「掲げる」は、会社の理念や個人の目標、旗、看板などを高い位置に出し、多くの人に見えるようにする場面で使う言葉です。
ビジネスでは、物理的に物を持ち上げる意味よりも、方針や志を公に示す比喩的な用法が中心となります。
「目標を掲げる」と「目標を示す」は似ていますが、言葉に込められる意志や周囲への呼びかけには違いがあります。
読み方、基本的な意味、自然な例文、類語との使い分けを知れば、企画書やあいさつ、社内文書でも表現を選びやすくなるでしょう。
掲げるの意味と読み方

それではまず、掲げるの意味と読み方について解説していきます。
基本の読み方と漢字の成り立ち
掲げるは「かかげる」と読みます。
「掲」の字には、手で持ち上げて人の目に触れる場所へ出すというイメージがあります。
そのため、旗を掲げる、看板を掲げる、提灯を掲げるのように、実際の物を上方へ示す表現として使えます。
一方で、現代のビジネス文書では、経営理念を掲げる、目標を掲げる、スローガンを掲げるといった抽象的な対象と結び付くことが多いでしょう。
掲げるは、単に持つことではなく、周囲に見せる意図を含みやすい言葉です。
自分の心の中で目標を考えているだけなら「目標を持つ」が自然です。
社内外に向けて明確に打ち出す場合には「目標を掲げる」がふさわしくなります。
物を高く出す意味
本来の掲げるには、旗や標識などを高い位置に出して目立たせる意味があります。
運動会で校旗を掲げる、店舗の前にのぼりを掲げる、式典で国旗を掲げるといった使い方が代表例です。
この用法では、対象が視覚的に見える物であることがポイントになります。
「旗を持つ」では手に持っている状態を表せますが、「旗を掲げる」には、上へ上げて堂々と見せる動作まで含まれます。
例文
会場の入り口には、新製品の発売を知らせる大きなのぼりが掲げられていました。
この文では、のぼりが人の目に入る位置へ設置されている様子を表しています。
なお、壁にポスターを貼るだけの場合は「掲示する」が適切なこともあります。
掲げるは、対象の高さや象徴性を意識させたいときに選ばれやすい表現です。
理念や目標を公にする意味
抽象的な用法の掲げるは、目標、方針、理想、理念、スローガンなどを明確に示し、共有する意味で使われます。
たとえば企業が「顧客第一」を掲げる場合、社内だけの考えではなく、組織として大切にする姿勢を公表していることになります。
個人が「一年で資格を取得する目標を掲げる」と述べる場合も、達成したい内容を具体化し、自分を動かす目印にするニュアンスがあります。
「掲げる」は、目標や理念を見える形にして、行動の方向を定める言葉です。
宣言する意味合いがあるため、軽い予定や一時的な思いつきには使いにくい場合があります。
目標を掲げた後には、施策を決める、進捗を確認する、成果を振り返るという流れが生まれます。
言葉そのものが組織や個人の旗印になる点が、掲げるの大きな特徴でしょう。
ビジネスにおける使い方
続いては、ビジネスにおける掲げるの使い方を確認していきます。
経営理念と企業ビジョン
企業活動では、経営理念やビジョンを掲げるという言い方がよく使われます。
経営理念は、会社が何を大切にし、社会にどのような価値を提供するかを示す考え方です。
ビジョンは、将来どのような組織や事業を目指すのかを表すことが一般的です。
これらを掲げると表現することで、経営層の考えを掲示するだけでなく、従業員や取引先と共有する方針として位置付けられます。
理念を掲げる場合は、言葉と実際の行動が一致しているかが重要です。
たとえば「地域への貢献」を掲げながら、地域との接点がほとんどない企業活動をしていると、理念が形だけに見えるおそれがあります。
採用ページ、会社案内、朝礼、評価制度などで理念を繰り返し扱うことで、掲げた言葉は組織文化へとつながります。
年度目標と営業目標
年度方針や営業計画では、売上目標、受注件数、顧客満足度、業務改善の目標などを掲げます。
「売上を伸ばす」とだけ記すより、「前年売上を十パーセント上回ることを目標に掲げる」としたほうが、組織として目指す水準が伝わりやすくなります。
ただし、掲げる対象は高いほどよいわけではありません。
現場の状況とかけ離れた数値を掲げると、意欲を高めるどころか、負担感や不信感につながる場合もあります。
例文
営業部は今期、既存顧客との継続契約率を向上させることを重点目標として掲げました。
数値だけではなく、何を改善したいのかまで伝えられる表現です。
目標を掲げる際には、達成基準、期限、担当、確認方法を併せて決めると、実務へ落とし込みやすくなります。
掲げる言葉は方向性を示し、計画は日々の行動を支える役割を持ちます。
企画書とプレゼンテーション
企画書では、企画の目的やコンセプトを冒頭に掲げると、読み手が全体像をつかみやすくなります。
新規事業の提案であれば、解決したい課題や実現したい未来を短い言葉で掲げ、その後に根拠や施策を続ける構成が有効です。
プレゼンテーションでも、チームが掲げるテーマを最初に伝えることで、聞き手の理解を一つの方向へ導けます。
掲げる言葉は、長文よりも覚えやすく、行動に結び付きやすい表現が向いています。
ただし、印象的なスローガンだけを掲げても、実現方法がなければ説得力は生まれません。
目的、現状、課題、施策、期待効果を整理し、掲げた言葉を具体策で支えることが大切です。
掲げるを使った例文
続いては、掲げるを使った例文を場面別に確認していきます。
社内文書で使う例文
社内文書では、会社や部門が共有する方針を表す場面で掲げるを使えます。
例文
当社は、お客様から長く信頼されるサービスの提供を経営方針として掲げています。
今期は、業務の標準化と情報共有の強化を重点施策として掲げます。
プロジェクトチームは、納期の遵守と品質の安定を共通目標に掲げました。
「掲げています」は、継続している方針を示す表現です。
「掲げます」は、これから方針を打ち出す宣言に向いています。
社内向けの文書では、誰が何を掲げるのかを曖昧にせず、主語を明確にすると読みやすくなるでしょう。
目標を掲げる主体が会社なのか、部門なのか、個人なのかを示すことが実務では重要です。
あいさつとスピーチで使う例文
入社式、キックオフ、周年行事などのスピーチでは、志や決意を伝えるために掲げるを使えます。
格式を保ちながら、前向きな姿勢を表せるためです。
「私たちは挑戦を恐れない組織づくりを掲げ、変化に向き合ってまいります」という表現なら、今後の姿勢を丁寧に伝えられます。
「新たな市場への進出を目標に掲げます」と述べれば、目指す方向が聞き手に伝わりやすくなります。
一方で、日常的な会話で何度も使うと、少し大げさに響くことがあります。
小さな予定や個人的な希望については、「目指す」「考える」「予定している」などを選ぶほうが自然な場面もあります。
スピーチで掲げるを使うときは、聞き手が共感できる理由や具体的な行動も添えると、宣言が一方的になりません。
採用活動と広報で使う例文
採用広報では、企業が掲げる価値観を求職者に伝える機会があります。
「私たちは、多様な働き方を尊重する職場づくりを掲げています」と書けば、組織が目指す姿勢を端的に表せます。
商品やサービスの広報では、「安全性を第一に掲げる」「環境への配慮を掲げる」といった使い方も可能です。
ただし、広告表現では、掲げている内容を客観的に説明できる準備が求められます。
理念を掲げるだけでなく、制度、原材料、製造工程、顧客対応などの具体例を示すと、読み手の納得感が高まります。
広報で掲げるを使うなら、宣言の裏付けとなる事実をセットで伝えることが信頼につながります。
示すとの違いと類語
続いては、掲げると示すの違い、そして類語との使い分けを確認していきます。
掲げると示すのニュアンス
示すは、情報、結果、方針、証拠などを相手にわかる形で伝える幅広い言葉です。
数字が傾向を示す、資料で根拠を示す、態度で意思を示すのように、多くの対象に使えます。
掲げるは、目標や理念などを目立つ形で打ち出し、象徴として扱うニュアンスが強い言葉です。
| 言葉 | 主な意味 | 使いやすい対象 | 例 |
|---|---|---|---|
| 掲げる | 高く打ち出して共有する | 理念、目標、旗、スローガン | 顧客第一を掲げる |
| 示す | 内容や状態をわかるようにする | 資料、数値、態度、根拠 | 資料で方針を示す |
| 表す | 気持ちや内容を外へ表現する | 感謝、意思、特徴、状態 | 感謝の意を表す |
| 掲示する | 見える場所に表示する | 案内、注意書き、ポスター | 受付に案内を掲示する |
たとえば、経営方針を資料に記載する行為なら「方針を示す」が使えます。
その方針を企業の重要な旗印として広く発信するなら「方針を掲げる」がよく合います。
目指すと掲げるの使い分け
目指すは、将来実現したい状態へ向かうことに重点がある言葉です。
「業界一位を目指す」は、そこへ到達しようと努力する過程を含みます。
掲げるは、目標を設定し、周囲に明らかにする行為に重点があります。
「業界一位を目標に掲げる」は、組織として目標を打ち出したことを伝えます。
両方を組み合わせることもできます。
「業界一位を目標に掲げ、その実現を目指す」とすれば、宣言と行動の両方を表現できます。
掲げるは目標を置く言葉、目指すは目標へ進む言葉と考えると理解しやすいでしょう。
文章の目的に応じて、目標設定を伝えたいのか、努力や到達を伝えたいのかを見極めることが大切です。
主張するや訴えるとの違い
主張するは、自分の意見や立場をはっきり述べる言葉です。
意見の対立がある場面や、根拠を示して考えを伝える場面でよく使われます。
訴えるは、強く呼びかける、必要性を伝える、感情に働きかけるというニュアンスを持ちます。
一方、掲げるは必ずしも相手を説得する言葉ではありません。
組織が目標や理念を表明し、それを行動の軸として持つ場面に適した表現です。
「環境保全の重要性を訴える」は社会へ呼びかける表現です。
「環境保全を企業理念に掲げる」は組織の方針を表す表現です。
似た内容でも、伝えたい行為によって選ぶ言葉が変わります。
目標や理念を掲げる注意点
続いては、目標や理念を掲げる際の注意点を確認していきます。
抽象語だけで終わらせない工夫
挑戦、成長、信頼、革新、貢献といった言葉は、理念や目標に使いやすい一方で、意味が広くなりがちです。
「信頼を掲げる」と書くだけでは、どのような行動をするのかが読み手に伝わりません。
そこで、信頼を生む具体的な行動を添えることが効果的です。
たとえば、問い合わせへの回答期限を定める、品質確認を二重化する、説明をわかりやすくするなどの取り組みを示します。
抽象的な理念には、現場で再現できる行動基準を結び付けることが欠かせません。
理念が判断の基準として機能するようになれば、掲げる言葉は飾りではなく、仕事を支える指針になります。
実現可能性と挑戦のバランス
高い目標を掲げることは、組織や個人の成長を促すきっかけになります。
しかし、根拠のない目標は、達成できなかったときに意欲を下げる原因にもなります。
市場環境、人員、予算、期間、必要な技術を確認し、挑戦的でありながら現実的な水準を考えることが大切です。
大きな目標を掲げるなら、中間目標を設ける方法もあります。
考え方の例
最終目標を一年後の売上向上とする場合、四半期ごとに新規商談数、成約率、既存顧客への提案数を確認します。
大きな旗を掲げながら、日々の行動まで見失わないための設計です。
数値に表れにくい改善目標でも、完了条件や確認方法を決めておくと、取り組みを評価しやすくなります。
共有と見直しの重要性
掲げた目標や理念は、一度発表しただけでは定着しません。
会議、朝礼、評価面談、社内報、研修などで繰り返し共有することが必要です。
特に新しいメンバーが加わる組織では、掲げている価値観がどのような背景で生まれたのかも伝えると理解が深まります。
また、環境の変化によって、掲げた目標が現状に合わなくなることもあるでしょう。
見直しは方針の弱さではなく、目的に近づくための調整です。
掲げた言葉を定期的に振り返り、現場の行動とずれがないか確かめる姿勢が重要です。
達成状況と課題を共有すれば、次に掲げる目標もより納得感のあるものになります。
掲げるの意味と使い方のまとめ
掲げるは「かかげる」と読み、旗や看板を高い位置に出す意味と、目標や理念を公に打ち出す意味を持つ言葉です。
ビジネスでは、経営理念、企業ビジョン、年度方針、営業目標、プロジェクトのテーマなどと組み合わせて使われます。
単に情報を伝える「示す」と比べると、掲げるには組織や個人の旗印として、目標を強く共有するニュアンスがあります。
「目標を掲げる」は目標を明確に打ち出すこと、「目標を目指す」はその実現へ向けて進むことに重点があります。
理念や目標を掲げる際は、印象のよい言葉だけで終わらせず、具体的な行動、評価の基準、共有の方法まで整えることが大切です。
旗を掲げるように方向を見せ、日々の行動でその言葉を形にしていくことが、掲げるという表現にふさわしい実践といえるでしょう。