材・樹脂フォーム 平板法・熱流計法(定常法)
液体・粉体・土壌 熱線法(プローブ法)
薄膜・電子デバイス材料 3ω法・温度波法
繊維・複合材料 温度波熱分析法

用途や試料の特性に応じて最適な手法を選択することが、精度の高い熱伝導率データの取得につながるでしょう。

熱伝導率の測定では、「どの手法が正しい」という絶対的な答えはありません。

試料形状・熱伝導率の大きさ・測定温度域・必要な精度などを総合的に考慮したうえで、最適な手法と装置を選定することが最も重要です。

まとめ

本記事では、熱伝導率の測定方法はレーザーフラッシュ法・熱線法など装置と原理も解説というテーマのもと、各測定手法の特徴と使い分けについてご紹介しました。

熱伝導率の測定手法は、大きく定常法と非定常法に分類され、それぞれに異なる原理・装置・適用範囲があります。

レーザーフラッシュ法は金属・セラミックス・半導体など幅広い固体材料に対応した高効率な手法であり、熱線法は液体や粉体など不定形試料にも柔軟に対応できる手法です。

定常法は断熱材料の精密評価に強みを持ち、3ω法や温度波法は薄膜・微細材料の評価に有効な最先端手法として注目されています。

材料開発・品質管理・研究など、目的に応じて適切な測定手法を選ぶことが、信頼性の高い熱物性データ取得の鍵となります。

本記事が、熱伝導率の測定方法を理解するうえでの一助となれば幸いです。