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熱伝導率の温度依存性は?金属・非金属の変化傾向と測定方法もわかりやすく解説

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熱伝導率は、材料の熱を伝える能力を示す重要な物性値です。

しかし、この値は温度によって変化することをご存知でしょうか。

金属と非金属では変化の傾向がまったく異なり、設計や材料選定において大きな影響を与えます。

本記事では、熱伝導率の温度依存性について、金属・非金属それぞれの変化傾向や背景にある物理的なメカニズム、さらに実際の測定方法までわかりやすく解説していきます。

材料工学・熱設計・製造業に携わる方はもちろん、熱の基礎知識を深めたい方にもぜひ参考にしていただければ幸いです。

熱伝導率の温度依存性とは?温度によって値が変化するのが基本

それではまず、熱伝導率の温度依存性の基本的な考え方について解説していきます。

熱伝導率の温度依存性は?金属・非金属の変化傾向と測定方法もわかりやすく解説、というテーマで今回は詳しく掘り下げていきます。

熱伝導率(λまたはk)とは、単位温度勾配あたりに単位時間・単位面積を通じて伝わる熱量を示す物性値です。

単位はW/(m・K)で表され、この値が大きいほど熱を伝えやすい材料といえます。

フーリエの法則による熱伝導の基本式

q = −λ × (dT/dx)

q:熱流束(W/m²)

λ:熱伝導率(W/(m・K))

dT/dx:温度勾配(K/m)

この熱伝導率は、温度が変わると値も変化します。

つまり、室温で計測した熱伝導率の値が、高温環境や低温環境でそのまま使えるとは限らないのです。

特に高精度な熱設計を行う場合、温度依存性を正確に把握することが非常に重要になります。

熱伝導率は一定の定数ではなく、温度の関数として扱うことが精密な熱解析の基本です。設計計算では使用温度域に対応した値を用いることが求められます。

熱伝導率に影響を与える主な要因には、温度のほかにも材料の結晶構造・密度・組成・欠陥の有無などが挙げられます。

これらの要因が複合的に絡み合うため、温度依存性の傾向も材料ごとに異なるわけです。

金属の熱伝導率と温度の関係:高温になると下がる傾向がある

続いては、金属における熱伝導率の温度依存性を確認していきます。

金属は一般に熱伝導率が高い材料です。

その理由は、金属内部を自由に動き回る自由電子が熱輸送の主な担い手となっているからです。

電子による熱伝導は、原子の振動(フォノン)による熱伝導よりも効率が高く、これが金属の高い熱伝導性を生み出しています。

温度が上昇すると、金属原子の熱振動が激しくなります。

その結果、自由電子が原子と衝突する頻度が増加し、電子の移動が妨げられます。

これにより、金属の熱伝導率は温度上昇とともに低下する傾向があります。

純金属の温度依存性の特徴

純金属では、自由電子の寄与が支配的なため、温度依存性は比較的シンプルです。

銅・アルミニウム・金・銀などの純金属は、温度が上がるにつれて熱伝導率が緩やかに低下します。

ただし、低温域(極低温)では逆に急激な変化を示すケースもあるため注意が必要です。

合金の温度依存性の特徴

合金は純金属とは異なる傾向を示します。

合金中では異種原子が電子の散乱中心となるため、もともと熱伝導率が低い水準にあります。

温度上昇による低下幅は純金属より小さく、材料によっては温度が上がるにつれてわずかに上昇するものも見られます。

代表的な金属の熱伝導率と温度変化の一覧

以下に、代表的な金属の熱伝導率と温度変化の目安をまとめました。

材料 25℃(W/m・K) 200℃(W/m・K) 500℃(W/m・K) 温度上昇による傾向
銅(純銅) 398 385 370 緩やかに低下
アルミニウム(純Al) 237 220 200 緩やかに低下
鉄(純鉄) 80 65 40 比較的大きく低下
ステンレス(SUS304) 16 18 21 緩やかに上昇
チタン(純Ti) 22 20 18 緩やかに低下

ステンレスのような合金では、温度上昇とともにわずかに熱伝導率が上昇する傾向が確認できます。

これは合金特有の電子散乱メカニズムが温度によって変化するためと考えられています。

非金属の熱伝導率と温度の関係:高温で上がるものと下がるものがある

続いては、非金属材料における熱伝導率の温度依存性を確認していきます。

非金属材料(セラミックス・ガラス・樹脂・コンクリートなど)では、自由電子がほとんど存在しないため、熱伝導の主な担い手はフォノン(格子振動)です。

そのため、金属とはまったく異なる温度依存性を示します。

結晶性セラミックスの温度依存性

アルミナ(Al₂O₃)・窒化ケイ素(Si₃N₄)・炭化ケイ素(SiC)などの結晶性セラミックスは、低温域では熱伝導率が高く、温度上昇とともに低下する傾向があります。

これはフォノン同士の散乱(ウムクラップ散乱)が温度上昇とともに増加するためです。

結晶性が高いほど温度依存性が顕著に現れるのが特徴といえます。

ガラス・アモルファス材料の温度依存性

ガラスのようなアモルファス(非晶質)材料は、もともとフォノンの平均自由行程が短いため熱伝導率が低い水準にあります。

温度が上昇すると、放射伝熱の寄与が増加するため、見かけ上の熱伝導率が上昇する場合があります。

高温域での熱伝導率測定には、この輻射成分の影響を適切に分離・評価することが求められます。

樹脂・ポリマー材料の温度依存性

樹脂材料(エポキシ・ポリエチレン・PTFEなど)は、熱伝導率が0.1〜0.5 W/(m・K)程度と低い値を示します。

温度依存性は材料によって異なりますが、ガラス転移温度(Tg)付近で熱伝導率が大きく変化する材料も多く見られます。

高温での使用には、この転移点前後の挙動を把握しておくことが重要です。

材料 25℃(W/m・K) 300℃(W/m・K) 700℃(W/m・K) 温度上昇による傾向
アルミナ(Al₂O₃) 30 15 7 大きく低下
炭化ケイ素(SiC) 120 60 35 大きく低下
ソーダガラス 1.1 1.3 1.6 緩やかに上昇
エポキシ樹脂 0.2 0.18 測定困難 やや低下
コンクリート 1.4 1.2 0.9 緩やかに低下

非金属材料の熱伝導率は、材料の種類によって温度依存の傾向が大きく異なります。結晶性材料では温度上昇で低下、アモルファス材料では上昇傾向を示すケースもあるため、使用温度域に応じた材料データの確認が欠かせません。

熱伝導率の測定方法:定常法と非定常法の使い分け

続いては、熱伝導率の具体的な測定方法を確認していきます。

熱伝導率を正確に測定することは、材料評価や熱設計において非常に重要です。

測定方法は大きく定常法非定常法の2種類に分けられます。

定常法(定常熱流法・平板比較法)

定常法は、試料に一定の温度差を与え、熱流が安定したときの温度分布と熱流量からλを算出する手法です。

代表的な方法として「平板法(ガードヒーター法)」があり、試料の両面に温度差を設けて熱流束を測定します。

定常状態に達するまでに時間がかかることや、大型試料が必要な場合があるのがデメリットです。

定常法による熱伝導率の計算例

λ = Q × L / (A × ΔT)

Q:熱流量(W)

L:試料厚さ(m)

A:断面積(m²)

ΔT:温度差(K)

非定常法(レーザーフラッシュ法・熱線法)

非定常法は、試料に瞬間的または継続的に熱を加え、その温度応答から熱拡散率を求める方法です。

レーザーフラッシュ法(LFA法)は最も広く使われており、試料の片面にパルスレーザーを照射し、裏面の温度上昇を計測して熱拡散率を算出します。

測定時間が短く、高温測定にも対応できる点が大きな特徴です。

熱拡散率(α)から熱伝導率を求めるには、比熱(Cp)と密度(ρ)の値も必要になります。

熱拡散率から熱伝導率への変換式

λ = α × ρ × Cp

α:熱拡散率(m²/s)

ρ:密度(kg/m³)

Cp:比熱(J/(kg・K))

測定方法の選び方と注意点

測定方法の選定は、試料の形状・サイズ・温度域・要求精度によって異なります。

以下に主な測定方法の比較をまとめました。

測定方法 種別 適用温度域 特徴 主な用途
平板法(ガードヒーター) 定常法 -150〜700℃ 高精度・低熱伝導向き 断熱材・樹脂
熱流計法 定常法 室温付近 簡便・比較測定に有効 建材・断熱材
レーザーフラッシュ法 非定常法 -100〜2500℃ 高温対応・迅速測定 金属・セラミックス
熱線法(TPS法) 非定常法 -50〜1000℃ 液体・粉体にも対応 幅広い材料
周期加熱法 非定常法 室温〜高温 薄膜・コーティング向き 電子材料・薄膜

高温域での測定では、試料の酸化・変形・ふく射の影響などを考慮した測定環境の整備が不可欠です。

また、温度依存性データを取得するには、複数の温度点で繰り返し測定することが基本となります。

まとめ

本記事では、熱伝導率の温度依存性について、金属・非金属それぞれの変化傾向とそのメカニズム、さらに代表的な測定方法まで解説しました。

金属では温度上昇とともに熱伝導率が低下する傾向が基本であり、自由電子の散乱増加がその主な要因です。

一方、非金属ではフォノンが熱輸送の担い手となるため、結晶性材料では温度上昇で低下、アモルファス材料では上昇するケースも見られます。

測定方法としては、定常法と非定常法があり、材料の種類や使用温度域に応じて適切な手法を選ぶことが精度の高いデータ取得につながります。

熱伝導率の温度依存性を正しく理解し、設計や材料選定に活かすことで、より信頼性の高い熱管理が実現できるでしょう。

ぜひ本記事を実務や学習の参考にしていただければ幸いです。