物理学や電気工学を学ぶ上で、透磁率(とうじりつ)は欠かせない重要な概念のひとつです。
磁場の中で物質がどれだけ磁束を通しやすいかを表すこの量は、電磁気学の基礎から応用まで幅広く登場します。
しかし「透磁率の単位って何?」「H/mとT・m/Aは同じもの?」「SI単位ではどう表すの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、透磁率の単位の読み方や一覧、換算・変換の方法までをわかりやすく解説していきます。
数式が苦手な方でも理解しやすいよう、表や具体例を交えながら丁寧に説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
透磁率の単位はH/m(ヘンリー毎メートル)が基本
それではまず、透磁率の単位について結論からお伝えしていきます。
透磁率の単位は、SI単位系においてH/m(ヘンリー毎メートル)が基本となっています。
「H/m」は「ヘンリー・パー・メートル」または「ヘンリー毎メートル」と読みます。
透磁率とは、ある物質が磁場(磁界)に対してどれほど磁束を通しやすいかを示す物理量です。
記号としては一般的にμ(ミュー)が使われており、電磁気学の教科書や論文では必ずといっていいほど登場する記号でしょう。
透磁率の単位まとめ(基本)
記号:μ(ミュー)
SI単位:H/m(ヘンリー毎メートル)
別表記:T・m/A(テスラ・メートル毎アンペア)
読み方:ヘンリー毎メートル、またはテスラ・メートル毎アンペア
H/mのHは「ヘンリー(Henry)」という単位で、これはインダクタンスを表す単位です。
mはメートルを意味しており、H/mは「1メートルあたりのヘンリー」という意味合いになります。
真空の透磁率μ₀は、SI単位系においてμ₀ ≈ 1.2566 × 10⁻⁶ H/mという値を持ちます。
これは「真空透磁率」または「磁気定数」とも呼ばれており、電磁気学の基本定数のひとつとして非常に重要な存在です。
透磁率の単位H/mとT・m/Aの関係と換算
続いては、H/mとT・m/Aの関係について確認していきます。
透磁率の単位として、H/mの他によく見かけるのがT・m/A(テスラ・メートル毎アンペア)という表記です。
「T・m/A」は「テスラ・メートル・パー・アンペア」と読みます。
これらは実は同じ量を表しており、単位の展開によって互いに変換できます。
H/m と T・m/A の換算
1 H/m = 1 T・m/A
(導出)
H(ヘンリー)= V・s/A = kg・m²/(A²・s²) × s = kg・m²/(A²・s)
T(テスラ)= kg/(A・s²)
T・m/A = kg・m/(A²・s²) = H/m
よって、1 H/m = 1 T・m/A が成立します。
このように、H/mとT・m/Aは全く同じ単位の別表記であるため、どちらを使っても問題ありません。
文脈や分野によって使い分けられることが多く、電気工学ではH/m、物理学ではT・m/Aが好まれる傾向があります。
また、SI基本単位(kg・m・s・A)に展開すると、以下のように表現できます。
透磁率のSI基本単位への展開
μ の単位 = kg・m・s⁻²・A⁻²
または kg/(A²・s²) × m = kg・m/(A²・s²)
これは H/m = T・m/A = kg・m・s⁻²・A⁻² と等しくなります。
SI基本単位への展開は、単位の整合性を確認したいときや、理論的な計算をするときに役立つでしょう。
覚えておくと、異なる単位系で書かれた文献を読む際にも混乱しにくくなります。
透磁率の種類と単位一覧(絶対透磁率・比透磁率・真空透磁率)
続いては、透磁率の種類と単位の一覧を確認していきます。
一口に「透磁率」といっても、実はいくつかの種類があります。
それぞれの意味と単位をきちんと区別して理解することが重要です。
絶対透磁率(μ)
絶対透磁率は、ある物質そのものの透磁率を指します。
記号はμ(ミュー)で表され、単位はH/mまたはT・m/Aです。
磁束密度B(テスラ)と磁場H(アンペア毎メートル)の関係式 B = μH によって定義されます。
この関係式において、Bが大きいほど物質は磁束を通しやすく、透磁率が高いことを意味するでしょう。
比透磁率(μr)
比透磁率は、絶対透磁率μを真空の透磁率μ₀で割った無次元の量です。
記号はμr(ミュー・アール)で表されます。
単位はなく、無次元(dimensionless)の数値として扱われます。
鉄のような強磁性体は比透磁率が数百〜数万にもなることがあり、真空や空気は比透磁率がほぼ1です。
比透磁率の定義式
μr = μ / μ₀
μ:絶対透磁率 [H/m]
μ₀:真空の透磁率 ≈ 1.2566 × 10⁻⁶ [H/m]
μr:比透磁率(無次元)
真空透磁率(μ₀)
真空透磁率は、真空中における透磁率の値を表します。
2019年以前のSI単位系では、μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m と定義されていました。
2019年以降のSI単位系改定後は、厳密な定義から測定値として扱われるようになり、μ₀ ≈ 1.25663706212 × 10⁻⁶ H/m とされています。
この値はあらゆる電磁気の計算の基準となる非常に重要な定数です。
| 透磁率の種類 | 記号 | 単位 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 絶対透磁率 | μ | H/m(T・m/A) | 物質固有の透磁率 |
| 比透磁率 | μr | 無次元 | μ₀に対する比の値 |
| 真空透磁率 | μ₀ | H/m | ≈ 1.257 × 10⁻⁶ H/m |
| 複素透磁率 | μ* | H/m | 損失を含む交流特性 |
主な物質の透磁率・比透磁率の値一覧
続いては、代表的な物質の透磁率と比透磁率の値一覧を確認していきます。
透磁率は物質によって大きく異なり、その違いが磁気的な応用に直結しています。
常磁性体・反磁性体の透磁率
常磁性体とは、外部磁場の方向に弱く磁化される物質のことです。
比透磁率μrは1よりわずかに大きい値を持ちます。
アルミニウムや白金などが代表例で、μrはほぼ1に近い値です。
一方、反磁性体は外部磁場と逆向きに弱く磁化され、比透磁率が1よりわずかに小さい値になります。
銅や銀、金などが反磁性体の代表例でしょう。
強磁性体の透磁率
強磁性体は、外部磁場に強く反応して大きく磁化される物質です。
鉄・ニッケル・コバルトなどが代表的で、比透磁率μrが数百〜数万という非常に大きな値を示します。
強磁性体は電磁石やトランスのコア材料として広く利用されており、透磁率の高さが性能に直結します。
ただし、強磁性体の透磁率は磁場の強さや温度によって変化するため、一定値ではないことに注意が必要です。
各物質の比透磁率一覧表
代表的な物質の比透磁率をまとめると、以下のようになります。
| 物質名 | 分類 | 比透磁率 μr(概略) |
|---|---|---|
| 真空 | 基準 | 1(定義) |
| 空気 | 常磁性体 | ≈ 1.0000004 |
| アルミニウム | 常磁性体 | ≈ 1.000023 |
| 銅 | 反磁性体 | ≈ 0.999994 |
| 銀 | 反磁性体 | ≈ 0.999974 |
| ニッケル | 強磁性体 | 約100〜600 |
| 鉄(純鉄) | 強磁性体 | 約200〜5,000 |
| パーマロイ | 強磁性体 | 約8,000〜100,000 |
| フェライト | フェリ磁性体 | 約20〜15,000 |
このように、物質によって比透磁率の値は大きく異なります。
特にパーマロイのような特殊合金は非常に高い比透磁率を持ち、精密な磁気センサやシールド材料として重宝されています。
比透磁率の大小による物質分類
μr > 1(1より大きい):常磁性体・強磁性体
μr < 1(1より小さい):反磁性体
μr ≫ 1(1よりはるかに大きい):強磁性体・フェリ磁性体
透磁率の換算・変換の具体的な方法
続いては、透磁率の換算・変換の方法について具体的に確認していきます。
実際の計算や文献調査において、透磁率の値を別の形式に変換しなければならない場面は少なくありません。
絶対透磁率から比透磁率への変換
絶対透磁率μの値が分かっている場合、比透磁率μrへの変換は非常にシンプルです。
真空透磁率μ₀で割るだけで比透磁率が求められます。
変換例:絶対透磁率 → 比透磁率
μ = 6.28 × 10⁻⁴ H/m の物質の比透磁率を求める
μ₀ = 1.257 × 10⁻⁶ H/m
μr = μ / μ₀ = (6.28 × 10⁻⁴) / (1.257 × 10⁻⁶)
μr ≈ 499.6 ≈ 500(無次元)
このように、絶対透磁率をμ₀で割ることで比透磁率が得られます。
逆に比透磁率から絶対透磁率を求める場合は、μ = μr × μ₀ の式を使いましょう。
CGS単位系とSI単位系の換算
古い文献では、CGS単位系(ガウス単位系)が使われている場合があります。
CGS単位系における透磁率の単位はG/Oe(ガウス毎エルステッド)で表されることがあります。
SI単位系との換算には以下の関係式を使います。
CGS単位系とSI単位系の換算
1 G/Oe = 4π × 10⁻³ H/m ≈ 1.257 × 10⁻² H/m
または、比透磁率(無次元)はCGSでもSIでも同じ数値
(比透磁率は単位を持たないため、単位系によらず共通)
比透磁率は無次元の量であるため、CGS・SI問わず同じ数値として扱える点は便利でしょう。
一方、絶対透磁率の値はSI単位系に変換してから計算することを強くおすすめします。
H/m・T・m/A・SI基本単位の相互変換まとめ
透磁率に関連する単位を整理すると、以下の表のようになります。
| 単位表記 | 読み方 | 変換関係 |
|---|---|---|
| H/m | ヘンリー毎メートル | 基本表記(SI単位) |
| T・m/A | テスラ・メートル毎アンペア | 1 H/m = 1 T・m/A |
| kg・m/A²・s² | SI基本単位展開 | H/mをSI基本単位で表したもの |
| N/A² | ニュートン毎アンペア二乗 | 1 H/m = 1 N/A² |
| Wb/(A・m) | ウェーバー毎アンペア・メートル | 1 H/m = 1 Wb/(A・m) |
N/A²(ニュートン毎アンペア二乗)やWb/(A・m)(ウェーバー毎アンペア・メートル)も、H/mと等価な単位表現です。
どの表記が使われているかは文脈によって異なりますが、いずれも同じ物理量を示しています。
まとめ
今回は「透磁率の単位は?換算・変換も(H/mやT・m/AやSI単位等)読み方や一覧は?」というテーマで解説しました。
透磁率の基本単位はH/m(ヘンリー毎メートル)であり、T・m/AやN/A²、Wb/(A・m)など、さまざまな等価表現が存在します。
比透磁率は無次元の量であるため、単位系をまたいで共通して使えるという便利な特性を持っています。
真空透磁率μ₀ ≈ 1.257 × 10⁻⁶ H/m は電磁気学の基本定数として、あらゆる計算の基準となる重要な値です。
物質によって比透磁率の値は大きく異なり、強磁性体では数百〜数万という非常に大きな値を示すことも押さえておきましょう。
単位の換算や変換も、定義式をしっかり理解していれば難しくはありません。
ぜひこの記事を参考に、透磁率に関する理解を深めていただければ幸いです。